Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2018/11/26
Update

『ダークナイトライジング』ネタバレ解説。シリーズのラストに見たスーパーヒーロー終焉の仕方|最強アメコミ番付評15

  • Writer :
  • 野洲川亮

こんにちは、野洲川亮です。

今回はクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」シリーズの第三作にして、完結編となる『ダークナイト ライジング』(2012)を考察していきます。

クリスチャン・ベールが演じたバットマンの“最期”が描かれた大ヒット作を、スーパーヒーローという存在は何なのか?という視点から分析していきます。

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

『ダークナイト ライジング』のあらすじ(ネタバレを含みます)

(C)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC

大富豪ブルース・ウェインは故郷の犯罪都市ゴッサム・シティを悪の手から守るため、バットマンとして自警活動を行っていました。

そんな中、強敵ジョーカーとの戦い(『ダークナイト』(2008))で愛する女性レイチェル・ドーズ、その恋人の検事ハービー・デントを失ってしまいます。

“White Knight=光の騎士”と呼ばれたハービーでしたが、レイチェルを亡くした喪失感をジョーカーに付け込まれ悪へと堕ち、レイチェルの死に関わった人間を殺害してしまいました。

正義の象徴であったハービーの名誉を守り、人々に希望を与えるためにバットマンはその罪を全て被り、“Dark Knight=闇の騎士”として警察から追われる身となることを選びます。

それから8年、本作に時代を移したゴッサムでは、ハービー・デントの正義の意志を反映したデント法の成立により犯罪の無い平和な日々が訪れ、ブルース・ウェインもバットマンを引退し隠居生活を送っていました。

しかし、ブルースの屋敷にキャットウーマンことセリーナ(アン・ハサウェイ)が侵入したことをきっかけに、かつてブルースが壊滅させた“影の同盟”(『バットマン ビギンズ』(2005))の一員であったベイン(トム・ハーディ)が暗躍していることに気付き、過去の戦いでボロボロになった身体をおしてバットマンとしての活動を再開します。

ベインはバットマンの秘密を知るジム・ゴードン署長(ゲイリー・オールドマン)に重傷を負わせ、証券取引所を襲撃しブルース・ウェインを破産に追い込みます。

その後、バットマンはキャットウーマンに嵌められる形でベインと対決しますが、完璧に叩きのめされた上に、“奈落”と呼ばれる地下牢獄に閉じ込められてしまいます。

ベインはゴッサム中に爆弾を仕掛け、ハービー・デントの真実を暴露して人々の希望を奪い、囚人たちを従えてゴッサムを占領しました。

何とかゴッサムへと帰還したバットマンは、ゴードン、ブレイク警部(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)やキャットウーマンたちと協力し、爆弾の解除、市民の避難を実行に移します。

果たしてバットマンはベインを食い止め、ゴッサム・シティを救うことは出来るのでしょうか…。

ヒーローの終焉と継承される意志

(C)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC

人気シリーズの最終章として“バットマンの死”が暗示され、公開前から話題となっていた本作ですが、そこで描かれたのはスーパーヒーローの最期、そしてその正義の意志が受け継がれていくラストでした。

バットマンというヒーローの誕生を描き、本作への因縁が繋がっていく『バットマン ビギンズ』、最愛の人を失い、自身もダークヒーローの汚名を被ってしまう『ダークナイト』は、ジョーカーという映画史上に残る希代のキャラクターを生みだしました。

迎えた本作で、すでに心身共にボロボロな状態から、さらに過酷な状況へと追い詰められていくバットマンの様は、その死、最期、悲劇を何重にも連想させます。

そしてバットマンだけでなく、前2作でのゴードン署長や他のヴィランたちの行動一つひとつが全て本作で結実していく、というシリーズならではの積み重ねの因縁ドラマも余すことなく展開していきます。

それぞれのキャラクターが掲げる正義と、その欺瞞までが描かれ、ノーラン監督が徹底してきたリアリズム演出の正に集大成的作品となっています。

ゴッサムを守るため、常に利他的な選択をしてきたバットマンの姿を見たブレイク警部は、一連の騒動における警察の対応に絶望すると同時に、自らに課すべき正義の形を見出します。

この“正義の継承”こそが本作の肝であり、ラストシーンはバットマンが人生を賭けて守り抜いてきた意志が、明確に受け継がれたことを示しています。

『ダークナイト ライジング』を観た人へのオススメ作品

三部作の第3作というわけで、当然ながらシリーズ前2作品『バットマン ビギンズ』、『ダークナイト』はオススメです。

特に『ダークナイト』の、故ヒース・レジャーが演じたジョーカーの“鬼気迫るユーモラスな演技”は、アメコミキャラクターの域を超えた伝説的な評価を得て、死後にアカデミー助演男優賞も受賞したほど鮮烈なものでした。

三部作で主役バットマンを演じたクリスチャン・ベールは、演技派でありつつ多数のハードなアクション作品に出演しており、架空の戦闘術ガン=カタが話題となった『リベリオン』、未来で機械軍と戦う『ターミネーター4』、ハードボイルドな西部劇『3時10分、決断のとき』など、枚挙にいとまがありません。

クリストファー・ノーラン監督作品では、レオナルド・ディカプリオ主演のSFアクション『インセプション』をオススメします。

渡辺兼、ジョセフ・ゴードン・レヴィット、トム・ハーディ、キリアン・マーフィ、マイケル・ケインなど、「ダークナイト」シリーズのメンバーも勢ぞろいしている、映像表現の新たな一面を開拓した傑作です。

トム・ハーディ出演のオススメ作品は『ヴェノム』の記事をご覧ください。

次回の「最強アメコミ番付評」は…

いかがでしたか。

次回の第16回戦では、『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』を考察していきます。

お楽しみに!

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

『若き見知らぬ者たち』あらすじ感想と評価解説。内山拓也監督が磯村勇斗×岸井ゆきの×福山翔大で描く“名もなき者たちの魂の叫び”|映画という星空を知るひとよ223

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第223回 2020年に『佐々木、イン、マイマイン』で、新人賞を総なめした内山拓也監督の商業長編デビュー作『若き見知らぬ者たち』。 本作に描かれているのは、あら …

連載コラム

映画『娘は戦場で生まれた』感想とレビュー評価。シリア内戦の惨状にカメラを向ける母親の戦いとは|だからドキュメンタリー映画は面白い41

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第41回 空爆されたシリアの病院で、母は娘を撮り続ける。 今回取り上げるのは、2020年2月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開 …

連載コラム

Netflix『全裸監督』第7話あらすじネタバレと感想。村西釈放の1億円の出どころとは?|パンツ一丁でナイスですね〜!7

連載コラム『パンツ一丁でナイスですね〜!』七丁目 Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』が2019年8月8日より配信中です。 伝説のAV監督村西とおるを描いた本シリーズ。 このコラムでは1話づつ …

連載コラム

映画『ファナティック』感想レビューと内容考察。ラストまでガチ怖なハリウッドの狂愛者が最恐の来日|SF恐怖映画という名の観覧車115

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile115 猛暑や連日続く暗いニュースがある現代社会で、好きになれるものがあることは人生を潤す原動力になります。 しかし、行き過ぎた「好き」と言う感 …

連載コラム

映画『1976』あらすじ感想と評価考察。独裁政権が支配する社会の恐怖を主婦の目線で描く問題作|TIFF東京国際映画祭2022-6

第35回東京国際映画祭『1976』 2022年にて35回目を迎える東京国際映画祭。コンペティション部門に1970年代、軍事政権によって支配されたチリの姿を描いた映画が登場しました。 タイトルは『197 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学