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『エッフェル塔〜創造者の愛』あらすじ感想と評価解説。フランスパリのシンボルにまつわる壮大な挑戦と秘められたラブストーリー|映画という星空を知るひとよ139

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第139回

芸術の都パリのシンボル「エッフェル塔」は、世界でも有名な観光名所の一つです。

この塔が建造されたのは1889年のこと。制作したのは、ニューヨークの自由の女神の制作者としてすでに名声を獲得していたギュスターヴ・エッフェルでした。

‟パリのシンボル”誕生秘話とも言える映画『エッフェル塔~創造者の愛~』は、2023年3月3日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開されます。

本作では、制作者ギュスターヴ・エッフェルが塔の制作指揮を始めてから完成までの日々を描きます。

資金不足に陥り、このままでは建造中止という事態にまで突き進んでしまった時、彼はどうやって難題をクリアしていったのでしょうか? また、どうして途中であきらめなかったのでしょうか?

エッフェルの偉業を成し遂げる原動力として、生涯忘れられない愛する人への想いがあったとする本作。ここでは塔の建築事実にフィクションも交えた愛の物語が展開します。

映画公開に先駆け、『エッフェル塔~創造者の愛~』の見どころをご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『エッフェル塔~創造者の愛~』の作品情報


(C)2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films

【日本公開】
2023年(フランス・ドイツ・ベルギー合作映画)

【原題】
EIFFEL

【監督】
マルタン・ブルブロン

【脚本】
カロリーヌ・ボングラン

【音楽】
アレクサンドル・デプラ

【編集】
ヴァレリー・ドゥセーヌ 

【美術】
ステファン・タイヤッソン

【キャスト】
ロマン・デュリス、エマ・マッキー、ピエール・ドゥラドンシャン、アレクサンドル・スタイガー、アルマンド・ブーランジェ、ブルーノ・ラファエリ

【作品概要】
1889年建造されたエッフェル塔は、ギュスターヴ・エッフェルが制作を担当し、山積みの難問を解決して塔を完成させました。

実話をもとにした映画『エッフェル塔~創造者の愛~』を愛と情熱の物語に作り上げたのは、超大作『三銃士』映画化の監督に抜擢されたマルタン・ブルブロン。

ギュスターヴ・エッフェルは、日本映画リメイク版『キャメラを止めるな!』(2022)で、印象的な演技を披露したロマン・デュリスが演じます。

エッフェルと情熱的な恋愛に身を投じるアドリエンヌは、「セックス・エデュケーション」シリーズのほか、『ナイル殺人事件』(2022)のエマ・マッキーが好演しています。

映画『エッフェル塔~創造者の愛~』のあらすじ


(C)2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films

アメリカの〈自由の女神像〉の制作に協力したことで大いなる名声を獲得した、ギュスターヴ・エッフェル(ロマン・デュリス)。

世間では3年後の1889年に開催される「パリ万国博覧会」の話題でもちきりです。

そのシンボルモニュメント制作のコンクールには全く興味のなかったエッフェルですが、パーティーの席で大臣から強く参加を要請されました。

さらに、久しぶりに再会した友人で記者のアントワーヌ・ド・レスタック(ピエール・ドゥラドンシャン)の妻・アドリエンヌ(エマ・マッキー)から「大臣と同感です。ぜひ見てみたい。野心作を」と言われたエッフェル。

突然に、「ブルジョワも労働者も皆が楽しめるように、パリの真ん中に300m の塔をすべて金属で造る」と宣言し、箱の確保に始めます。

初対面のふりをしていたたレスタックの妻は、実はエッフェルにとって忘れられない女性だったのです――。

映画『エッフェル塔~創造者の愛~』の感想と評価


(C)2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films

塔完成までの苦難のなかで

世界で最も有名な観光名所の一つといわれる、パリのエッフェル塔。

パリのシンボルであり、観光の人気スポットであるこの塔は、1889年「パリ万国博覧会」の最大の呼び物として建造されました。

高さ300m、100%鉄製という当時としては異例な建造物のエッフェル塔。設計に挑んだのは、ニューヨークの自由の女神の制作者・ギュスターヴ・エッフェルでした。

華々しく建設のスタートを切ったと思われたエッフェルですが、実はさまざまな問題が待ち受けていて彼の行く手を遮ります。

塔の倒壊を恐れる住民からの苦情、「ノートルダム大聖堂より高い建物は侮辱だ」とするカトリックの教皇たちの怒り、作業員からの賃上げ要求と、つぎつぎと襲い掛かる難題の数々。

栄光の建設者は、思わぬ暗礁に乗り上げた形で失意のどん底へと陥ります。

そんな彼の心の支えになったのが、かつての恋人で今は友人の妻となっていたアドリエンヌ。

塔の建造計画に乗り気でなかったエッフェルの背中を押したのは、「我が国に必要なのはシンボルだ」という大臣の意見に賛同したアドリエンヌの「ぜひ見てみたい。野心作を」と言う言葉でした。

エッフェル塔に託す愛


(C)2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films

今はお互いに所帯を持ち初対面の顔をするエッフェルとアドリエンヌですが、かつては激しい恋をしていた2人です。

アドリエンヌへの愛を塔に託すかのように、エッフェルはこの仕事にのめり込んで行きました。

現実の頭の痛い難問を抱えながらも、愛する人との楽しかった日々を回想するエッフェル。その胸中はいかなるものでしょう。

エッフェルを演じるのは、フランスの名優ロマン・デュリスです。労働者階級でありながら、自らの努力で人生を切り開いていく男を情熱的に演じています。

キュートで美しいアドリエンヌは、エマ・マッキーが演じました。強い意志が感じられる眼差しで、‟アドリエンヌの思い”を表現しています。

エッフェルとアドリエンヌ。お似合いな2人なのに、彼らに何があったのでしょう。

ストーリーは、塔の建築に挑むエッフェルを中心に、はるか昔のアドリエンヌとの恋に落ちた思い出を挟んで展開します。

一心不乱に塔の建築に励むエッフェル。その姿から塔に隠された真実の愛を見届けてください。

まとめ


(C)2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films

パリのシンボル、エッフェル塔の建造。史上最も壮大な設計に挑んだ男の物語『エッフェル塔~創造者の愛~』をご紹介しました。

本作の監督であるブルブロンは、完成した塔よりも建設途中の段階の映像の方が観客を惹きつけるだろうと、VFXを使って建設途中のエッフェル塔を実物大で再現しました。

また、完成した塔にエッフェルが語り掛けるラストシーン。永遠の愛ともとれる意味深なシーンとなっています。

パリのシンボルに隠された愛の物語を、どうぞじっくりと味わってください。

『エッフェル塔~創造者の愛~』は、2023年3月3日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。

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