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Entry 2022/05/07
Update

『007/慰めの報酬』ネタバレあらすじ感想と結末の考察解説。オイルが注目アイテムとなるダニエルボンドの2作目!

  • Writer :
  • 秋國まゆ

大人気スパイアクション映画「007」シリーズ第22作!

マーク・フォースターが監督を務めた、2008年製作のアメリカ・イギリス合作の大人気スパイアクション映画『007/慰めの報酬』。

英国情報局秘密情報部「MI6」の諜報員ジェームズ・ボンドが、任務を共にした愛する女性ヴェスパーを操っていた男ミスター・ホワイトを捕らえ、その背後にある組織を探っていく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

前作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)の続編である、「007」シリーズ第22作目『007/慰めの報酬』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

映画『007/慰めの報酬』の作品情報


(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. and Danjaq, LLC.

【公開】
2009年(アメリカ・イギリス合作映画)

【原作】
イアン・フレミング

【監督】
マーク・フォースター

【キャスト】
ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ライト、ジェマ・アータートン、イェスパー・クリステンセン、デヴィッド・ハーバー、アナトール・トーブマン、ロリー・キニア、ジャンカルロ・ジャンニーニ、ホアキン・コシオ、ホアキン・コシオ、フェルナンド・ギーエン・クエルボ、スタナ・カティック、ニール・ジャクソン、サイモン・カシアニデス

【作品概要】
ネバーランド』(2004)のマーク・フォースターが監督を務めた、アメリカ・イギリス合作のスパイアクション作品。

前作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)に引き続き、『レイヤー・ケーキ』(2004)のダニエル・クレイグが主演を務めています。

本作は、ダニエル・クレイグが主人公のジェームズ・ボンドを演じた2作目の作品であり、「007」シリーズ第22作目にあたります。

本作のタイトルは、イギリスのスパイ小説・冒険小説家イアン・フレミングの『007号の冒険』に掲載されていた短編小説から取ったものですが、本作にその物語の要素は一切含まれていません。

映画『007/慰めの報酬』のあらすじとネタバレ


(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. and Danjaq, LLC.

前作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)の物語のラストにて、英国情報局秘密情報部「MI6」の諜報員ジェームズ・ボンドは、任務を共にした金融活動作業部会(通称:FATF)の女性職員ヴェスパー・リンドを操っていた男ミスター・ホワイトの足を撃ちました。

謎の組織の車と激しいカーチェイスを繰り広げた末、ボンドはミスター・ホワイトを、イタリアの古都シエーナで待っていたMI6の部長Mの元へ連行しました。

そこでボンドはMから、ヴェスパーが救おうとしていた彼女の恋人が、地中海西部のバレアレス諸島にある島「イビサ島」の海岸にて、死体として発見されたことを知らされました。

しかし、溺死したヴェスパーが小箱にしまっていた彼の毛髪を使って、DNA検査をしたところ、魚に食われ死んだ彼はヴェスパーの恋人ではなかったのです。

ヴェスパーの恋人の行方や、ミスター・ホワイトの背後にある国際的犯罪組織について調べるべく、Mとボンドはミスター・ホワイトを尋問します。

これに対しミスター・ホワイトは、余裕の笑みを浮かべながらこう言いました。「我々はこう思っていた、“相手は天下のMI6とCIA。何もかも筒抜けだ”」

「我々の存在を知らないのか?」「じゃあ教えよう。我々の仲間はあらゆる場所に出向いている。そうだろう?」

そう問いかけられたMI6の諜報員C・ミッチェルは、突如隣にいた同僚と、5年間護衛を務めていたMを目掛けて銃を発砲します。

ボンドはMI6を裏切ったミッチェルを生け捕りにはせず、殺してしまいました。挙句の果てに、肝心のミスター・ホワイトに逃げられてしまいました。

イギリス・ロンドン。ミッチェルの自宅を家宅捜査していたMの元へ、ボンドが帰還。Mはミッチェルを殺したことを叱責します。

ミッチェルの自宅から裏切った証拠は出なかったものの、彼の所持金を分析検査した結果、ボンドたちはある1人の男の存在に辿り着きます。

その男の名はエドムンド・スレイト。彼はミッチェルが残した紙幣と同じ連番の紙幣を持っており、その紙幣はミスター・ホワイトに殺された男ル・シッフルが、世界各国のテロ組織の資金を預かり、マネーロンダリング(資金洗浄)したものでした。

早速ボンドは、ロンドンからカリブ諸島の国ハイチへと渡り、ストレイトが滞在するホテルに突撃。しかしまたしても生け捕りにすることが出来ず、ストレイトを殺してしまいます。


(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. and Danjaq, LLC.

