ハイスピードなアクションが炸裂する新たなマーベルヒーローの誕生作!
マーベルコミックスの映像化シリーズ「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)と『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)で一区切りを迎え、新たなフェーズへと突入しました。
2021年、人気キャラクターを主人公としたドラマやアニメなど、今までとは違ったシリーズの展開を見せる「MCU」に遂にアジア人初の単独主演映画が誕生。
今回はマーベル映画としての面白味をしっかりと含みながらも、中国映画の魅力を世界に見せつけた異色のMCU映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の作品情報
【原題】
Shang-Chi and the Legend of the Ten Rings
【日本公開】
2021年(アメリカ映画)
【監督】
デスティン・ダニエル・クレットン
【脚本】
デスティン・ダニエル・クレットン、デイブ・キャラハム
【キャスト】
シム・リウ、オークワフィナ、メンガー・チャン、ファラ・チャン、ベン・キングズレー、ベネディクト・ウォン、ミシェル・ヨー、トニー・レオン
【作品概要】
マーベルコミックスの人気キャラクター「シャン・チー」を題材とした「MCU」シリーズ25作目の長編映画作品。
『黒い司法 0%からの奇跡』(2020)を手がけたデスティン・ダニエル・クレットンが監督を務めました。
映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のあらすじとネタバレ
1000年以上前、装着することで超常的な力と不老の体を手にすることが出来る10個の腕輪「テン・リングス」を手にしたシュー・ウェンウーはその力を私利私欲に使い、暗殺者集団「テン・リングス」を結成し、歴史の裏で暗躍してきました。
1996年、シューは更なる力を求めて魔術師が住むとされる伝説の村「ター・ロー」を訪れますが、村の守護者であるイン・リーが立ち塞がり、彼女の魔術の前に腕輪を手に入れて初の敗北を喫します。しかし、2人の戦いは禍根を残すことはなく、後に2人は結ばれ息子であるシャン・チーを授かることになりました。
現在、サンフランシスコで親友であるケイティと共にホテルの駐車係の仕事で食いつなぐシャンはバスの中で、母親の形見であるペンダントを狙う男達に襲撃されます。
腕から刀を生やすレーザー・フィストを含めた殺し屋集団をシャンは撃退しますが、ペンダントをレーザー・フィストに奪われてしまいます。
シャンの異常な戦闘能力を目にしたケイティは、シャンが何かを隠していることに気づき彼を問い詰めます。
シャンは母の死後、父であるシューに暗殺者として育てられました。14歳の年に暗殺の任務を命じられたシャンは殺人を許容することが出来ずに父のもとを脱走し、サンフランシスコに身を隠して生きてきたことをケイティに告白。
自分を襲った相手が父の部下だと悟るシャンは、次に襲われる相手が妹のシャーリンであることに気づき彼女の住むマカオへと向かいます。
無理やりついてきたケイティと共にマカオのナイトクラブについたシャンは、この場所がダークウェブ上で話題の格闘場であることを知ります。
サノスとの戦いで活躍したドクター・ストレンジの相棒ウォンが参戦するほどの危険な格闘場でしたが、シャンはバスの中での戦いの映像がウェブ上にアップされていたことで世界で話題となっており、強制的に試合に参加させられます。
試合の相手として登場した女性はナイトクラブのオーナーであり疎遠の妹であるシャーリンであり、彼女はシャンが自分を見捨てて逃げたことを恨み、独学で鍛えた体術でシャンを倒します。
オーナー室でシャーリンは、シャンの来訪目的を知るとこの場が危険と判断します。
シャンの行動はシューに筒抜けになっており、ナイトクラブに侵入した「テン・リングス」の集団によってシャンとシャーリン、ケイティは捕らえられ「テン・リングス」のアジトへと連れて行かれます。
家族との再会を喜ぶシューは、ケイティに過去を語り始めます。
インと結ばれシャンとシャーリンを授かったシューは腕輪を外し、一家の父として老いて行く人生を楽しんでいました。しかし、自身の暴力の過去の代償としてギャングにインを殺害されたシューは怒りのために再度腕輪を付ける道を選びます。
シャンが姿を消して以降、インの生まれ育った村「ター・ロー」の研究に没頭したシューは、頭の中にインの声が聞こえたことをきっかけに「彼女は生きており、自分との結婚を反対していた村人によって村に閉じ込められている」と信じるようになります。
シャンとシャーリンの持つペンダントには魔術で守られたター・ローに入るための手順が残されており、シューは3人と「テン・リングス」で母親を取り戻すことを提案します。
シャンは目の前で失った母の生存を信じきれず、さらにシューが母のためにター・ローの村人を皆殺しにする算段であることを知り提案を断りますが、怒りを露わにしたシューによってシャーリンとケイティ共々拘束されてしまいました。
映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の感想と評価
カンフーとワイヤー使用のアクション
「イップ・マン」シリーズでお馴染みのアクション俳優ドニー・イェンがハリウッドで活躍するなど、中国映画といえば「カンフー」を用いた怒涛のアクションという強い印象があります。
本作『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は「マーベル・スタジオ」が製作したハリウッド映画でありながらもカンフーを用いるキャラクターを題材としているため、中国映画のノウハウを活かした壮絶な殺陣のカンフーアクションを見せつけてくれます。
出演俳優もアクション俳優として名高い中国映画の名優を起用しており、中でもアカデミー賞を受賞した映画『グリーン・デスティニー』(2000)でヒロインを演じたミシェル・ヨーが、再びワイヤーアクションを見せるシーンは必見です。
今までの「MCU」映画とは全く方向性の異なる、素手と中国の武器を利用した殺陣にファンタジー要素を加えたアクションは目を一切画面から離すことのできない文句無しのハイスピードアクションでした。
「父」と「破滅の男」の顔を持つ最強ヴィラン
ヒーロー映画では、私利私欲に生きる悪の権化のようなキャラクターが定番のヴィラン像でした。
しかし、『ブラック・パンサー』(2018)や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)などで、等身大の人間としての内面が描かれたヴィランが人気を博し、「MCU」シリーズは「ヴィラン」へのこだわりを強く見せるようになります。
本作ではトニー・レオン演じる主人公の父であるシューがヴィランを務めましたが、等身大の人間の心情を持つ父親としてのヴィラン像と、圧倒的な力を持つ悪の権化としての恐怖感を持つヴィラン像の2つを兼ね揃えた絶妙なバランスのヴィランとなっていました。
私利私欲で生きてきた不老の男がなぜ家族を持ったのか、そして家族を持った男がなぜ破滅への道を進むのか、強さも内面に抱える苦悩もすべてが魅力的なヴィランに釘付けになる作品でした。
まとめ
『ドクター・ストレンジ』(2017)の主人公ストレンジの相棒ウォンが劇中に登場するなど、しっかりと「MCU」との繋がりを見せる本作は単体作の中でも特に多くのキャラクターがシリーズから登場しています。
シャン・チーの初登場の作品であり、シリーズ初見の人にもオススメ出来る作品である一方で、最初期の作品から追い続けている人には嬉しいカメオ出演のある『シャン・チー/テン・リングスの伝説』。
今後の「MCU」を動かす要素も提示される本作は、シリーズ随一のアクションと魅力的なヴィランを含め誰に対しても自信を持ってオススメ出来る作品です。