映画『安市城 グレート・バトル』は2019年7月5日(金)よりシネマート新宿ほか順次公開
韓国で観客動員数500万人を超える大ヒット!
かつて唐の軍隊20万人に立ち向かった、小さな城の偉大な姿を描いた歴史バトルアクション大作『安市城 グレート・バトル』をご紹介します。
映画『安市城 グレート・バトル』の作品情報
【公開】
2019年公開(韓国映画)
【原題】
The Great Battle
【監督・脚本】
キム・グァンシク
【キャスト】
チョ・インソン、ナム・ジュヒョク、パク・ソンウン、ペ・ソンウ、オム・テグ、ソリョン、ソン・ドイル、パク・ピョンウン、オ・デファン
【作品概要】
西暦645年。アジア全土の支配を目指し、朝鮮半島・高句麗へと侵攻した唐の皇帝・太宗が率いる2万人の大軍。圧倒的劣勢の中、高句麗・安市城の城主であるヤン・マンチュンは、城主として民を守るため、死に物狂いで唐軍との戦いに挑みました。
中国・唐時代の高句麗における史実をもとに、大胆な解釈を駆使して描いた歴史超大作。
主演を務めるのは『ザ・キング』が大ヒットしたチョ・インソン。ナム・ジュヒョクが映画初出演を果たし、韓国映画の名バイプレーヤーたちが勢揃いして熱い演技を見せている。
映画『安市城 グレート・バトル』のあらすじとネタバレ
西暦645年。唐の皇帝・太宗は、挑戦半島全土を支配下に置くべく、自ら20万人を超える大軍を率いて高句麗に攻め入りました。
国境の城は次々と陥落。ヨン・ゲンサム率いる高句麗軍は、平原で唐軍に向かい反撃を開始しました。
しかし圧倒的な数の相手の陣営を崩すのは並大抵ではなく、しかも背後に回られて挟み撃ちを受け、15万いた兵士はほとんどが死亡。助かった兵士の数はわずか一万ほどでした。
唐軍に囚われの身となっていた高句麗の巫女は、其の様子をみながら「チュモン(朱蒙)神のお告げ通りだ」と呟きます。神から予知能力を与えられている彼女には未来が見えるのです。
かろうじて生き残った兵士の中には、太学(かつて古代中国、朝鮮半島、ベトナムに設置されていた官立の高等教育機関)の生徒であり、若くして戦に参加したサムルがいました。旧友は皆戦死し、動揺を隠せない彼をヨン・ゲンサムが呼び出します。
サムルは安市の出身でした。ヨン・ゲンサムは彼に国に戻り、安市城の城主ヤン・マンチュンを暗殺するよう命じます。
ヤン・マンチュンは多くの戦で勝利した高句麗の英雄でしたが、ヨン・ゲンサムの命令を断りこの度の戦に加わらなかったため、今では「反逆者」と呼ばれていました。
「唐軍は安市城を滅ぼしたあと、平壌城に向かうだろう。我々は今から平壌城に行き、戦の準備をする。お前はヤン・マンチュンを殺したあと、平壌で合流しろ」とヨン・ゲンサムは言い、サムルに貴重な刀剣を手渡しました。
サムルが馬を走らせて故郷に戻ってくると、馬車がぬかるみにはまってしまい、それを引き上げようとしている一行がいました。
サムルは手伝ったこともあり馬車は無事引き上げられましたが、なんとそこにいた男が安市城の城主ヤン・マンチュンでした。
彼はサムルが自分を殺しに来たことを承知で城に迎え入れ、大将旗を掲げて常に自分のそばにいるよう命じます。
サムルは機会を狙い続け、ある夜ヤン・マンチュンの後を尾けますが、子供が生まれたばかりの民を祝いに城を抜け出したことを知ります。気さくに赤ん坊を抱き、笑顔をみせているヤン・マンチュンをサムルは戸惑いながら見つめていました。
ヤン・マンチュンの右腕とも言うべきチュスジや、暴れ者のプンやファルボ、騎兵隊隊長のパソ、その恋人でヤン・マンチュンの妹ペクハらは全員城主を慕っていました。活気があり、皆が幸せそうな安市城の光景に、サムルの心は揺れ動きます。
意を決してヤン・マンチュンの部屋に向かったサムルに対し、ヤン・マンチュンは背中をみせたまま「今はやめておけ」と言うのでした。彼の背中は刀傷だらけで、そのほとんどが刺客によるものでした。
ついに唐軍の本陣がやってきました。「大切なものが失われそうなときは命をかけて戦う!後ろを見てみろ!戦って民を守り抜くのだ」とヤン・マンチュンが叫ぶと、皆が大きな歓声を上げました。
一方、唐の皇帝・太宗は「略奪を許可する。財産を奪い、子供を誘拐せよ」と声を上げ、兵士から怒号のような歓声がおこりました。
唐軍は早速、機械仕掛けの投石器による攻撃を開始。凄まじい数の石が城に襲いかかり、城壁が破壊されていきます。
しかし唐軍の思うように城壁は壊れません。外側は石に覆われていても、その中は砂でがっちりと固められているからです。
「ならば壁を超える。進め!」と命じる太宗。唐軍は次々とロープのはしごを城にかけると、登って城に入り込もうとします。しかし、それも阻止されてしまいます。
唐軍はさらに大きな板で作られたはしごをかかげ、大勢の人間が勢いよく駆け上がります。
弓矢で対抗していた安市城勢ですが、唐軍の数はあまりにも多く、侵入を許してしまいます。城のサイドに控えている騎馬隊から「劣勢です!」と声がかかりますが、パソは「命令を待つ」と応えます。
もう片方を固めているペクハが率いる女性ばかりの兵隊も、勝手には動くことはせず命令を待ち、我慢の待機が続きます。
唐軍は側面を攻めよと司令を出します。ついに騎兵隊への声がかかり、彼らは目覚ましい活躍を見せます。
ヤン・マンチュンが「密集体形!」と叫ぶと、皆ががっちりと密集し、固いかたまりと化しました。そのまま前へと進み続け、唐軍の兵士を次々と落としていきます。
さらにかかったはしごを全て倒すと、唐軍は退却していきました。「勝ったぞー!」という声が上がり、城内は歓声に包まれました。
その夜、サムルはヤン・マンチュンを殺害しない自分が反逆者扱いされている悪夢を見ます。意を決してヤン・マンチュンのもとに向かいますが、彼は言うのでした。
「戦場で何が起きたか見ただろう? あのような平原でまともにぶつかっても数の多い唐軍に勝てるはずがない。従っていたら皆を死なせていただろう。誰に従うかは大事ではない。私は城主だ。この城を守る」
唐は新たに攻城塔(移動可能な櫓にして、城壁を登るためのはしごや兵士を守るため発明された攻城兵器)を作り、城を攻めてきました。城よりも高い位置から攻撃することが可能となり、さらにはその塔から橋が出て、次々と唐軍が侵入してきました。
圧倒的な強さを見せられ、苦戦を強いられる安市城軍。
思案の末にヤン・マンチュンは部下に「油袋を用意しろ!」と命じます。そして自ら戦闘に立って、侵入してきた兵士たちを切り倒していきます。
油袋が用意できたという知らせが入り、ヤン・マンチュンは弓を持ちました。「投げろ!」と彼が命じると、油袋が高く投げられ、それに向かって彼は火をくべた矢を放ちました。
爆発が起こり、あっという間に唐軍の兵士は炎に包まれ、はしごも燃え落ちていきます。いくつもかかっていた橋は全て油袋と矢によって燃え尽き、唐軍は惨憺たる体で撤退しました。
途中、ヤン・マンチュンは肩に槍を受けますが、サムルの活躍によって九死に一生を得ました。ヤン・マンチュンは3日間眠り続けましたが、その間、唐からの攻撃は幸いにしてありませんでした。
「サムル様がいなければどうなっていたか」とこれまで敵意を顕にしていたチュスジは態度を改め、サムルに礼を述べるのでした。
側近から撤退を勧められても太宗は諦めず、なんと城よりも高い山を築くよう命じます。彼は数ヶ月かけて山を築き、攻めてくるつもりのようです。
このまま山を築かれてしまっては太刀打ちできなくなります。そんな中、囚われていた巫女が開放されチュモン神の弓と矢を持って現れました。
彼女の見た未来の中では安市城は敗北を喫し、このまま戦を続ければ皆殺されてしまうと警告します。
「降伏すれば太宗は欲しいものを与えようと言っています」という彼女に、ヤン・マンチュンは私にとって大切なものはこの城だと答え、降伏することを拒否します。
パソは騎馬隊が奇襲をかけ、太宗を討つことを提言します。危険すぎるとヤン・マンチュンは反対しますが、パソや騎兵隊員の決意は固く、彼らに託すことになりました。
唐軍が寝静まっている頃を見計らって奇襲をかけますが、なぜか相手は待ち構えていました。騎兵隊はあっという間に血祭りに上げられます。背中に矢を何本も受け瀕死の状態で一人戻ったパソは「作戦が漏れている。内通者がいる」と言うと息をひきとりました。
「内通したのは私です」と巫女が名乗り出て、皆は唖然とします。彼女は自分の見た未来に囚われており、皆が救われるのは「降伏」のみと信じ、矢文を飛ばして相手に奇襲を教えたのでした。
ヤン・マンチュンは刀を抜こうとしますが、それよりも早くサムルの短刀が早く動き、巫女の喉を掻き切っていました。
ペクハは恋人の敵を果たさんと一人武装し、馬に乗って敵地へ乗り込んでいきましたが、太宗の首を討つことはできず殺害されてしまいます。「勇気のある女だ。死体を安市城にかえしてやれ」と太宗は命じました。
パソとペクハの遺体は棺に納められ、並んで置かれていました。ヤン・マンチュンは悲しみに包まれながら言うのでした。「埋めなくて良い。川に流すのだ。西の川で結ばれることだろう」と。
