FILMINK-vol.26「Ruben Fleischer Nuts Up For Zombieland: Double Tap」
オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映画情報をお届けいたします。
「FILMINK」から連載26弾としてピックアップしたのは、日本では2019年11月22日に公開の映画『ゾンビランド:ダブルタップ』。
2009年公開の前作『ゾンビランド』から引き続き監督を務めたルーベン・フライシャーへのインタビューをお楽しみください。
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CONTENTS
前作『ゾンビランド』を振り返って
2009年に公開されたホラーコメディ『ゾンビランド』でデビューを飾ってから10年後。
監督のルーベン・フライシャーが続編『ゾンビランド:ダブルタップ』と共に帰ってきました。
前作に引き続きタラハシー役のウッディ・ハレルソン、コロンバス役のジェシー・アイゼンバーグ、ウィチタ役のエマ・ストーン、リトルロック役のアビゲイル・ブレスリンと豪華キャストに加えて『レゴバットマン:ザ・ムービー』のロザリオ・ドーソンや『ダーティ・グランパ』のゾーイ・ドゥイッチ、ルーク・ウィルソンやトーマス・ミドルディッチと新メンバーも加わった本作。
ゾンビがさらに進化した10年後の世界を描き、ホワイトハウスやグレイスランドにも一行は訪れます。
フライシャー監督は、まず『ゾンビランド』について振り返りました。
──前作への思いと、続編を作ろうと決心するまでのことをお聞かせ下さい。
ルーベン・フライシャー(以下フライシャー):2009年は私にとって最初の映画を作った年でした。『ゾンビランド』とこちらの世界の両方で10年が経過してしまいました。
オリジナル版のすぐ後に続編を作ろうと考えていたのですがなかなか実現できずにいて、5年前、『L.A. ギャング ストーリー 』を作った後に『ゾンビランド』は最高だったなと改めて感じたんです。本当に楽しい経験でしたし、沢山の人々がこの作品を好きになってくれました。
ですからオリジナルキャストと共に別の冒険に乗り出したいと考えて、本作のアイディアを練り始めたんです。オリジナル版の脚本を担当したポール・ワーニックとレット・リースは『デッドプール』の仕事で忙しかったのですがエグゼクティブプロデューサーを務めてくれ、ストーリーを考えるのを助けてくれました。
そうしてアイディアを仕上げて、これなら映画を撮れると確信できるまで4年かかりました。キャスト陣は続編の計画に大変興奮してくれましたが、同時にオリジナル版と同じくらい良い作品となることを望んでいました。ウッディ(・ハレルソン)は彼の作品の中で最もよく聞かれる映画は『ゾンビランド』だって言うんです。
続編として別の作品を作るなら本当に良いものを作る、ということを明確にさせたかったんです。良い映画を作るための条件は良い出発点があること。スクリプトがうまく仕上がっていれば全体の仕事が楽になります。私たちは伝える価値のあるストーリーを作るべく、スクリプト作成に奮闘しました。
続編を10年間作らなかった理由は
画像:撮影中のルーベン・フライシャー監督
──以前に続編を作らなかった決定的な理由はあるのでしょうか?
フライシャー:いろいろタイミングが悪かったんです。休憩したいと思う時もありましたし…。「あ、『ゾンビランド』の人ね!」という感じにもなりたくなかったんです。
他の作品にもトライしたかったんですが、次の2つの作品『ピザボーイ 史上最凶のご注文 』『L.A. ギャング ストーリー 』は『ゾンビランド』ほどうまくいきませんでした。その時に「何か良いものを自分は持っていたはずだ」と気付いたんです。しかし私は『ゾンビランド』続編を最初に考えた時、少し変わった方法で作風を変えようとしていて、それは失敗のアイディアでした。
この映画は第一にコメディです。ゾンビは悪いヤツらで、それをどう描くべきか。当初はそのことに気づかず、方向を見失っていました。最初のアイディアのまま制作を進めなくて良かったですよ。
加えてこの10年間で起こったことが興味深いです。アビゲイル・ブレスリンは前作の時12歳でしたが今は大人の女性、それは彼女にとってストーリーの大きなポイントになります。彼女のキャラクターは家族と一緒にいるだけではなく、自分と同じ年頃の男の子や友人に会いに行きたがっています。
──本人役のビル・マーレイも生まれ変わって戻ってくるんでしょうか?
