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『アイアンマン』ネタバレあらすじ感想と結末の考察解説。スーツ誕生編となる1作目は“アベンジャーズ/エンドゲーム”までの入門編!

  • Writer :
  • タキザワレオ

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)第1弾

マーベル・コミックの人気キャラクターをアイアンマン主演で実写映画化した痛快SFアクション『アイアンマン』。

軍需産業の経営者であり発明家のトニー・スタークが、自社兵器の悪用を食い止めるために自ら開発したパワードスーツを身に纏い、テロリストに立ち向かいます。

マーベル・スタジオ製作のスーパーヒーロー映画シリーズ化したメディア・フランチャイズおよびシェアード・ユニバースを構築したMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品第1弾として画期的かつ挑戦的なオリジンストーリーでした。

アメコミヒーロー映画入門でもある『アイアンマン』(2008)をご紹介します。

映画『アイアンマン』の作品情報


(C) 2008 MVLFFLLC. TM & (C) 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.

【日本公開】
2008年(アメリカ映画)

【監督】
ジョン・ファブロー

【出演】
ロバート・ダウニー・Jr.、テレンス・ハワード、ジェフ・ブリッジズ、グウィネス・パルトロウ、ショーン・トーブ、ファラン・タヒール、レスリー・ビブ、クラーク・グレッグ、サミュエル・L・ジャクソン

【作品概要】

『スパイダーマン』『ハルク』などを生み出したマーベル・コミックが原作。全米で2008年に公開され、大ヒットしたヒーローアクション映画。
監督は『エルフ〜サンタの国からやってきた〜』(2003)『ザスーラ』(2005)のジョン・ファブロー。
主演は『チャーリー』(1993)にて英国アカデミー賞主演男優賞を受賞したロバート・ダウニー・Jr.。

『アイアンマン』のあらすじとネタバレ


(C) 2008 MVLFFLLC. TM & (C) 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.

巨大軍需産業“スターク・インダストリーズ”の社長であるトニー・スタークは、自社で開発した新型クラスターミサイルのプレゼンテーションをすべく、アフガニスタンに駐屯するアメリカ空軍を訪問していました。

砂漠を移動中の車内では、トニーのセレブエピソードに軍人たちが盛り上がっていましたが、テロ組織“テン・リングス”の襲撃を受け、部隊は全滅。

爆撃に身を隠すトニーは、撃ち込まれたミサイルに刻まれた自社のロゴマークを目撃した刹那、爆風で吹き飛ばされて意識を失います。

目を覚ましたトニーが連れてこられたのは、テン・リングスのアジトである洞窟でした。

爆発の際に突き刺さったミサイルの破片が心臓に刺さらぬよう、トニーの胸部には車載用バッテリーが繋がれており、瀕死の状態の彼を救ったのは、共に洞窟に監禁されているインセン博士でした。

アジトには横流しされたであろうスターク社製の武器があり、トニーは解放の条件として米軍に提供予定であった新型クラスターミサイルの組み立てを強要されます。

洞窟内に揃えられた機材からトニーは、インセンと共にエネルギーを生み出す熱プラズマ反応炉“アーク・リアクター”の小型版を開発。ミサイルの組み立てに見せかけながら、アジトからの脱出用パワードスーツの開発を秘密裏に着手します。

生命維持機能を兼ね備え、膨大なエネルギーをコントロールする小型アーク・リアクターと連動するパワードスーツ“マーク1”をミサイル組み立ての遅延に痺れを切らしたテロリストたちがトニーたちの作業場に駆けつける寸前に完成させます。

アーマーの大火力によってテロリストたちを圧倒するトニーでしたが、スーツ起動の時間稼ぎのために無鉄砲にゲリラに立ち向かっていったインセンは命を落としてしまいます。

トニーはアジトにあった自社製の兵器をことごとく爆砕した後、空高く飛び上がり脱出を果たします。

空中をしばらく飛行してからスーツが破損し、アフガニスタン辺境の砂漠に墜落したトニーは、やがてローディ率いる米軍の捜索隊に保護されてアメリカに帰還しました。

アフガニスタンで自社製品がゲリラの手に渡り、人命を奪う様を目の当たりにしたトニーは、帰国後に行った記者会見で軍需産業からの撤退を宣言。

スターク社副社長であり、両親のいないトニーにとっては親代わりの存在でもあったオバディア・ステインは役員会でトニーの解任要求を提出し、これに抗おうとします。

トニーはオバディアの助言を聞き入れず、犯罪者やテロリストと戦うために私費と技能を投じて新たなアーマーの開発に着手し始めます。

より身体にフィットしたスタイリッシュな試作品“マーク2”を開発。

飛行テストでは高高度での氷結化しシステムが機能停止する問題に突き当たるも、問題を解決した“マーク3”を完成させ、自らスーツを着装。アフガニスタンに残っている自社製兵器の破壊とゲリラの殲滅にと向かいます。

アフガニスタンでミサイルを破壊し、スーツを着て空を飛ぶトニーの姿はアメリカ空軍に捕捉され、未確認飛行物体として攻撃対象にされてしまいます。

飛行中のトニーは緊急出動した空軍の戦闘機との交戦を余儀なくされます。

空軍から連絡を受け管制室へ来たローディはすぐさまトニーに電話し、未確認飛行物体の正体に心当たりが無いかどうか尋ねますが、トニーから返ってきた答えは未確認飛行物体はトニー自身だという事実でした。

トニーはローディの他に胸のアーク・リアクターと動力交換を頼んだ秘書のペッパー・ポッツにも完成したパワードスーツを見せ、自らゲリラを殲滅したことを明かします。

しかしトニーは自身が撃退したゲリラが、未だスターク社製兵器を秘匿していることを知り、社内に内通者がいると睨みます。

トニーの指示でペッパーはオバディアのハードドライブから情報を抜き取り、スターク社の乗っ取りを目論むオバディアがテン・リングスの内通者であったこと、トニーの誘拐も彼の手引きであったことの証拠を手に入れます。

ペッパーはトニー帰国後の会見以来、接触してきていた戦略国土調停補強配備局の捜査官、フィル・コールソンと共にオバディアの計画阻止に動き出します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『アイアンマン』ネタバレ・結末の記載がございます。『アイアンマン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C) 2008 MVLFFLLC. TM & (C) 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.

トニーとペッパーに計画を知られたオバディアは、トニーに不意打ちを仕掛け、胸部のアーク・リアクターを強奪。

ゲリラが回収していたマーク1の残骸をもとにオバディアが自分用に改修したパワードスーツ“アイアンモンガー”にトニーのアーク・リアクターを装着します。

生命維持装置を奪われたトニーは瀕死の状態に陥りますが、ペッパーに交換してもらった旧型のアーク・リアクターを装着し一命を取り留めました。

その頃、ペッパーはコールソンを含めた5人の捜査官を連れて、オバディア逮捕へとスターク社セクション16に向かっていました。

セクション16でペッパーたちを待ち構えていたのは、巨大なパワードスーツ“アイアンモンガー”に身を包んだオバディアでした。

“マーク3”を装着しペッパーのもとへ急行するトニー。

トニーとオバディアは周囲への被害を顧みず、路上で大格闘を繰り広げます。

やがて空中戦となり、トニーとオバディアは高高度まで上昇します。

トニーを背後から掴みかかるオバディアでしたが、“マーク3”と異なり氷結対策をしていなかった“アイアンモンガー”は機能停止し、地表へと落下していきました。

やがて会社の屋上にオバディアを誘い込んだトニーは、巨大なアーク・リアクターのエネルギーをオーバーロードさせ、“アイアンモンガー”は感電し、アーク・リアクターとともに大爆発を起こしました。

この事故は操作ロボットの故障と報道され、謎のアーマーを着たヒーローはマスコミにより“アイアンマン”と名付けられ、一躍有名になりました。

コールソンは正体を秘密にするためのアリバイを用意しますが、マスコミからの記者会見にてトニーは、「私がアイアンマンだ」と公表します。

その後、S.H.I.E.L.D.の長官、ニック・フューリーが、トニーのもとに現れ「君にアベンジャーズの話をしに来た」と告げました。

『アイアンマン』感想と評価

マーベル・スタジオの危機を救ったカリスマ


(C) 2008 MVLFFLLC. TM & (C) 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.

