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『おしょりん』あらすじ感想と評価解説。北乃きいが増永眼鏡創業のドラマをピュアに演じる|映画という星空を知るひとよ174

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第174回

人生を懸けてメガネ作りに挑んだ福井県のある家族の情熱と愛の物語『おしょりん』。児玉宜久監督のもと、北乃きいを主演に、森崎ウィンや小泉孝太郎をメインキャストにしたヒューマンドラマ映画『おしょりん』。

このたび2023年10月20日(金)より福井県で先行公開後、11月3日(金・祝)より角川シネマ有楽町ほかにて全国公開されます。

「おしょりん」とは、田畑を覆う雪が固く凍った状態を指す福井の言葉です。 おしょりんになれば、回り道しないで好きなところへまっすぐ行けます。

「おしょりん」という自然現象から生まれた、「いくつになってもどんな時も夢に向かって自由に突き進もう」という想いが込められた素敵なタイトルの作品です。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『おしょりん』の作品情報


(C)「おしょりん」制作委員会

【日本公開】
2023年(日本映画)

【原作】
藤岡陽子『おしょりん』(ポプラ社)

【監督】
児玉宜久

【脚本】
関えり香、児玉宜久

【エンディング曲】
MORISAKI WIN「Dear」(日本コロムビア)

【キャスト】
北乃きい、森崎ウィン、駿河太郎、高橋愛、秋田汐梨、磯野貴理子、津田寛治、榎木孝明、東てる美、佐野史郎、かたせ梨乃、 小泉孝太郎

【作品概要】
本作は、藤岡陽子『おしょりん』(ポプラ社)が原作です。児玉宜久監督が現在は日本産メガネの95%を生産している福井県のメガネ作りについて描きました。

メガネ作りにゼロから挑んだ増永五左衛門に小泉孝太郎、弟の幸八に森崎ウィン。この兄弟を信じて支え見守り続けた五左衛門の妻・むめは北乃きいが演じます。

“ものづくり”の魅力を伝える本作は、実用品かつ装飾品でもあるメガネに渾身の技術と魂を吹き込む職人と彼らを支える家族の姿を感動的に表現した作品です。

映画『おしょりん』のあらすじ


(C)「おしょりん」制作委員会

明治37年、福井県足羽郡麻生津村(現・福井市麻生津)の庄屋の長男・増永五左衛門(小泉孝太郎)と結婚したむめ(北乃きい)は、育児と家事で忙しい日々を送っていました。

ある日、五左衛門の弟・幸八(森崎ウィン)が勤め先の大阪から帰郷し、村をあげてメガネ作りの取り組まないかという話を持ち掛けます。

その当時はほとんど知られていなかったメガネですが、活字文化の普及で必ずや必需品になると、幸八は力説します。成功すれば、冬は収穫のない農家の人々の暮らしを助けることができると言うのです。

初めは反対していた村の人々ですが、視力の弱い子どもがメガネをかけて「よく見える」と大喜びする姿を見て、五左衛門はこの事業に挑戦することを決め、村の人々を集めて工場を開きます。

ですが、苦労の末に仕上げたメガネが「売り物にならない」と卸問屋に突き返され、資金難から銀行の融資を受けるも厳しく返済を迫られ、兄弟は幾度となく挫折します。

そんな2人を信じ、支え続けたのが、決して夢を諦めない強い心を持つむめでした。彼女に励まされた兄弟と職人たちは、“最後の賭け”に打って出ます……。

映画『おしょりん』の感想と評価


(C)「おしょりん」制作委員会

『おしょりん』は、豪雪地帯の福井県を舞台にメガネ作りの事業を起こしたある兄弟たちの感動のドラマです。

明治時代の福井を舞台に、冬は豪雪のために農作業ができず収入の道がなくなる村を助けるべく、メガネ作りにゼロから挑んだ増永五左衛門と弟・幸八の兄弟と、2人を信じて支え見守り続けた五左衛門の妻・むめ。

村の裕福な庄屋の跡取りの兄弟が、自分の家の土地財産を投げうってでも成し遂げたかったメガネ作り。当時の日本ではまだあまり知られていなかったメガネは、未知のものでおかしなものでした。

そんなものに村の財力をかけて失敗したらどうなるのか。自分たちの生活を心配する村人たちの反対もよくわかります。ですが、実際に視力の弱い子どもがメガネをかけて「よく見える」と喜ぶ様を目にして、皆は「これは本物だ!」と実感します。

ただ事業のためだけでなく、皆で一緒になって取り込む熱意やメガネを必要とする人の喜ぶ姿に思いを馳せる優しさが、村人の結束を固めていきました。

そんな村人と事業に打ち込む兄弟を優しく見守る娘・むめを、おおらかな包容力と優しさの漂う笑みを浮かべた北乃きいが、生き生きと演じています。

メガネ製造の技術の難しさ、難航する資金調達など、何度も挫折しそうな苦難を乗り越えて、「福井のメガネを全国へ」の夢を達成しようとする彼ら。

‟もの作り”の大変さを知るとともに、‟作られるものへ込められた職人の思い”も伝わってくることでしょう

まとめ


(C)「おしょりん」制作委員会

福井県のメガネ作りの物語『おしょりん』をご紹介しました。

真ん丸レンズと黒フレームのメガネ作りからスタートした、福井県のメガネ。ツルの部分の詳細な工程や出来上がったメガネのかけ心地など、細かなところまで配慮して作られるメガネ作りのノウハウに感動することでしょう。

現在何気なく使っているメガネは、おしゃれなファッションアイテムとしても注目されていますが、普及するまでにはこんなドラマがあったのです。

メガネ作りの歴史と夢に向かってまっすぐ進むことの大切さ、地道ながらもメガネ作りに携わった人々のことを、ぜひ知ってください

映画『おしょりん』が、2023年10月20日(金)より福井で県先行公開後、11月3日(金・祝)より角川シネマ有楽町ほかにて全国公開!

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



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星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
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