またしても何の手掛かりも得ることが出来ず、途方に暮れるボンド。とりあえず外見が似ているスレイトに成りすまして、フロント係から彼の預かり物のブリーフケースを受け取り、ホテルを出ました。

するとそこへ、スレイトの商談相手カミーユが現れます。とりあえずボンドはスレイトに成りすまし、カミーユとの商談を進めていきました。

しかし、ブリーフケースの中身にはカミーユが欲していた地図の他に、銃が入っていました。そう、スレイトはカミーユの商談相手ではなく、彼女を殺そうとする殺し屋でした。

それに気づいたカミーユは、ボンドを車から追い出し、埠頭へ向かいました。ボンドはカミーユを監視していた男からバイクを奪い、カミーユを追跡すると、ドミニク・グリーンというフランス人実業家に辿り着きました。

グリーンの表の顔は環境保護を行う慈善団体「グリーン・プラネット」のCEOですが、その裏の顔はボリビアの砂漠にある天然資源の採掘利権を得るため、ヨーロッパと中南米を行き来し、元ボリビア軍事政権トップであるメドラーノ将軍のクーデターを支援する巨大組織の幹部でした。

グリーンはカミーユの本当の目的を見抜き、彼女をメドラーノ将軍へ売り飛ばしました。その埠頭でのやり取りを見ていたボンドは、メドラーノ将軍とカミーユが乗る小型船を追いかけ、彼女を救出します。

その後、グリーンは手下を連れて飛行場を訪れ、そこに止まっていたチャーター機である人物と合流しました。中央情報局「CIA」の南米支局長グレッグ・ビームとその部下であるCIAのエージェント、フィリックス・ライターです。

グリーンは、秘密裏にビームとも連絡を取っており、「ボリビアのクーデターは阻止せず、新政権は米国に、砂漠にある天然資源と石油の採掘権を貸与する」という取引をしていました。

さらにこの天然資源と石油の採掘利権を巡って、様々な駆け引きが裏で繰り広げられており、そこにはイギリス首相付き特命大使G・ヘインズや、イギリスの外務・英連邦・開発長たる国務大臣「外務・英連邦大臣」も関わっていたのです。

それを知った直後、ボンドはグリーンが観劇に訪れたオーストリア・ブレゲンツのオペラ劇場にて、グリーンと直接対峙しました。

激闘の末、グリーンの手下たちを倒したボンドでしたが、彼が最後に始末した男は、ヘインズを護衛していた特別警備部の部員であることが判明。Mから今すぐロンドンに戻ってくるよう命じられてしまいます。

以下、『007/慰めの報酬』ネタバレ・結末の記載がございます。『007/慰めの報酬』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. and Danjaq, LLC.

ボンドはMの命令を拒否し、イタリア・タラモーネへ向かいました。そこには、ル・シッフルの仲間だったルネ・マティスが妻と一緒に滞在していました。

マティスからヘインズのことを聞いたボンドは、ボリビアに人脈がある彼に、「一緒にボリビアに来てくれ」と頼みました。

マティスは葛藤の末、自分をMI6に引き渡し拷問を受けさせた過ちを認めたボンドへの敬意として、彼に協力することを決めました。

しかし2人が向かったボリビア・ラパスの空港には、Mによって派遣された領事館の女性職員ストロベリー・フィールズが待ち構えていました。

ボンドを出迎えたフィールズは、ボンドに「MI6トップから、あなたを明朝のロンドン行きの便に乗せてMI6本部に戻すよう言われました。もし逃亡を図ったらあなたを逮捕し、手錠をつけて飛行機に乗せます」と言いました。

その日の夜。マティスから招待状を受け取ったボンドは、監視役のフィールズを連れて、グリーン・プラネットの資金協力パーティーに出席しました。

グリーンの演説を聞いたボンドは、グリーンとヘインズたちが話していた「ティエラ計画」とは、崩壊寸前の地球を蘇らせるために、グリーン・プラネットが立ち上げたグローバル運動の一環であることを知りました。

