連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第88回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第88回は、ビル・クーパー監督が演出を務めた映画『ギャンブラー・ゲーム』です。
かつてポーカーの天才として名を馳せていた天才ギャンブラーは、3年の刑期を終えて出所後、街を支配するクイーンから刑務所で手下に保護させた代償として高額借金の返済を要求されてしまいます。
「できなければ一緒に暮らす兄と姪に危害を加える」と言われて窮地に追い込まれたギャンブラーは、街を出て2人から離れることを条件に、ポーカー大会でクイーンに勝負を挑むという物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
2020年製作のアメリカのギャンブル・ドラマ映画『ギャンブラー・ゲーム』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら
映画『ギャンブラー・ゲーム』の作品情報
【公開】
2020年(アメリカ映画)
【脚本】
ジョシュア・ウンガレッティ
【監督】
ビル・クーパー
【キャスト】
ジョシュア・ウンガレッティ、メーガン・マック、エイヴァ・ジャスティン、マイク・ブレドン、ギルバード・フローン・アスンシオン、ブレント・マイランド
【作品概要】
ビル・クーパーが監督を務めたアメリカのギャンブル・ドラマ作品。莫大な借金返済を迫られたポーカーの天才的ギャンブラーが、ポーカーの技術と詐欺の極意を武器に大勝負に挑む様を描いています。
本作の脚本を務めるジョシュア・ウンガレッティが主演を務めています。
映画『ギャンブラー・ゲーム』のあらすじとネタバレ
給油所での車の窃盗に失敗し、歩いているところを逮捕され3年間服役していた天才ギャンブラーのダニエル・ビショップ(愛称ダニー)は、出所後、家業の配管工を継いだ兄のアーサー・ビショップと姪のリサとの生活をスタートさせました。
そんなダニーは街を支配する「クイーン」ことアレックスから、囚人に太ももを刺された彼を手下に護らせた代償として、高額借金の返済を迫られます。
さらにアレックスから、「72時間以内に借金の約100万ドルを全額返済できなければ、あなたの可愛い姪のリサを捕まえて酸の入った容器に沈めてやる」と脅されました。
ですがアーサーから、二度と賭け事には手を出すなと言い渡されたばかりです。窮地に追い込まれたダニーは、昔カジノの給仕をしていた自分にポーカーを教えてくれた師匠のマーチャントに協力を求めました。
マーチャントはダニーに、自らが教えた5つの規律を暗唱させたうえで、「お前には並外れた才能がある、俺にとって最高の弟子だ。ポーカーでまたひと稼ぎして借金を返済しろ」と言いました。
マーチャントがダニーに教えた5つの規律とは、「1つ目、初心を忘れるな。2つ目、賭け事ではなく騙し合い」「3つ目、詐欺の極意は相手を錯覚させること。4つ目、不運などない、失敗は自分が招いた結果」「5つ目、自分の意志を貫け、人から指図されるな」というものです。
そしてマーチャントは、この街を出てアーサーとリサから離れることを条件に、ポーカー大会でアレックスと勝負するための資金を彼に援助しました。
ですがそれでも全額返済するには足りず、ダニーは昔不動産詐欺を手伝った高利貸のジャズボスに資金援助を求めました。
ダニーが出所し、ポーカー大会でアレックスと勝負するという噂を既に耳にしていたジャズボスは、利子は高くつけるものの、大好きなジャズで一曲自分とダンスを踊るという条件付きで彼にお金を貸しました。
ダニーが最近賭博場に出入りしているという噂を耳にしたアーサーは、家で1人酒を飲んでいたダニーにそのことを問い詰めます。
ダニーは素直に、「刑務所にいるときに護衛してもらった奴らから高額の借金をしていて、それを返済しなければ俺も兄貴もリサも殺される」と白状しました。
それを聞いて、賭け事で家族を潰す気かと怒るアーサー。ダニーは「昔から家族の厄介者だった俺だが、一度でいいから今回だけは俺のことを信じてくれ」と頼みました。
ですがアーサーは娘がいたため、トラブルメーカーのダニーを信じることは出来ませんでした。
するとダニーは、「リサは本当に兄貴の娘か?」と言い出します。元々、リサの母親であるアーサーの亡き妻は、結婚する前はダニーの彼女だったからです。
2人の喧嘩する声で目が覚めたリサは1階に降り、慌てて彼らの間に入って、「1人の問題は全員の問題よ、ビショップ家の皆で乗り越えるの」と仲裁します。
翌日。ダニーは何としてでもアレックスに勝つべく、昔一緒にポーカーをしていた友人の実業家フランクに協力を求めました。
ダニーと賭博場であった時、散々な目に遭わされたフランクは当然断りました。ですが、アレックスの売春宿で未成年の少女を買っていることをダニーに知られ、それを妻と警察に言わないことを条件に、彼に協力することにしました。
一方、ダニーの噂を耳にしたアレックスは、マーチャントとジャズボスの元を訪れ、なぜ彼を手助けするのか問い詰めました。
2人は口を揃えて、「ダニーは並外れたポーカーの才能があり、最強のプレイヤーだからだ」と答えました。
ですがジャズボスはポーカー大会に参加しません。家を出ていった同性の元恋人ヘンリーを捜すからです。
それを聞いたアレックスは、これまでの屈辱を晴らすべく、今度こそダニーを徹底的に叩き潰すと心に誓いました。
映画『ギャンブラー・ゲーム』の感想と評価
かつてポーカーの天才として名を馳せていた天才ギャンブラーのダニー。彼は敵も、時と場合によっては味方である家族でさえも騙す、生まれながらのペテン師です。
だからダニーに負けて苦い思いをしたアレックスやジャズボス、フランクら他のギャンブラーから、ダニーは恨みを買っています。その中でもアレックスは、ダニーの才能に対する嫉妬心が強く、ダニーを殺したいほど憎んでいました。
それはダニー自身も人を騙して儲けている自覚があるため、当然のことでしょう。
ですが飄々としたダニーのキャラクターに、兄のアーサーと姪のリサを想う家族想いなところ、決して根っからの悪人ではない人柄の良さも相まって、どこか憎めない男です。
なのでダニーの師匠であるマーチャントも、ダニーに恨みがあるはずのジャズボスもフランクも、窮地に追い込まれた彼を手助けをしてくれるのでしょう。
そんなダニーが、カメラ目線で如何にして対戦相手を騙し、ポーカー対決で勝つかをレクチャーしながら、イチかバチかの大勝負に出る姿は、ポーカーを知らない人でも魅了される不思議な魅力があります。
まとめ
かつてポーカーの天才として名を馳せていた天才ギャンブラーが、愛する家族と自分の命が懸かったイチかバチかの大勝負に挑むという、アメリカのギャンブル・ドラマ作品でした。
本作の主人公である天才ギャンブラーのダニーの飄々としたキャラクターは、脚本以外に主演を務めるほど物語と登場人物に愛着があるジョシュア・ウンガレッティだからこそ出せたものではないでしょうか。
また、作中では登場人物の名前が紹介された描写があります。他の映画よりも登場人物の名前と顔を分かりやすくなっており、より一層登場人物たちに感情移入することができて面白いです。
そして何といっても、物語の終盤で描かれるダニーを取り巻く個性的な仲間を巻き込んだ、ダニーとアレックスのポーカー対決は、ポーカーを知らない人でもどちらが勝つか固唾をのんで見守るほど目が離せません。
天才ギャンブラーが愛する家族を守るため、再び賭博場に返り咲く爽快ギャンブル映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。
【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら