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『仮面ライダー龍騎』あらすじとキャスト。最終回と複数の結末を解説|邦画特撮大全32

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第32章

現在放送中の『仮面ライダージオウ』に、『仮面ライダー龍騎』(2002~2003)が登場しました。更に『仮面ライダージオウ』のスピンオフとして『龍騎』のオリジナルエピソードが制作、ネット配信されることも決定しています。

今回は『仮面ライダー龍騎』を振り返っていきましょう。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

『仮面ライダー龍騎』の作品概要

仮面ライダー龍騎 第01話[公式] 平成仮面ライダー20作品記念

【放映期間】
2002年2月3日~2003年1月19日

【原作】
石ノ森章太郎

【脚本】
小林靖子、井上敏樹

【監督】
田﨑竜太、長石多可男、石田秀範、佐藤健光、鈴村展丈

【出演】
須賀貴匡、松田悟志、杉山彩乃、小田井涼平、弓削智久、萩野崇、角替和枝、津田寛治ほか

賛否両論・13人のライダーバトル

仮面ライダー龍騎 第02話[公式] 平成仮面ライダー20作品記念

『仮面ライダー龍騎』は平成仮面ライダーシリーズの第3作目として放送された作品です。

賀集利樹や要潤らが出演し人気を博した前作『仮面ライダーアギト』(2001~2002)の後を受け、『龍騎』も子どもたちに人気を博しました。

斬新なデザインの仮面ライダーたちによる仮面ライダー同士の戦い、ミラーワールドという戦闘フィールドの設定など、前作『アギト』から作品の空気が一気に変わったと言えます。

またモンスターのCG表現やカードという変身補助アイテムなど、後の“平成仮面ライダーシリーズ”にも継続して導入された要素も多いです。

しかし発表当初『龍騎』は賛否両論となりました。

“13人の仮面ライダーが自身の望みを叶えるため、最後の1人になるまで殺し合う”という物語に批判が寄せられたのです。

『龍騎』以降は『仮面ライダーカブト』(2006~2007)や『仮面ライダー鎧武』(2013~2014)など、仮面ライダー同士の戦いを中心に描いたシリーズも複数製作さています。

しかし仮面ライダーと敵が戦うという図式が強くあった当時、視聴者にとって『龍騎』の物語はとてつもない衝撃だったのです。

仮面ライダー同士の戦いという設定は前作『アギト』から導入されたものですが、『龍騎』はそれをより前面に押し出したものとなっています。

また複数のライダーが殺し合いをすることで、必ずしも正義が1つではない、“人の数だけ正義がある”ことを表現しているのです。

多彩な13人のライダーたち

登場する13人の仮面ライダーたちは非常に多彩なキャラクターとなっています。

戦いを止めるために戦う主人公の城戸真司/仮面ライダー龍騎。彼と対になるクールガイの秋山蓮/仮面ライダーナイト。スーパー弁護士の北岡秀一/仮面ライダーゾルダ。

彼と因縁のある殺人犯で脱獄囚の浅倉威/仮面ライダー王蛇や、悪徳刑事の須藤雅史/仮面ライダーシザースなど強烈なライダーたちも多く登場しました。

13人登場する仮面ライダーの中でも、主人公の真司、蓮、北岡と浅倉の4人は特に人気が高く、放送当時キャラクター別の写真集が出版されたほどです。

また手塚海之/仮面ライダーライアを高野八誠、東條悟/仮面ライダータイガを高槻純が演じました。

2人は過去にウルトラマンを演じたことのある俳優で、ウルトラマンから仮面ライダーに変身したと話題になりました。

また後述する劇場版には加藤夏希演じる霧島美穂/仮面ライダーファムが登場。TVスペシャルに登場する高見沢逸郎/仮面ライダーベルデには黒田アーサーがキャスティングされました。

前者は仮面ライダー史上初となる女性ライダー、後者は知名度のある俳優が仮面ライダーに変身することが当時話題となったのです。

また『龍騎』の脚本を手掛けたのは、映画『刀剣乱舞』(2019)やアニメ『進撃の巨人』『ジョジョの奇妙な冒険』の小林靖子。アニメ『DEATH NOTE』『うしおととら』の井上敏樹。

繊細でいきいきとしたキャラクター描写に定評のある小林と、アクの強い描写で知られる井上の両名によって、多彩なライダーたちが魅力的に描かれました。

劇場版・テレビスペシャル『龍騎』複数の結末


仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL(DVD)

斬新だったのは設定や物語だけではありません。夏に公開された劇場版『仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(2002)はなんと“先行最終回”と明銘打たれて公開されたのです。

本作には前述した自発の女性ライダー・仮面ライダーファムの登場や、鏡像の真司が変身するもう一人の龍騎・仮面ライダーリュウガが登場します。『仮面ライダージオウ』に登場したアナザーライダーがアナザー龍騎ではなくアナザーリュウガなのは、この劇場版からの引用です。言ってしまえば『龍騎』にはすでにアナザー龍騎が登場していたわけです。

“先行最終回”と銘打たれた劇場版ですが、劇場版は“パラレルワールド”として扱われテレビシリーズと劇場版とはそれぞれ違う結末になりました。

またゴールデンタイムに放送されたTVスペシャル『仮面ライダー龍騎 13RIDERS』。このテレビスペシャルでは「戦いを止める」「戦いを続ける」の2つの結末が用意され、電話やインターネットによる視聴者投票で結末を決定するという企画でした。

結果、『仮面ライダー龍騎』にはテレビシリーズの最終回、劇場版、テレビスペシャルの2つ、計4つの結末が描かれたのです。『仮面ライダー龍騎』はこうした大胆な試みがいくつも導入され話題を集めました。

まとめ

斬新なデザインや賛否両論を生んだ物語、“先行最終回”と銘打たれた劇場版、視聴者投票。

斬新な要素や大胆な試みが多数導入され、人気・話題とも大きかった『仮面ライダー龍騎』。『龍騎』は前々作『クウガ』や前作『アギト』と作品の空気が大きく違いますが、ライダーバトルや変身補助アイテムの導入など後のシリーズに大きな影響を与えた作品なのです。

次回の邦画特撮大全は…

次回の邦画特撮大全は、『仮面ライダークウガ』(2000~2001)から『仮面ライダードライブ』(2014~2015)まで平成仮面ライダーシリーズを支えた石田秀範監督を特集します。

お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

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