悪を狩るため、男は修羅の道へ突き進む
悪人を過激に裁く映画は数多くあれど、「ヒーロー」作品として物語が進むと主人公の「善性」に疑問を覚えてしまい、全力で楽しむことが出来ないことがあります。
しかし、それはあくまで主人公が「ヒーロー」であるからであり、「ヒーロー」であることを自負していない人間が主人公であれば割り切って楽しむことが出来ます。
今回は悪を「狩る」ため人を殺すことに一切の抵抗も葛藤も持たない、「ダークヒーロー」を主人公とした映画『クレイヴン・ザ・ハンター』(2024)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『クレイヴン・ザ・ハンター』の作品情報
【日本公開】
2024年(アメリカ映画)
【原題】
Kraven the Hunter
【監督】
J・C・チャンダー
【脚本】
アート・マーカム、マット・ホロウェイ、リチャード・ウェンク
【キャスト】
アーロン・テイラー=ジョンソン、アリアナ・デボーズ、フレッド・ヘッキンジャー、アレッサンドロ・ニヴォラ、クリストファー・アボット、ラッセル・クロウ
【作品概要】
「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」こと「SSU」の6作目となり、「マーベル・コミック」のヴィランとして知られる「クレイヴン・ザ・ハンター」を主人公とした作品。
映画『トリプル・フロンティア』(2019)を手掛けたJ・C・チャンダーが監督を務め、『キック・アス』(2010)で主演を務めた後に『TENET テネット』(2020)などの作品で印象的な役を演じたアーロン・テイラー=ジョンソンが「クレイヴン・ザ・ハンター」を演じました。
映画『クレイヴン・ザ・ハンター』のあらすじとネタバレ
ロシア囚人流刑地に収容されたセルゲイは、刑務所に収容されながらも世界中で武器を売りさばくキーロフ・ギャングのボスであるセミョンと対面します。
セルゲイはセミョンと彼を囲む部下の前に怯むことなく、死ぬ相手にだけ教える「クレイブン」の名を教え、セミョンたちを惨殺しました。
常軌を逸した身体能力で刑務所から脱獄したセルゲイは、用意していた小型機に乗り込み極寒の地から離れていきました。
16年前、弟のディミトリとニューヨークの学校に通っていたセルゲイは父のニコライに呼び寄せられ、タンザニアに狩りに行くことになります。
ニコライは自殺したセルゲイの母を弱者と吐き捨て、2人に強い人間になることを求め20人以上のハンターを殺害した「レジェンド」と呼ばれるライオンの狩猟に同行させます。
狩猟中、同行した狩人のアレクセイを小者と切り捨てるなど、ニコライは自身に絶大な自信を持っていました。
ニコライから離れた場所で「レジェンド」と遭遇したセルゲイは咄嗟に銃を向けますが、「レジェンド」との間に何かを感じ銃を下ろします。
しかし、事態を察したニコライが「レジェンド」に発砲したことで、「レジェンド」は興奮しセルゲイを襲撃し連れ去ってしまいます。
その頃、タンザニアの祖母を訪ねていた少女のカリプソは、祖母から何でも治すことの出来る「秘薬」を受け取っており、瀕死のセルゲイを見つけた彼女はセルゲイに「秘薬」を半分飲ませました。
病院に運ばれたセルゲイは死亡を宣告された3分後に息を吹き返し、カリプソの残した「力」のタロットカードを見つけました。
ロンドンの家に戻ったセルゲイは、ニコライが「レジェンド」を殺し剥製にしたことに憤慨し、ニコライの家から出て1人で生きていくことを決意。
気弱なディミトリを家に残すことだけが気がかりでしたが、セルゲイはロンドンを離れ亡き母が土地を所有するロシアの山中へと逃げ、自然の中で過ごしていくことになります。
復活を果たした日からセルゲイは自身の中に大きな力が存在することを感じており、鷹のような目やライオンのような脚力を森の中で発揮していきます。
銃声を聞き取ったセルゲイは音のあった場所に駆け付けると、そこには動物を殺害し角を切り取る密猟者の姿がありました。
怒りに震えるセルゲイは密猟者を殺害してしまうのでした。
現代、世界各地で「密猟者」を裁くことでマスコミから「ザ・ハンター」と呼ばれるセルゲイは、毎年ディミトリの誕生日を祝うためニューヨークを訪れていました。
今年のセルゲイの目的はそれだけではなく、自身を蘇生させたカリプソがニューヨークで弁護士を務めていることを調べ上げたセルゲイは、悪を憎むカリプソと接触し自身が「ザ・ハンター」であることを白状し協力を求めます。
その頃、死亡したセミョンの縄張りを狙うギャングのライノが、同じくセミョンの縄張りを狙うギャングのボス・ニコライを出し抜くために行動を始めており、「ザ・ハンター」こと「クレイヴン」の正体が、ニコライの息子であるセルゲイであることを突き止めていました。
ライノはセルゲイがディミトリの傍から離れた隙を狙い、部下にディミトリを誘拐させるのでした。
映画『クレイヴン・ザ・ハンター』の感想と評価
密猟者を狩るため男は修羅へと身を染める
本作の主人公となるセルゲイこと「クレイヴン・ザ・ハンター」は、原作のコミックシリーズでは「スパイダーマン」を代表するヴィランとして知られています。
ハンターを名乗り「狩り」を行うセルゲイですが、媒体によって異なるもののその狩猟対象は多くの場合「人間」であり、人を殺害することを気に止めません。
本作では狩猟対象を「密猟者」に絞っているため、「ヴェノム」を始めとした「SSU」に登場する主人公たちと同様に人道を踏み外した人間を「狩る」ヒーローとなっていますが、「狩り」の過激さはとてもヒーローとは言い難く、ヴィランを題材とした作品らしく「ダークヒーロー」を徹底して描いています。
目的のためなら手段を選ばず「密猟者」を恐怖のどん底に叩き落す、新感覚のヒーロー映画を楽しめる作品です。
メインヴィランは原作コミックお馴染みの敵役
本作には原作コミックにおいて「スパイダーマン」に対するヴィランとして有名な「ライノ」が登場します。
映画としては『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)に登場したものの、本格的なヴィランとしての扱いではありませんでした。
しかし、『クレイヴン・ザ・ハンター』ではそんなライノが実写作品としては初のメインヴィランを務めており、サイと同じ硬質化された皮膚を持つ人間として、強化されたセルゲイですら圧倒するパワーを見せてくれます。
人を殺すことに抵抗のない、「スパイダーマン」でお馴染みの2人のヴィランがぶつかる、原作ファンとしてはあまりにも豪華な内容のマーベル映画でした。
まとめ
精神面においても頭脳や肉体面においても何もかもがすぐれている兄に比較されて生きてきた弟。
歪んだ家族への愛情を向ける猟奇的な父との確執と言う、ヴィランムービーでありながらも家族映画でもある『クレイヴン・ザ・ハンター』。
残念ながら「SSU」の一区切りの作品となってしまうことが噂されている本作ですが、シリーズとは独立した一本の作品として十分に成り立っている作品でもありました。
何もかもが過激な「狩り」ムービーである本作は、アクション映画としてももちろんオススメの作品です。