連載コラム「Amazonプライムおすすめ映画館」第2回
Amazonプライム・ビデオから最新作として配信されたオリジナル映画・ドラマの中から“大人向け・女性向け・映画ツウ向け”な作品を厳選。
Cinemarcheのシネマダイバー・鈴木めいがご紹介する連載コラム「Amazonプライムおすすめ映画館」第2回はニューヨークに住むちょっと太めでアラサーのブリタニーが健康問題をきっかけにランニングをはじめ、ニューヨーク・シティ・マラソンの完走を目指すようになることで、自分の自信を取り戻してく姿を描いた映画『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』です。
28歳のブリタニーは、『セックス・アンド・ザ・シティ』で描かれるニューヨーカー同様、ルームメイトと薬やお酒、ニューヨークのナイトライフを楽しむ一人のお茶目な女の子。ただ少し、体重過多なだけ。
医者に太りすぎによる病気リスクを指摘されたことで、自身の健康状態および体型に目を向け始めます。ダイエットを始めようにもジムに通うお金がないブリタニーは、お金がかからずに始められるランニングをスタートさせます。
主役のブリタニーは、『ブライズメイズ市場最悪のウェディングプラン』『ゲームオーバー!』などに出演する米国の女優でコメディエンヌのジリアン・ベルが好演。マラソンに挑戦しようとすることで成長する彼女の内情を体型の変化とともに、とても繊細に演じています。
米国ドラマの『グレイズ・アナトミー』などに出演するミカエラ・ワトキンスもブリタニーのマラソン仲間として共演しています。
本作はポール・ダウンズ・コレイゾ監督の初監督作品。実際に監督のルームメイトであったブリタニー・オニールに起きた出来事を基に作られた内容となっており、彼女に捧げる作品としています。また、本作は2019年のサンダンス映画祭で観客賞(ドラマ部門)を受賞しています。
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映画『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』の作品情報
【配信】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Brittany Runs a Marathon
【脚本・監督】
ポール・ダウンズ・コレイゾ
【キャスト】
ジリアン・ベル、ミカエラ・ワトキンス、ウトカルシュ・アンブドゥカル、リル・レル・ハウリー
【作品概要】
米国の女優でありコメディエンヌのジリアン・ベルが主演し、米国ドラマ『グレイズ・アナトミー』などに出演のミカエラ・ワトキンスが共演する、ニューヨークを舞台にマラソン完走を目標に葛藤するアラサー女子の成長物語。
ランニングをきっかけにコンプレックスを抱え卑屈な性格だった主役の女の子が、自信を取り戻し生まれ変わる様子には勇気をもらえます。主役のブリタニーの成長過程、そして内情の変化を細やかに描きつつも、笑える要素も散りばめた米国のコメディ映画です。
ポール・ダウンズ・コレイゾ監督による初監督作品であり、彼の友人のエピソードを基に作られた事実に基づく作品。
映画『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』のあらすじとネタバレ
28歳のブリタニー・フォーグラーは明るくひょうきんなニューヨーカーの女の子。ルームメイトとお酒や薬、クラブでのナイトライフを楽しみ、仕事にはついつい遅刻してしまいます。
ある日、集中力を高める薬が欲しいと病院を訪ねますが、医者に現状のままだとその体型により高血圧、脂肪肝などの病気を併発するリスクを診断されてしまいます。ブリタニーは太りすぎの体重過多だったのです。
少なくとも20キロ以上のダイエットを命じられたブリタニーは、一念発起してジムに通おうと決心するも高くて月会費が払えません。
そこで、お金のかからないランニングを始めることにしました。はじめは人にぶつからずに走るのも困難なブリタニー。ある日ワンブロック走り切れたことで達成感を覚えます。
アパートの階下に住んでいるキャサリンも、ブリタニーに力を差し伸べ本人が参加しているランニングの同好会に誘います。
そして、その同好会でブリタニーは息子の為にマラソンを完走したいと思うセスに出会い、ともにラン仲間として叱咤激励しあいます。
そしてそれぞれに自分を変えたいとどこかで願う3人は、皆で目標をニューヨーク・シティ・マラソンへの参加とその完走と決めるのでした。
ニューヨーク・シティ・マラソンの参加には抽選でも費用が掛かります。そこで、ブリタニーはアルバイトとして、留守宅で住み込みのペットシッターを始めます。
その家には無断で転がり込んでいたジャーンという青年が暮らしていました。はからずもジャーンとの共同生活を始めることになったブリタニー。
はじめは働かないジャーンにいらついていましたが、次第に彼のフラットな考え方と姿勢に友人としての居心地の良さを感じ、色々なことを素直に話したり相談したりと共有し始めます。
友達からのお酒の誘いも断るなど、マラソン参加に向けて減量していくなかで、スリムになり綺麗になっていくブリタニー。昔の同僚など周囲からの見る目も変わってきます。
それに自信を得たブリタニーはジャーンの力を借りながらも出会い系アプリに登録し、デートを楽しみます。
