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Entry 2020/03/04
Update

映画監督林海象・深田晃司・二宮健、俳優の佐野史郎ら豪華ゲストが広島尾道イベントに集結|シネマ尾道の名もなき映画イベント3

  • Writer :
  • 桂伸也

第4回尾道映画祭中止なるも、ファンの要望に応え一部開催

新型コロナウイルス感染拡大防止のあおりをうけ、2020年2月28日~3月1日にかけて開催予定となっていた第4回尾道映画祭は中止することが決定。

しかし、イベントを楽しみにしていた映画ファンの切なる要望に応え、イベント主催となる映画館・シネマ尾道にて行われるイベントを中心として、予定されていた一部のプログラムが同日にわたり無名のイベントとして行われることとなりました。


(C)Cinemarche

今回のイベントでは2月28日、29に行われた「SHINPA vol.12 in 尾道」をはじめ、映画上映やワークショップなどさまざまな催しが行われ、会場は映画ファンでにぎわいました。

今回は先にお伝えした「SHINPA vol.12 in 尾道」前編(連載コラム1)後編(連載コラム2)に続き、29日、3月1日に行われたその他の催しの様子をリポートします。

【連載コラム】『シネマ尾道の名もなき映画イベント』一覧はこちら

『こども映画制作ワークショップ2020@尾道 お披露目上映会』

深田晃司監督(左)・NPO法人シネマ尾道代表 河本清順(右)


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この企画はNPO法人シネマ尾道と映画監督が共同で開催する小学生とプロの監督が尾道を舞台に短編映画制作にチャレンジするワークショップで、今年で5年目の開催となりました。

今回は深田晃司監督を講師に迎え、小学生は「別れ」をテーマに4グループに分かれ原案を作成。

これにより『さがしもの』『転校生のひみつ』『きょうりゅうの光るおまもり』『廃校~また会える別れ~』という4つの作品に対し小学生が自身で撮影まで行った4作品、それぞれの原案に対し深田監督のアドバイスを加え撮影されたバージョン4作品の計8作品が完成。

そしてイベントではそれぞれの題目に対し小学生バージョン、深田監督バージョンという2本を続けて見比べ、その講評を述べ合いました。

地元尾道の小学生を前に映画つくりを伝える深田晃司監督


(C)Cinemarche

今回のワークショップについて「行ったこととしては、普段のプロのスタッフ、役者さんとともに行っていることと基本は同じ」と語る深田監督。映像制作を行った小学生たちからは、最初にその難しさを不安に思いながらも映像を作り遂げたことで「映画が好きになった」とコメントする声も上がりました。

深田監督もこれらの作品に対しどちらのバージョンが優れているかということよりも、子供たちならではの演出、撮影のアイデアなどに対して自身が面白いと感じたポイントを挙げられていました。


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またシネマ尾道代表の河本清順は、特にダイナミックな構図で構成した『きょうりゅうの光るおまもり』に対して、深田監督バージョンを「超えているのでは」という感想をコメント、早朝より来場した人々より多くの観衆の関心を集めていました。

2020年2月29日上映作品の舞台挨拶

今回予定されていた映画上映に伴う舞台挨拶はほぼ予定通り行われました。また一部予定の登壇者が都合で不参加になったものもありましたが、ピンチヒッターゲストが登壇したり、サプライズ的に臨時のゲストが追加登場したりと、どの舞台挨拶も貴重なひと時となりました。

二宮健監督『チワワちゃん』(2018)

【公開】
2018年(日本映画)

【原作】
岡崎京子

【脚本・監督】
二宮健

【キャスト】
門脇麦、成田凌、寛一郎、玉城ティナ、吉田志織、村上虹郎、仲万美、古川琴音、篠原悠伸、上遠野太洸、松本妃代、松本穂香、成河、栗山千明、浅野忠信

【作品概要】
1980~90年代にかけて『ヘルタースケルター』や『リバーズ・エッジ』などの人気作品を描き続けた漫画家の岡崎京子。彼女が1994年に発表した『チワワちゃん』を自主映画『SLUM-POLIS』や、商業映画デビュー作『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』で知られた弱冠27歳の新鋭監督二宮健が実写映画化。


(C)Cinemarche

二日目の上映トップバッターは、今回尾道初開催となった『SHINPA』イベントの中心人物である二宮健監督作品の『チワワちゃん』が登場。二ノ宮監督とともに主演の吉田志織と、さらに特別ゲストとして同じく本作に出演した篠原悠伸が登壇しました。

挨拶では撮影中ずっと主人公のチワワとなって楽しんでいたという吉田を中心に撮影を回想、現時点で作品に参加したことに対する心境などを語りました。

林海象監督『夢みるように眠りたい』(1986)

【公開】
1986年(日本映画)

【製作・脚本・監督】
林海象

【キャスト】
佳村萌。佐野史郎、大竹浩二、大泉滉、あがた森魚、小篠一成、中本龍夫、中本恒夫、十貫寺梅軒、遠藤賢司、草島競子、松田春翠、吉田義夫、深水藤子

【作品概要】
1986年に映像探偵社製作で、シネセゾン配給で公開された作品。当時無名の林海象がモノクロ撮影でサイレント風の表現を用いて、昭和30年代の東京・浅草を舞台にしたミステリー作品。探偵役を映画初主演の佐野史郎が務める。


