北と南の刑事がタッグを組み、史上初の型破りな“共助捜査”が今、始まる!
韓国映画『コンフィデンシャル/共助』をご紹介します。
1.映画『コンフィデンシャル/共助』の作品情報
【公開】
2018年(韓国映画)
【原題】
Confidential Assignment
【監督】
キム・ソンフン
【キャスト】
ヒョンビン、ユ・ヘジン、キム・ジュヒョク、ユナ、チャン・ヨンナム、イ・ドンフ
【作品概要】
北朝鮮のエリート刑事と韓国の熱血刑事がコンビを組んで型破りな共助捜査をすることに! 様々な思惑が交錯して、自体は急展開する!
2.映画『コンフィデンシャル/共助』のあらすじとネタバレ
ピョンヤン近郊。特殊部隊に所属するエリート刑事イム・チョルリョンは、国内でアメリカドル紙幣の偽札を製造している組織を摘発するため、検閲員の部下を率いて任務にあたっていました。
チャ・ギソン隊長からは待機するよう命令がありましたが、彼は現場に突入します。
すると、謎の武装集団が偽札工場で働いている人々を殺害し、偽札の銅板を手に入れようとしていました。
殺戮を阻止しようと、チョルリョンが行動を起こすと、ギソンが現れ、チョルリョンたちを攻撃し始めました。
チョルリョンの妻と仲間は殺され、チョルリョンも銃弾を受け、倒れてしまいます。
ギソンはトドメを刺そうとしますが、弾切れで、「運のいいやつだ。お前を助けたのは俺の慈悲だ。忘れるな」と言い捨てると、銅板を盗みその場を去りました。
チョルリョンは上層部からなぜ一人助かった?と拷問を受けます。
ギソンは中国の大連に向かい、そこから韓国・ソウルに飛んだと聞かされます。
「生かしてくれたら、ギソンを殺しに南へ向かいます」とチョルリョンは訴えます。
偽札を作っていたことが他国に漏れると戦争に発展する恐れがあると案じた北朝鮮の上層部は、一週間後にソウルで開かれる北南長官級会談に乗じて、チョルリョンを施設団として派遣し、銅板を回収、ギソンを逮捕する計画を建てます。
捜査期間は三日間。
その頃、ソウルでは、カン・ジンテという刑事が容疑者を追い詰めていました。しかし、逮捕まであとちょっとというところで娘から電話が入り、そちらに気を取られたすきにあっけなく容疑者に逃げられてしまいます。
3ヶ月の定職を言い渡されたジンテは、呑気なことにゆっくり寝坊しようと目論んでいましたが、娘がアイフォンを買ってとねだるわ、義理の妹が100万ウォン口座に入金してくれと強引に頼んでくるわで、おちおち眠っていられません。
そんな折、ピョ班長に呼び出され、南北長官級会談が開かれる際に、脱北した犯罪者を北の警察が捕まえにやってくるから、南の代表として協力するようにと命令されます。
南北共助捜査は史上初で、うまくいけば出世も昇給もありうると目論んだジンテは、任務を引き受け、チョルリョンを迎えに行きます。
チョルリョンを見たジンテは思わず「チョーかっこいい!」と口走っていました。
挨拶を交わすと、ジンテはいきなり腰にさしたチョルリョンの銃を取り上げ、「銃器は南が管理する」と言い放ちました。
そして、盗聴器を仕込んだアイフォンを渡そうとしますが、チョルリョンはアイフォンは持っていると受け取りを拒否します。
ジンテはピョ班長から、これは極秘の仕事であること、捜査に協力するふりをして遠ざけるようにと命令されていました。
チョルリョンも、北朝鮮の上層部から偽札のことは一切南に話してはいけないと命じられていました。
二人は、唯一の手がかりであるギソンの元部下であるパク・ミョンホの居場所を突き止めようと高速に乗りますが車は大渋滞。
急ぐそぶりもないジンテに呆れるチョルリョン。挙句に無線ではいった他の事件の現場に行こうとするので、チョルリョンは、車を降りて、高速のガードを飛び越え、軽々とはるか下の道路に飛び降り、ジンテは仰天します。
その頃、韓国の上層部もギソンが韓国に入国し、北朝鮮がギソンを探しているという情報を入手していました。
