ディズニーの普及の名作映画『メリー・ポピンズ』の続編が54年ぶりについに登場!
楽しい歌とダンスに、うっとりする映像美で、観客に新たな魔法をかけます。
そして普遍的な感動を与える教訓に満ちたストーリーの、理想的なミュージカルファンタジーです。
CONTENTS
映画『メリー・ポピンズ リターンズ』の作品情報
【原題】
Mary Poppins Returns
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【監督】
ロブ・マーシャル
【キャスト】
エミリー・ブラント、リン=マニュエル・ミランダ、ベン・ウィショー、エミリー・モーティマー、ジュリー・ウォルターズ、コリン・ファース、メリル・ストリープ、アンジェラ・ランズベリー、ディック・バン・ダイク
【作品概要】
ウォルト・ディズニーが最も映画化を熱望したと言われるトラバース婦人の児童文学「メアリー・ポピンズ」。
その実写化にして1964年のアカデミー賞5部門を制した名作『メリー・ポピンズ』の、54年ぶりの続編です。
監督は『シカゴ』(2003)などのミュージカル映画の名手ロブ・マーシャル。
『クワイエット・プレイス』(2018)などのエミリー・ブラントが、新しくメリー・ポピンズを演じます。
前作から25年経った大人のマイケル・バンクスを演じるのは人気イギリス人俳優ベン・ウィショー。
その他、ブロードウェイのスターであるリン=マニュエル・ミランダ、オスカー俳優コリン・ファース、メリル・ストリープなど豪華キャストが脇を固めます。
またサプライズでレジェンド俳優たちが出演しているのも注目です。
映画『メリー・ポピンズ リターンズ』のあらすじとネタバレ
1935年、大恐慌中のロンドン。
明け方、街灯の点灯夫をしているジャックは曇っているロンドンの空を眺め、にこやかに歌いながら一つ一つ街灯を消していきます。
彼が桜通りにあるバンクス家の前を通ると、家政婦エレンのまた水道管が漏れたという叫び声が。
世帯主のマイケル・バンクスとその子こどもたち、双子のジョンとミランダ、その弟のジョージーも手伝ってなんとか漏れを直します。
そこに、弁護士が2人やってきました。
マイケルは画家でしたが、一年前に妻ケイトが他界。
今は子どもを安定して養うために、亡き父ジョージ・バンクスがかつて重役をしていた銀行で働き、家計のために借金もしていました。
その時に担保にしたのが、父から引き継ぎずっと住んでいる自宅でした。
弁護士たちは今週の金曜までに借金を全額返さないと家を差し押さえると話します。
しかし借金の額は一般市民の年収ほどもあり、とても払えません。
一人暮らしで労働組合活動をしている姉ジェーンも家にやってきており、マイケルと一緒に頭を抱えます。
彼女はそこで父ジョージが銀行の株を買っていたのを思い出し、それがあれば借金を返せるとマイケルと一緒に家中を探し始めます。
屋根裏部屋も探しているとそこには、マイケルたちの子供時代に仕事人間だった父が心変わりし、公園で一緒にあげてくれた凧がありました。
破れてつぎはぎだらけの凧をマイケルはゴミ箱に捨ててしまいますが、そこで急に風が吹き込んで外に飛び出します。
親の代わりに買い物に出かけて公園を歩いていた子どもたち3人は見覚えのある凧を目撃し、追いかけて走り出しました。
ジャックも公園におり、子どもたちと4人で凧を掴まえて風で飛ばされないように踏ん張ります。
と、空に光が差し、雲の切れ間から凧に掴まって一人の女性が下りてきました。
25年前バンクス家に突如として現れ、マイケルたち姉弟の面倒を見た不思議な力を持つ家政婦メリーポピンズでした。
彼女は地面に降り立つと、初めて会ったはずの子どもたち3人の名前を呼んでバンクス家に戻ると言います。
ジャックは子供時代にメリー・ポピンズを見たことがありましたが、彼女の見た目は当時と何も変わっていませんでした。
ジャックの師匠でメリーと親交のあった煙突掃除夫バートのことを聞かれた彼は、バートは今は世界を旅行していると話します。