その光景を見たサムルは城を出て、ある地へと馬を走らせました。
大切な部下と妹を亡くし、いなくなったサムルの身も案じるヤン・マンチュンをチュスジは「生きている者たちに目をやってください。決して民に弱さを見せてはいけません」と叱咤します。
その頃、サムルは追ってくる唐軍を振り払い、平壌城にたどりついていました。安市城に加勢してほしいというサムルの願いにヨン・ゲンサムは耳をかそうとしません。
「彼は反逆者ではありません。ただの一人の高句麗人です」とサムルは訴えました。
その頃、ヤン・マンチュンは着々と築き上げられていく山を前に思案していました。そして、子どもたちが砂遊びをしている様子を見たことであるヒントが浮かびます。
映画『安市城 グレート・バトル』の感想と評価
西暦645年に高句麗を制圧すべく進撃を続ける中国・唐。その玉座に座す皇帝・太宗が、平壌の一歩手前にある安市城を襲い、ヤン・マンチュン率いる安市城軍がそれを迎え撃つという壮絶な闘いが展開します。
これまで韓国の史劇といえば、朝鮮王朝時代を扱ったものがほとんどでした。あまり取り扱われない高句麗時代が舞台となっている点で、まず本作はユニークな作品となっています。
高句麗の時代の資料はほとんど残っておらず、謎めいた部分も多いといいます。キム・グァンシク監督は100を超す文献に目を通し、できるだけ史実に忠実な形で作品を作り上げました。
安市城の城主ヤン・マンチュンも実在した人物で、88日間に渡る唐軍との4度の戦も史実に残っています。
一方、キム・グァンシク監督は、資料でも明らかにされていない謎めいた部分を、豊かな想像力で自由に展開させ、生き生きとした魅力溢れる世界を構築しました。
唐軍が城攻めをする際に用いる個性的な武器や道具には思わず身を乗り出してしまうでしょう。とりわけ攻城塔の迫力あるビジュアルは見ものです。
本作で描かれている戦闘においてまず頭に入れておくべきなのは、安市城が高い山を背にした、非常に堅牢な城であることです。
唐軍はあの手この手で攻めてきて、城側が鮮やかな戦略で対抗する。豊かなアイデアに溢れるエキサイティングな戦争アクションが全編に渡って展開します。これらが本作の最大の見どころとなっています。
魅力溢れる戦闘シーンを描くため、本作の制作には220億ウォン(約22億円)が費やされ、6500人のエキストラを動員、鎧も400着以上制作されました。
さらに、唐軍が最後の闘いで築く“山”も実際にセットを組んだそうです。CGだけに頼らない本物の迫力が画面にみなぎっています。
また、特別な機材を使用した、キャラクターの活躍を際立たせるスローモーションの映像のかっこいいこと!
最新の技術と豊かな想像力が見事にマッチした壮大なスケールのアクション大作となっています。
まとめ
戦争アクションの面白さもさることながら、それぞれのキャラクターも個性的です。そのキャラクターが生きているからこそ、アクションも映えると言ってよいでしょう。
安市城の城主ヤン・マンチュンを演じるチョ・インソンは『ザ・キング』(2017年、ハン・ジェリム)で10年振りに映画に復帰し、大ヒットを飛ばしました。その勢いは今作にも続き、伝説的な英雄を人間味豊かに演じています。
命令に背いたことで反逆者扱いをされながらも、無謀な戦闘で部下を死なせたくないという想いと、城を守るという信念があってこその行動で、現代に求められる真のリーダーシップを持った男として描かれています。
また、彼を討つように命じられ、葛藤する若者には人気若手俳優ナム・ジュヒョクが抜擢されています。本作が彼のスクリーンデビュー作です。
若者らしい真っ直ぐさと正義感、人を見る力と行動力を備えた人物を生き生きと演じていて好感が持てます。
唐の皇帝である太宗を演じるのは、名優パク・ソンウン。中国語を駆使し、憎き敵役を堂々たる貫禄で演じています。
また、ヤン・マンチュンに仕える優秀な部下にはペ・ソンウ、オ・デファン、パク・ビョンウン、オム・テグ、鉄掘りの作業員にソン・ドイルなど、韓国映画には欠かせない錚々たる面々が顔を揃えています。
オ・デファンとパク・ビョンウン演じるキャラクターは、会えば喧嘩している犬猿の仲ですが、戦を通して次第に心を通わせ、互いにさりげなく好意を示していきます。それは安市城の人々の固い絆を代表する心あたたまるエピソードになっています。
また、女性だけで構成される部隊が出てくるのもこの作品のユニークな点です。そのリーダーを演じているのが、女性アイドルグループ「AOA」のソリョンです。鎧をつけ怒りに燃えて馬を走らせる姿が鮮烈な印象を残します。