チョルリョンはパク・ミョンホの居場所をつきとめますが、民間人が巻き込まれ、あわや大事故という騒ぎになります。
あわててかけつけたジンテと、チョルリョンが体をはったため死傷者は出さずにすみましたが、極秘の調査どころか、捜査の宣伝ではないかとジンテは大目玉を喰らってしまいます。
ギソンのような大物がなぜソウルに来て、北の当局がそれを捜査しているのか、ジンテは情報を聞き出すように命じられます。
ジンテはチョルリョンを飲み屋に連れて行って、酒をつごうとしますが、彼は飲もうとしません。が、ジンテの「兄と弟にならないか?」という提案には「いいですね」と快く応じました。
ジンテはチョルリョンの足クビに素早くあるものを装着しました。「これは刑事なら誰もがつけているものだ」、「位置追跡機では?」とチョルリョンに指摘され、「バカ言うな。韓国ではズボンの裾を捲ってこれを見せれば、ああ、仲間かとわかるんだ」としどろもどろに誤魔化し、なんとか納得させるのでした。
ジンテはチョルリョンを自宅につれて帰ります。義妹のパク・ミニョンは彼のカッコよさにうっとり。猛烈アタックを始めます。
最初は泊めるのを嫌がっていたジンテの妻・ユナも、ご馳走を作って彼を温かくもてなしました。
パク・ミョンホは怪しげな店に出入りし麻薬を売っているチンピラですが、ギソンと連絡を取り、彼に犯罪組織の大物を仲介する役割を果たしていました。
ギソンはチャン・ソンテという犯罪組織のソウル支部長と会談し、銅板の取引を持ちかけます。ソンテはなかなかずる賢い男で、銅板の性能を見極める必要があると彼をじらします
その頃、ジンテとチョルリョンは、パク・ミョンホを追って、免税店に踏み込み、乱闘となっていました。
銃を持っていないチョルリョンは紙コップにトイレットペーパーをつめた武器(!?)で、敵を次々に倒し、ジンテを驚かせます。
継いで、ジンテとチョルリョンは中華料理店を訪ねます。二階は雀荘になっていました。
ジンテが対応している中、チョルリョンは、パク・ミョンホが建物横の路地にいるのに気付きます。
ギソンの大勢の手下が、密入国してソウル入りしており、パク・ミョンホはその一人に南に残りたいという希望を訴えていました。しかし男は彼を撃ち殺します。「裏切り者は許さない」。
かけつけたチョルリョンに、男は携帯を渡します。憎きギソンの声が耳に飛び込んできました。
「チョルリョンか? 助けてもらった命は大事にしろ」
「待っていろよ!」と言うチョルリョンに「来てみろ。そこはお前と南の刑事の墓場だ」とギソンは応えました。
男とチョルリョンは激しく争いますが、逃げられてしまいます。そこにジンテがかけつけ、パク・ミョンホが死んでいるのに気が付きます。「なぜ死んだ? 手がかりがなくなったじゃないか!」
ギソンが北朝鮮の将軍だとピョ班長から知らされたジンテはチョルリョンに詰め寄ります。
「なぜ、北の将軍が軍人を連れて南へ? 黙っていたら捜査できない!」
「やつは検閲員を殺しました。大事な同士を、僕のせいで」チョルリョンはジンテに真実を打ち明けました。
韓国の警察はパク・ミョンホの遺留品の中から片面だけ刷られた偽札を発見し、ギソンの取引相手を割り出していました。
そのことを知ったチョルリョンは「やつらの居場所を教えてほしい。
捕まえたら銅板を渡します。約束します。助けてください」と真剣な目でジンテに訴え、二人はチャン・ソンテのアジトへ向かいました。
チャン・ソンテはギソンに提示額の半額でなら取引しようと応えていました。足元を見て交渉に応じようとしないソンテにキレたギソンは彼を撃ち殺します。
そこに屋上からロープを使い、ガラスを突き破ってチョルリョンが侵入。「本当に来たな」とギソンは言い、撃ち合いになります。
ギソンは手榴弾を爆発させ逃走。その際、駆けつけたパトカーに乗っていたジンテの後輩が撃たれて負傷してしまいます。
