『ゴーストランドの惨劇』は2019年8月9日より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。
人里離れた叔母の家に引っ越した事から、ある一家が遭遇する惨劇と、その後の物語を描いたパスカル・ロジェ監督によるホラー作品『ゴーストランドの惨劇』。
今回は、本作を楽しむ上での見どころを紹介します。
映画『ゴーストランドの惨劇』の作品情報
【日本公開】
2019年(フランス・カナダ合作映画)
【原題】
Incident in a Ghostland
【監督】
パスカル・ロジェ
【キャスト】
クリスタル・リード、アナスタシア・フィリップス、テイラー・ヒックソン、ロブ・アーチャー、ミレーヌ・ファルメール、エミリア・ジョーンズ
【作品概要】
ホラーファンの間で話題となった、2009年の作品『マーターズ』で知られるパスカル・ロジェの、2012年の作品『トールマン』以来、6年ぶりの新作となる映画『ゴーストランドの惨劇』。
テレビドラマ『GOTHAM/ゴッサム』のソフィア・ファルコン役で知られる、クリスタル・リードと、カナダのテレビドラマを中心に活躍しているアナスタシア・フィリップスが、惨劇に遭遇する双子の姉妹として共演しました。
映画『ゴーストランドの惨劇』あらすじ
シングルマザーのポリーンは、人里離れた叔母の家を相続し、双子の娘と共に移り住むことになりました。
双子の娘の姉のヴェラは、化粧をしたり、ボーイフレンドと交際したりする現代的な性格ですが、妹のベスは、ホラー小説の執筆を趣味にしている、内向的な性格です。
3人は叔母の家に向かう途中、キャンディ屋のトラックに遭遇します。
ベスはトラックに手を振りますが、ヴェラはふざけて中指を立てていました。
また、途中で立ち寄った雑貨店で、ベスは「家族キラー」の記事を目にします。
それは、ある家族が住んでいた屋敷に押し入った男が、両親を殺害し、そのまま家に居座り、10代の女の子を監禁していたというショッキングなニュースでした。
ベスは、この記事に興味を持ちますが、ヴェラは「作り話」と馬鹿にしたようでした。
深夜になり、ようやく叔母の家に到着した3人。
ですが、変わり者だった叔母の屋敷は、からくり仕掛けの家具があったり、人形があったりと、不気味な雰囲気を持っており、ヴェラは早速不機嫌に。
引っ越しも終わり、屋敷での最初の夜を迎えるはずでしたが、突然、屋敷内に大男が現れ、ポリーンに襲いかかります。
大男は、ヴェラとベスにも襲いかかり、屋敷の地下室へと連れ去りました。
ベスは隙を見て逃げ出そうとしますが、黒い衣装に身を包んだ何者かが、行く手を遮ります。
絶対絶命の状況となりますが、姉妹を救うために、2人の侵入者に刃物を振りかざすポリーン。
16年後、ホラー小説作家として成功したベスは、結婚して新たな場所で生活をしていますが、今でも16年前の惨劇を悪夢で見ていました。
そこへ、ヴェラから電話がかかってきます。
精神を病んでおり、今もポリーンと共に叔母の屋敷に住んでいるヴェラは、何かに怯えている様子でした。
心配したベスは、ヴェラの様子を見る為に、叔母の屋敷に向かいます。
屋敷に到着したベスを、いつもと変わらない様子のポリーンが出迎えてくれました。
しかし、ヴェラは自ら地下室に閉じこもり、奇行を繰り返していました。
屋敷内の不気味さに違和感を覚えながら、何者かに怯えるヴェラを心配するベス。
そしてベスは、ある真実と恐怖に直面する事となります。
ベスが見る悪夢の秘密
本作『ゴーストランドの惨劇』は、現実と虚構が入り乱れ独自の世界観を作り出しています。
監督のパスカル・ロジェは「誰かの夢の世界を、現実のように映像化する事」が、本作を製作するキッカケになった事を語っています。
そして、物語の鍵となるのは16年前の惨劇。
ベスは、大人になっても16年前の惨劇が心に焼き付いており、悪夢として見るようになっています。
そして、実体験が元になっていると言われている、新作小説。その小説のタイトルは『ゴーストランドの惨劇』です。
ですが、この16年前の惨劇は不可解な点が多く、「どこまで現実で、どこまでが虚構なのか?」が疑問に残り、物語前半の主軸となっていきます。
ヴェラが怯える恐怖の正体
物語前半の大きなもう1つの要素として、何者かを恐れ、精神に異常をきたしてしまったヴェラの存在があります。
10代の頃は、小説家を目指すベスを馬鹿にし、扱いづらい部分のある、今どきの女の子という印象でしたが、大人になったヴェラは、自ら地下に閉じこもり、時には人形のようなメイクで自らをベッドに縛り付けるなど、奇行が目立つようになります。
ヴェラが変わってしまった原因は、恐らく16年前の惨劇が原因でしょう。
同じ体験をしているはずなのに、何故ヴェラだけ変わってしまったのでしょうか?
そして、ヴェラが恐れる何者かの正体は?
ここも、物語を解き明かす重要なポイントとなります。
中盤に明かされる惨劇の「真実」
本作は、上述した2つの謎が、物語を進める重要な部分となります。
そして、この2つの謎は、映画中盤の「ある出来事」がキッカケで、全て明らかになります。
それは、16年前の惨劇の真実となっており、本作は全てが明らかになった後が、恐怖の本番とも言えます。
最近は『へレディタリー/継承』や『マローボーンの掟』のような、作中に仕掛けがされており、その仕掛けが恐怖を増長させるという、変則的なホラー作品の名作が多く製作されています。
『ゴーストランドの惨劇』も、定番とも言えるホラー作品の展開にひねりを利かせ、斬新なストーリーに作り上げた見事な作品となっています。
まとめ
虚構と現実が入り乱れた独特の世界観で、視覚的にも精神的にも、恐怖を感じる展開が目白押しの本作。
ですが、作品で深く掘り下げられているのは、人間の内面です。
それは、姉妹の関係であったり、夢を追いかける芸術家の覚悟であったり、現実の恐怖に立ち向かう人間の本質的な強さであったり、さまざまな人間の感情が描かれています。
恐怖に直面した人間の不安定な感情や、行動心理を表現する為に、本作ではカメラを固定する事無く、常に動かし続けるという方法で撮影されており、ここにも人間の感情を深く掘り下げた、こだわりを感じます。
パスカル・ロジェ監督はベスに共感しており「僕自身」ともインタビューで答えています。
本作の最後は、ベスのあるセリフで終わりますが、そのセリフには、人間の決意と強さが込められていると感じます。
恐怖だけではなく、人間の強さも描いた本作。作品の仕掛けと共に、物語に込められたメッセージも、是非受け取って下さい。
映画『ゴーストランドの惨劇』は2019年8月9日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーです。