FILMINK-vol.17「Jason Isaacs: Why Hotel Mumbai Matters」
オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映画情報をお届けいたします。
「FILMINK」から連載17弾としてピックアップしたのは、日本では2019年9月27日に公開予定の映画『ホテル・ムンバイ』出演のジェイソン・アイザックス。
『パトリオット』(2000)で悪役の英軍大佐を演じて注目を集め、「ハリー・ポッター」シリーズのドラコ・マルフォイの父親役としても広く知られるジェイソン・アイザックスが、『ホテル・ムンバイ』への出演を決めた理由や、本作に感じた思いを語ったインタビュー記事をご紹介します。
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オーストラリアに住んでいた時期も
脚本にすぐさま魅入られたというイギリスの人気俳優は、『ホテル・ムンバイ』のアデレードでの撮影のため3度ほどオーストラリアへ飛びました。
「私は一年ゴールド・コーストに住んでいました。それから西オーストラリアのパースにも一年間」
そう語るのはジェイソン・アイザックス。彼のオーストラリアでの最初の撮影は2003年、ゴールド・コーストで行われたP・J・ホーガン監督による『ピーター・パン』でした。
2回目は2016年、クリフ・ステンダース監督による『Red Dog: True Blue (原題)』です。
「私は太陽と海が大好きなんです。ゴールド・コーストに滞在している時毎日海を眺めていました。私たちが住んでいるのは大部分が水で覆われている神秘的な惑星と実感させ、気持ちがリラックスして、私の悩みなどちっぽけなものだと思わされたものです」
出演への決め手は脚本
しかしアンソニー・マラス監督の『ホテル・ムンバイ』への出演の決め手は彼のオーストラリアへの愛情から、ではありません。
アイザックスが演じるのはワシリーというキャラクターです。
しかし、彼は当時仕事を探していたわけでは無かったそう。
「夏でしたし、私は父親です。ほら、子ども達が家を出るまで一緒に過ごす夏休みはわずかしかありませんから、私は家族で過ごす夏休みを計画していたんです。ここ数年私は撮影ばかりで、「パパは行方不明なのか?」と言われるほど家を空けていました。ペルーのマチュピチュでゆっくり休暇を取るつもりでした。そこに『ホテル・ムンバイ』の脚本が到着したんです。それを読み、妻と子ども達に「すまない、映画に出演しなくちゃ」と伝えました。この映画は素晴らしいストーリーで、あまりにも重要、そしてタイムリー、今作らなければならないと感じたんです」
その説得を聞いたアイザックスの家族は、休暇の中止を許してくれたそう。
「それから2年後、完成した映画を子ども達が見てくれました。彼らはなぜ私が『ホテル・ムンバイ』への出演を決めたのか理解したようです。今まで見た中で最高の作品と言ってくれました」
本作の持つ意味と重要性
そして本作が持つ意味と重要性を以下のように語りました。
「多くのテロ事件、発砲事件が世界で発生しています。今後もさらに発生する恐れがあるでしょう。世界には私たちの間に楔を打ち立て、人種や肌の色、宗教を理由に、自分と異なる者を憎むべきであると扇動する権力と大きな声を持つ人々がいるんだと、この映画を作った時に理解しました。私たちを団結させて守ってきた組織や機関が、あらゆる側面から攻撃されています。『ホテル・ムンバイ』はグロテスクなバージョンの人間実験室と言えるでしょう。誰もが想像できるような、閉ざされた扉の向こうで送る最悪のシチュエーションです」
「しかし私たち俳優、製作陣が気に入っているのは、本作には寛大さや親切、愛情も含まれていること。ここではあらゆる宗教や異なるレベルの社会経済が描かれてはいますが、最も貧しい人々が最も裕福な人々を救うこともあります。68時間の間に幾多もの小さな自己中心的な行動も起こります。英雄はいつも銃を取るわけではありません。これはハリウッドが生んだ話ではなく、実話なのです。政治的な文脈から話すなら、彼らの台詞に含まれる憎悪や分裂は物語のみに作用するように聞こえますが、現実世界に根ざした意味と価値があります」
FILMINK【Jason Isaacs: Why Hotel Mumbai Matters】
英文記事/ Dov Kornits
翻訳/Moeka Kotaki
監修/Natsuko Yakumaru(Cinemarche)
英文記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au
*本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載された英文記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を契約し、再構成したものです。本記事の無断使用や転写は一切禁止です。
映画『ホテル・ムンバイ』の作品情報
【日本公開】
2019年9月27日(オーストラリア・アメリカ・インド合作映画)
【原題】
HOTEL MUMBAI
【監督】
アンソニー・マラス
【日本語字幕翻訳】
中沢志乃
【脚本】
アンソニー・マラス、ジョン・コリー
【キャスト】
デヴ・パテル、アーミー・ハマー、ナザニン・ボニアディ、アヌパム・カー、ジェイソン・アイザックス
【作品概要】
2008年に起きた、高級ホテルや鉄道駅、タージマハル・ホテルなどムンバイの複数の場所で起きた同時多発テロを、オーストラリア人監督のアンソニー・マラスが映画化。アンソニー・マラスは本作が長編映画デビュー。
5つ星のタージマハル・ホテルの従業員に『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)『LION/ライオン~25年目のただいま~』(2016)のデヴ・パテル、宿泊客に『ローン・レンジャー』(2013)『君の名前で僕を呼んで』(2017)『ビリーブ 未来への大逆転』(2018)のアーミー・ハマーが扮します。
「ハリー・ポッター」シリーズのドラコ・マルフォイの父親役としても広く知られ、ゴールデン・グローブ賞ノミネート経験を持つジェイソン・アイザックスも出演し、物語に説得力をもたらしました。
映画『ホテル・ムンバイ』のあらすじ
2008年11月26日。
インドの5つ星ホテルがテロリストに占拠されました。
人質は、500人の宿泊客と従業員。特殊部隊の到着は数日後。宿泊客を逃がすため、ホテルに残った従業員たち。
部屋に取り残された赤ん坊を救うため、銃弾の中を行く父と母。
これは「誇り」と「愛」を懸けた、3日間の脱出劇です。
極限の状況下で、人はこんなにも人を想えるのか…。
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