映画『非常宣言』は2023年1月6日(金)より丸の内ピカデリー、新宿バルト9他にて全国公開!
映画『ザ・キング』(2017)のハン・ジェリムが制作・脚本・監督を務めた映画『非常宣言』は、飛行機内で発生したバイオテロの恐怖を描くパニック・スリラーです。
ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュンという超豪華俳優が集結!
楽しい空の旅が一転、恐怖のフライトへと陥った乗客の運命は? そして地上から、人々の無事を祈り、懸命に奔走する人々に手立てはあるのでしょうか!?
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映画『非常宣言』の作品情報
【日本公開】
2023年(韓国映画)
【原題】
비상선언(英題:EMERGENCY DECLARATION)
【制作・監督・脚本】
ハン・ジェリム
【キャスト】
ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン
【作品概要】
ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワンなど、錚々たるキャストで送る航空バイオテロパニックムービー。
制作・脚本も務めたのは『ザ・キング』(2017)のハン・ジェリム監督。第74回カンヌ国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門の正式出品作品です。
映画『非常宣言』のあらすじ
娘とハワイへ向かうため搭乗手続きを終えたジェイ・ヒョクは、見知らぬ若い男に絡まれ不快な思いをしますが、同じ便に男が乗り込んでいるのを認め、妙な胸騒ぎを覚えます。
その少し前、刑事のク・イノは、職場から呼び出しを受けていました。妻との海外旅行を予定していたイノでしたがキャンセルをせざるをえず、妻だけが空港に向かうことになりました。
イノが署に到着すると、飛行機のテロ予告の動画がネットに上がっており、そこに映っている男を知っているという連絡があったと聞かされます。
通報者は小学生だったので、警察はいたずらではないかと疑っていましたが、イノが指摘のあった男の家を尋ねると、部屋に死体があるのを発見。何らかのウィルスに感染し亡くなったようでした。
部屋の持ち主で容疑者の男は外資系の製薬会社の元研究員で、この部屋でなんらかの研究をしていたらしく、大量のビデオテープが積まれていました。
再生してみると、何か粉をかけられたマウスが次々に死んでいく様子が映し出されていました。
やがて、ウィルスの効き目が早くなるよう実験を繰り返していたことが判明。飛行機内でバイオテロを図るつもりだとイノは直ちに空港に連絡しますが、容疑者の男はK1501便に乗り込み、すでに空の上にいることが判明します。
KI501便がホノルル行きだと聞き、イノは愕然とします。妻も同じ飛行機に乗っていたからです。
若い男は機内に持ち込んだ粉をトイレに巻き、その直後にトイレを利用した男性が、苦しみだし、血を吐いて死亡。ヒョクが若い男を捕まえ、彼は拘束されますが、彼もまた感染しており、間もなく死亡します。KI501便は恐怖とパニックの渦に包まれていました。
テロの知らせを受けた運輸大臣のスッキはすぐ様対策本部を立ち上げ、緊急着陸のために国内外に交渉を開始しますが、どの国も緊急着陸を許可しようとしません。
飛行を続けるタイムリミットが迫り、墜落の危機も加わる中、機内の人々を助ける手立てはあるのでしょうか!?
映画『非常宣言』感想と評価
豪華俳優と配役の妙
オールスター映画と呼ぶのがふさわしいほどの豪華俳優が、適材適所ともいうべき役柄を得て、物語に生命を吹き込んでいます。
冒頭から、普通ではないおかしな行動を取り続ける若い男にイム・シワンが扮し、いつもと変わらぬ空港の朝の風景に、不穏な空気を漂わせます。
子連れの旅行者で、飛行機を怖がる訳ありな男性にイ・ビョンホン、このイ・ビョンホンと過去になんらかの接点があったらしい副操縦士にキム・ナムギル、チーフ乗務員にハン・ジェリム監督の『ザ・キング』(2017)で検察官を演じ絶賛されたベテラン女優キム・ソジンという顔ぶれ。
一方、地上では妻が該当飛行機に乗っていて気が気でない刑事をソン・ガンホが演じています。ソン・ガンホの刑事役といえば、ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』の自白強要刑事を思い出しますが、本作での彼は、政府の対応が遅れる中、ベテラン刑事らしい洞察力で、事件の背景の核心へと迫ります。
対策を統括する外務大臣に扮するのはイ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン』などのチョン・ドヨン。誰もが「責任を持つ」という言葉に躊躇する状況でその言葉を吐くのにふさわしい貫禄を見せています。
高度1万メートル上空で、パニックにさらされながら、気丈に自身の務めを続ける人々と、地上でなんとか乗客を無事生還させるため奔走する人々の姿が、緊張感あふれる中ダイナミックかつ繊細に描かれ、息つく間もありません。
まるで飛行機に同乗しているような緊張感
密室で、どこにも逃げ場がない空の上でのバイオテロという究極の犯罪に、たまたま巻き込まれてしまった人々。パニックにならないほうが嘘になるほど、最悪の状況です。
ハン・ジェリム監督は本作を約10年前から企画し、世界中で新型コロナウィルスが蔓延する前にクランクインしたということですが、偶然にもコロナ時代を予言したかのような作品になりました。
アメリカや日本が、自国民の安全を理由に、空港への着陸を認めないという状況は、現実にコロナ感染者が出た豪華客船の受け入れを拒否する国が出たことを思い出させます。
感染以外にも、航空パニックものらしい様々な問題が浮上し、飛行機が操縦困難となって360度回転する場面など迫力あるシーンが展開します。また、地上での交通事故シーンなども、車の中にカメラを置いたままワンカットで撮っていて驚かされます。
乗客は、恐怖のどん底から、助かるという望みをつなぎホッとしますが、それも束の間、また奈落へと突き落とされるという、恐怖の心的ジェットコースターを味合わされます。
観ている私たちも、彼ら乗客と共にKI501便に乗っているかのような気分に陥り、非常な緊張感の中に身を置くことになります。
まとめ
本作は航空パニックをエンターティンメントとして描いた作品ですが、こうした事態が起こった際の、人間というものの弱さと強さをクローズアップすると共に、「犠牲」と「責任」という究極の命題にも踏み込んでいます。
スーパーマンのような人が誰もいない中、彼ら、彼女たちは、どのようにこの事態に臨んだのか、是非、映画館で目撃していただきたい作品です。
韓国映画『非常宣言』は2023年1月6日(金)より丸の内ピカデリー、新宿バルト9他にて全国公開されます!
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