映画『スピリットウォーカー』は2022年4月1日(金)より全国ロードショー!
目まぐるしく変化する「自分」!?とある男性の意識が奔走する中、驚愕の真実にたどり着いていく様を描いた韓国アクションサスペンスノワール『スピリットウォーカー』。
決まった時間を境に人から人へと自身を変えていくという、記憶を失った一人の男性の意識。本作はその彼をめぐり進展する中で真実が暴かれていく様を描いた物語です。
主人公を務めたユン・ゲサンを筆頭に、パク・ヨンウ、パク・チファン、ユ・スンモクら韓国アクション常連の名俳優陣が名を連ね、緊張感あふれるアクションの醍醐味を十分に発揮しています。
CONTENTS
映画『スピリットウォーカー』の作品情報
【日本公開】
2022年(韓国映画)
【原題】
유체이탈자(英題:Spiritwalker)
【監督・脚本】
ユン・ジェグン
【出演】
ユン・ゲサン、イム・ジヨン、パク・ヨンウ、パク・チファン、ユ・スンモク
【作品概要】
「12時間ごとに違う人間の体で目覚める」という男が、その不思議な現象の真実を明らかにすべく奔走する姿を描いたアクションストーリー。
監督を務めたのは、脚本家として活躍するほか映画『ハートビート』(2016)を手掛けたユン・ジェグン監督。主演には『https://cinemarche.net/action/outlaws/』(2018)のユン・ゲサン、さらに『LUCK-KEY ラッキー』(2016)のイム・ジヨン、『悪人伝』(2019)のユ・スンモクらが名を連ねています。
映画『スピリットウォーカー』のあらすじ
とある交通事故の現場で目を覚ました、一人の男性。彼はやがて助けられ警察で事情を尋ねられますが、すべての記憶を失っており困惑します。
トイレで鏡に映る自分の顔、そして持っていた身分証明書の名前にも違和感を覚える男性。ところがしばらく経つと、男はまた見覚えのない場所で目を覚まし、鏡で先程とは違う自分の顔を見てしまいます。
ありえない状況に加え、自分の正体がわからないことに混乱しつつも、やがて彼は自分の意識が12時間ごとに違う人間の中に入れ替わっていることに気づきます。
何が起きているのか、本当の自分は何者なのか、真相を解明するべく行動を開始した男性でしたが、その真実が見え始めたころには自分が巨大な陰謀に巻き込まれていることを知りました。
映画『スピリットウォーカー』の感想と評価
なぜこのような状況に?と思わせない「混沌状態」
自分の意思がいつの間にか誰かの体に入り込んでしまう。物語の主人公は能動的に特にそんな願望を持っていたわけではないものの、その状況に陥ることになります。男性がなぜこのような状況に陥ったのか? 物語では一応この現象に対する理由付けは行われているのですが、理路整然と考えると今一つ解せないところがあります。
ところが物語はそういった明確な理由をある意味「どうでもいいこと」にしてしまう説得力があります。ある視点で見れば、あのジョージ・A・ロメロが生み出した映画『ゾンビ』以降の、「生ける屍」的な存在にもつながるものがあるといってもいいでしょう。
「(人が生きていく中で、「死んだ人が生き返る」という)わけのわからないことが起こるというのは凄い恐怖。
そんな恐怖を投影していると思う」近畿大学総合社会学部の准教授である岡本健氏は、2020年にNHK BSで放送された特番『ダークサイドミステリー「今熱い!ゾンビ人気の秘密〜恐怖と進化の90年〜」』にて、こんなふうに『ゾンビ』という映画が醸し出す恐怖の要因とともに、『ゾンビ』が社会現象として大きな注目を浴びた要因として考えられることを述べました。
自分の正体もわからないのに、誰かの目線にずるずると立場を変えられてしまうという「混沌状態」。この物語は、「ありえない」「わけのわからない」という同様の状況が大きな肝となっており、見る者の目を引いていきます。
また「自分を取り巻く人の目線に立つことができたら」そんなことを考えられる方は意外と多いのではないでしょうか? 特にネット社会において他人の考えを推し量るのが難しい現代において、こういった願望は広がりつつあります。
そのような視点からも物語は非常に強い訴求力を示しており、サスペンスアクションの要素も相まって、その魅力が最大限に生かされています。
緻密なギミックと「人間臭さ」の絶妙な融合
そして本作の最大の魅力は、その「混沌状態」を、ちゃんと物語として成立させる緻密な計算と、展開力の広さにあります。
冒頭より登場するのは主人公と一人のホームレス、気が付くととある食品会社の中間管理職へ、そしてその次はヤクザのボス…何の手掛かりもないまま、意味不明の意識移動を続ける主人公。しかしエンディングに向け彼が明らかにしていく真実は、その点在する不確かな情報を一つの線へと結び付けていきます。
本作はこの物語の展開の作り方が秀逸で、場面に登場するすべてのものに対して、非常に深い意味づけがされており、その伏線の張り方もかなり緻密で巧妙な工夫がされています。
そのドミノ倒しのように不確かなことが明らかになっていく様は、単に頭の中の霧が晴れていくような雰囲気でだけではなく、いわゆる「アハ!体験」と呼ばれる現象のように見る側の気持ちを能動的に高揚感へと引っ張っていきます。
一方、この高揚感を引き上げる要因は、単純なミステリーのギミックのみに寄らず、しっかりとそこに人間ドラマを載せていることにもあり、このポイントに関してはまさに出世作『ハートビート』で高い評価を得たユン・ジェグン監督ならではの鋭いセンスが生かされているところであると言えるでしょう。
まとめ
複雑ながら巧妙な仕掛けでグイグイと見るものを物語に引き込む巧妙な構成もさることながら、息つく暇すら忘れてしまうようなアクションもふんだんに織り込まれた本作は、俳優陣の見せる激情感のまさに腕の見せ所。
ユン・ゲサンらをはじめとした韓流スターたちの、劇場感あふれる演技もこの作品の魅力でもあります。
一方、本作は早くもハリウッドリメイクが企画されているというニュースも発表されていますが、リメイクのポイントを挙げるとすれば「この人間ドラマが、どのように解釈されるか」という部分にあるでしょう。
果たしてこの難解な物語が海の向こうの役者に置き換えて描かれたときに、どのような人間関係へと置き換えられるのかは非常に興味深いポイントでもあり、それだけにこのドラマの主軸となるのは、やはり人間ドラマだったと改めて知らされるところでもあります。
映画『スピリットウォーカー』は2022年4月1日(金)より全国ロードショー!