連載コラム「最強アメコミ番付評」第24回戦
こんにちは、野洲川亮です。
DCEUから大ニュースが二つ飛び込んできました。
一つは2021年公開予定の『ザ・バットマン』で、ベン・アフレックがバットマン役を演じないことが発表されました。
これまでシリーズ3作でバットマンを演じてきたアフレックが、若きバットマンを描く『ザ・バットマン』以降に、同役に復帰するかは不明ですが、今後のシリーズの行方に大きく影響を及ぼすキャスティングとなりそうです。
そして、もう一つは『スーサイド・スクワッド』の続編に、ジェームズ・ガン監督が就任間近というものです。
過去の不適切発言で「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズから解雇されたガンですが、ライバルシリーズの監督として、どのような作品を見せてくれるか、大変楽しみになりました。
今回は2月8日に公開されたジェイソン・モモア主演の『アクアマン』を解説していきます。
アクアマンのあらすじ(ネタバレ)
ある嵐の夜、灯台守のトーマスは、海岸で気絶している女性を発見します。
彼女の正体はアトランティスの女王、アトランナ(ニコール・キッドマン)で、アトランティスでの政略結婚から逃れるため地上に現れたのです。
程なく恋仲になった二人の間に子供が生まれ、アーサーと名付けられます。
幸せな生活を送っていた三人の前に、アトランティスから追手が現れ、逃げられないことを悟ったアトランナは、いつか夜明けに戻ってくることを告げ、アトランティスへと向かいました。
そして、時は流れ人間とアトランティス人の混血児として成長したアーサー・カリー(ジェイソン・モモア)は、スーパーヒーロー、アクアマンとして活躍していました。
潜水艦を襲った海賊を退けたアーサーは故郷へ帰り、毎日桟橋でアトランナの帰りを待つ父トーマスと再会します。
そんなアーサーの前に海底王国ゼベルの王女、メラ(アンバー・ハード)が現れ、アトランティスが地上世界への攻撃を企んでいることを告げます。
アーサーの異父兄弟で、アトランティスンの王子オーム(パトリック・ウィルソン)は7つの海底王国を統治し、海の覇王オーシャンマスターとなろうと画策していました。
メラはアーサーにアトランティスの王になり、オームを止めてほしいと頼みますが、アーサーは自分には関係ないと無視します。
しかし、アトランティスが全世界へ向けて警告の津波に遭い、父親トーマスは溺死しかけますが、危うくメラに命を助けられます。
危機感を抱いたアーサーは、やむなくメラと共にアトランティスへ向かいました。
メラの手引きでアトランティスに潜入したアーサーは、かつて自分の教育係を務めたバルコ(ウィレム・デフォー)と再会し、王と認められるためには、かつてアトランティスの王が使った伝説の槍、トライデントを探すようにと告げます。
ところが、そこへ現れたオームの兵隊にアーサーは捕らえられ、オームの元へと連行されてしまいます。
アトランティスに戻ったアトランナは、アーサーの存在に嫉妬を受けた王により処刑されていましたが、そのことでアーサーを恨むオームは決闘を提案しました。
大観衆の前でのアーサーとオームの決闘が始まり、激しい戦いが繰り広げられますが、アーサーは母アトランナの形見の槍を折られ、窮地に陥ります。
ところが間一髪のところでメラに助けられたアーサー、二人はそのまま逃亡し、トライデントを探す旅へと出発します。
手がかりを頼りにサハラ砂漠、そしてイタリアのシチリアへとたどり着いた二人、悪戦苦闘の末に目的地を解き明かしました。
そこへ潜水艦の事件で父を殺されたと、アクアマンを恨む海賊ブラックマンタが、オームから授けられたバトルスーツを着用し、アクアマンを襲撃します。
メラもアトランティスの兵士たちに追われますが、二人は何とかブラックマンタと兵隊たちを撃退し、目的地である海溝王国へと向かいました。
陽気でド派手に笑って戦うアクアマン
シリーズ前作、『ジャスティス・リーグ』でスクリーン初登場となったアクアマン、戦闘の舞台が主に陸地だったこともあり、その特殊能力を活かす場面は限られ、他のヒーローたちに比べると見せ場は少なく、少々割を食った印象もありました。
しかし本作では、海を高速で泳ぎ回り、海洋生物とコミュニケーションが取れるという、能力の見せ場が隙間なく盛り込まれており、いよいよそのキャラクターの本領を発揮しています。
また、これまでのDCEUシリーズに共通していた、重厚でシリアスな世界観は影を潜め、明るい画面の中で陽気で豪快に「ガハハ!」と笑い、悩まず、立ち止まらないアクアマンは、観客を自然に笑顔にし、心地よい高揚を与えてくれる存在となっていました。
人間とアトランティス人、いわば“ハーフ”という出自によりアイデンティティを確立しきれないという、シリアスになりがちなキャラクターをあえて陽気に描き、酔っ払いでいい加減な性格まで付与されたアクアマンは、伝説の武器を手にし、王の座へと駆け上がっていく過程も、漫画チックなケレン味あふれる演出で、勢いよく描かれていきます。
本作は海外での公開直後、「DC映画史上最高のマーベル映画」と言われ絶賛されました。
『ジャスティス・リーグ』でザック・スナイダー監督のバトンを受け継ぎ、最終編集を担当したジョス・ウェドン(『アベンジャーズ』監督)による、『アベンジャーズ』化の流れは本作でも続いており、今後もこの潮流が続くことが予想されます。
縦横無尽なアクションと縦横無尽なカメラワーク
また本作の象徴的な演出として、アクションに合わせて縦横無尽に動き回るカメラワークは印象的です。
吹っ飛んで壁に叩きつけられた敵に動きに合わせて、カメラも横向きになり、またジェットコースターのごとく元のポジションへと戻っていきます。
一時期流行した手持ちカメラで、ユラユラと動き続けるカメラワークとは違い、ピシッ、ピシッと気持ちよく決まっていくカット割りは、小気味よいアクションをさらに盛り上げる一助となっています。
またそのアクション、カメラワークを、アヴァンタイトル、開始数分でニコール・キッドマンにやらせることで、より早く観客の気持ちを掴んだことも本作成功の要因と言えるでしょう。
シチリアにおける、アクアマンとブラックマンタの対決と、屋根の上を飛び回るメラの逃走シーンを、巧妙に一つの画面に収めて同時進行していくシーンも素晴らしく、本作でのジェームズ・ワン監督のカット割り演出は、そのほとんどが大成功していると言って過言ではありません。
最後に本作を観た人へのオススメ作品として、『ブラックパンサー』と『マイティ・ソー』を挙げておきます。
共に本来家族である敵と、王座を争って戦い(ブラックパンサーは従弟、ソーは義理の弟)、架空の国を舞台にしているという共通点があります。
『ブラックパンサー』に至っては、中盤の決闘シーンで敗れ、ラストでやり返すというところまで同じで、マーベル化してきた本作との比較で楽しめるでしょう。
次回の「最強アメコミ番付評」は…
いかがでしたか。
次回の第25回戦は、アカデミー賞にもノミネートされた、3月8日(金)公開の『スパイダーマン:スパイダーバース』公開前情報を考察していきます。
お楽しみに!