再び昔と同じ姿で現れたメリーを見てマイケルとジェーンはびっくり。
彼女は昔のように子どもたちの面倒を見ると宣言し、「扉が開くまでここにいる」と言いました。
マイケルは昔、メリーの魔法をたくさん見ていましたが、今ではあれは幼かったゆえの幻想だったと思っていました。
メリーは早速子どもたちをお風呂に入れます。
浴槽に湯を張ると、そこからイルカが出てきて、さらに湯船に入ってみると、そこには大海原が広がっていました。
メリーの魔法によって浴槽の海を泳ぎ回る子どもたち。
不思議な旅を終え、浴室に戻ってきた時には子供たちは彼女と魔法の力に夢中になっていましたが、メリーは魔法のことを聞かれても「何のこと?」としらを切ります。
子どもたちはメリーに部屋を片付けるように言われると素直に従います。
屑籠に捨てられた亡き母も一緒に描かれたマイケルの絵を見つけポケットにしまうジョージー。
その頃、マイケルとジェーンは株の証明書が見つけられず、銀行に何か書類がないか探しに行きます。
かつてはミスター・ドース・シニアとジュニアが親子で経営していたフィデリティ銀行ですが、今はジュニアの甥っ子であるウィリアム・ウェザーオール・ウィルキンズが頭取をしていました。
ウィルキンズは事情を聞いて2人に同情し、金曜日の24時までこのオフィスで待機して待つこと、ジョージの株の書類もしっかり探すと約束します。
マイケルたちは彼に希望を託し帰りますが、ウィルキンズは恐慌を利用して人々の資産を徹底的に差し押さえる悪徳な経営をしており、バンクス家もそのターゲットになっていました。
彼は手元に持っていたバンクス家の株の書類を燃やしてしまいます。
その夜、ジョンは何とか家計を助けたいと、母ケイトの形見の壺を売ろうとアナベルとジョージーに提案しますが2人は反対。
壺を引っ張り合った結果、一部が欠けてしまいます。
メリーがやってきて誰が割ったのか聞くと、3人はお互いを責めますが壺の中から「皆で割った」という声が聞こえてきます。
壺に描かれた馬車の御者が、彼らのせいで車輪が外れてしまったと喋っていました。
メリーは車輪を直すために絵の中に入ると言い出します。
点灯作業をしていたジャックもやってきて、メリーポピンズたちは魔法の力で壺の絵の世界に入っていきました。
そこは絵が動き、喋る狼や馬がいる世界でした。
車輪を直してあげたあと、彼らは狼たちに劇場へ連れて行ってもらいます。
みんなにせがまれジャックと一緒に歌とダンスを披露するメリー。
盛り上がっている最中、ジョージーは先ほどの狼たちが自分たちの部屋にあった時計を盗み出そうとしているのを見てしまい、彼らを追いかけます。
ジョンとアナベルも一緒に追いかけて馬車に飛び乗りますが、馬が暴走し3人は崖から落ちそうになります。
危ない!と思った矢先、3人は自分たちの部屋で目を覚ましました。
3人は母の壺割ってしまったこと、母との思い出がある家を失いたくない、母と二度と会えないことが寂しいと泣き出します。
メリーは母は永遠にいなくなったわけではなく、あなたたちの心にいつもいると励まし、歌を歌ってあげました。
翌日、メリーは壺を直そうと、子どもたちを従妹のトプシーの家に連れて行きます。
トプシーはメリーと同じく優秀な魔法使いで、なんでも直せる力を持っていましたが、ちょうどその日だけは調子が悪く家の中がすべてさかさまになっていました。
子どもたちはさかさまのトプシーの家を面白がった後、彼女に壺を渡します。
トプシーは次の水曜日には完璧に直すと約束しました。
その次の日、マイケルは大事な書類を忘れていってしまいました。
メリーと子どもたちはジャックの自転車に乗せてもらいマイケルを追いかけます。
銀行に着いてマイケルを探していると、ウィルキンズと以前家に来た弁護士たちの会話が聞こえてきました。
自分が根回しをしたから予定通り期日がきたら家をすぐ差し押さえろと言っているウィルキンズ。
子どもたちは、マイケルにウィルキンズの悪だくみを伝えますが、彼は雇い主を悪く言う子供たちを叱り、家に帰します。