一方で、両親が離婚しており、義兄に面倒を見て育てられたブリタニーは健全な関係が築けません。デートや男女関係の構築、そして結婚に意味がないと話すブリタニーにジャーンは彼が考える結婚の良さを話し、必ずそれぞれに合う人はいると諭します。
ブリタニーはなんでも話し合えるジャーンに心のみならず体も許せると気づき、ジャーンと一線を越えます。しかし、両親の離婚から男女の関係に夢を抱けないブリタニーは、親密になってもなおジャーンとの関係は体だけの関係だと言い張ります。
そしてニューヨーク・シティ・マラソン。ブリタニーは、参加資格の抽選に外れてしまいます。抽選を外れてもなお参加する場合には、寄付金を募らなくてはなりません。また減量もうまくいかなくなっていました。
ある日、キャサリンの離婚パーティに出席すると、ラン仲間から寄付金の小切手を手渡されました。
ブリタニーがニューヨーク・シティ・マラソンを走れるようにと仲間が用意したやさしさでしたが、様々なストレスを抱えるブリタニーはそのやさしさを哀れみに感じてしまい、仲間の手助けを拒絶してしまいます。
映画『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』の感想と評価
本作で描かれる主役のブリタニーは、どこか「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズのブリジットを彷彿とさせます。
一生懸命でどこか憎めない、そんな英国のブリジットと米国のブリタニーは共通して、自分の体型が少し太めで人生がうまくいっていないことによる負け惜しみ感が漂います。
本作でブリタニーは、きっかけは健康問題だとしても、ランニングを始めたことでニューヨーク・シティ・マラソンの完走を目標に置き人生を一変させようと努力をし始めます。アルバイトに精を出し、食事に気をつけ、体重コントロールに躍起になります。
自分の体型をコントロールできずに太っていた時には、世界を斜めに見て卑屈になっていたブリタニー。
マラソン参加を目指して痩せていく過程で自信を得て、まっすぐに世の中を見られるようになったと思えるのもつかの間、根本的に人が変わるのは難しいということがブリタニーを見ていてわかります。
抱えるコンプレックスに基づく卑屈さから、まっすぐに人と対等に向き合えて来なかった彼女は、人の好意や優しさを素直に受け入れられないのです。
それでも、遂に参加できたニューヨーク・シティ・マラソンの完走直前で挫折しそうになる時、ブリタニーは自分が無下にしてしまった仲間の力強い声援を耳にし、一人で成し遂げられるものではないこと、人の思いやりに助けられて達成できることがあることを思い知ります。
そうしてやっと、誰かを判断したり見下したり、自分を卑下したりすることなく、自分にとって大切な存在を大事にすることができ、本当の意味での生活、そして人生を向上させることができたのです。
英国のブリジットも米国のブリタニーも、一生懸命に頑張り人に優しくあることで自分を知り、みんなに愛され、そしてありのままで良いことを私たちに教えてくれます。
本作はポール・ダウンズ・コレイゾ監督の初監督作品であり、映画は彼のルームメイトであったブリタニー・オニールに起きた出来事を基に作られた内容となっています。
実際に、エンド・クレジットには、ブリタニー・オニール本人がニューヨーク・シティ・マラソンを完走した時の写真が登場します。
映画でブリタニーを演じるジリアン・ベルとは似ても似つかないブリタニー本人ですが、彼女がマラソンを完走する際の笑顔は実際に「本当に頑張った結果」の勲章として輝いていました。
本作でのニューヨーク・シティ・マラソンは、ダイバーシティの象徴として描かれています。参加する5万人のランナーの経歴や人種、宗教は多種多様なマラソンであり、特別な意味を持っています。
登場人物それぞれの境遇やさまざまなシーンにおいて、人種やLGBTQなどダイバーシティが取り上げられており、その観点からニューヨークの側面を理解できる作品となっています。
まとめ
マラソン完走という目標にまい進する生活とは別途、ブリタニーは留守宅で犬の面倒を見るバイトに勤しみ、そこに無断で居座り込んでいる青年ジャーンとの共同生活を始めます。
無断居候として働かないジャーンに腹立たしく思うブリタニーも、ジャーンのフラットで軽快な考え方の姿勢に、ありのままの自分でいることに自信を抱き始めます。そして彼と一線を越え親密になるものの、真剣な関係であることを認めることができません。
ブリタニーが体型的にも性格的にもひねくれてしまったのには、両親の離婚が根本的な原因として描かれています。
男女の関係に希望を持てなくなったブリタニー。マラソンを完走して、自分の弱さをさらけ出し、そして人を受け入れる強さを持てた時、男女の関係に抱いていた不安も彼女は凌駕します。
人って自信を持てると本当に強くなれ、生活も健やかに向上するのですね。
それにしても、マラソン完走に向けて体を絞っていくブリタニー役のジリアン・ベルですが、どんどんキャメロン・ディアスに見えてきます。
そして映画冒頭で見る彼女とは違い、キラキラに輝きだします。自分に自信を持つ、本当の自信を持てるって、それだけでメイクや洋服に頼ることのない最大の魅力を引き出すものなのだということが伝わってくる作品です。
これから誰かに出会いたいと思っている人は、ジャーンがブリタニーに出会い系アプリのプロフィールの書き方を指南する内容は思いのほか役に立つ情報かもしれません!是非、見逃さずにお楽しみください。
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