フライシャー:そうあって欲しいですよね!ビルへの敬意なくして続編を撮ることはできませんでしたよ。
売れっ子キャスト再集合
──大きな成功を収めた前作と比較して、続編を作るにあたっての大きな挑戦は何でしたか?
フライシャー:自ら好んで始めた企画を正確に進めることが挑戦でした。オリジナル版と同じくらい良いものにしなけなればならないというプレッシャーを感じつつ、作品を高めようと努力しました。少なくとも最初のものと同じくらいにはよくできた作品にしようと試み続けました。
ほとんどの続編作品はうまくいきませんから、前作を汚さないようにハードルを高く設定することは本当に挑戦でしたし。おそらく、私たちは成功したと思います!
──キャスト達に集合をかけるのは大変でしたか?
フライシャー:自信のあるスクリプトを作成した時には、皆が再び『ゾンビランド』の世界に戻りたがっていました。皆が続編を作りたいと思っていて、それがモチベーションに繋がりました。
多忙な彼らは本作を優先してくれて、そのことが再びこのメンバーで映画を作る純粋なエネルギーになったんです。私たち全員が誇りに思えるような作品を作りたい、というモチベーションにもね。
トム・ハーディやダン・エイクロイドがカメオ出演!?
──ホラー、コメディ、アクションのバランスはどのように決めましたか?
フライシャー:これはトリッキーですが、嬉しいことに、前作でどのようなものかテンプレートが設定されていたのでそれに従いました。それに私を含め脚本家、キャストもオリジナルのメンバーだったので、どのようなものにすべきか分かっていました。
最初のトーンを定義し直すのは少し大変でしたが、すぐに確信へと変わりました。私にとって、まず『ゾンビランド』はコメディ作品で、笑いとキャラクターに焦点を合わせたものなのです。ゾンビとアクション、ホラーはケーキの上のアイシングなんです。
映画の核はキャラクター達と彼らの人間関係。素晴らしい俳優が集まるとキャラクター達が驚くほどリアルになり相性が良くなるので、一緒に仕事をするのはとても楽しいです。
──『ヴェノム』でトム・ハーディと仕事をした後、彼も『ゾンビランド』にキャスティングすることを考えましたか?
フライシャー:いいえ、これは自己完結型の作品ですから、他の映画でご一緒した俳優の方々は別の宇宙にいるような感覚なんです。
──豪華なカメオ出演を期待し、ダン・エイクロイドが出演するとの噂がありましたが本当ですか?
フライシャー:それはインターネット上の噂です。なぜそうなったのかは分からないのですが(笑)。
でも悪戯心でウディ・ハレルソン演じるタラハシーとジェシー・アイゼンバーグのキャラクター、コロンバスのドッペルゲンガーを演じるルーク・ウィルソンとトーマス・ミドルディッチを予告編に登場させています!彼らが登場するシーンは私のお気に入りの一つです。あとはビル・マーレイのシーンも。
予想外の方向に進み本当に面白いので、予告でお見せできるのが嬉しいです。
ゾンビが担う役割
──この10年間の間に、ゾンビは何らかの形で進化したのですか?
フライシャー:ええ、エスキモーが雪をある言葉で分類するのと同じように、私たちはゾンビに種類を与えました。
例えばホメロスと呼ばれるバカバカしいものだったり、ホーキングと呼ばれる賢いものだったり、ニンジャという小賢しいものがいたり、様々なゾンビが登場します。キャラクター達は今までに見たこともないような驚異的なT-800と呼ばれるゾンビに遭遇するんです。
アビゲイル・ブレスリン演じるリトルロックと新しいキャラクター、バークレーはバークレーは、バビロンというミレニアル世代のヒッピーが住んでいるコミューンに向かいます。当然のことながらリトルロックは同年代の人々が住んでいる場所に行きたいと思っているんですが、そこは銃を持たない平和主義のコミューンでもあるんです。
ですからコミューンのメンバーは壁で囲ってのんびりハッパなんか焚いてのんびり暮らしているんですが、そこにT-800の大群が向かっているんです。タラハシー達我らのヒーローは、若いコミューンのメンバーを救おうと奮闘します。
──『ゾンビランド』は典型的なゾンビ映画ではありませんが、なぜゾンビものは人気があるんでしょうか?
