連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第93回
今回ご紹介するのは、Netflixで2022年3月18日(金)から配信されたスウェーデン映画『ブラック・クラブ』です。
主演は『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』(2009)で知られるノオミ・ラパス。
生き別れた娘に会うために兵士となって、200キロ以上の氷上をスケートで進む「ブラック・クラブ作戦」に命がけで挑む姿を描いています。
その感想と見どころについて解説していきます。
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映画『ブラック・クラブ』の作品情報
【配信】
2022年(スウェーデン映画)
【監督】
アダム・バリ
【キャスト】
ノオミ・ラパス、ヤーコブ・オフテブロ、エリク・エンゲ、ダール・サリム、アルダラン・エスマイリ、アリエット・オパイム、ダーヴィッド・デンシック
【作品概要】
主演は世界的ベストセラー小説の映画化『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』(2009)と続編2作品でリスベット役を演じて、一躍有名になったノオミ・ラパス。最近では、『マヤの秘密』(2022)などで出演兼製作総指揮を務めています。
監督のアダム・バリは、レベッカ・ホールやポール・シュナイダー、ジョナサン・プライス出演のテレビドラマ「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP 」を手掛けた人物。
映画『ブラック・クラブ』のあらすじとネタバレ
渋滞で、車内で娘のヴァニヤと話す2人。157人の負傷者がでているとラジオでは報道されています。キャロリン・エド(ノオミ・ラパス)は軍人から指令が出ていると聞かされて炊き出しに向かいます。
中尉に書類を提出するよう言われ、車で基地に向かう途中に残された場所で民間人から襲い掛かられます。銃で応戦してどうにか逃げ、基地へとやって来ました。
グランビクは、なぜ集められたかエドに聞きます。そこへ、カリミ伍長がやってきて挨拶します。
ラード大佐に挨拶しに行きます。数百キロの領地を失い、今にもその基地も陥落させられるだろうという状況です。
この窮地を脱するために、氷の上を200キロ近く敵の目をかいくぐりながらスケートで進み、カプセルを運ぶ「ブラック・クラブ作戦」実行のために集められました。
危険すぎる任務に納得できないエドを大佐は説得します。国境近くの難民キャンプにエドの娘はいて、任務が終われば会えると言われて、任務を引き受けることにしました。
電気が無く、娘の頭を洗ってやったときのことを思い出します。外の爆撃の音に怯えます。
夢から目覚めた現在、敵からの基地への攻撃が始まり急いで出発したブラック・クラブの一同。エドのほかに、マリック、カリミ、グランビク、ニールンド中尉、大尉の6人で向かいます。
2つのカプセルを敵の手から守る任務を任されて、大佐を含めて6人でスケートで氷の上を滑り始めます。
氷が割れて大尉が落下してしまいます。エドが急いで水中に潜り、大尉の背中からカプセルをとって氷上に戻ります。
その場にいると敵にバレてしまうので少し離れた場所にある民家に入り、暖炉でエドの体を温めます。
大尉に変わる指揮官をニールンド中尉が務めるようにマリックは言いますが、彼を信用していないエドは反対します。口論するエドとニールンドをマリックがなだめます。
エドは、眠っている間に娘と一緒に街を避難中の夢を見ていました。
音がして目を覚まします。外を見ると敵がヘリコプターでやって来ます。無線で話していたカリミに何をしていたか問い詰めます。彼女に連絡していたのだと言います。
カリミを殺すかどうか話し合い、武器なしで連れて行くことに決めました。大勢の死体が氷漬けになっている場所を見つけ、エドは唖然とします。
座って休憩していると、敵のヘリコプターが頭上に現れ、襲撃を受けます。全員どうにか逃げ切りました。
