上級特別捜査官と逃亡中の武器商人のアクション炸裂
マット・エスカンダリが監督を務めた、2022年製作のアメリカのR15+指定のアクションスリラー映画『ワイヤー・ルーム』。
シークレットサービスを追われ、監視室で働くことになった特別捜査官のジャスティン・ローザ。上級特別捜査官のシェーン・ミュラーに命じられ、逃亡中の武器商人エディーを監視することになりました。
シェーンは警察内部の腐敗を止めるため、エディーが持つ汚職捜査官のリストを入手しようとします。そんな中、突如謎の武装集団がエディーを襲撃。ジャスティンは彼を死なせないために遠隔で指示を出しますが………。
映画『ワイヤー・ルーム』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『ワイヤー・ルーム』の作品情報
【公開】
2023年(アメリカ映画)
【脚本】
ブランドン・スティーファー
【監督】
マット・エスカンダリ
【キャスト】
ケヴィン・ディロン、ブルース・ウィリス、オリヴァー・トレヴェナ、テキサス・バトル、キャメロン・ダグラス、シェルビー・コッブ
【作品概要】
『THE LAW 刑事の掟』(2020)のマット・エスカンダリが監督を務めた、アメリカのアクションスリラー作品。
ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2023」上映作品です。本作はR15+指定作品のため、15歳未満の方は鑑賞できません。
『ポセイドン』(2006)や『ホット・シート』(2022)のケヴィン・ディロンと、「ダイ・ハード」シリーズのブルース・ウィリスが主演を務めています。
映画『ワイヤー・ルーム』のあらすじとネタバレ
「監視室(ワイヤー・ルーム)」、それは有線・口頭での会話、電子通信を傍受する目的で、裁判所が設置を許可した場所のことです。
盗聴や監視を通して、捜査対象者の電話での会話や通信内容を合法に傍受することができます。
アメリカ・ワシントン州シアトル、メドーブルック・コーポレート・パークにあるオフィスビル「メドーブルック500」。アメリカ合衆国大統領の警護を行う政府機関「シークレット・サービス」を追われ、国土安全保障省の監視室に転属となった特別捜査官ジャスティン・ローザは、国土安全保障省の上級特別捜査官シェーン・ミュラーに命じられ、逃亡中の武器商人エディー・フリンの監視をすることに。
あと3カ月で定年を迎えるシェーンが有終の美を飾るはずだった、麻薬組織「バハ・カルテル」絡みの難事件「銃の密輸事件」の捜査のためです。
シェーンは転属初日に遅刻してきたジャスティンに、監視対象者と銃の密輸事件を捜査していることだけ伝えて、監視室から立ち去りました。
そんな無愛想なシェーンに代わり、国土安全保障省の分析官ノア・ホルボロがエディーのことと、事件の詳細を教えました。
エディーは、ロシア製の武器を南米の反乱分子に流したアイルランドの武器商人なのですが、ギャングの抗争に巻き込まれてアメリカへ逃亡。
現在はドラッグ絡みの伝手を使って、バハ・カルテルに武器を密輸しています。
シェーンたちはエディーの密輸品を追跡していたのですが、情報を流してくれていたバハ・カルテルの内通者が数カ月前から音信不通となってしまったため、当初順調だった事件の捜査が行き詰ってしまいました。
今ではニックネーム以外詳細不明のエディーの右腕的存在「ジュニア」と、エディーの暗号でのやり取りしか得られる情報はありません。
そのためシェーンは、今はもう定年退職までの残りの時間を無難に過ごしたがっていると、ノアはいいました。
ノアはジャスティンに監視室のマニュアル本を渡し、エディーの家ともう1ヶ所の建物の室内と屋外を監視するモニターの捜査方法について説明した後、監視室から出て行きました。
ジャスティンは早速そのマニュアル本の内容に目を通し、エディーの監視を行いました。
その本に記載された監視室のルールは、「ルールその1、扉を閉める」「ルールその2、部屋を無人にしない」、「ルールその3、部外者は部屋に入れない」「ルールその4、設備を傷つけない」。
「ルールその5、対象者と接触しない」、「ルールその6、対象者を死なせない」、「ルールその7、ヘマをしない」、「ルールその8、緊急時や質問の際はシェーンにのみ連絡する」と合計8つありました。
するとその時、ちょうどエディーがどこかに電話をかけ、「ベビーシッターの代わりに中国系の女性を手配しろ」と指示を出します。
ですがそれ以外は、エディーが愛人か妻の女性たちと口論したり、4人が家で過ごしていたりする映像しかなく、ジャスティンは何かが起きるまではただ黙って見ているしかないこの仕事に飽き飽きしてきました。
そんな時に偶然、メドーブルック500の警備員マイク・アクスムが監視室に入ってきます。
ジャスティンはマイクと雑談がてら監視室でしている仕事のことを話し、トイレ休憩のために彼と一緒に監視室を出ました。
その直後、謎の武装集団がエディーの家を襲撃。2人の女性を殺害し、エディーの愛人か妻の女性シンディーを人質に取り、エディーを殺そうとします。