信じてもらえずお金も用意できないとうなだれる子供たち。
おまけに霧が濃くなって道に迷いそうになりますが、ジャックは明かりを頼りにすればいいんだと街灯に火をともします。
そのまま街灯がたくさんある広場に出た彼らは、ジャックの仲間の点灯夫と一緒に踊りました。
家に帰るころにはすっかり暗くなっており、帰りを心配していたマイケルは子どもたちを再度叱り、メリーのことも咎めます。
今の不況で銀行といういい職場に勤めるのがどれだけ大変かと怒鳴るマイケルでしたが、泣きそうな子どもたちに気づき、冷静になって彼らに謝ります。
ケイトが死んでからおかしくなってしまったと言う彼を子どもたちは慰め、家族は抱き合いました。
映画『メリー・ポピンズ リターンズ』の感想と評価
旧作に敬意を示し新しい挑戦を
1964年の『メリー・ポピンズ』は当時最高峰のアニメーションと合成技術とマットアートの美しさ、そしてメリー・ポピンズを演じたジュリー・アンドリュースや掃除夫バート役のディック・バン・ダイクを始めとするキャストのハイレベルなパフォーマンスで、めくるめくファンタジー世界をこれ以上ない説得力で描いて世界中の観客を魅了しました。
今見ても新鮮に驚き感動できる傑作です。
まだCGもない時代、劇中でメリー・ポピンズが起こす魔法は観客にとってもどうやっているのかわからない魔法のようなもので、マイケルやジェーンと一緒にびっくりすることができていました。
しかし、2018年までの54年間でCGが開発され映像技術が発展するとともに観客の目も肥えて、昔のように素直に驚くことはできなくなっています。
劇中のマイケルが大人になって想像力を失い魔法を信じなくなっているように。
しかし、そこはさすがディズニーと言うべきか、旧作のようなこれ見よがしな映像技術のひけらかしはなるべく抑え、オーソドックスな映像美と純粋な歌とダンスの楽しさを押し出すミュージカルを作り出しました。
ミュージカル演出出身で傑作『シカゴ』を撮ったロブ・マーシャルを監督に起用、音楽はロブ・ライナー作品を始めとする映画音楽のベテランで『ヘア・スプレー』でトニー賞とグラミー賞を受賞したマーク・シャイマン、撮影には『SAYURI』でアカデミー賞を受賞した名手ディオン・ビーブなど実力派のスタッフを揃えています。
子供時代に『メリー・ポピンズ』を大好きになったロブ・マーシャル監督はメリー・ポピンズを蘇らせる役者はエミリー・ブラントしかいないと彼女に熱烈オファー。
ジュリー・アンドリュース版よりもより自信満々でつんけんとした中に優しさのある原作に近いメリー・ポピンズが誕生しました。
ダンスは初挑戦という彼女ですが、劇中で見せるミュージカルシークエンスはとても初めてとは思えないクオリティです。
かつてディック・バン・ダイクが演じた掃除夫バートはメリー・ポピンズと一緒に子供たちや観客をファンタジー世界に引き込む役でしたが、今回はその弟子にあたるジャックを狂言回しに当てブロードウェイで活躍するトップミュージカル俳優、リン=マニュエル・ミランダを起用。
彼も素晴らしいパフォーマンスを見せてくれます。
旧作は当時最高峰の技術の粋を集めていただけに、それを前面に押し出すあまりワンシーンワンシーンが少し長くなってしまっていましたが、今回はどのシーンも間延びしないちょうどいいバランスでサクサク物語が進んでいくのも良い点です。
また旧作に敬意を示す部分と新しい挑戦の部分のバランスも見事です。
旧作と同じようにアニメーションキャラクターたちと踊るシーンでは引退していた2Dアニメーションのスペシャリストたちを呼び戻してかつてのハイクオリティな手書きアニメーションを復活させている一方、旧作のトレードマークとも言うべき
「Supercalifragilisticexpialidocious」(”スーパーカリフラジリスティックエクスペリドーシャス”というメリー・ポピンズが使う元気の出る魔法の言葉)や、「Chim-Chim-Cheree」(バートが歌う煙突掃除夫の歌)
といった誰もが知っている超名曲はあえて封印して、シャイマンが新しい曲を9曲も作り出しています。
非情に志の高い作品です。
特におススメは劇中でジャックが3回歌う「Lovely London Sky」。
暗い時代でも空を見上げて希望を持とうという内容でまさにこの映画のテーマを表しています。
混沌とした時代に光を当てるファンタジー
『メリー・ポピンズ』は1910年のロンドンが舞台でしたが、本作は25年後の1935年が舞台となっています。
劇中でも言われるように世界中が大恐慌となっており、大人になったマイケルは借金に追われ、ジェーンは労働者の権利のために戦う運動をしています。
この25年の間に第一次世界大戦があり、またこの数年後には第二次世界大戦も起きてしまう、明るいと言い難い時代です。
人々の心が内向きになり、目の前のことで手いっぱいで不寛容な時代になっていたともいえます。
本作の悪役ウィルキンソンが強者の理論を振りかざし、自分の利益を拡大するためなら不正も他者を不幸に陥れることも平気でする人間なのも時代を象徴しています。
ロブ・マーシャル監督もインタビューで語っていますが、この暗い時代のロンドンというのは未だに諸問題が渦巻く現代のことも表しています。
しかし、そんな暗いロンドンの雲の隙間から光と共に現れるのがメリー・ポピンズ。
彼女はどんな状況でも人々に希望を与える象徴として描かれています。
辛い時だからこそ、子供の時のように夢と想像力をもって世界を明るく見ることの大切さを教えてくれるメリー・ポピンズ。
彼女だけでなく、暗いロンドンの街に灯りをつけていく点灯夫ジャックも希望をもたらす存在です。
また一番素晴らしいのは前作と同じくメリー・ポピンズはきっかけ作りと手助けをするだけで、あくまで肝心の問題を乗り越えるのは実質的主人公であるマイケル自身であるという点です。
前作でも彼の父ジョージが自分で気づいて仕事だけでなく子供たちとしっかり向き合う良き父へと成長したように、マイケルも妻の死を乗り越えて子供たちとの絆を取り戻します。
その後に借金問題を巡るシークエンスもありますが、彼が成長した時点でメリー・ポピンズの最大の役目は終わっていましたし既にハッピーエンドと言えるでしょう。
とはいえファミリームービーなので借金の件もしっかり解決されるのですが、そのシーンも前作の要素を活かした素晴らしいものになっています。
バンクス家の借金を解消してくれるのは、前作でフィデリティ銀行の頭取だったミスター・ドース・シニアに奪われたマイケルの2ペンスが元手の投資運用。
前作では2ペンスを奪った件に関するドース・シニアと、その息子ドース・ジュニアからの謝罪や返済は描かれておらず、54年ぶりに見事にその伏線を回収しました。
それだけでなくドース・ジュニアを演じているのは、前作で重要キャラのバートと老けメイクでドース・ジュニアの父ドース・シニアを演じていたディック・バン・ダイクというサプライズ。
54年ぶりの続編に前作のキャストが出ると言うだけで驚きですが、ダイクは93歳とは思えぬ見事な踊りも見せてくれます。
茶目っ気たっぷりの表情は昔と全く同じで、一番童心を持ち続けている存在とも言えますね。
このシーンの撮影でロブ・マーシャルは感動のあまり泣いてしまったそうです。
ファンタジーを通して人としての前向きな心の持ちようを教えてくれる作品です。
まとめ
ラストの風船を売っているおばあさんを演じるのは40年代から活躍を続けるレジェンド女優、アンジェラ・ランズベリー。
『ベッドかざりとほうき』(1971)の主演や『美女と野獣』(1991)ではポッド夫人の声を演じるなど、ディズニーともゆかりの深い彼女がみんなに夢や想像力の象徴である風船を渡していく感動のフィナーレも必見です。
メリー・ポピンズは再びロンドンを去っていってしまいましたが、彼女は常にみんなを見守り、いざという時は助けてくれる希望の象徴としてこれからも生き続けていくでしょう。
また何十年かおきに続編が作られていくかもしれません。
今から楽しみですね。