Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

『コット、はじまりの夏』あらすじ感想と評価解説。アイルランド映画が描くのは親戚夫婦の愛に触れた少女の成長|映画という星空を知るひとよ185

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第185回

1980年代初頭のアイルランドを舞台に、9歳の少女が過ごす特別な夏休みを描いたヒューマンドラマ『コット、はじまりの夏』。

主役に抜擢され、本作が長編映画デビュー作となったキャサリン・クリンチの演技が光る『コット、はじまりの夏』は2024年1月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、渋谷ホワイトシネクイントほかで全国公開されます。

これまでドキュメンタリー作品を中心に子どもの視点や家族の絆を描いてきたコルム・バレードが、アイルランドの作家クレア・キーガンの小説『Foster』をもとに、初めて長編劇映画の監督・脚本を手がけました。

多感な9歳の少女は、果たしてどんな夏休みを過ごすのでしょうか。『コット、はじまりの夏』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『コット、はじまりの夏』の作品情報


(C)Insceal 2022

【日本公開】
2024年(アイルランド映画)

【原作】
クレア・キーガン

【英題】
The Quiet Girl

【脚本・監督】
コルム・バレード

【製作】
クリオナ・ニ・クルーリー

【キャスト】
キャサリン・クリンチ、キャリー・クロウリー、アンドリュー・ベネット、マイケル・パトリック

【作品概要】
9歳の少女が体験した特別な夏休みを描いた『コット、はじまりの夏』。第72回ベルリン国際映画祭では「子どもが主役の映画」を対象とする国際ジェネレーション部門(Kplus)でグランプリを受賞し、第95回アカデミー賞でも国際長編映画賞にノミネートもされました。

本作がデビュー作となるキャサリン・クリンチが、主人公コットを圧倒的な透明感と存在感で繊細に好演。IFTA賞(アイリッシュ映画&テレビアカデミー賞)主演女優賞を史上最年少の12歳で受賞しています。

映画『コット、はじまりの夏』のあらすじ


(C)Insceal 2022

1981年、アイルランドの田舎町に住んでいる9歳の少女コット。大家族の中で自分の居場所を見出せず、ひとり静かな毎日を過ごしています。

母の出産が近いこともあり、コットは夏休みを親戚のキンセラ夫婦が営む緑豊かな農場で過ごすことになりました。

始めのうちは慣れない農場生活に戸惑うコットでしたが、愛情深いキンセラ夫婦に次第に打ち解けていきます。

食事の支度や牛の世話のお手伝いをする毎日の中で、コットはこれまでに経験したことのなかった生きる喜びを実感していきます……。

映画『コット、はじまりの夏』の感想と評価


(C)Insceal 2022

大家族の中で暮らす9歳の少女コット。母が出産を控えていることもあり、あまりかまってもらえません。

父もコットについては無頓着でしたので、コットは自分の居場所がない状態です。身の置き所のないコットは、自分の意見を言えないがために寡黙な少女でした。

そんなコットは、母の出産が近いこともあり、夏休みを農場を営む親戚のキンセラ夫婦の元で過ごすことになりました。

キンセラ夫婦は時には優しく、また時には厳しくコットに接してくれます。

慣れない田舎の農場生活に最初は戸惑うコットですが、今までの生活とは全く違う、自分の必要性を感じる毎日が始まり、コットは次第に明るくなっていきます

コットを演じるのは、本作がデビュー作となるキャサリン・クリンチ。思春期にさしかかった少女のガラス細工のような繊細な心を、存在感ある演技で表現しています

まとめ


(C)Insceal 2022

アイルランドに住む9歳の少女のひと夏の体験を描いた『コット、はじまりの夏』をご紹介しました。

喜怒哀楽をはっきりと示さないコットが、自分の気持ちをはっきりと表現できるようになるまでの成長過程を、これまで子どもの成長や家庭の絆を描いてきたコルム・バレード監督が、美しい自然とともに描き出しました

家族のなかにいても孤独だったコットに温かな愛情を注いでくれたのは、親戚のキンセラ夫婦です。

「子どもにとって何が一番大切なのか」と問われる作品で、自分の気持ちを表現できるようになったコットの成長ぶりに驚くことでしょう

映画『コット、はじまりの夏』は2024年1月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、渋谷ホワイトシネクイントほかで全国公開!

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



関連記事

連載コラム

アタック・オブ・ザ・キラー・トマト|ネタバレ感想と結末までのあらすじ。低予算カルト映画の楽しみ方|SF恐怖映画という名の観覧車45

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile045 新宿の映画館「K’s cinema」で2019年6月8日より開催される「奇想天外映画祭 Bizarre Film Festi …

連載コラム

映画『ダンスダンスダンス』『バードソング』ネタバレ感想と考察評価。音楽にまつわる幻想的映画2編がスクリーンに登場|未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録10

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」第10回 様々な国籍・ジャンルの映画から、埋もれかけた貴重な作品を紹介する劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」。 …

連載コラム

台湾映画『成功補習班』あらすじ感想と評価解説。男子高生3人が“多様性な生き方”と直面する思春期回顧録|TIFF東京国際映画祭2023-13

映画『成功補習班』は第36回東京国際映画祭・ワールドフォーカス部門で上映! 台湾ドラマ『ショコラ』で長澤まさみと共演した俳優ラン・ジェンロンが監督した『成功補習班』が、第36回東京国際映画祭ワールドフ …

連載コラム

大泉洋映画『騙し絵の牙』感想評価と考察。原作との違いが生む衝撃の結末と“面白い”の修羅場|シニンは映画に生かされて24

連載コラム『シニンは映画に生かされて』第24回 2021年3月26日(金)より全国ロードショー公開予定の映画『騙し絵の牙』。 『罪の声』の小説家・塩田武士が人気俳優・大泉洋をイメージし主人公を「あてが …

連載コラム

【ネタバレ考察】君たちはどう生きるか|原作小説/元ネタとの違いは?関係ない?“失われたものたちの本”×タイトル意味で知る“導きも誘惑もある現実”|君たちはどう観るか2

連載コラム『君たちはどう観るか』第2回 宮崎駿が「宮﨑駿」として、『風立ちぬ』(2013)以来10年ぶりの長編監督作品を手がけたアニメーション映画『君たちはどう生きるか』。 作中では山時聡真、菅田将暉 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学