連載コラム「最強アメコミ番付評」第31回戦
こんにちは、野洲川亮です。
2019年のゴールデンウィークの4月26日に公開される『アベンジャーズ/エンドゲーム』。
MCUシリーズ10年の集大成となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』の謎に満ちたストーリー展開のあらすじ。
そして次々と公開されてきた予告編の解説を交えて探っていきます。
CONTENTS
『アベンジャーズ/エンドゲーム』のあらすじと作品情報
前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の戦いで、6つのインフィニティストーンを手にしたサノスによって、全宇宙人類の半分が消滅させられてしまいました。
多大な犠牲を払い敗北したアベンジャーズですが、残されたメンバーが再び集結し、消滅した仲間の無念を晴らし、世界を救うためにもう一度立ち上がります。
前作には登場しなかったホークアイ、アントマン、キャプテン・マーベルも登場、MCUシリーズ第22作、そして「アベンジャーズ」シリーズ第4作にして完結編。
監督は務めるのは前作に引き続き、アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ兄弟。
次々と公開された予告編
全世界の映画ファン、MCUファンに大きな衝撃を与えた、前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のラスト。
あれから1年、前後編の後編であり、『アイアンマン』(2008)から10年かけて20作以上が公開されてきたMCUサーガに決着がつくということで、本作のストーリーはこれまで多くのファンが様々な考察を立ててきました。
果たして、本作はどのような展開を見せるのか? その情報は徹底的に隠されてきていますが、大きなヒントとなるのが、2018年12月以降、次々と公開されてきた予告編の数々です。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』ティーザー予告
『アベンジャーズ/エンドゲーム』特別映像
『アベンジャーズ/エンドゲーム』本予告
『アベンジャーズ/エンドゲーム』特別映像
これら4つの予告編は上から順に、ティーザー予告、特別映像、本予告、そして“Special Look”と題された特別映像です。
全て観てもらえるとよく分かりますが、少しずつ展開を読み解く材料となり得るシーンが出てきます。
最初のティーザー予告では、タイタンでの戦いで多くの仲間を失い、宇宙を漂流するアイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)が、妻のペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロー)に向けて遺書じみたメッセージを録音しているシーンから始まります。
次に、やはり地球で仲間たちを失った、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)やブラックウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)などのアベンジャーズたちが、途方に暮れる姿がみられます。
そして、予告の途中と最後で、前作には登場しなかった主要キャラクターの二人、ホークアイ(ジェレミー・レナー)とアントマン(ポール・ラッド)が姿を見せ、ファンを驚かせ、熱狂させます。
2つ目の特別映像は30秒と短いもので、キャプテン・アメリカの台詞をバックに、次々とアベンジャーズの面々が登場していき、再び戦いへと動き出していく様子が描かれています。
3つ目は本予告、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー(クリス・ヘムズワース)、“BIG3”の過去作映像が流れ、シリーズ10年の歳月を感じさせます。
そして、ティーザー予告にもあったシーンの別カットらしきものや、生き残ったアベンジャーズたちが本格的に事態を解決するために動き出し、何かと戦っているような場面も見られます。
ラストでは、これまで見たことの無かった白いスーツを身にまとったアベンジャーズたちが、決意に満ちた表情でアベンジャーズ本部らしき場所を進んでいきます。
さらに、アベンジャーズ初合流となるキャプテン・マーベル(ブリ-・ラーソン)が登場、ソーがマーベルの実力を一瞬で見定める、ユーモアに満ちた瞬間で幕を閉じます。
最後の“Special Look”は、本予告では無かった初出しシーンがさらに加わり、それまでの予告では姿を見せなかったラスボス、サノス(ジョシュ・ブローリン)とBIG3が対峙する瞬間も描かれました。