今ではアメリカポップカルチャーを牽引するほどの人気を誇る絶対的なフランチャイズとなったMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)

しかしその船出は決して手堅いものではなく、会社倒産の危機という絶体絶命の崖っぷちで生まれた挑戦的な意欲作だったのです。

本作と同年の公開作と言えばアメコミヒーロー映画というジャンルとしては異例の快挙となったアカデミー賞受賞作品『ダークナイト』(2008)が印象的であり、同作のヒットによってマーベル・コミックの競合であるDCコミックスは、現在まで硬派な犯罪映画のような「リアル路線」を1つの正攻法として踏襲しています。

対するマーベルは、『スパイダーマン』(2002)のような会社を代表する単独ヒーロー作品のヒットには本作まで恵まれません。

もともとアイアンマンというキャラクターの認知度は低く、アベンジャーズのメンバーの1人程度の認識。マーベルの代表的なキャラクターと言えば、既に何度か実写化されているスパイダーマン、キャプテン・アメリカ、ハルク、ファンタスティック・フォーでした。

2008年の実写化実現に至るまで、90年代には20世紀フォックスに映画化権を買い取られ、後に『ゴーストライダー』(2005)を演じることになるニコラス・ケイジやトム・クルーズがトニー・スターク役候補に上がっては企画立ち消えを繰り返し、2005年の映画化権失効を迎えたアイアンマン。

パラマウント・ピクチャーズが配給し、ケヴィン・ファイギをプロデューサーとしたマーベル・スタジオ製作第1回作品として『アイアンマン』はロバート・ダウニー・Jr.を主演に迎えました。

8歳の頃から父親からマリファナを与えられて以降、長年薬物問題に悩まされ、2003年に完全に薬物を断ったばかりのロバート・ダウニー・Jr.を起用することに対し、当初マーベル・スタジオは否定的であったものの、オーディションでのハマりっぷりをジョン・ファヴロー監督に後押しされた結果、元薬物依存症の中年俳優がハリウッドに返り咲く現実とトニー・スターク再生の物語とが見事にシンクロしたのです。

自己像を作り上げるオリジンストーリー


(C) 2008 MVLFFLLC. TM & (C) 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.

上映時間およそ2時間の本作のテンポ感は抜群

「なぜヒーローは誕生したのか」を描くオリジンストーリーにありがちな説明過多なダルさは一切なく、30分で「テロリストによる誘拐から、脱出のための“マーク1”開発まで」を描き、「脱出から“マーク2”開発に着手し、“マーク3”を完成させるまで」という試行錯誤を経たステップアップを前半1時間をかけて丁寧に描いているのです。

この前半は自身の手で作り上げたヒーロースーツを身に纏うことで外側(外見)からヒーローになったトニーという人物を見せ、形から入ることで自らをヒーローとして見せた男が兵器産業に加担した罪を自身の商売道具を全て破壊することで精算するという地位と名声を手に入れながらも、己の傲慢さと無知を内省し、マイナスの状態から這い上がる物語が描かれます。

語り口の軽妙さと、ロバート・ダウニー・Jr演じるトニー・スタークのカリスマ的魅力によって、「金持ちの天才が腹心の裏切りによって自身の立場を危ぶまれながらも、持ち前の技術と経験によって危機を免れる」という鼻持ちならない成功者の成功談を嫌味のないストーリーとして、“痛快さ“さえ感じさせてくれるのです。

