連載コラム「Amazonプライムおすすめ映画館」第4回
ケイ・キャノンが脚本・監督を務めた、2021年製作のイギリス・アメリカ合作のミュージカル・ファンタジー映画『シンデレラ』。
大きな夢を抱く野心家のヒロインが、魔法使いファビュラス・ゴッドマザーの魔法の力を借りて、自分の夢を実現させようと奮闘する姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
誰もが知る有名なおとぎ話『シンデレラ』を、世界的大ヒットポップソングで彩る現代風のミュージカル映画として描いた『シンデレラ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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CONTENTS
映画『シンデレラ』の作品情報
【日本配信】
2021年配信(イギリス・アメリカ合作映画)
【原作】
シャルル・ペローの童話『シンデレラ』
【脚本・監督】
ケイ・キャノン
【キャスト】
カミラ・カベロ、イディナ・メンゼル、ミニー・ドライバー、ニコラス・ガリツィン、ビリー・ポーター、ピアース・ブロスナン、マディー・ベイリオ、シャーロット・スペンサー、タルーラ・グレイベ、ジェームズ・コーデン、ジェームズ・エイキャスター、ロメシュ・ランガナタン、ベン・ベイリー・スミス
【作品概要】
「ヒッチ・パーフェクト」シリーズのケイ・キャノンが、脚本・監督を務めたイギリス・アメリカ合作のミュージカル・ファンタジー作品。
原作は、フランスの詩人シャルル・ペローの童話『シンデレラ』です。
アメリカのガールズグループ「フィフス・ハーモニー」の元メンバーで、脱退後はソロアーティストとして躍進し、グラミー賞にノミネートされたシンガーソングライターのカミラ・カベロが主演を務めています。
共演は、人気ドラマシリーズ「glee」や「アナと雪の女王」シリーズのイディナ・メンゼルと、『ハートビート』(2016)のニコラス・ガリツィンら豪華キャスト陣です。
映画『シンデレラ』のあらすじとネタバレ
昔々、古い伝統としきたりに囚われたある王国がありました。疑問も持たずに、定められた人生を受け入れて暮らす王国の住民たち、誰も気づいていませんでしたが、この国は変わりつつあるのです。
それまで王国の民は、何世代も前からずっと、毎日生活のために同じ仕事をして過ごす働き者でした。
街外れにあるみすぼらしい一軒の家から、物語は始まります。家の主の名はヴィヴィアン、2人目の夫に先立たれ、独身のままで現実主義者に変わってしまいました。
ヴィヴィアンには3人の娘がいました。捻くれ者のマルヴォリアとナルシストのナリッサ、そして薄汚い地下室で暮らす継娘のエラ、彼女は義姉たちから「シンデレラ」と呼ばれていました。
いつも埃まみれで体中が汚れていたシンデレラは、夢を見ていました。不幸で惨めな今とは違う、何もかも望み通りの人生を送る夢を。
シンデレラが夢にそう望むのは無理はありません。だってシンデレラの現実は、いつも継母であるヴィヴィアンに小言を言われながら、料理や洗濯、家の掃除といったヴィヴィアンたちの世話をさせられているのですから。
「この世はお金がものを言う、男の価値は金でしかない」という現実主義者のヴィヴィアンは、何不自由のない生活を送るために、3人の娘たちに早く金持ちの男を捕まえて結婚するよう言います。
そう言われたシンデレラは、誰かと結婚して幸せになるという平穏な人生を送ることなんて望んじゃいません。
そりゃあ真実の愛を求めているけれど、それよりもシンデレラは、「ドレスを作る仕立屋として成功したい」という長年の夢を叶える方が大事なのです。
仕立屋となって成功すれば、きっと皆が自分の存在を認めてくれる、そうシンデレラは信じていました。
シンデレラは、いつか出店する自分の店「エラのドレス」開業のため、今日も地下室でドレスづくりに励みます。
その頃、街の市場では、城のお触れ役タウン・クライヤーが陽気な楽器隊を従えて、あくせく働く王国の民たちにある知らせを伝えました。
「近々行われる衛兵の交代の式典は今までとは違い、ローワン国王とベアトリス女王、ロバート王子、グウェン王女ら国王一家が勢揃いすることになった」
衛兵交代式当日、シンデレラは王国の民が城に集まるこの日は、自分が作ったドレスを売り込み、夢の実現への第一歩を踏み出すチャンス。と思っていましたが、ヴィヴィアンに怒られ、出鼻をくじかれてしまいます。
一方宮殿では、ローワン国王が自身の息子ロバート王子が、名家の王女との縁談を断り続けることに頭を抱えていました。
というのも、ロバート王子がまともに王族としての務めを果たさず、親友のウィルバー伯爵と、友人グリフとヘンチと一緒に遊び惚けているからです。
ローワン国王は結婚さえすれば、ロバート王子は馬鹿げた振る舞いはしなくなり、民たちに笑い者にされるのではなく、王位を継ぐ覚悟が出来たと認めるだろうと思い縁談を勧めていました。
それでも難色を示し反抗するロバート王子に、ローワン国王は言いました。「お前が立派な国王となるために、花嫁探しの舞踏会を開いた。しかるべき身分の女性を一堂に集めた舞踏会に、必ず出席しろ。これは命令だ」
憂鬱な気分で臨んだ衛兵交代式、そこでロバート王子が宮殿のバルコニーから見たのは、背が低くて人だかりの後ろから見えないからと、ローワン国王の肖像によじ登って観覧するシンデレラの姿でした。
ローワン国王に注意されても臆さず、堂々として振舞いを見せて去っていくシンデレラに、ロバート王子は一目で恋に落ちました。
