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映画『狂獣 欲望の海域』ネタバレ感想。結末まで嵐の海でマックス・チャンら大暴れ!

  • Writer :
  • 田中比奈

今、最も旬なアクションスターと呼ばれるマックス・チャン、ショーン・ユー、ウー・ユエの3人が共演を見せ大激突!

金塊を巡る男たちのバトルロワイヤルで生き残るのは誰だ⁈

『ドラゴン×マッハ!』のスタッフが再集結したハードボイルドアクション映画『狂獣 欲望の海域』の魅力をご紹介します。

映画『狂獣 欲望の海域』の作品情報


(C)2017 SUN ENTERTAINMENT CULTURE LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
【公開】
2017年(中国映画)

【原題】
狂獣 The Brink

【監督】
ジョナサン・リ

【キャスト】
マックス・チャン、ショーン・ユー、ウー・ユエ、ラム・カートン、倉田保昭

【作品概要】
型破りの刑事チャン・ホウトンは、相棒のアダと共に金塊密輸の捜査を開始します。密輸の利権争いと捜査が複雑に絡まり合い、やがて事態は思わぬ方向に…。

金塊を主軸に繰り広げられるハードボイルド・クライム・アクション映画です。

主役には『ドラゴン×マッハ!』などのマックス・チャン、『インファナル・アフェア』シリーズのショーン・ユー、『SPL 狼たちの処刑台』のウー・ユエが共演。

日本からのキャスティングに日本と香港を股に掛ける俳優の倉田善昭、スタッフとして水中カメラマンの奥村康を招聘しています。

シネマートの特集企画『のむコレ2018』上映作品。

映画『狂獣 欲望の海域』のあらすじとネタバレ


(C)2017 SUN ENTERTAINMENT CULTURE LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

刑事ホウトン(マックス・チャン)は優秀でありながら、悪には決して容赦しない過激な人物。

食らいついたら離さないその姿から、西狗とも呼ばれています。一方で義理堅い面もあり、自分が死なせた容疑者の娘には保護者となり援助をしていました。

ある日、ホウトンは「今夜マーワン村に密輸品が荷揚げされる」とタレコミを受け、相棒を連れて村に向かいます。

相棒の刑事はアダ(ショーン・ユー)と言い、この日、のんびりしたいという理由で辞表を提出していました。

村では、2人の男とその部下が抗争を起こしていました。男たちの名前はシンザイとグァイセン(ウー・ユエ)。

2人の父親は、金塊を密輸している漁師ソイシン。一家は蜑民(華南に多い水上生活者。被差別民とされていた)ですが、グァイセンはソイシンの実子ではないため、子供の頃からシンザイと差を付けられていました。

そして密輸業の跡取りに決まったシンザイに、グァイセンがクーデターを起こします。

ホウトンたちが乱入した為に全員逃げ出しましたが、グァイセンは諦めません。彼は密輸ビジネスを乗っ取り、苦しい生活を強いられている蜑民達を助けようとしていました。

後日、グァイセンはシンザイを殺し、ソイシンに重傷を負わせ、金塊を輸出している男=鬼(倉田保昭)との接触方法を聞き出します。

ホウトンは逮捕され入院したソイシンと会い、息子を亡くした彼の気持ちを煽り、グァイセン逮捕への協力を仰ぎます。

ソイシンは「グァイセンは鬼と接触する為、市場にいるはず」とタレコミました。

ホウトンは、もう刑事を辞め海外に行くつもりだったアダを無理矢理連れ、朝の市場に向かいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『狂獣 欲望の海域』ネタバレ・結末の記載がございます。『狂獣 欲望の海域』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
市場でグァイセンを見つけ追い掛ける2人。

しかしグァイセンの恋人(ジャニス・マン)に場を攪乱され、なんとアダを人質に取られてしまいます。

アダを人質にされ、激しい自責の念に囚われるホウトン。そこへグァイセンから連絡があり、ソイシンとアダの人質交換が持ちかけられました。

捜査本部はこれに対し、人質交換に乗った振りをしてグァイセンの逮捕を企てます。

決行当日、ホウトンはソイシンを連れ懸命に駆け回り、グァイセンの手下と闘いました。

ところがグァイセンは綿密な計画を立てており、尾行する警察は妨害され、アダも戻ってこず、ソイシンは死亡してしまいました。

ソイシンが外に連れ出されれば、彼は体内に仕込んだ無線機で鬼と連絡を取り、助けを求めるだろう。無線信号を解析すれば鬼の本拠地が分かる。それがグァイセンの真の狙いでした。

狙い通り目的を果たしたグァイセンは、鬼がいる豪華客船へ向かいました。

ホウトン達捜査本部は、グァイセンが公海に出てしまった事で捜査権が及ばなくなり、手が出せなくなります。

しかも調べたところ、アダには多額の借金がありました。辞職し海外に行こうとしたのは、借金取りから逃れる為です。

人質交換の時、敵が警察の妨害に成功したのも、アダが金塊に目が眩み、情報を流したとしか考えられません。

長年の相棒の真実を知り、ショックを受けるホウトン。それでも信念は曲げられないと、グァイセンが向かった豪華客船を目指し海に出ます。

死を覚悟し、単身で行くつもりでしたが、上司(ラム・カートン)も同行してくれました。

密輸業の全貌は、鬼が持つカジノ兼豪華客船から金塊を海に落とし、その居場所を無線で伝えられたソイシンが漁を装って回収するというものでした。

グァイセンは鬼との接触を果たし、ソイシンとのビジネスを引き継ぎたいと申し出ます。

ところがソイシンと鬼は血の繋がった兄弟であった事、鬼がグァイセンを危険視した事から、交渉は決裂。

グァイセンを消そうとする鬼の手下、逃げるグァイセン、乗り込んだホウトン達との三つ巴の戦いが船で繰り広げられます。

恋人が命を犠牲にして辛くも脱出できたグァイセンは、ボートで待機していた部下と共に、豪華客船の真下に沈んだ金塊を横取りしようとします。


(C)2017 SUN ENTERTAINMENT CULTURE LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
しかしその企みは、追ってきたホウトン達によって阻止されました。