そこにはトニー・スタークという人物が持つ最大の魅力である「自らパワードスーツを開発する」という前半のメインストーリーが大きく影響を及ぼしています。

本作のカタルシスは強敵(ラスボス)を倒すことになく、自分でヒーローのガワを作ることにあります。コスプレイヤーの方にとっては、本作ほど、衣装製作のモチベーションが上がる作品は無いでしょう。 

また全身を覆ったフルフェイスマスクのヒーローの素顔を映す「内部の装着者の顔のアップ」というアイデアは、その後のアイアンマン的ヒーローにインスピレーションを与え、日本特撮作品においても仮面ライダーバース、仮面ライダービルドなど同様の演出にその影響は見え、アイアンマンというキャラクターが持つ日本的ヒーローとの親和性を感じさせます。

自分でスーツを作る(=コスプレ)の概念は、MCU第1作である本作から2022年7月現在TVシリーズ最新作である『ミズ・マーベル』(2022)にまで、図らずも受け継がれており、当人の行いや影響力によって内側からヒーローになるのと同様に、スーパーヒーロー然とした見た目を作り上がることが、当人にとっては自己暗示の作用を、観客にとってはそこでひとつリアリティラインを飛び越え世界観に没入する機能を担っているのです。

このようにヒーローらしい見た目を作り上げていくパワードスーツ開発を最大の見どころとした本作は、近年の作品のような壮大な世界観と宇宙規模のストーリーが錯綜するアメコミ超大作と一線を画すストーリーの地味なスーパーヒーロー映画です。

2008年当時、地球全土を巻き込んだ未曾有の危機が起こるスーパーヒーロー作品といえば『X-MEN3 ファイナル・ディシジョン』(2006)『ファンタスティック・フォー 銀河の危機』(2007)の記憶が新しく、いずれも世界観構築のセッティング不足のまま、風呂敷を畳みにかかった意欲が汲み取れる作品でしたし、現在のMCUのようなグランドデザインは構想すら怪しいものでした。

本作にも続編に期待を持たせるエンドクレジットシーンこそあれ、パイロットエピソードらしい1話完結のとっつき易さが入門者向きであり、怒涛のストーリー展開、アジテーションの如き能力・世界観のインフラが起きる遥か手前の第1話として、エピック感の無さが今となっては魅力的です。

まとめ


(C) 2008 MVLFFLLC. TM & (C) 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.

アイアンマン誕生編である本作から11年後に公開されたロバート・ダウニー・Jr.引退作『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)に至るアイアンマンの出演作は全部で9作品

最終作には、入門編である本作の印象的なセリフ、アイテムなど散りばめられており、シリーズ1作目から付き合い続けてきたファンに対するサービスを存分に味わうことが出来ます。

MCUという巨大なフランチャイズを生み出した記念碑的な作品でありながら、2000年代後期に作られたアメコミ映画独特の雰囲気も残っており、公開順に見ていくことで計画的な世界観の広がりを感じることができる一作です。

キャスティングのトラブルによって2作目以降の続編では、ローディ役がテレンス・ハワードからドン・チードルに代わっていたり、戦争犯罪への加担を反省したヒーローが(故意ではなくとも)黒幕を殺して社内トラブルを解決する結末など、全てが上手くいった作品ではありませんが、主演俳優のカリスマ性と自らヒーローを作るクリエイティブな面白さが見どころとして非常に魅力的であり、それだけで現在のアメコミヒーロー特需を巻き起こすほどの影響力を持っていたことは否定しようがありません。




タキザワレオのプロフィール

2000年生まれ、東京都出身。大学にてスペイン文学を専攻中。中学時代に新文芸坐・岩波ホールへ足を運んだのを機に、古今東西の映画に興味を抱き始め、鑑賞記録を日記へ綴るように。

好きなジャンルはホラー・サスペンス・犯罪映画など。過去から現在に至るまで、映画とそこで描かれる様々な価値観への再考をライフワークとして活動している。

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