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Entry 2019/02/22
Update

【カメ止め】ネタバレ含む映画トリビア。金曜ロードショーの地上波と共にチェック!

  • Writer :
  • 糸魚川悟

『カメラを止めるな!』にまつわるトリビア

低予算ながら大ヒットした作品と言えばアメリカで製作され、大ヒットシリーズとなったスリラー映画『ソウ』(2004)などが有名です。

しかし、2018年に日本でも低予算での製作ながら大ヒットを記録し、ゾンビ映画と言う殻を破り、映画好き以外をも巻き込む大ブームとなった作品がありました。

本記事では「金曜ロードSHOW!」で2019年3月8日に地上波放送が決まった大ヒット映画『カメラを止めるな!』の様々なトリビアをご紹介していこうと思います。

『カメ止め』物語構成の礎となった作品とは?


(C)ENBUゼミナール

ここでの項に関しましては、『カメラを止めるな!』の物語構成に関する重要なネタバレをしています。

まだ本作を鑑賞していないと言う方は、次項以降ではネタバレ無しとなっていますので飛ばしてお読みください。

日本を代表する名クリエイター三谷幸喜


(C) 2013 WOWOW INC.

本作の物語構成における重要な注目点は「ワンショット」+「劇中劇」と言った部分にあります。

「ワンショット」は「長回し」と呼ばれる演出や撮影方法であり、カットを挟まず撮影する方法で自然なカメラワークやリアリティのある演技や会話が生まれます。

『トゥモロー・ワールド』(2006)など、この撮影手法を取り入れた作品は多くありますが、近年で最も印象的な作品は「古畑任三郎」シリーズでお馴染みの三谷幸喜による『大空港2013』(2013)が思い浮かびます。

『大空港2013』では空港を9日間にわたり2時間貸し切り、放送時間105分をワンカットで撮影する異色のドラマとなりました。

一方で「劇中劇」と言えば、作品の中で作品が描かれることを指しますが、『カメラを止めるな!』のような「芝居」を題材にした作品も三谷幸喜は手掛けていました。

中でも、寿命間近な老役者の芝居を必死でサポートする舞台劇『ショウ・マスト・ゴー・オン~幕を降ろすな』や、役者のアドリブやワガママで次々と変わっていく脚本に振り回される『ラヂオの時間』(1997)は『カメラを止めるな!』に大きな影響を与えています。

インタビューでも、監督の上田慎一郎が影響を受けていることを明言したように、三谷幸喜の影響がはっきりと表れている本作。

しかし、それでいて独自性にも富んだ要素の数々が、「映画を観ること」に対する楽しみを更に深めてくれている作品でした。

主演俳優・濱津隆之の意外な経歴


(C)ENBUゼミナール

演技に声明をつぎ込んだ狂気的な監督と、色々な人間に振り回されるどこか気弱で優し気な監督と言う二面を上手に演じ切った日暮隆之役の濱津隆之。

実は彼は「俳優」と言う職業に相応しい様々な経歴に富んだ方であることが分かりました。

2019年2月10日に行われた「2018年 第92回 キネマ旬報ベスト・テン 表彰式」に監督の代役として登壇した濱津隆之は、『カメラを止めるな!』での大ヒット後に変わったことを聞かれ、「ラブホテルでのバイトをしなくても食べていけるようになった」と答え会場を笑いで包みました。

劇中のイメージ通り真面目で、好青年な雰囲気を感じさせる彼ですが、意外にも吉本興業の運営するお笑い芸人養成学校NSCに在籍し、お笑い芸人として活動していた時期があります。

学生時代に夢見ていた「お笑い」か「音楽」の道で食べていく考え通り、お笑い芸人を辞めた後はDJとして活動するなど様々な道を進み、お笑い芸人時代に感じた「役を演じる」と言う魅力に惹かれ多くの端役を演じた先で『カメラを止めるな!』の主演を射止めました。

『カメラを止めるな!』での大ヒット後、フリーから大手事務所への所属が決まった彼の今後の活躍に、期待が膨らみます。

『カメラを止めるな!』の「廃墟」のロケ地とは?

日米における製作現場の違いは大いにあれど、低予算で話題となった『ソウ』の製作費が120万ドル(およそ1億3千万円)だったことに対し本作の製作費はたったの300万円。

そのため、映画内では様々な方法で費用を減らすための工夫がなされていました。

特に印象的であるゾンビとの対峙が描かれる重要な舞台である「廃墟」の撮影地。

これは「水戸市フィルムコミッション」と言う茨城県水戸市がロケ地を無償で貸し出す撮影支援機関により提供された「芦山浄水場」で行われ、あれだけのロケーションを「無償」で提供しているということに驚嘆してしまいます。

欅坂46の「もう森へ帰ろうか?」やドラマ「金田一少年の事件簿」、ドラマ「MOZU」など多くの撮影で使われてきた芦山浄水場。

ホラー・SFライターとして1つオススメしたい作品もこの芦山浄水場で撮影されていました。

『劇場版 零 ゼロ』(2014)


(C)2014「劇場版 零 ゼロ」製作委員会

小説家としてだけでなく、多くの漫画原作を務める大塚英志が書いた小説を実写化した映画『劇場版 零 ゼロ』。

『ニセコイ』(2018)や『雪の華』(2019)など今勢いのある女優、中条あやみの初主演映画であり、共演の森川葵や小島藤子など今話題の女優たちが多数出演している隠れた話題作。

「ホラー」としての映像や雰囲気が前面に押されながらも、実は本作は「ミステリー」に寄っていると言う二面性を持った作品で、女子生徒の「失踪事件」の真相が「事件」なのか「呪い」なのか、と言う着眼点で鑑賞すると非常に面白い作品です。

もちろん、「芦山浄水場」も物語の核心かつ重要な部分で登場し、その「浄水場」としての印象を大いに発揮してくれます。

『カメラを止めるな!』で見た景色を、他の作品でも見たいと言う方はぜひご覧になってください。

映画『カメラを止めるな!』の作品情報


(C)ENBUゼミナール

【公開】
2018年

【監督】
上田慎一郎

【キャスト】
濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、秋山ゆずき、長屋和彰、大沢真一郎

まとめ


(C)ENBUゼミナール

いかがでしたか。

2018年の映画を語る上では避けて通ることの出来ない映画『カメラを止めるな!』。

映画自体のクオリティはさることながら、俳優やロケ地までもが魅力的な本作。

劇場公開を見逃してしまったという方はぜひ2019年3月8日の「金曜ロードSHOW!」で、そしてその日に予定があると言う方は配信などの手段を使い鑑賞し、本作の魅力を確認してみてください。

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