フライシャー:はっきりとは分かりませんが、黙示録的な楽しみがあるからではないかと思います。私たちは多くのことを恐れながら生きていますから、世界の終わりを想像するのはさほど難しいことではありません。
ですから、まだ楽しむ余裕のある“世界の終わりの前”の物語が受け入れられるのではないでしょうか。
よく『ドーン・オブ・ザ・デッド』や他のゾンビ映画のゾンビたちは核の拡散のメタファーだとか、人々の一般的な不安の象徴だと議論されます。確かに私もゾンビは不安感情のアバターだと考えています。しかし私の映画では、ゾンビは幸福に対する実存的な脅威のようなものです。
──本作でトランプ大統領への言及はありますか?
フライシャー:いいえ、なぜなら前作はトランプが大統領になった2016年よりも前に製作、公開されました。私は未来を反映したり、予想するような要素が好きではないんです。コメディ映画でこの要素を入れるのは容易です。「彼が大統領になるなんて嫌だ!」ってね。ですから意図的に避けました。
観客が望むものを再び作り出す
──映画は制作の途中でどのくらい変化しましたか?
フライシャー:初稿とは全く異なり、別の映画となりました。元のアイディアの核となったのはリトルロックがいなくなって、タラハシー達が彼女を連れ戻すということでした。ロザリオ・ドーソン演じるネバダとリトルロックのキャラクターは最初から設定されていました。
それでも異なるプロットを備えた案が山ほどあります。オリジナル版の脚本家が戻ってくるまで、『ゾンビランド』を制作している気分になかなかなれませんでした。
──再会したキャスト達の相互作用はどのようなものでしたか?
フライシャー:素晴らしい質問です!夢が叶ったような気持ちでした。
エマはオスカーを獲得、ジェシーはノミネートされ、ウッディもこの10年で2回ノミネートをされていて、アビゲイルも躍進を続け、脚本家達は『デッドプール』『デッドプール2』に携わり、私も幾つかの仕事をしていて。それはまるで家族が再会したようで、一緒にいるだけで楽しかったです。
エマとジェシーにとっては『ゾンビランド』が最初の大きな商業映画への出演だったんです。私にとってそれは本当に重要なことでした。
ジェシー、エマ、ウッディそれぞれと一緒に仕事をするのは、これで3度目になります。ジェシーとウッディは『グランド・イリュージョン』で共演していて、エマとウッディはプライベートで親交があり続けていました。
一緒に戻ってきて本作を作るのは大きな喜びです。本作を作る為、いくつか犠牲を払わなければなりませんでしたが、それでも『ゾンビランド:ダブルタップ』は素晴らしい経験をもう一度したい、そして観客の皆さんが愛してくれるものを作りたいという思いから生まれた作品なんです。
FILMINK【Ruben Fleischer Nuts Up For Zombieland: Double Tap】
英文記事/Gill Pringle
翻訳/Moeka Kotaki
監修/Natsuko Yakumaru(Cinemarche)
英文記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au
*本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載された英文記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を契約し、再構成したものです。本記事の無断使用や転写は一切禁止です。
映画『ゾンビランド:ダブルタップ』の作品情報
【日本公開】
2019年11月22日(金)
【監督】
ルーベン・フライシャー
【脚本】
レット・リース、ポール・ワーニック
【キャスト】
ウディ・ハレルソン、ジェシー・アイゼンバーグ、エマ・ストーン、アビゲイル・ブレスリン、ゾーイ・ドゥイッチ、ビル・マーレイ
映画『ゾンビランド:ダブルタップ』のあらすじ
2009年、地球は爆発的なウィルス感染により人類はゾンビと化し、数少ない生き残りの1人であるアメリカ・テキサス州の生存者、コロンバス(ジェシー・アイゼンバーグ)。
彼は「生き残るための32のルール」を作り、タラハシー(ウディ・ハレルソン)、ウィチタ(エマ・ストーン)、リトルロック(アビゲイル・ブレスリン)ら仲間と共に、お互いを支え合ったり、裏切ってみたり、恋したり、親の気持ちになったりしながら、明るくゾンビ社会を生き抜いていました。
…あれから10年。
2019年の地球はさらに激しくゾンビ化し、ヤツらはさらに進化を遂げていたんです。
なんだかんだで“ファミリー”の4人は、さらにパワーアップさせた73!?のルールで、生き残りをかけますが…。