(C)Cinemarche

『夢みるように眠りたい』は『私立探偵 濱マイク』シリーズ等を手がけた林海象監督の幻のデビュー作。モノクロ、サイレントの手法を用いて撮影された、昭和30年代頃の浅草を舞台にしたファンタジック・ミステリーで、俳優の佐野史郎が初主演を果たした作品でもあります。

昨年オリジナルフィルムの修復を行うプロジェクトが行われ、今回はそのデジタル・リマスターされた完成版が上映されました。この日は林監督と佐野が登壇、すでにカラー作品が主流となっていた時代に敢えてモノクロ作品にチャレンジした経緯や、撮影の裏話を振り返りました。

この日公開されたリマスター版は、元のフィルムから音声の不要なノイズを消去、映像の修復を行った上で若干の手直しを加えたもので、林監督は「映画の正確な表現は、実はこれだったんです。フィルムではできなかったことがあったですが、(僕が)やりたかったことは実はこれなんです」と35年ほどの時を超えて、ようやく理想の作品にたどり着いたその思いを明かしていました。

大森立嗣監督『タロウのバカ』(2019)


(c)2019 映画「タロウのバカ」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)

【脚本・監督】
大森立嗣

【キャスト】
YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、奥野瑛太、植田紗々、豊田エリー、國村隼、角谷藍子、門矢勇生、荒巻全紀、ACE、葵揚、水澤紳吾、池内万作、伊達諒、中島朋人、大谷麻衣、播田美保、水上竜士、小林千里、原沢侑高、伊藤佳範、大駱駝艦

【作品概要】
大森立嗣監督が20年以上前に書いていたオリジナル脚本を、遂に映画化。3人の少年の過激な日常を描いた青春ドラマです。主人公タロウ役には、監督自らオファーした、今作が俳優デビュー作となるモデルのYOSHIが登場。OFF-WHITE、ヘルムート・ラングなどのファッション・アイコンとして注目を浴びる中、ミュージシャンとしてもデビューが決まっています。また、菅田将暉、仲野太賀など、今まさに旬で勢いに乗る若手実力派俳優の共演。

舞台挨拶のピンチヒッターを務める佐野史郎さん(中央)


(C)Cinemarche

菅田将暉、仲野大賀という旬の若手俳優に加え、大型新人との呼び声もあるYOSHIを迎え、『ぼっちゃん』などの大森立嗣監督がおよそ15年温めてきたオリジナル脚本を映画化した『タロウのバカ』。残念ながら都合により予定されていた大森監督の登壇はかないませんでしたが、ピンチヒッターとして引き続き林海象監督、佐野史郎が登壇しました。

大森監督は林監督の『私立探偵 濱マイク』シリーズに出演したこともあるなど映画人としてつながもあり、佐野とともに大森監督の意図を推し量りながら、的確な感想を述べられていました。またこの際、林監督が観客席にいた福山在住という映画作家の方をステージに招いてトークを共にするというハプニングも。さらにサプライズゲストとしてYOSHIの実母も登壇するなど、このイベントならではの特別な会となりました。

1日上映作品の舞台挨拶

真利子哲也監督『宮本から君へ』(2019)


(C)2019「宮本から君へ」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)

【原作】
新井英樹

【監督】
真利子哲也

【脚本】
真利子哲也、港岳彦

【キャスト】
池松壮亮、蒼井優、井浦新、一ノ瀬ワタル、柄本時生、星田英利、古館寛治、佐藤二朗、ピエール瀧、松山ケンイチ

【作品概要】
『ディストラクション・ベイビーズ』で国内外の映画賞を獲得した真利子哲也監督が、全話の脚本および監督を務めたテレビドラマ版を経て完成させた劇場版作品。主演はドラマからの続投であり、原作漫画とその主人公・宮本浩を敬愛してきた池松壮亮。

また柄本時生、星田英利、古館寛治、松山ケンイチもドラマ版から続投。さらにヒロイン・靖子の元恋人・裕二役の井浦新をはじめ、一ノ瀬ワタル、佐藤二朗、ピエール瀧が出演。そして強さと脆さを併せ持つヒロイン・靖子を務めたのは、池松の激しい熱量を持った苛烈な演技に対し真っ向から対峙できるほどの実力を持つ女優・蒼井優です。


(C)Cinemarche

熱血営業マンが仕事や生活の中でさまざまな悪戦苦闘を通過しながら成長する姿を描いた新井英樹の漫画を、テレビドラマに引き続き実写化された作品『宮本から君へ』。

この日は原作者の新井とアーティスト、映画評論家のヴィヴィアン佐藤がゲストとして登場、原作を執筆した時代背景からこの作品を作り上げた経緯、そしてテレビドラマから続いて映画化への経緯、撮影の様子、新井から見た真利子哲也監督やその他キャスト陣の印象など他では聞けない裏話などが明かされました。

『ワンダーウォール 劇場版』(プレミア上映)

【日本公開】
2020年(日本映画)

【監督】
前田悠希

【脚本】
渡辺あや

【音楽】
岩崎太整

【キャスト】
須藤蓮、岡山天音、三村和敬、中崎敏、若葉竜也、山村紅葉、二口大学/成海璃子

【作品概要】
2018年にNHK BSプレミアムなどで放送されたドラマで、写真集などに広がりをみせた「京都発地域ドラマ ワンダーウォール」に未公開シーンを追加した劇場版。脚本は『ジョゼと虎と魚たち』やドラマ『その街のこども』『カーネーション』の渡辺あや。演出は自主製作映画を手がけ、「京都発地域ドラマ ワンダーウォール」がNHK入局後の初演出作の前田悠希監督。

舞台挨拶する脚本家の渡辺あやと、主演俳優の須藤蓮


(C)Cinemarche

NHKの京都発地域ドラマとして放送された作品を、未公開カットと新たに収録した150人の音楽セッションシーンを含むディレクターズカット版として劇場作品となった本作。

この日は一般に初公開となりました。舞台挨拶では脚本を担当した渡辺あやと、主演を務めた俳優の須藤蓮が登壇、渡辺がこの作品を執筆した経緯から今回追加になったセッションシーンの収録の様子などを振り返りました。

初上映となったこの機会に対してこの作品が初めての演技経験だった須藤は、改めて作品を見て「自分にとっては大事な作品なので、それがこうやって今日スクリーンで流れているのを見て感慨深過ぎて…何とも言えないですね」と感無量の気持ちを表しました。

またかつてシネマ尾道がスタートをする前に「尾道に映画館をつくる会」という活動が行われており、その際にこの場で映画『天然コケッコー』が上映された際、脚本を担当した渡辺は尾道を訪れ登壇。そんな縁の深さを感じながら、渡辺は改めて尾道の街を歩き感じた思いとして「古いものを大事にしていこうという精神的なところは、自分がこの作品を書いた動機につながることを改めて思いました」と語りました。

『ひびきあうせかい RESONANCE』(プレミア上映)


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伝説的テレビ音楽番組『三宅裕司のいかすバンド天国』で一躍有名となったバンドLITTLE CREATURESのギタリスト、ボーカリスト青柳拓次の音の旅と音楽プロジェクト・サークルボイス(人々が一つの場所に集い、輪になって、声を重ね合わせる参加型のイベント)を通して、観る者の五感が開かれていく世界を描いた『ひびきあうせかい RESONANCE』。この日は作品を手がけた尾道在住の田中トシノリ監督と、ヴィヴィアン佐藤による舞台挨拶が行われました。

イギリスへ留学し映像制作を学んだ田中監督は東日本大震災を機に、この危機に対して自分には何かできないかと考え2011年11月に帰国、広島県尾道市に移住し長編ドキュメンタリー映画『スーパーローカルヒーロー』を製作しました。これに続く本作はサークルボイスを通して分断された世界を音楽の力で再びつなげたいという思いがあることなど、舞台挨拶ではさまざまな思いが明かされました

映画人が尾道の町並みを散策


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今回は当初、尾道市とシネマ尾道のコラボ企画『街歩き企画「映画の街・尾道の歴史と文化を歩く」』が予定されておりましたが、尾道映画祭の中止に伴い残念ながら開催はかないませんでした。

しかしイベントの合間に、イベントに参加した監督、俳優や関係者はNPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表の豊田雅子さんのナビゲートにより尾道の魅力的な坂の街並みを散策。三軒家アパートメントや尾道ガウディハウスといったプロジェクトが手がけた代表的な建物を訪れ、興味深くその建物や周辺の風景を見てまわりました。

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まとめ


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イベントでは他にも予定の舞台挨拶がキャンセルとなったオダギリジョー監督作品映画『ある船頭の話』が上映されました。さらに広島県立尾道東高等学校放送部の作品上映『私の町が消える…?』と他1作品も上映。この作品は第66回NHK杯全国高校放送コンテスト創作テレビドラマ部門制作奨励賞を受賞しています。

尾道映画祭の中止は非常に残念な結果でありましたが、シネマ尾道ではイベント開催において新型コロナウイルス感染症拡大防止に向け細心の注意を払っており、会場のあちこちに感染防止のためのさまざまな注意が表示されており、観衆も注意しつつもリラックスしてイベントを楽しんでいました。

「SHINPA Vol.12」のリポートでもお伝えしましたが、KCP実施に対する尾道の方々の友好的な様子など、非常に協力的な雰囲気がイベントをアットホームで楽しいものにしていたようでもあります。そういった様子は、今回登壇がかなわなかった上映舞台挨拶に積極的なピンチヒッターの登壇があったことからなどからもうかがえるところであり、こういった流れが来年度、そして以降の尾道映画祭開催につながることを願うばかりであります。

【連載コラム】『シネマ尾道の名もなき映画イベント』一覧はこちら

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