映画『引越し大名!』は2019年8月30日(金)より全国ロードショー公開!
泰平の時代を迎えた江戸時代。
その時代を生きた大名たちにとっての一大事業「国替え(=引っ越し)」をテーマにした等身大時代劇を描いたのが、映画『引越し大名!』です。
原作ならびに本作の脚本を担当したのは、『超高速!参勤交代』シリーズで知られる土橋章宏。
さらに監督を務めたのは、大ヒット時代劇映画『のぼうの城』(2012)を手がけた犬童一心監督です。
映画『引っ越し大名!』の作品情報
【公開】
2019年(日本)
【監督】
犬童一心
【原作・脚本】
土橋章宏
【キャスト】
星野源、高橋一生、高畑充希、山内圭哉、正名僕蔵、ピエール瀧、飯尾和樹、和田聰宏、岡山天音、松岡広大、富田靖子、中村靖日、矢野聖人、鳥越壮真、斉藤暁、丘みどり、立川志らく、向井理、小沢征悦、濱田岳、西村まさ彦、松重豊、及川光博
【作品概要】
『超高速!参勤交代』シリーズで知られる土橋章宏が原作・脚本を手掛けた時代劇映画。監督には、樋口真嗣監督とともに大ヒット時代劇映画『のぼうの城』を手がけた犬童一心監督。映画主演は6年ぶり、また時代劇映画では本作が初主演となる星野源を筆頭に、高畑充希、高橋一生、濱田岳など数々の豪華キャストが集結。さらに劇中で描かれる「引っ越し唄」の振付・監修を、『のぼうの城』にて主演を務めた狂言師・野村萬斎が担当しています。
映画『引っ越し大名!』のあらすじとネタバレ
姫路藩主・松平直矩のもとに「国替え」の命が下ります。
親藩・松平家は全国の要所となる土地を任されるが故に国替えが多く、「引っ越し大名」と呼ばれることも。
莫大な手間と人手、そして資金を要する藩の一大事に今回も大わらわになります。
国替え=引っ越しの差配をする「引っ越し奉行」の職に就く者を決めなければいけませんが、誰もこの難問に手を挙げようとはしません。
そんな中、藩の御刀番を務める武辺者の鷹村源右衛門が、幼馴染の書庫番・片桐春之介を推挙します。
思わぬ大命に逃げ出そうとする春之介ですが、いざとなればともに腹を切ろうと言って源右衛門が励まし支えます。
本の虫で様々な知識はもっている春之介も、引っ越しでは何をすればいいのかと途方にくれます。
やがて、前回の引っ越しを取り仕切った奉行の娘がいることを知ると、藁にもすがる思いで彼女を訪ねます。
そこにいたのは、幼い一人息子を一人で育てている於蘭という女性でした。
於蘭の父は病をおして引っ越し奉行の仕事を務めたものの、下級藩士であったために手柄を上司にとられてしまった過去がありました。
そのような過去から、一度は春之介の頼みを断る於蘭ですが、人に上下をつけず、正面から向き合う彼の態度に心を開きます。
経費節減やリストラなどの無理難題を、自身が率先して行動することで進めていく春之介の姿に周りの藩士達もついていきます。
また毎日のように一緒に汗を流す中で、於蘭との仲も親密になっていきます。
春之介は藩がいつか国替えとともに加増される時には再び召し抱えるということ固く誓って、藩内のまじめな藩士たちに農民になることを頼み込んで回ることも続けました。
勘定頭・中西の助けもあり、引っ越しは順調に進んでいるように見えますが、その裏ではある策略が進んでいました。
映画『引っ越し大名!』の感想と評価
天下泰平の世の中になった江戸時代の大名というのは実に事務的な面で苦労が多かったんだろうなということがよくわかる映画です。
『武士の家計簿』や『超高速!参勤交代』『駆込み女と駆出し男』『殿、利息でござる!』などなど、現在の時代劇映画における「新感覚の等身大時代劇」の系譜に加わる新たな一本が『引っ越し!大名』です。
本作では、本の虫といういかにも天下泰平の世の武士といえる星野源演じる片桐春之介が主人公です。現代的に言えば「草食系」な武士を星野源が好演しています。
一方で、この星野源を支える鷹村源右衛門と於蘭には高橋一生と高畑充希がキャスティングされています。濱田岳や小沢征悦、及川光博など西村まさ彦などのメインキャストがパブリックイメージの延長線上にあるようなキャラクターなのに対して、この二人は今までとは違った顔を見せてくれます。
鷹村は生まれてきた時代を間違えたと感じられるほどの武の男で、竹を割ったような性格の豪快な男です。クライマックスでは藩の宝ともいわれる長槍を豪快に振り回したりと、今までの高橋一生にはなかったマッチョなキャラクターです。
高畑充希演じる於蘭も一人息子を抱えるいわゆるシングルマザーで、馬術もこなす活発な女性。やがて晴之介と惹かれあうようになるのですが、何をするにも引っ込み思案の晴之介をぐいぐいとリードするキャラクターです。
周りのキャラクターが当て書きのようにはまっているぶん、この二人が演じるキャラクターの意外性がまた映画に楽しさを加えてくれます。
まとめ
頭を抱えながら、蓄えた知識を武器に難題に挑む姿は名探偵のような雰囲気を感じさせます。それこそ、星野源の金田一耕助があってもいいのかなとも思わせます。
天下泰平の世に実に人間臭い武士たちを描く新感覚の時代劇は最近のはやりですが、今作もその流れの一本です。
とびぬけて傑作と言うわけでありませんが、時代劇がハリウッドの西部劇のように今や稀少なジャンルとなり、こういう形で何とか存続している流れがある中で、流れを邪魔しないウェルメイドな作品になっています。
また、何よりも星野源の久しぶりの主演映画であり時代劇映画ということでも本作は貴重な作品になっています。