ジャッキー・チェン×ピアース・ブロスナン共演。
戦慄のリベンジ・サスペンス。
愛する者を失った男が取った行動は、実行犯への復讐だった──。
娘を爆破テロで失った中国人のレストランオーナーが、事件の真相を掴むべく秘めていた能力を発揮。
ジャッキー・チェンが復讐の鬼と化したサスペンスアクション『ザ・フォーリナー/復讐者』は、2019年5月3日より新宿ピカデリーほかで全国公開です。
CONTENTS
映画『ザ・フォーリナー/復讐者』の作品情報
【日本公開】
2019年(イギリス・中国・アメリカ合作)
【原題】
The Foreigner
【監督】
マーティン・キャンベル
【キャスト】
ジャッキー・チェン、ピアース・ブロスナン、オーラ・ブラディ、レイ・フィアロン、チャーリー・マーフィ、スティーブン・ホーガン、ロリー・フレック・バーンズ、マイケル・マケルハットン、ケイティ・ルング
【作品概要】
娘を爆破テロで失った中国人のレストランオーナーが事件の真相を掴むべく、秘めていた能力を発揮し、主舞台となる北アイルランドに戦慄をもたらしていくサスペンスです。
出演は、中国人のクァンを演じるジャッキー・チェンと、北アイルランド副首相リーアム・ヘネシーを演じるピアース・ブロスナン。
復讐の鬼と化したジャッキーの演技が見ものです。
監督は、『007/ゴールデンアイ』(1995)、『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)といった「007」シリーズで知られるマーティン・キャンベル。
『マスク・オブ・ゾロ』(1998)、『復讐捜査線』(2010)といったアクション映画を多数手がけてきた、キャンベル監督の手堅い演出が光ります。
映画『ザ・フォーリナー/復讐者』のあらすじとネタバレ
ロンドンでレストランを経営している中国人のクァン・ノク・ミンは、妻に先立たれて以降、娘のファンを男手ひとつで育てていました。
ある日、学校帰りのファンを車で迎えたクァンは、そのまま卒業式で着る服を買いに付き合うも、ファンが入ったブティックが突如爆破、彼女は命を落としてしまいます。
事件直後、ロンドン警視庁にアイルランド独立を求める武装組織「UDI」から犯行声明が届きます。
その犯人グループの一人オライリーは、潜伏するアパートで死者が何人になったかを確認していました。
爆破のニュースを、妻メアリーから電話越しに聞いた北アイルランド副首相リーアム・ヘネシーでしたが、その時彼は愛人マギーと一緒でした。
メアリーはもうじき亡き弟の20回忌だと告げるも、リーアムは返事もそぞろに電話を切ります。
実はリーアムは、今でこそイギリス政府のもとで北アイルランドの平和維持に勤しんでいますが、若かりし頃はUDIに属し、今回の事件同様に過激なテロ行為を行っていたのです。
リーアムは、イギリス政府の閣僚キャサリンに、現在囚人となっているリーアムの従弟に恩赦を与えれば、テロ犯人の逮捕に結びつくかもと含みを持たせるのでした。
UDI幹部を揃えての会議で、リーアムはテロに使用された爆薬が自分たちの所有物だったのは間違いないとし、それら大半の搬入を担っているヒュー・マクグラスに、他に紛失物があるかどうか調べるよう命じます。
事件発生からしばらく後、ロンドン警視庁に5日連続で足を運び、テロ対策部本部長のブロムリーとの面会を希望するクァンの姿がありました。
渋々面会に応じたブロムリーに、クァンは容疑者の情報を教えてほしいと、2万ドルの札束を差し出します。
ブロムリーは、全て警察に任せてほしいとクァンを説き伏せるのでした。
それから数週間後、クァンはリーアムが元UDIメンバーだったと知り彼に電話し、同じように情報提供を求めます。
リーアムは、現在はUDIの人間ではないので犯人に心当たりは無いと答えるも、クァンはテロと政治は頭と尻尾が異なるだけで同じ蛇だと言い、電話を切ります。
その後クァンは亡き妻や娘の写真を焼き捨てると、従業員の女性ラムに店の権利書を渡し、彼女が引き止めるのを振り切って、リーアムのオフィスがある北アイルランドの首都ベルファストに単身向かうのでした。
手荷物を持ってリーアムのオフィスを訪れたクァンは、改めて情報の提供を求めます。
しかしリーアムは、過去に犯した罪は刑務所で償い、現在はイギリスとアイルランドの橋渡し役をしているから協力のしようがないと返答。
クァンは、「そのうち気が変わる」と告げてオフィスを出てすぐ、手荷物のアルコールやタバコを使って室内のトイレを爆破します。
クァンを逮捕しようと彼の宿泊先に部下を向かわせるも、並外れた戦闘能力により返り討ちに遭い、逃げられてしまいます。
クァンが只の老人ではないと察したリーアムは、妻のメアリーと共に所有する農場に逃げることに。
さらに、ロイヤル・アイリッシュ連隊員だった甥のショーンをニューヨークから呼び寄せ、テロ実行犯が誰か突き止めるよう命じます。
そんな中クァンは、リーアムの別荘の厩舎を爆破したり、リーアムと愛人マギーとの密会現場を撮るなど、恐喝はさらにエスカレート。
かたやロンドンに飛んだショーンはブロムリーと接触し、先の爆破テロにUDI本体は無関係で、あくまでも本体に不満のある武力推進派が行ったことと説明。
さらに、推進派は本部の許可を得ずに爆薬と犯行声明時に発する合言葉を使っているので、その合言葉をリーアムが秘密裏に変えてしまえば、次に声明を出した際に真犯人が分かると告げます。
その頃、農場近くの森に潜伏しているクァンをリーアムの部下が襲うも、森中に仕掛けられた罠により、一人、また一人と撃退させられてしまうことに。
業を煮やしたリーアムは、ショーンに戻ってくるよう要請します。
その連絡をメアリの部屋で受けたショーン…実は彼は、娘に会うという名目でロンドンにいたメアリーと密会していました。
殺害された弟の敵討ちをしない夫を許せないと、メアリーは憤ります。
一方で、キャサリンからクァンの極秘資料を受け取ったリーアムは、彼が元ベトコンの優秀なゲリラ兵にして、海賊に襲われ娘2人が殺されたという経緯の持ち主であることを知ります。
そのリーアムを訪ねてきたマクグラスに、リーアムは武器保管庫から10キロのセムテクス爆薬が紛失していることを指摘。
テロ実行犯とは直接関わっていないと否定するマクグラスは、若い頃のようにリーアムがリーダーとなってイギリスを追い詰めるべきと迫ります。
無関係の市民を巻き添えにするテロはもうしないなどの口論の末、マクグラスを追い返したリーアムの前にクァンが現れ、銃で脅します。
リーアムは爆破予告をする際の合言葉を変えたことで真犯人が分かると告げると、クァンは1日だけ待つと言ってその場を去ります。
そんな中、ロンドンのランベス橋でバス爆破事件が発生。
ブロムリーから電話を受けたリーアムは、実行犯と思しきアイルランド訛りの男から、今後は合言葉を使わないことと、使用した爆薬量を伝える電話があったことを知ります。
合言葉変更の計画が漏れていたと知ったリーアムは、とりあえず戻ってきたショーンにクァンの始末を命じます。
そこへ、メアリーの護衛として付いていた部下が現れ、彼女とショーンがホテルで会っていたことと、その後で彼女がマクグラスに電話していたと報告。
ブロムリーもまた、爆弾を仕掛けた犯人がオライリーであるのを突き止め、また長年監視していたダブリンのカフェで、そのオライリーとマクグラスが会話している映像を入手。
さらに、爆破したバスを直前で降りた女も犯人であることが判明します。
ブロムリーから、マクグラスが内通者であり、実行犯の名前と所在を彼から割り出せなければ拘束しに行くと告げられたリーアムは激高。
マクグラスが到着するや否や銃を向けたリーアムは、一般人を巻き添えにしたバス爆破を非難し、実行犯の名前を紙に書けと迫ります。
ピックアップされた5人の中に女1名を見つけたリーアムは、その名がマギーであることに驚きます。
彼女はマクグラスの指示でリーアムを誘惑し、間接的にリーアムもテログループと関与させていました。
さらに、メアリーもまたマクグラスと内通していたこと聞かされ、リーアムはマクグラスを射殺。
その頃マギーことサラ・マッカイは、フリーの新聞記者イアン・ウッドに近づき、彼のノートパソコンに爆弾を仕掛け、飛行機内で爆発させようという計画を進めていました。
映画『ザ・フォーリナー/復讐者』の感想と評価
“死んだ目”をしたジャッキーの狂気演技が怖い!