ボリビア国家警察の警視総監カルロス大佐を連れたマティスと合流した後、ボンドはグリーンとの接触を図ります。しかしボンドより先に、カミーユがグリーンに接触していました。

グリーンはカミーユの色仕掛けに引っかからず、彼女を殺そうとします。そこへボンドが現れ、グリーンから引きはがしたカミーユを連れて、パーティー会場を後にしました。

ボンドはカミーユに、「不毛の地」と呼ばれるティエラ計画が行われる場所へ案内してもらおうとしましたが、追いかけてきたボリビア国家警察の警官2人に呼び止められます。

実は、カルロス大佐たちボリビア国家警察はグリーンと繋がっていたのです。そのせいでマティスは殺され、ボンドは彼を殺した罪を着せられてしまいます。

翌日。ボンドが買収した飛行機のパイロットのタレコミにより、「不毛の地」へ向かうボンドたちの元へ戦闘機が襲来。激しい銃撃により左エンジンが損傷してしまいました。

左エンジンから黒煙が舞う中、ボンドはその黒煙を目くらましに利用したり、無茶な操縦をしたりして戦闘機を墜落させます。すると今度は、戦闘ヘリが襲来し、右エンジンが損傷してしまいました。

操縦不能となった挙句、左エンジンが完全に停止した直後、ボンドとカミーユは飛行機から飛び降ります。カミーユが装着したパラシュートのおかげで、ボンドたちは危機一髪、飛行機もろとも爆死することを免れました。

一方Mは、外務省に呼び出され、外務・英連邦大臣から、マティス殺害の容疑がかけられたボンドについて叱責されました。

「M、我々イギリス政府の認識は変わった。“グリーンとイギリス政府の利益は相反さない”とね」「あの男は極めて危険な組織の中心人物です」

「初めて聞く組織だ。外交をそんなあやふやな勘に頼るのか?」「では確実な証拠を集める時間をください」

「よし、グリーンを悪人と仮定しよう。昨今取り引きできる相手は悪人だけだ」「ロシアは石油を売らず、米・中は今ある石油を取り合ってる。善悪はもはや関係ない、やむを得ない国策だ」

「ボンドはもう抑えが効かん。そんな彼が敵に寝返ったらどうする?」「ボンドをロンドンに呼び戻せ、CIAに消されるぞ」

一方ボンドは、カミーユになぜグリーンを追っているのか尋ねます。カミーユの正体は、ボリビアの諜報部員でした。

これに対しカミーユは、狙いはグリーンではなくメドラーノ将軍だと答えます。「私の父は軍事政権の一員で、残酷な人だった」

「私が子供の頃、父と対立してたメドラーノがうちに乗り込み、父を射殺。母と姉をレイプして、私の見ている前で2人を絞殺した」

「彼は幼い私に笑いかけ、家に火をかけた」「だから彼の船に乗った時、家族を嬲り殺しにされた復讐をするチャンスだった」

それを聞いたボンドも、愛し合っていたヴェスパーを殺した相手に復讐したい気持ちを明かしました。

その後ボンドたちは、陥没孔がいくつかあるこの場所に、豊富な水があることを知りました。

「グリーンの狙いは石油じゃない、水だ」「ダムを建設し水をせきとめ、水不足を起こすつもりだ」


(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. and Danjaq, LLC.

その日の夜。カミーユを連れて宿泊するホテルに戻ってきたボンドは、「逃げて」と書かれたフィールズからの警告を受け取りました。

ボンドはカミーユをホテルのロビーに残し、1人部屋に戻りました。するとそこには、MとCIA職員3人がいました。

「あなたには失望しました。こうまでして米国の石油が欲しいのですか?ここに石油はない」

「いいえ信頼の問題よ。貴方、私に“復讐は念頭にないと”言ったわよね?」「任務一筋です」「そう?怒りで自分を見失って、相手構わず手を下してる。敵・味方を区別できない者は去って」

