連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile172
『イカゲーム』や『Sweet Home -俺と世界の絶望-』など、目を背けたくなるような過激な描写と引き込まれる物語が絶妙なバランスで展開される韓国ドラマの世界。
2022年末、映像配信サービス「Disney+」のコンテンツブランド「スター」にて、韓国ドラマの世界からバイオレンスに満ちた作品が登場しました。
今回は日本映画界の巨匠・三池崇史が韓国ドラマ製作陣とタッグを組み製作したドラマ『コネクト シーズン1』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
ドラマ『コネクト シーズン1』の作品情報
【配信】
2022年12月7日(Disney+独占)
【原題】
커넥트
【監督】
三池崇史
【脚本】
NAKA雅MURA、ホ・ダム
【キャスト】
チョン・ヘイン、コ・ギョンピョ、キム・へジュン、キム・レハ、チョン・ドンフン、チャン・グァン
【作品概要】
シン・テソンによるウェブトゥーンを、『殺し屋1』(2001)や『悪の教典』(2012)などの作品で知られる三池崇史監督が実写ドラマ化した作品。
『スタートアップ!』(2020)に出演したチョン・ヘインが主人公のドンスを演じました。
ドラマ『コネクト シーズン1』のあらすじとネタバレ
青年ドンスは人通りの少ない道で見知らぬ男に首を絞められ、気を失ったドンスは闇医者によって眼球や臓器を取り除かれました。
ドンスは眼球や臓器を取り除かれ間違いなく死んだはずでしたが、臓器や眼球が1人でに動き出しドンスのもとへと戻り、復活したドンスは闇医者の隙を突き逃走。
ある日、街の中央に花を纏った女性の像が建てられ、その美しさに人々は夢中になりますが、それは本物の女性の死体で作られた像であることが判明します。
警察が捜査を開始すると遺体には「PL」と言う署名が刻まれており、犯人が芸術家を気取り犯行を行っていると分かり刑事たちは激怒します。
臓器や左眼は取り戻したものの右眼を取り戻すことが出来なかったドンスは、無いはずの右眼に占星術に傾倒する知らない誰かが見ている視界が自分にも見えることに悩まされていました。
ドンスはその現象が闇医者のもとに残された右眼が誰かに移植され、その人物と視界が”接続”されているために起きているのだと考えます。
警察の捜査によって樹脂でコーティングされた死体が22歳の女子学生であると分かると同時に、33歳の男性が2件目の被害者として樹脂でコーティングされた他殺体として発見。
被害者に接点はなく、祈祷師の血を継ぎ高い推理力を持つチェ刑事にもまだ事件の全容が掴めていませんでした。
ドンスは仕事の帰り道で複数の少年に絡まれていた、廃棄処分場を経営する雇い主の老人を助けますが、逆に少年たちから暴行を受けることになります。
しかし、ドンスには恐るべき再生能力があるため少年たちの攻撃を避けることもせず、ナイフによって切られた耳を見た少年たちは恐ろしくなり逃げ出しました。
逃げる少年たちの話を聞いていた臓器売買によって稼ぎを得るマフィアは、闇医者のもとから逃げたドンスが”不死の肉体”を持っていることを確信。
夜、右眼を取り戻すためにマフィアのアジトを訪れたドンスでしたが、マフィアたちはドンスに気づき大量の部下を送り込みます。
逃げるドンスはマフィアのアジトを盗聴し”不死の肉体”の肉体を持つ人種”コネクト”の存在を知るイランに出会います。
イランはドンスをナイフで切り再生能力を確かめると、追われるドンスを普通の人間では助からない高さから突き落として逃しました。
一方、ドンスの目を移植された殺人鬼ジンソプは誘拐した女性を使い新たな”作品”を仕上げ街に設置すると、何食わぬ顔で職場に出社。
その時、ドンスとジンソプの視界が”接続”され、ドンスはジンソプの見ていた景色に見覚えがあることに気づき、一方でジンソプは同僚ソニの歌う鼻歌が”接続”時に聞いた音楽(ドンスの作った曲)に類似していることに気づきます。
夜、ドンスは再び”接続”されるとジンソプの描いている絵から彼が巷で話題の「死体アート殺人」の犯人であることを確信しました。
事件について調べるドンスはジンソプが見ていた占星術のマークに「PL」似たものを見つけ、占星術師を訪ねます。
占星術師はそのマークは冥王星(♇)を指すものであり、11月29日や12月12日と言った殺人が発生した日は冥王星と金星が「コンジャンクション」する日だと言います。
占星術師は二つの星がぶつかるその日は「死と芸術のサイクル」を意味し、12月20日と12月25日、そして1月6日にコンジャンクションが発生するとドンスに教えました。
ジンソプに好意を持つソニはジンソプの家を突如訪れ、ジンソプの家の中で”美術品”の設計ノートを発見。
12月25日、4体目の遺体が見つかりソニはジンソプのノートに予め遺体と同じ構図で被害者の顔が描かれていたのを知ります。
遺体の発見現場を訪れたドンスはマフィアの一味に発見され逃亡すると、再びイランによって救われ、彼女はドンスが”コネクト”を知りながらもドンスへの協力を訴え出ます。