本作『ザ・フォーリナー/復讐者』の最大の見どころは、とにかくジャッキー・チェンの演技に尽きます。
これまでにもシリアステイストな作品に出演しているジャッキーですが、やはりどこかしら、元々生まれ持つ“陽”な面を匂わせていました。
しかし、本作で彼が演じるクァンは、娘を殺されて以降、笑顔らしい笑顔を見せることはありません。
笑顔を見せたとしても、それは相手に安心感を与えるための手段にすぎない上に、目そのものは“死んで”います。
見た目こそ風采の上がらない中国人が、復讐のために秘めていた能力を活かし、ブービートラップを張り、爆弾を作成してゲリラ戦を仕掛けていく怖さ。
製作時63歳だったにもかかわらず、あえて老けメイクを施して役に臨んだジャッキーの鬼気迫る演技に注目です。
ちなみに本作は、インターナショナル版と中国公開版の2つのバージョンがあり、中国版では森の中でのバトルや、クライマックスの死闘といったアクションシーンが長めとなっています。
もちろん、日本で公開されるのは中国版です。
終息が見えない北アイルランド問題
本作のあらすじの根底としてあるのが、北アイルランド情勢。
その背景が少々複雑なため、まったく事情を知らずに観ると飲み込みづらいかもしれないので、ここで大まかな補足をします。
本作でテロ事件の引き金となる組織「UDI」のモデルとなっているのは、アイルランド共和軍こと「IRA」です。
元々アイルランドは、イギリスとの独立戦争(1919~21)の末に共和国として独立するも、北部にあるアルスター地方の6州(いわゆる北アイルランド)だけが、イギリス領として残ることとなります。
この北アイルランドでは1960年代から、イギリスからの独立とアイルランドへの帰属を主張するカトリック系住民と、イギリス帰属継続を求めるプロテスタント系住民が対立、これが俗に言われる北アイルランド紛争です。
本作でピアース・ブロスナン演じるリーアムが属する政党シン・フェイン党はカトリック系にあたり、IRAはその民兵組織となります。
劇中、リーアムが若き頃にUDI兵として1972年のオールダーショット爆発などのテロに関わっていたと語りますが、これはそのまま実際のIRAが起こした事件で、彼らが長らくイギリスへの過激な武力行為を行ってきたことを意味します。
対するプロテスタント系政党も対抗組織「アルスター義勇軍」を結成し、カトリック住民への迫害行為を開始したことで、紛争は激化の一途をたどることに。
リーアムの妻メアリーが、20年前に弟をアルスター軍に殺されたという設定の裏には、この紛争があります。
またIRA内部でも分裂が起こり、1969年には宗教的相違からより過激な武力組織「IRA暫定派」が分派。
本作で、ロンドンで次々と爆破テロを起こす「UDI武力推進派(急進派)」は、それに近い存在となります。
現実の紛争自体は、1998年に和平(ベルファスト合意)が成立し、2005年にはIRA暫定派が武装放棄を宣言して落ち着いたかに見えました。
しかし、今なお武装解除に応じないグループも存在し、2019年4月には、イギリス統治に反発する「新IRA(New IRA)」を名乗るカトリック系過激派組織による暴動が起きています。
原作はハードなクライムノベル
本作の原作は、マンチェスター出身の作家スティーヴン・レザーによる『チャイナマン』です。
ロンドンで新聞記者となったスティーヴンは、香港に移住後も記者活動を継続。
1987年に『報復のコスト』で作家デビューを果たして以降、香港在住経験を活かしたクライムドラマを続けて発表しています。
まだ北アイルランド紛争が激しかった1992年に書かれた4作目の『チャイナマン』は、映画版よりもクァンの壮絶な過去や、IRA(映画ではUDI)内部の対立が深く掘り下げられている上、ラストは非常に暗然な結果を迎えます。
日本では1996年に文庫化されるも、長らく絶版状態となっていますが、もし興味があれば図書館もしくは古書店でチェックしてみて下さい。
まとめ
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— The Foreigner (@ForeignerMovie) October 9, 2017
1970年代から映画界に入って以降、約50年ものキャリアを誇るジャッキー・チェン。
これだけの長きに渡って第一線で活躍しているスターは、おそらく彼だけかもしれません。
にもかかわらず、本作『ザ・フォーリナー/復讐者』では、また新たな顔を見せることに成功しています。
あらすじ自体は複雑な面もありますが、ラストを、原作と変えて救いのある着地にしたのは評価すべき点でしょう。
65歳にしても、さらに挑戦を続けるジャッキー・チェンが見られる『ザ・フォーリナー/復讐者』は、2019年5月3日より新宿ピカデリーほかで全国ロードショーです!