10月25日から始まった第31回東京国際映画祭。
アンバサダーの松岡茉優のキュートさ、レッドカーペットに登場するや否や大騒ぎとなった稲垣吾郎、そして監督作を引っ提げて来日したレイフ・ファインズと華やかに開幕しました。
意外と天候に恵まれない東京国際映画祭のレッドカーペット。今年の天候の良さは珍しいモノでした。
そんな東京国際映画祭から実際に見ることができた話題作・注目作の速報レビューをお届けします。
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TIFF2018のオープニング作品映画『アリー/スター誕生』
2018年のオープニング作品となった『アリー/スター誕生』。
歌手を夢見るウェイトレスのアリーと、カントリーミュージシャンのジャクソンの運命的な出会いから始まる輝きと切なさを併せ持つラブストーリーであり、サクセスストーリーとなっています。
過去に何度か映画化されている脚本に新しい息吹を吹き込んだのが本作で監督デビューを飾るブラッドリー・クーパー。
これまで数々の作品で製作として名前を連ねた彼が、待望の監督デビューを飾り、またジャクソン役を演じています。
そしてなんといっても注目はアリー役。アーティストとして世界のトップに立つレディー・ガガが映画初主演を飾りました。
最初にアリーとして登場した時に“レディー・ガガがレディー・ガガに見えない演技”を見せた所からそのままスクリーンに釘付けになります。
そしてポップスターとして大成功を収めるクライマックスで、レディー・ガガ本人と被る圧倒的なオーラを見せつけてくれます。
そういった意味ではレディー・ガガのサクセス・ストーリーにも重なる部分もあるフィクションと、リアルが重なる展開も見どころです。
一方で華やかな活躍の裏側でアルコールに溺れるジャクソンの姿は『エリック・ クラプトン~12小節の人生~』『ボヘミアン・ラプソディ』など、アーティストの自伝的映画でよく見かけます。
アーティストになることで世界的な名声を得たものの、一方で精神をすり減らしていく様は、輝きの裏側をリアルに描き出しています。
『エリック・ クラプトン~12小節の人生~』はエリック・クラプトンの実像に迫ったドキュメンタリー。
『ボヘミアン・ラプソディ』は伝説のロックスターQUEENのフレディ・マーキュリーの自伝的映画。
『アリー/スター誕生』は完全なフィクションではありますが、アーティストの光と影を描いた映画、まるで足並みをそろえたように立て続けに公開されます。
劇場アニメ『PSYCHO-PASSサイコパスSinners of the System Case.1『罪と罰』&Case.2『First Guardian』』
テレビで2シーズンに加え、劇場版も公開された人気アニメシリーズが4年ぶりに再始動。
レギュラーキャラクターはそのままに、主役の常守朱以外のキャラクターを主軸に置いた三部作の内、1作目と2作目が初披露となりました。
1作目『罪と罰』は、時系列的にも劇場版以降の物語という文字通りの新作となっています。
“サンクチュアリ”と呼ばれる新しいコンセプト更生施設を巡る事件に直面する物語で、メインは第2シーズンから監視官となった霜月美佳と執行官の宜野座伸元がメインとなっています。
直情的だった霜月が監視官としてしたたかな面を持つキャラクターとして成長を見せ、宜野座がかつての父親・征陸智己を彷彿とさせる頼れるベテラン感を漂わせるキャラクターになっています。
2作目『First Guardian』は時系列を遡り2016年がメインの舞台。
シーズン2から執行官として登場した須郷徹平が、国防軍のエースパイロットから執行官になるまでの物語。
時系列上シリーズ前半の2016年ということでシリーズでは、すでに姿を消した征陸智己、縢秀星が執行官として登場。
さらに、青柳監視官や監視官としての宜野座が登場する、シリーズファンへのサービス的な要素もたっぷりな物語となっています。
3作目で主人公格となる予定の狡嚙慎也も執行官姿を見せています。
映画『プロジェクト・グーテンベルグ』
ハリウッドでも活躍するチョウ・ユンファと、中華圏映画のベテランスターのアーロン・クォックがダブル主演のサスペンス映画。
監督は「インファナル・アフェア」シリーズの脚本などで知られるフェリックス・チョンが務めた2時間を超すボリュームの堂々たる大作。
何と言っても見どころはチョウ・ユンファ。“画家”と呼ばれる偽ドル偽造団のカリスマ的なリーダーを快演しています。
グーテンベルグの言葉通り、前半部分は新米ドル札の偽造を進める工程がスリリングに描かれています。
ここで一団にスカウトされる模倣の天才でありながら、作品は泣かず飛ばずの絵描きをアーロン・クォックが演じていて、チョウ・ユンファに魅せられ犯罪に加わっていきます。
劇中の中盤では大迫力の爆破シーンもたっぷりなガン・アクションがあります。
ここではなんとチョウ・ユンファが“二丁拳銃”を見せてくれます。「男たちの挽歌」シリーズで彼を知った映画ファンにはたまらないシーンです。
映画はアーロン・クォックが過去を遡って語っていくスタイルで描かれ、同じスタイルの『ユージュアル・サスペクツ』などと同様に大きな仕掛けがいくつもあります。
『アジア三面鏡2018「journey」』
国際交流基金アジアセンターと東京国際映画祭による映画製作プロジェクト第2弾。
2016年の『アジア三面鏡リフレクション』は、故・津川雅彦、永瀬正敏などが登場、監督としても行定勲監督が参加しました。
今回も日本から長谷川博己、松永大司監督が参加しています。
三面鏡シリーズの一番のコンセプトであるキャスト・スタッフ、ロケ地のシャッフルは今回も健在です。
オムニバス作品1『海』
“旅”をテーマにした今回は『海』『碧朱』『第三の変数』の3作品。
『海』は亡き父親の遺骨を海に撒く旅に出る母娘の物語。知らず知らずのうちに溝ができてしまった二人のぎこちない関係が徐々に溶け合っていく姿を描いています。
オムニバス作品2『碧朱』
2作目『碧朱』は、日本から長谷川博己と松永監督がミャンマーに進出し撮影しました。
鉄道環状線の速度を倍にするために日本からやってきた技術者を演じる長谷川博己。
彼がミャンマーのリアルな姿を見ていくことで、生活が便利になっていくことが果たして地元の人々にとって幸せなのか、ということを考え始めます。
オムニバス作品3『第三の変数』
インドネシアから東京にやってきた夫婦。日本人の家に民泊する予定が、彼らを迎えたのは妻の元恋人にそっくりなケンジというインドネシアと日本人のハーフの青年で…。
このケンジが微妙な夫婦仲の研究をしていると言って二人の間に入ってくると、独特なテイストのコメディに仕上がっています。
さて、次回はコンペティション作品を追って、ご紹介させていただきます。