その頃、ソニはジンソプを会社の屋上に呼び出し、死体アート殺人事件の絵について詰問。
ソニは後輩のミョンフンを連れて会話を録音していましたが、ジンソプはそのことに気づくとミョンフンを屋上から突き落とし、ソニの首を折り殺害しました。
その間、ドンスはジンソプの視界と”接続”されており、ジンソプは”接続”されていた時間にドンスの歌が流れていたことから、歌が起因であることに勘付きます。
落下死したミョンフンが騒ぎになる中、ドンスはジンソプの務める「M&T企画」に潜入。
視界越しにジンソプの持つコートを見ていたドンスはジンソプをトイレまで尾行しますが、駆けつけた警備員に取り押さえられてしまいます。
その時の発言や手に出来た傷が治る様子からジンソプはドンスの持つ”不死の肉体”と、”接続”の相手を一方的に知ることになりました。
一方、イランによって警備員から解放されたドンスを追うチェは、ミョンフンの落下死とソニの殺人の捜査を進めるうちに、監視カメラに映ったドンスの映像から割り出せる時間的猶予から彼に2人の殺害は不可能だとも考えます。
チェは「M&T企画」内の聞き取り調査を行う内に優秀社員のジンソプが普通の人と違う怒りのトリガーを持っていることを見抜いており、彼を訝しみます。
イランの調査によると”コネクト”は「チョンド製薬」と関係があるらしく、彼女はさらにこの製薬会社を詳しく調べようとしていました。
イランはこの調査にドンスを誘いますが、ドンスは死体アート殺人を止めることを優先すると言います。
ジンソプはトリガーとなる歌を聴き、ドンスと”接続”されることを確かめると、会社で聞いたドンスの声と歌の声が同じであることを確信。
一方、イランに自分の知る”接続”のすべてを話すドンスはイランから、殺人鬼から命を狙われることを警戒し目立った行動を取らないように言われます。
数日後、ドンスは自身の歌が人気シンガーのZによってカバーされた楽曲を聴きます。
その曲を聞いたジンソプはZに連絡を取り、楽曲の元の作成者である「孤独のギターマン」ことドンスの正体を聞き出そうとしていました。
一方でイランはマフィアの盗聴を続け、ドンスの右目の移植先をウジンと言う男が監視していることや、移植された男性の余命が短いことを知りますが、マフィアに盗聴器を発見されてしまいます。
ジンソプは”接続”した状態でノートに「次は俺がお前を探す」とドンスの似顔絵付きで描くと同時に、次のターゲットが少女であると予告。
夜の街を歩くドンスは”接続”が起き、ジンスプがドンスを見る様子を見ます。
ドンスは急いで視界の先にあるジンソプの乗る車を追いかけますが、殺人犯として指名手配されるドンスは検問の警察官たちに捕まり、チェと相対することになりました。
ドラマ『コネクト シーズン1』の感想と評価
三池監督節が光るグロテスクサスペンスドラマ
『オーディション』(2000)や『殺し屋1』と言った過激な暴力表現を伴う作品を多く制作したことで、クエンティン・タランティーノやイーライ・ロスなどハリウッドで活躍する多くの映画監督に影響を与えたとされる三池崇史。
そんな三池崇史が監督を務めた本作は、開始数分で主人公のドンスが闇医者によって臓器や眼球を取り除かれるシーンが展開され、早い段階での鑑賞者の選別が始まります。
その後も暴力表現は決して緩まることはなく、まるでギャグシーンかのような気軽さでドンスは身体を切断されたり重傷を負ったりします。
しかし、その過激な暴力表現はただ悪趣味なだけではなく、殺人鬼ジンソプの作る「死体アート」は美しさすら感じるものであり、物語のテーマにもなっている「死と再生」が三池崇史ならではの方向性を保ちつつ描かれていました。
シーズン2に残されたさまざまな要素
物語はシーズン1だけではまとまることはなく、ドンスとイランが武装ヘリコプターに囲まれたシーンで最終話が終了。
物語上でも多くの伏線が回収されることなく終了するため、それらの要素はシーズン2に続いていくことが期待されます。
殺人鬼ジンソプは死亡こそしていないもののチェ刑事によって確保され、臓器売買を行っていたマフィアはイランによって殲滅され、今回のメインとなった2つの要素は一応のまとまりがつきました。
シーズン2でメインとなると考えられる要素は、イランが独自に調査を進めていた”不死の力”を持つ”コネクト”が生まれたきっかけとされる「チョンド製薬」と、キンドゥ意外にもいるとされる”コネクト”の仲間たちになると推測出来ます。
特に「チョンド製薬」はイランの調査によって臓器売買組織の黒幕とも推理されながらも登場しなかったため、続シーズンでの深堀りが楽しみな要素です。
まとめ
生きた人間を解体する暴力性に塗れた最序盤の次に映される、死体を像のように美しく飾ったアート殺人。
劇中ではこのように真逆の要素が至るところに配置されており、本作の主題が「対」であることが分かります。
激しやすく一直線に突っ走る強い正義感を持つドンスと、冷静沈着で人を傷つけることに躊躇いのないジンソプ。
真逆でありながらも同様に「化け物」と呼ばれる2人の攻防を描いた本作は、目を背けたくなるような映像ながらも物語に引き込まれる作品でもありました。