撃たれた箇所を確認したチョルリョンは「大丈夫、急所をはずれている」と後輩の傷を見ていいます。心配するジンテに「行ってください」と言う後輩。
追跡中のジンテに班長から連絡が入りました。「チョルリョンを行かせたらダメだ!」「捜査の隠蔽?」「この案件は俺達の手を離れたんだ」
全ては国家情報員の手に渡ったと班長は説明します。
「刑事を撃ったやつをつかまえないでどうする! 北も南もないだろ!」ジンテは班長の命令を無視して追跡を続けるのでした。
3.映画『コンフィデンシャル/共助』の感想と評価
「かっこいい~~」と登場人物たちが何度も代弁してくれているように、ひたすらヒョンビン扮する北朝鮮のエリート刑事、チョルリョンがかっこいい、ある意味、ヒョンビンの「アイドル映画」のような作品です。
映画を見ながら、何度心の中で「かっこいい~」と呟いたことでしょう。
といっても軟弱な映画ではありません。アクションシーンは見事としかいいようのない鮮やかさ。
チョルリョンがいきなりロープを使い、階下の窓ガラスを突き破って侵入するシーンや、走る自動車のドアを取り除いて、身を出して銃を構えるシーンなど、ああ、なんてかっこいいのでしょうか!!
…と、何を書いても結局「かっこいい~」にいきつくわけですが…。
勿論それだけでなく、北と南の腹の探り合いというポリティカルミステリー、北と南の刑事が組むというバディ映画としても存分に楽しめます。
おまけにコメディ要素も満載の文句のつけようのない傑作なのです。
さらには、北と南の刑事が互いの祖国に関して本音丸出しで言い争うシーンもあり、南北間のデリケートな部分、政治的部分にもしっかり焦点をあてながら、それを極上のエンターティンメントに仕上げる韓国映画の成熟ぶりには実に驚かされます。
ユ・ヘジン演じる頼りないけれど気のいい南の刑事、ジンテには何度も笑わされました。
とりわけ、チョルリョンと自分を手錠でつなげた状態で、車に乗ろうとするシーンでは映画館は爆笑に包まれていました。
しかし、そんな彼の心に根ざした刑事魂には心奮い立たされ、泣かされます。
まさに笑いあり、涙あり、手汗握るアクションあり、韓国での動員数が781万人を記録し、2017年韓国映画上半期動員数ナンバー1を記録したのも頷けます。
大きなスクリーンで鑑賞できる機会に是非多くの方に見てもらいたい一作です。
4.まとめ
ドラマ『シークレット・ガーデン』で、日本でも圧倒的人気を獲得したヒョンビンが三年ぶりに映画に出演。初のアクション映画出演とは思えないキレのいい動きをみせてくれます。
主演作品『LUCK-KEY/ラッキー』(2016)が大ヒットとなったベテラン俳優ユ・ヘジンが、韓国の庶民派刑事を演じ、そのダメっぷりと、心に秘めた熱い想いが笑いと涙を誘います。
ソン・ガンホと組んだ出演作、『タクシー運転手~約束は海を越えて~』は、2017年、韓国動員1,200万人突破のNo.1ヒットとなり、日本公開も間近です。
敵役ギソンを演じたキム・ジュヒョクは、本作の演技で第一回THE SEOUL AWARDSの最優秀助演男優賞に輝きました。
しかしその三日後に運転手の心筋梗塞による交通事故で亡くなっています。スクリーンでもう彼の新作を観られないのはとても残念です。
北からきた刑事にぞっこんになるミニョン役は女性アイドルグループ少女時代のイム・ユナが演じ、まさに観客の気持ちを代弁する演技を見せてくれます。
『チェイサー』(2008/ ナ・ホンジン監督)、『哀しき獣』(2010/ナ・ホンジン監督)の撮影監督イ・ソンジェが、本作でもソリッドな映像を作り上げています。
彼の発言によると、後半の見せ場であるカーチェイスは、時速100キロ超の車から乗り出す超危険スタントだったとか!
監督のキム・ソンフンに関しては、『マイ・リトル・ヒーロー』(2013)で監督デビューという情報しか得られていないのですが(本作が二作目?)今後の活躍がとても楽しみな監督です!