袂を分かち、前作の劇中では顔を合わせることがなかったアイアンマンとキャプテン・アメリカが、和解の握手(?)を交わすファン歓喜の瞬間も見られます。
予測は不可能?フェイクも入り混じる予告編
これらの予告編の内容を頼りに、ストーリーやラストの予想は、ネットを中心に爆発的に盛り上がっています。
しかし、こういった予想の難しいところに、予告編の内容にはフェイクや未使用シーンが含まれている可能性があるということがあります。
例えば、ソーがストームブレイカーを使いキャプテン・マーベルの力量を図ろうとするシーン、本予告とSpecial Lookの両方で使われていますが、よく見ると微妙にカメラアングルが違い、どちらかのテイクは本編では未使用であることが伺われます。
前作『インフィニティ・ウォー』の予告でも、サノスの養女ガモーラがその恐ろしさを語り、トニー・スタークがガモーラに「ヤツの名前は?」と聞き、「サノスよ」とガモーラが答えるやり取りがありました。
ところが実際に本編を観てみると、このガモーラの台詞はガーディアンズやソーに向けたものであり、トニーが問いかけた相手はブルース・バナー(マーク・ラファロ)、そもそも違うシーンのやり取りで、ガモーラとトニーは本編で一度も顔を合わせていないことが分かります。
この他にも、CGでそのシーンにいる人、いない人を変更することも出来るわけで、本予告で白スーツを着ているメンバーの中に、ソー、ハルク、キャプテン・マーベルの姿が見えません。
これが、見せないようにしているが実際はその場にいるとなると、予告から展開を読み解く考察作業自体が非常に困難になってくるのです。
なぜ予告にフェイクが?と疑問に思う人もいるでしょうが、これは予告編により映画本編のネタバレを極力避けて観客に新鮮な驚きを味わってもらい、なおかつ作品の魅力が伝わるギリギリの演出の末、行きついたものと言えます。
なぜ『インフィニティ・ウォー』は熱狂を生みだしたのか
では展開予想が出来なければ、映画本編を楽しめないのか? そんなわけはないということが、前作『インフィニティ・ウォー』を思い出してみれば分かるはずです。
10年に及び、同じ世界観の作品を20作以上製作してきたシリーズは、過去の映画史においても存在しないものでした。
MCU世界の中で積み重ねられ、変化してきたエピソード、人間関係を、観客はつぶさに目撃し、感情を揺さぶられる体験を重ねながら(全ての作品を観ていない人も含めて)、各々のキャラクターへの感情移入も重ねていきます。
この高まりきった観客のキャラクターへの感情を刺激する作劇を試みて成功したのが、『インフィニティ・ウォー』でした。
トニー・スタークとDr.ストレンジが互いのエゴをぶつけ合い、ソーがガーディアンズと口喧嘩を繰り広げ、ワカンダにキャップを始めとするヒーローたちが集結し敵の大群と戦い、タイタンでスターロードが立てた作戦でアイアンマンたちが躍動する姿に、観客はそれぞれに面白さ、楽しさ、愛おしさを見出していたのです。
そして本作『エンドゲーム』でも、これまでのMCUの歴史に思いを馳せながら、10年に及ぶ因縁や伏線の決着を目撃することになります。
『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)で決裂したアイアンマンとキャップの絆は蘇えるのか。
『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)でアズガルドという国を失い、民や弟ロキまでも殺され、復讐にも失敗したソーは再び立ち上がれるのか。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)で恋仲になりながらも生き別れていたブラックウィドウとハルクの関係はどうなるか。
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)、『シビルウォー』まで続いている、キャップとウィンターソルジャーと報われない友情の結末。
『アントマン&ワスプ』(2018)のラストで、実験中に相棒ワスプとピム博士夫婦が消滅し、量子世界に取り残されたアントマンの行方。
トレードマークの弓ではなく刀を使い、ローニンというキャラクターとして登場予定のホークアイに何が起こったのか。
残されたガーディアンズメンバー、ロケットとネビュラが劇中でどのような役割を担うのかなど、注目ポイントは挙げていけばキリがありません。
観客一人ひとりがそれぞれのキャラクターへの愛を解放し、予想を超えた展開に熱狂し、涙し、また次の10年へと繋がっていくであろうサーガを余すことなく目撃する、そこには我々の陳腐な予想など飛び越えた感動が待っていることでしょう。
前作から1年、待ち焦がれた瞬間がやってきます!
次回の「最強アメコミ番付評」は…
いかがでしたか。
次回の第32回戦は4月19日公開、DCEUシリーズに新たに誕生する異色のスーパーヒーロー『シャザム!』を考察していきます。
お楽しみに!