それからというもの、ロバート王子は嫌がっていた舞踏会への出席を決め、その代わり条件を付けました。「舞踏会には身分を問わず、国中の若い女性も招待してほしい」
ロバート王子は直接シンデレラを舞踏会へ招待するため、変装して街へ繰り出します。同時刻、シンデレラもヴィヴィアンたちの目を盗んで街へ繰り出し、自作のドレスを王国の女性たちに売ろうと奮闘しました。
しかし、現実はそう甘くありません。市場で出店しているのはどれも男性の店ばかり、女性が商いをしている姿はないどころか、自作のドレスを主人から盗んだものと勘違いされ、罵倒されてしまいます。
そんなシンデレラの姿を見ていたロバート王子は、彼女に声を掛け、彼女の亡き実母の形見であるブローチをつけたドレスを、高値で買い取ろうと言います。
2人がドレスについて話していたその時、街にタウン・クライヤーが現れ、新たなお触れを民たちに伝えました。
「今から2週間後に、王国中の未婚の女性を招いた舞踏会が城で開かれる。ロバート王子が花嫁を探すためだ」「どん底な人生も、一夜にしてバラ色の人生に変わっちゃうチャンスだ」
ロバート王子は当然、シンデレラが舞踏会へ来ると思っていました。ロバート王子が勇気を出して尋ねてみると、シンデレラは「ヘンテコで古いしきたりみたいだから、舞踏会に行かないし興味ない」とまさかの参加拒否。
さらにシンデレラからは、「ロバート王子って噂どおり、“問題を起こすだけの役立たずでマザコン”なんだわ。王室を支えているのはキレ者のグウェン王女」と言われてしまうのです。
けれどロバート王子は、是が非でもシンデレラを舞踏会へ来させたいため、諦めません。
「古いしきたりが多いこの国だけど、舞踏会には世界中から、偏見にとらわれない新しい考え方を持つ大金持ちが集まってくる。よかったら僕の知り合いを紹介するよ」
「会ったばかりなのに、なぜそんなに親切にしてくれるの?」「定められた人生から抜け出したいっていう君の気持ち、僕にも分かるから」
シンデレラは自分と同じ価値観を持つロバート王子の説得に応じ、舞踏会に行くことにしました。
映画『シンデレラ』の感想と評価
自分が望む人生を掴んだシンデレラたち
住む世界が違うシンデレラとロバート王子ですが、「窮屈で苦しい生活から抜け出して、何のしがらみにとらわれることなく、自由に自分の人生を選んで生きていきたい」という気持ちと願いは一緒です。
運命的な出会いをし恋に落ちたシンデレラたちが踊る、舞踏会でのダンスはとてもロマンチックで、思わず招待客たちと一緒に見惚れてしまいます。
同じ悩みを抱え苦悩し、もがき続けた末に自分の幸せを掴んだシンデレラたち。一度は結婚しないのかとヒヤヒヤさせられましたが、無事ハッピーエンドになって嬉しいです。
ヴィヴィアンの不器用な継娘への愛情
おとぎ話の『シンデレラ』とは違い、本作ではシンデレラの義姉である、捻くれ者のマルヴォリアとナルシストのナリッサはシンデレラをいじめたりしません。
シンデレラに意地悪を言っていじめるのは、彼女の継母であるヴィヴィアンだけです。悉くシンデレラの邪魔をするヴィヴィアンの姿が目立つ一方で、物語の後半では彼女の印象がガラリと変わります。
ヴィヴィアンがシンデレラをいじめていた本当の理由は、昔自分が夢を追いかけたせいで、愛する人との幸せを失った経験から、血が繋がっていないとはいえ、娘のシンデレラにそんな苦労をさせたくない一心からでした。
つまりヴィヴィアンは、心の底ではシンデレラを娘として愛していたのです。ヴィヴィアンの不器用な愛情が分かった途端、彼女を見る目が変わり、彼女というキャラクターが愛おしく感じることでしょう。
シンデレラのおかげで変わった国王夫婦
シンデレラのおかげで変われたのは、ロバート王子やヴィヴィアンだけではありません。
シンデレラとロバート王子の恋をきっかけに、これまでローワン国王に意見することが許されなかったベアトリス女王が、初めて自分の気持ちを夫に伝えるのです。
笑顔でバルコニーから手を振るベアトリス女王の姿からは想像もつかない、王室に入ってからの苦悩、新婚当初から変わってしまった夫への不満が語られています。
妻の本心を知ったローワン国王もまた、古い伝統やしきたりに囚われ、王室の名誉を守ることに固執していた自分を変えていきました。
シンデレラたちに負けないぐらい、仲睦まじい国王夫婦の姿に、思わずほっこりとした気持ちになります。
まとめ
真実の愛を探し求めるだけでなく、自分の長年の夢の実現のために奮闘するシンデレラの姿を描いた、イギリス・アメリカ合作のミュージカル・ファンタジー作品でした。
本作の見どころは、シンデレラとロバート王子の運命的な出会いと真実の愛、2人を取り巻く人間模様です。
ミュージカル映画である本作は、おとぎ話『シンデレラ』にはない、シンデレラたち登場人物のそれぞれの気持ちを表す歌が披露されています。
物語の最初から最後まで、登場人物の心情にあった歌と踊りが描かれている場面。時に心躍って楽しく、時に感情移入して泣けるほど素晴らしいものばかりです。
国王になるという夢を叶えたグウェン王女、仕立屋になるという夢を叶え、真実の愛も一緒に手に入れたシンデレラ。2人の女性の夢が叶い、皆がハッピーになった結末に感動します。
現代風のミュージカルで彩られた、おとぎ話とはまた違う新しいシンデレラストーリーを描いた、ミュージカル・ファンタジー映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。