ジャスティンは監視室に戻り、証拠として残すために自動的に録音されるエディーの通話内容を聞いて、捜査対象者の身に危険が迫っていることを知りました。
ジャスティンはルールに従い、シェーンに電話をかけて「相手は誰か分からないが、エディーが“ベビーシッターの代わりに中国系の女性を手配しろ”」、「ジュニアにも電話をかけて、“人を集めてこい”と伝言を残した」と報告。最初の通話内容はドラッグやアジトの隠語であると知りました。
しかし肝心の武装集団の襲撃のことを伝える前に、ルールを理解していない自分に呆れたシェーンに電話を切られてしまったのです。
そこへちょうど、メドーブルック500や監視室への入館証「PIVカード」がないかと、ノアが電話をかけてきます。
ジャスティンはノアに事情を説明し、助けを求めました。映像を確認したノアは、武装集団は捜査機関のものではないと言い、「今から向かうから、もう一度シェーンに電話をかけてみて」と指示を出します。
その際、ジャスティンは「対象者を死なせない」というルールの理由は何かと尋ね、エディーがバハ・カルテルに通じている汚職捜査官のリストを持っていて、シェーンが捜査官の汚職を暴くためにリストを入手しようとしていることを知りました。
ジャスティンはシェーンの携帯電話に伝言を残し、2人が来るのを待つことに。ですが今にも殺されそうなエディーの姿を見て居ても立っても居られず、再びルールを破ってエディーに遠隔で指示を出します。
さらになかなか来ない2人にしびれを切らし、保安官事務所へ連絡。勤務中の責任者ピーター・ロバーツ保安官代理に事情を説明し、現場に出動してくれないかと頼みます。
その直後、エディーから折り返しの電話がかかってきました。謎の着信相手が国土安全保障省の捜査官だと知ったエディーはニヤリと笑い、「経歴に傷をつけたくなければすぐにでも話をしよう」と脅迫します。
映画『ワイヤー・ルーム』の感想と評価
職を追われるほどのヘマをしでかして、国土安全保障省の監視室に転属となった元シークレット・サービスのジャスティン・ローザ特別捜査官。
見た目はキリリとしていて仕事ができる真面目な男なのですが、一度パニックに陥るととんでもないミスを連発していくそのギャップが面白いです。
転属初日からヘマをしてばっかりのジャスティンですが、最後まで「監視対象者を死なせない」というルールを守ろうと、必死にエディーに遠隔で指示を出します。
その彼の熱意と正義感が伝わったのか、エディーは見知らぬ彼を次第に信頼するようになり、もしこの後逃亡した場合のことを話した時にした約束を守ってほしいと最後彼に頼んでいました。
エディーがジャスティンの指示に従って、単身ロバーツの手下をバンバンと倒していく様は鮮やかで格好良いですし、2人の掛け合いは時にハラハラし、時に笑えるほど面白いです。
監視対象者と監視する捜査官が協力し、それぞれに降りかかる危険を回避していくという物語の流れは、他の映画にはない斬新さと意外性があります。
その一方で、エディーを消そうと暗躍する保安官代理のロバーツ。彼こそがシェーンたちが1年近く探していた、バハ・カルテルに通じている汚職捜査官でした。
ロバーツは自らの手を汚すことなく、自分の手下をエディーとジャスティンのもとに放ち、彼らを殺して証拠をもみ消そうとします。
ジャスティンに証拠を押さえられているにもかかわらず、ロバーツが追い詰められて焦る様子はほんの少しだけで、ほとんど余裕綽々といった態度でした。
そんなロバーツが最後、ジャスティンではなくノアに撃たれて殺されるのが予想外の展開で大変驚かされます。
まとめ
長年勤めていたシークレット・サービスを追われ、監視室に転属となった特別捜査官が、上級特別捜査官と分析官が1年近く追っていた未解決の事件をたった数時間で暴いていく、アメリカのアクションスリラー作品でした。
最初はルールを全部覚えたにもかかわらず、どんどんルールを破って事態を悪化させていくジャスティンにハラハラドキドキさせられますが、彼がヘマをしでかしたおかげで未解決事件が暴かれたのです。
シェーンたちはそれに感謝するよりも、ジャスティンのしでかしたヘマと、ロバーツの手下との銃撃戦で壊れた監視室の設備のことの方が気になって仕方ありません。
監視室を一緒に出て行った3人が、今後はチーム一丸となって捜査していく姿が観たいと、物語を観終わった後に誰もがそう思うほど彼らに感情移入することでしょう。
また3人の監視対象者であったエディーですが、物語の随所で彼の死を思わせる場面が描かれているため、登場人物も視聴者もヒヤヒヤさせられます。
ですが物語のラスト、ジャスティンの携帯電話にエディーからの留守電メッセージが………。最後まで驚かされることばかりの本作の続編が制作されることに期待しましょう。
ケヴィン・ディロンやブルース・ウィリスら豪華キャスト陣による、怒涛の遠隔(リモート)ハード・アクションスリラー映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。