韓国映画『鬼と獣』は血まみれで格闘する男たちを描いたアクションムービー!
韓国のキム・ヒソン監督が贈るノワールアクション『鬼と獣』。
かつて固い絆で結ばれた男2人が辿る壮絶な人生ドラマが描かれ、鮮血が飛ぶ格闘アクションが次々と展開します。
裏社会で鬼と恐れられた殺し屋・ドゥヒョンは、弟分・ヨンミンが犯した罪をかぶって収監されました。
出所後、ドゥヒョンは闇の世界から足を洗い、妻と娘を遠くから見守る日々を送っていますが、組織のトップにのし上がったものの、ドゥヒョンに対して後ろめたい思いを抱くヨンミンが、ドゥヒョンを再び惨劇に引き込みます。
過激なアクションの数々と娘への愛にあふれる本作を、ネタバレ有でご紹介します。
映画『鬼と獣』の作品情報
【公開】
2022年(韓国映画)
【原題】
피는 물보다 진하다
【英題】
The Goblin
【監督】
キム・ヒソン
【脚本】
チョ・チャンリョル
【音楽】
キム・スヨン
【キャスト】
チョ・ドンヒョク、イ・ワン、イム・ジョンウン、ユン・チョルヒョン、カム・ソヒョン
【作品概要】
殺し屋組織の固い絆で結ばれた男たちが、冷酷な抗争へと突き進んでいく姿を描いた韓国製ノワールアクションの『鬼と獣』。
ドラマ『バッドガイズ 悪い奴ら』(2014)のチョ・ドンヒョクが殺し屋ドゥヒョン、『ベロニカは死ぬことにした』(2005)『天国の階段』(2003)のイ・ワンが敵対するヨンミンを演じました。
「のむコレ6」(2022年11月11日~/東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋)上映作品。
映画『鬼と獣』のあらすじとネタバレ
韓国の裏社会。拠点をおかずに暴力の身を請け負う犯罪組織・ペクジョン派の殺し屋ドゥヒョンは、残酷な殺しも平気で行い、‟鬼”と恐れられていました。
ある日、出来て間もない事務所を組織のトップの命令で、ドゥヒョンを‟兄貴”と呼ぶヨンミンと襲撃し、2人で全滅させて逃走しました。
傷を負ったヨンミンですが、電話で呼び出され、赤ん坊の娘ウンジュの心臓手術に立ち会っていました。
一方、警察はこの事件も‟鬼”が犯人と推定し、ペクジョン派に捜査官を潜入させて、調べていますが、潜入捜査もなかなかうまく行きません。
そんな頃、組織では潜入捜査官の身元がばれ、拷問が始まっていました。組織トップがなかなか白状しない捜査官の携帯電話の発信履歴から電話をかけると、捜査一課のチェ刑事に繋がりました。
動かぬ証拠を出された捜査官抹殺命令は、ヨンミンに下りました。
「兄貴助けて」と懇願する弟分を前にためらうヨンミン。見かねてか、横にいたドゥヒョンがさっとナイフで捜査官の頸動脈を斬りつけ、ミッションを終了させました。
その頃チェ刑事は容疑者の一人の家宅捜査をし、カレンダーにメモってあった文字から、「サンミ家具」をあたることにしました。
娘ウンジュの治療に大金がいるヨンミンはトップに「仕事をください」と言います。トップは自分の地位を狙う者として、ヨンミンの兄貴分のホ・ガンの名前をあげました。
ヨンミンはホ・ガンの家を訪れ、大格闘の末に命を奪います。トップに任務達成の報告をしに行ったヨンミンですが、言い争いから格闘となり、ナイフで刺して逃走しました。
そこへドゥヒョンが訪れ、身体にナイフを刺されて虫の息のトップが真犯人の名前を呟くのを聞きます。
ドゥヒョンが呆然と佇んでいると、捜査のために訪れたチョ刑事がやってきました。現場の状況から、ドゥヒョンが犯人とされ、逮捕されました。
2008年。ドゥヒョンは刑に服します。
ドゥヒョンの愛する妻・ジョンは、ドゥヒョンの仕事が嫌でなりません。「娘のイェナのためにも私たちを探さないでください」と手紙と幼いイェナの写真を送って家を出ました。
一度だけ、拘置所にヨンミンが面会に来ましたが、ドゥヒョンはそれを拒否します。その後、ヨンミンは、YMホールディングという会社を立ち上げ、裏社会の力もかりてのしあがっていきました。
2016年。ドゥヒョンは模範囚として出所し、「スチームケアサービス」という会社で働き始めます。
徐々に生活も安定してきましたが、何かと思い出すのは行方知れずの妻子のことでした。
悩むドゥヒョンはチョ刑事に妻子を捜してくれるように頼みますが、その見返りとして、怪しい仕事で上昇企業となったヨンミンの会社を捜査するのを手伝ってくれといいます。
ドゥヒョンは、「この世界から足を洗ったからできない」と断りましたが、チョ刑事はこっそりとドゥヒョンの妻子の現住所を調べてくれました。
映画『鬼と獣』の感想と評価
息つく間もないアクションが展開する『鬼と獣』。殴る、蹴る、刺す。拳銃以外のありとあらゆる暴力、アクションシーンに思わず目を覆うことも……。
暴力と殺人を仕事とする殺し屋たちが主人公ですから、その闘いぶりは激しく、おまけにスピード感もある凄まじいものです。
弟分の罪をかぶって服役した‟鬼”と呼ばれる凄腕殺し屋のドゥヒョンと、彼に対して後ろめたさを感じながらも自分の地位を護ろうとする‟獣”のようなヨンミン。
敵対する2人ですが、2人にはそれぞれに愛娘がいました。愛する娘たちまで巻き込んで闘争は一段と激しくなり、ラストまで目が離せません。
『鬼と獣』という恐ろしさを象徴する言葉が並べられたタイトル通りに、鬼畜の争いが巻き起こるノワールアクションですが、その根底にあるのは殺し屋たちの娘への愛でした。
収監されて妻子は行方知れずとなり、愛娘のイェナと離れ離れになったドゥヒョン。10年という年月がこの父娘の間を隔てます。
実父の顔を知らないはずのイェナは、初めて会ったドゥヒョンに言い知れぬ安心感と包容力を感じています。隠そうとしても隠せない、父娘の強い絆の深さがそこにはありました。
片や、身体の弱いウンジュを溺愛するヨンミン。娘にとっては親のエゴとも取れる愛し方かもしれませんが、これもまた、娘を愛する父の真実の姿だったのです。
裏社会の闘い同様に娘への愛し方も極端な2人の父。同じ男性なのに、なぜこうも違っているのでしょう。
本作は、女性のキム・ヒソン監督が手がけました。冷酷極まりない殺し屋の男たちが持つ意外な家族愛を、監督が女性らしい細やかなセンスで描きだし、興味深く鑑賞できます。
まとめ
最初から最後まで血のニオイがするノワール映画『鬼と獣』。
ドラマ『バッドガイズ 悪い奴ら』(2014)のチョ・ドンヒョクと『ベロニカは死ぬことにした』(2005)『天国の階段』(2003)のイ・ワンが主役の殺し屋たちを演じて、血だらけの格闘シーンで熱演しています。
裏社会の厳しい抗争と恐ろしい掟ばかりが表に出ますが、その裏にはそれぞれが抱える家庭の事情がありました。
殺し屋が意外なほど自分の娘を愛していることに驚き、その親心にホロリとさせられることでしょう。
命がけの血まみれ格闘の中に娘への愛が交錯する、ちょっと切ないアクション映画でした。