寝室へ向かったボンドは、肺まで石油で浸かったフィールズの死体がベッドに転がっているのを目撃。ボンドはグリーンの仕業だと言うも、Mは聞く耳を持ちません。

Mから停職処分を言い渡され、CIA職員たちに同行するよう命じられたボンドは、素直にそれに応じるふりをして、乗ったエレベーター内で彼らを始末します。

そしてボンドは、部屋から出てきたMにこう言いました。「ミス・フィールズの貢献を上に報告してください。僕はこのまま事件を追います」

ボンドと別れた直後、Mはロビーに待機させていたタナーと合流し、彼にこう言いました。「彼の後を追いなさい。CIAが何よ、彼は私が信頼する部下よ」

カミーユと合流した後、ボンドはビームと行動を共にしているフィリックスをバーに呼び出し、彼にこう言いました。

「南米からコカインと共産主義を引いたら何が残る?君の国は見事に甘い汁を吸った」

「グリーンはこの国を枯渇させ、君らCIAはその尻拭いをさせられるんだぞ。いい加減目を覚ませ」

そう言うボンドに対し、フィリックスはこう答えました。「ボリビアの政権はすぐ変わり、トップはいつも汚い。世の中ギブ・アンド・テイクさ」

フィリックスはそう言いながらも、ボンドに重要な情報を明かしました。「グリーンがクーデターの資金を、メドラーノに渡す。その場所は、砂漠のラ・デュナス・ホテルだ」

一方グリーンは、手下を連れてラ・デュナス・ホテルへ向かい、そこで待っていたカルロス大佐に、協力金として大量のユーロ札が入ったブリーフケースを渡しました。

カルロス大佐は「戦争は金がかかる。現政権の腐敗ぶりはもう我慢ならん」と言うと、ブリーフケースを持って立ち去りました。

彼と一緒にグリーンを待っていたメドラーノ将軍が、「私の(取り分の)金は?」と聞くと、グリーンは土地売却書類と、ボリビアの水資源の60%を自分が属する巨大組織のものとし、グリーン・プラネットが新政権の下で国の公益事業団体とする契約書を渡しました。

メドラーノ将軍は土地売却書類には署名したものの、その契約書には署名しませんでした。するとグリーンの態度は豹変し、隠していた本音を明かしました。

「ボリビアの現大統領が話の分かる男なら、あんたは必要なかった」「この契約書にサインしなきゃ、あんたは用済みとなり、別の候補者に即交代だ」

「疑うなら俺を撃ち、札束を抱えて消えるがいい」………そう言われたメドラーノ将軍は、黙って契約書に署名し、札束が入ったブリーフケースを持って自分の部屋へ戻りました。

その直後、ボンドは駐車場から出てきたボリビア国家警察の車を襲撃。助手席にいたカルロス大佐を射殺。そのままカルロス大佐の部下も殺した直後、ボンドから逃げようとバックした車は壁に激突し爆発しました。

ボンドがグリーン一味との戦いを始めたことを合図に、ホテルに侵入していたカミーユも攻撃を開始。メドラーノ将軍の部屋の前で待機していた部下2人を殺し、ホテルの女性従業員をレイプしようとしていた彼と死闘を繰り広げていきます。