ホウトンとの激しい戦いによって、グァイセンは海中で死んだかと思われました。その後、ホウトン達は鬼の密輸業を全て明らかにし、鬼は逮捕されます。

海底の金塊は、近隣の国々が所有権を争い、回収が進まずにいました。

ところがホウトンは、グァイセンの死をどうしても信じられず、金塊の近くで船上生活を始めました。

グァイセンとその恋人らしき遺体は打ち上げられたのですが、顔が潰れており確信は持てません。

グァイセンは必ず金塊を取りに来る。嵐が来れば国の回収隊は引き上げる、狙うならその時だ。ホウトンはそう信じていました。

かたくななホウトンを義理の娘は説得しようとしますが、ホウトンは譲りません。

娘は夫のいない妊娠をしていました。二度も父を失うのかと気弱になった娘は、一人で育てられる自信が無い、子供を堕ろそうかと呟きます。

ホウトンは、自分の子供と世間の目とどっちが大事だ、と優しく諭しました。

そして嵐の夜、ホウトンは金塊のもとへ向かいます。やはりそこにはグァイセンの船がいました。彼は死んだ恋人の顔を潰してまで死を偽装し、絶対に金塊を手に入れようとしていました。

金塊の数は膨大でしたが、もう少しで全て回収できるという時にホウトンが乱入し、グァイセンの部下を倒していきます。

その中にはアダもいました。お前のせいでこんな事になった、金塊さえあれば全てうまくいくのに、とアダ。ホウトンはアダと闘う気は無く、アダを説得し、金塊を再び海に戻そうとします。

それに対し、金塊を死にもの狂いで守ろうとするグァイセンとアダ。凄まじい嵐の中、最後の死闘が始まります。

雨風と津波に翻弄されながら、金塊を巡って争う男たち。

アダは津波で崩れた金塊の箱に頭をぶつけ、死亡しました。再び海に落ちた金塊を追うグァイセン。

しかし金塊の回収手段をホウトンが全て潰した為、グァイセンは金塊を抱えたまま浮かび上がる事もできず、海底へ沈んでいきました。

後日、義理の娘の通院に付き添うホウトンの姿がありました。

映画『狂獣 欲望の海域』の感想と評価


(C)2017 SUN ENTERTAINMENT CULTURE LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
市場の逃走劇、手錠アクション、海中ファイト、暗器を使った死闘など、香港アクションのエッセンスが目白押しの本作。

本作のストーリーは込み入っているものの、歯ごたえのあるアクションとスタイリッシュな映像をたっぷり堪能できます。

特に嵐の海でのクライマックスの場面は必見です。

マックス・チャン、ウー・ユエ、ショーン・ユーの初共演に相応しい舞台が用意されたのではないでしょうか。

雨風に打たれながら豪快に金塊を捨てるマックス・チャン。金塊を追って荒れ狂う海に飛び込むウー・ユエ。

鬼の形相で迫るショーン・ユーとのデスマッチ。そして戻ってきたウーとの執念の戦いからの海中での追いファイト!

荒海の恐ろしさや雷雨の神々しさを背負い、もはや泥臭さを超える三人の益荒男ぶりがテンションを最高潮に高めてくれます

なかでもマックス・チャンは、悪徳を絶対に許さない、もはや狂気すら感じる主人公を熱演

義理の娘との会話は一見本筋には関係ありませんが、刑事としてのホウトンとはまた異なる面を見せる事で、キャラクター性に深みが出ています。

娘への「自分の子供と世間の目と、どっちが大事だ」という台詞に、ホウトンの行動原理が感じ取れるのではないでしょうか。

彼にとっては自分が属する組織も、世間も関係ありません。ただ自分の執念に従って突き進むのみ。

金塊に固執し続けたアダをホウトンは否定しますが、彼もまた「正義」に縋らなければ生きていけない。

彼の行動全てから、そんなもの悲しさが感じられます。

まとめ


(C)2017 SUN ENTERTAINMENT CULTURE LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

敵は漁師、戦場は海、という「海」というモチーフを存分に活かしきった本作『狂獣 欲望の海域』。

アクションスターたちの暴れっぷりと、こだわり抜いた海の描写が見事に融合映画です。

嵐や海の自然描写は時として演出の幅を狭めてしまいますが、この作品での海はキャラクターの心の叫びであり、アクションを際立たせる舞台でもあり、また無情に人を呑み込む摂理そのものでもあります。

自然と一体となり、武器も使わず闘う男たちの物語をここまで迫力ある筆致で描けるのは、やはり香港アクション映画が一番ではないでしょうか。

40年以上続いたその歴史の重み、俳優やスタッフのスケールの大きさに感じ入った作品でした。

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