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Entry 2023/07/31
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映画『地球星人(エイリアン)は空想する』あらすじ感想と評価考察。どんでん返しだらけの物語が描く“地球人の視点”|2023SKIPシティ映画祭【国際Dシネマ】厳選特集4

  • Writer :
  • 桂伸也

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023国際コンペティション部門 松本佳樹監督作品『地球星人(エイリアン)は空想する』

2004年に埼玉県川口市で誕生した「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」は、映画産業の変革の中で新たに生み出されたビジネスチャンスを掴んでいく若い才能の発掘と育成を目指した映画祭です。

第20回目を迎えた2023年度はコロナ禍収束傾向の状況もあってか例年通りの賑わいを取り戻し、オンライン配信も並行して行われる中、7月26日(水)に無事その幕を閉じました。

今回ご紹介するのは、国内コンペティション部門にノミネートされ、本映画祭で「SKIPシティアワード」「優秀作品賞」を受賞した 松本佳樹監督作品『地球星人(エイリアン)は空想する』です。

【連載コラム】『2023SKIPシティ映画祭【国際Dシネマ】厳選特集』記事一覧はこちら

映画『地球星人(エイリアン)は空想する』の作品情報


(C)世田谷センスマンズ

【公開】
2023年(日本映画)

【英題】
Alien’s Daydream

【監督】
松本佳樹

【出演】
田中祐吉、山田なつき、アライジン、中村更紗、村松和輝、星能豊、ひろえるか、小夏いっこ、町田英太朗、西村優太郎、大城規彦、西よしお、藤澤克己

【作品概要】
メディアの役割に疑問を呈し、苦悩しながらも自身の正義を追求する一本気の記者が、UFOにまつわる一つの事件を追う中で不可解な事実と遭遇し、やがて驚愕の結末に向かう様を描きます。

作品を手がけたのは松本佳樹監督。長編デビューとなった本作では、並行して脚本、編集、美術、撮影にもその才能を発揮しました。主人公の雑誌記者・宇藤を演じたのは、石川県を拠点とする劇団アンゲルスの舞台に数多く出演する田中祐吉。

また物語のキーとなる少女・乃愛役を演じる山田なつきは、これまでの出演歴は不明ではあるものの、ミステリアスな世界観の大きな原動力として印象的な佇まいを見せます。また作中で象徴的に映される絵には、松本監督と共同でクレジットされており、個性的なセンスをうかがわせています。

松本佳樹監督プロフィール

子どもの頃から平成ライダーに影響を受け、高校の文化祭でヒーローショー&映像制作をしたことがきっかけで映画の道に進むことを決意する。

神戸芸術工科大学映像表現学科映画コースにて石井岳龍監督から映画を学び、卒業後は就職して働きながら映画を撮影し続ける。

2022年に奈良から上京し、仲間と共に映像制作団体「世田谷センスマンズ」を発足し、編集を中心にさまざまな作品を手掛けている。

映画『地球星人(エイリアン)は空想する』のあらすじ


(C)世田谷センスマンズ

ゴシップ雑誌の編集部に務めながらも、一途な性格で嘘やどうでもいい事件の誇張を憎み、メディアの在り方を常に自分に問い続ける記者・宇藤。

ある日編集長から呼び出された彼は、「UFOのまち」石川県羽咋市の取材を依頼されます。

気の乗らない宇藤でしたが、取材を重ねていくうちに。この町で起きた「大学生エイリアンアブダクション事件」の重要な手掛かりと遭遇、その真相を追うべく取材を始めた宇藤は、事件の裏にある不可解な経緯の沼に嵌っていくのでした……。

映画『地球星人(エイリアン)は空想する』の感想と評価


(C)世田谷センスマンズ

タイトルからしてSF的な雰囲気を醸しながら、見る側が受ける印象を大きく揺るがす衝撃的な作品です。

物語は冒頭よりまさしく「地球人」的視点よりスタートし、主人公を中心に数々の不可解な事件に対する真相が追われていきます。

しかし物語が進展していくに従い、不可解な点は増すばかり。

取材先の人々の言葉、事件の当事者、メディアの編集長、そして本作の主人公・宇藤。さまざまな立場にある人たちの視点で、真実究明は混沌を極め、真相はさらに遠のいていきます。

たとえば宇藤は尊敬できない編集長の依頼で赴いた取材では、当初通り一遍の取材にうんざりしながら、真相に近づくたびにどこか瑞々しい雰囲気を漂わせていきます。

そして最後に暴いた真相を自分の意思で公開するわけですが、自分ではジャーナリストとしてすべきことをしたつもりが、あらゆる方面から非難を受ける結果に。

単なる「地球人」的視点で彼の姿を見れば、メディアに携わる一人の人間の行動、そして失速劇という一人の人間の経過にしか見えないでしょう。

ところが彼の意思とは反対に、真相を暴くことを拒む当事者、メディア側の意向をこれと並べてみると、ある意味ユニークな「地球星人」の習性を俯瞰で見ているような感覚に陥ります。

ラストシーンにおいて、記者としての仕事をやり切った宇藤がそこで見たものは、まさしく彼自身の信念を裏返される衝撃的な事実。

一記者が疑った一事件が紆余曲折し最後には予想だにしなかった結末へと導かれる様は、まさに秀逸なストーリー作りの妙を感じさせるところであります。

まとめ


(C)世田谷センスマンズ

作品は低感度画質の映像ですが、非常に強いインパクトを見せています。

敢えて荒い画像にすることでドキュメンタリー的なカラーを作り出し、隠された闇の真実が見えそうで見えない、どこか緊張した雰囲気を作り出しています。

また宇藤が羽咋市の取材に赴いた際に登場した先方の担当者、その脇にいたエイリアンの位置関係が絶妙で、ユーモラスにも見える一方で作品にミステリアスな雰囲気を強く漂わせています。

題材的には一人のジャーナリストによる真相究明劇なので、どうしても社会派ドラマ的な堅い空気に陥りがちなテーマでありますが、メッセージ性を含みながらも豊かな遊び心を存分に発揮し、見て楽しい作品に仕上げています。

その意味では、松本佳樹監督のクレバーな映像センスを推し量ることのできる作品といえるでしょう。

【連載コラム】『2023SKIPシティ映画祭【国際Dシネマ】厳選特集』記事一覧はこちら


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