グリーンの最後の手下とボンドが対峙したその瞬間、駐車場から上がった炎がガス管に引火し大爆発。グリーンの手下は爆死しました。

ホテル内が次々と炎に包まれ崩壊していく中、ボンドとカミーユはそれぞれ、グリーンとメドラーノ将軍と死闘を繰り広げていきます。

死闘の末、ボンドはグリーンに止めを刺さず、カミーユはメドラーノ将軍を射殺したものの、初めて人を殺したことと、トラウマである炎による恐怖で足が竦んで動けません。

ボンドは怯えるカミーユを慰めつつ、彼女を連れてホテルから脱出しました。そしてボンドは1人、負傷した足を引きずりながら逃げるグリーンを捕まえました。

捕まったグリーンは、ボンドとある約束を交わします。それはグリーンの属する巨大組織「クァンタム」のことを話す代わりに、このまま彼を見逃すというものでした。

ボンドは情報を聞き出した後、グリーンを砂漠の真ん中に置き去りにし、カミーユの元へ向かいました。

カミーユと別れた後、ロシア・カザンに向かったボンドは、カナダ情報局員コリーヌと一緒にいる男の元を訪ねました。

その男は、ヴェスパーの恋人でした。その証拠に、コリーヌはヴェスパーと同じペンダントを、彼からプレゼントされていました。

ヴェスパーもコリーヌも、極秘情報を聞き出すために男に利用されていたのです。ボンドはコリーヌを逃がし、男をMI6に引き渡しました。

家の外で待っていたMはボンドに、グリーンがボリビアの砂漠で死んだことを伝えました。

M曰く、死んだグリーンの遺体から後頭部に2発の銃弾と、胃にエンジン・オイルがあったと言います。

さらにMから、ボンドはMI6とCIAが互いへの誤解を解き合い、フィリックスが昇格し、ビームが降格処分となったことを知らされました。

「あなたは正しかった」「何が?」「ヴェスパーのことです。では…」「ボンド、MI6に復職して」「いつ僕が(MI6)から離れました?」

そうMと話した後、ボンドはヴェスパーの形見として肌身離さず持っていたネックレスを地面に捨て、その場から立ち去りました。

映画『007/慰めの報酬』の感想と評価


(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. and Danjaq, LLC.

復讐に燃えるボンドとカミーユ

大事な人を殺した者への復讐心に囚われたボンドとカミーユ。偶然ハイチの街で出会った2人が、グリーンが企てた陰謀を阻止するべく、巨悪な敵に挑んでいきます。

グリーンの策略により、ボンドがCIAからもボリビア国家警察からも、ましてや祖国や味方であるはずのMI6にまで追われる身となってしまった時はどうなるかとヒヤヒヤさせられますが、さすがボンドです。

幾度となく追っ手を撒いただけでなく、フィリックスやマティスといった強力な協力者を手に入れました。

しかしマティスは、知人であったカルロス大佐に裏切られ、ボンドの目の前で殺されてしまいました。そして、ただ空港でボンドを出迎えただけのフィールズも、変わり果てた姿で見つかりました。

2人の死は、ボンドが自分と関わったせいで、大事な人の命が奪われてしまうことを痛感した場面。言葉に表せないほどの悲しみを背負ったボンドの姿は、観ているだけで辛く悲しいです。

またボンドのおかげで、家族を嬲り殺しにされた恨みを果たせたカミーユも、初めて人を殺してしまったことへの恐怖を感じたとともに、心にポッカリと穴があいたような虚しさだけが残ってしまったのが彼女の表情から見て取れます。

天然資源と石油の採掘利権を欲する者たち


(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. and Danjaq, LLC.

ボリビアの砂漠にある天然資源と石油の採掘利権を欲しているのは、グリーンだけではありません。イギリス政府の中枢の一部も、世界各国の大物たちも狙っていました。

全ては天然資源と石油を手に入れ、巨万の富を得るためという欲にまみれた理由でした。しかしグリーンの本当の狙いは天然資源でも石油でもなく、水だったことが物語の後半で明らかとなります。

ダムを建設し、石油よりも生活していく上で必要不可欠な水をせき止め枯渇されることで、さらなる富を得ようというのです。

メドラーノ将軍たち取引相手でさえ、最後までそれに気づけなかったほどのクァンタムの策略と狡猾さに舌を巻きます。

まとめ


(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. and Danjaq, LLC.

MI6の諜報員とボリビアの諜報部員が、大事な人を殺された復讐心に囚われつつ、ボリビアの砂漠にある天然資源と石油の採掘利権を狙う巨悪に挑んでいく、アメリカ・イギリス合作のスパイアクション作品でした。

本作の見どころは、前作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)で愛する女性ヴェスパーを失ったことへの悲しみと怒りを抱えつつ、MI6の諜報員として冷静に任務を全うしなければならないボンドの苦悩と、世界各地で彼が繰り広げる激闘の数々です。

本作は前作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)以上に、ド派手で迫力があるアクション場面が描かれていることが多く、特に物語の序盤、崖沿いの道路で展開されるカーチェイスはとてもスリリングなアクション場面となっています。

ただ、わだかまりが解けボンドと友情を築いたマティスと、全身石油まみれにされ殺されたフィールズの死は、ヴェスパーの自死以上に衝撃を受ける場面です。

グリーンやミスター・ホワイトが属する巨大組織の名前は、本作のタイトル「Quantum(クァンタム)」からとったものとなっています。ボンドとクァンタムの戦いがどんな結末を迎えるのか楽しみです。

愛する人を失った悲しみと怒りを抱えるジェームズ・ボンドが、世界各地に根を張りめぐらせる巨大組織の陰謀を阻止する、ハラハラドキドキのスパイアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品となっています。

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