危険を回避するために一旦陸路に戻り、民家に入った一同。そこには老夫婦がいました。家を敵に焼かれ、難民キャンプに行くには遠すぎてそこにいるのだと話します。
一同は和気あいあいと会話します。しかし、エドがテーブルの下に銃が隠されているのを見つけます。
その次の瞬間、老夫婦の夫が銃を撃ち一同も応戦しました。老夫婦とカリミは死んでしまい、マリックも銃弾を受けケガを負いました。
カリミの無線にF28 にいる恋人から通信が入ります。カリミは今手が離せないと中尉が答えて通信を切りました。
船を見つけ、中に入った一同。ケガをしたマリックを連れて先を急ぐことはできないので、安全な場所に食料を残して後で助けを呼ぶことにします。
映画『ブラック・クラブ』の感想と評価
本作は、内戦の中200キロ以上の氷上を、鍵を握るあるカプセル容器を運ぶという極秘任務「ブラック・クラブ作戦」に挑む兵士たちの姿を描いた作品です。
主人公のエドは、避難中に敵軍に襲われ娘と生き別れてしまいます。娘と再会することだけを望みに任務に挑むエドですが、隠れようもない氷上で突然敵に襲われたり、共に任務に就いた兵士らと意見が衝突したりする等、度々困難に見舞われます。
本作の最大の見どころはエドを演じたノオミ・ラパスの鬼気迫る演技、また存在感だといえます。
冷静かつ無慈悲に任務に取り組む兵士の顔から、娘の無事を願う愛情あふれる母の顔まで見事に魅せています。
危険な任務をこなす兵士の役ということで、銃撃戦のシーンや肉弾戦のシーンが多く登場しますが、『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』(2009)や『セブン・シスターズ』(2016)などで、その確かなアクション能力を証明してきた彼女だからこそ成せる、切れのある身のこなしを披露していました。
戦闘による負傷と寒さによる凍傷など身体的にボロボロになっていく中で、エドは眠るたびに娘の夢を見ていました。
夢の中では、娘の髪の毛を洗ってあげたり、物資を探して見つけたスナック菓子を一緒に食べる様子からは、避難中でも一緒にいることで幸せを感じられていたように描かれています。
そして、そんな夢から目を覚ますと優しい母の顔が一変、兵士の顔に変わります。そこからは、極限状態の中、厳しい任務に就く彼女の決死の覚悟が伝わってきます。
カプセル容器の中身が本作の鍵を握っていますが、そのことを巡って彼女は大きな決断を迫られることとなります。
母として、娘への何にも代えがたい愛情が行動の原動力となっていたエドが、最終的にどういった決断を下すのかが、ポイントになっています。
また、本作の大きな特徴と言えるのが、題名にもなっている「ブラック・クラブ作戦」、氷上の移動です。
今にも割れそうな氷の上、一体いつどこから敵の攻撃を受けるか分からない緊張感の中、進み続けなければならないという状況をスリル満点に描いています。
目的地まで進む途中にエドは、多くの死体を目にします。氷漬けになって死んでいる数えきれないほどの市民や、銃を抱えたま凍死している兵士を見て、愕然とする場面がありました。
氷が死体の腐敗を遅らせるからこそ、悲劇がその場にいつまでも留まり、戦争によって命も時も、全てを奪われたという逃れられない現実を印象づけているのです。
まとめ
本作はスウェーデンが舞台のフィクション作品ではありますが、戦争がいかに無慈悲に残酷に、大切なものを奪ってしまうものなのかという内容を色濃く描いています。
今この瞬間にも、故郷や大切な人を失って行き場をなくしている人々が多くいます。彼らの苦しみを思うと決して本作の内容を、単なる映画の中のことだと楽観的に観ることはできませんでした。
本作はNetflixで2022年3月18日(金)より配信されてすぐに、日本国内の映画視聴ランキング1位となりました。
映画を通じて戦争を知るために、本作をNetflixで見る人が増えているのでしょうか。それとも人気女優ノオミ・ラパス出演作品ということで注目を集めているのでしょうか。
いずれにせよ、本作を観て戦争を他人ごとではないと思えるきっかけになることを願ってやみません。