Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2018/10/15
Update

映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』ネタバレ感想と評価。あらすじから都市伝説の謎を解く

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

ロサンゼルスの街、シルバーレイクで発生した女性失踪事件を追う、1人の若者が直面する謎を描いた映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』。

都市伝説をテーマにした、本作をご紹介します。

映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』の作品情報


(C)2017 Under the LL Sea, LLC

【公開】
2018年10月13日(アメリカ映画)

【原題】
Under the Silver Lake

【監督】
デヴィッド・ロバート・ミッチェル

【キャスト】
アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ、トファー・グレイス、ゾーシャ・マメット、キャリー・ヘルナンデス、パトリック・フィッシュラー、グレース・バン・パタン、ジミ・シンプソン

【作品概要】
2015年に超低予算ながらも、全米で大ヒットしたホラー映画『イット・フォローズ』を監督した奇才、デヴィッド・ロバート・ミッチェルがロサンゼルスの闇を描いた作品。

主演に「アメイジング・スパイダーマン」シリーズや『沈黙 サイレンス』『ハクソー・リッジ』などの、注目作への出演が続いている、アンドリュー・ガーフィールド。

映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』あらすじとネタバレ


(C)2017 Under the LL Sea, LLC
セレブやアーティストたちが暮らすロサンゼルスの街、シルバーレイク。

この街で暮らすサムは、ミュージシャンのカートコバーンに憧れ、女優を目指す年上の彼女と交際していますが、仕事をしておらず収入がありません。

家賃滞納による強制退去の危機を前にしても、サムは気にする様子が無く、昼間から隣人の女性を双眼鏡で覗いていました。

サムは同じ敷地内に住む金髪の美女、サラに一目ぼれします。

ある日、本屋に出かけたサムは、さまざまな都市伝説を紹介している同人誌「アンダー・ザ・シルバーレイク」を見つけます。

作者に興味を持ったサムは、本屋の店員に「アンダー・ザ・シルバーレイク」の作者を紹介してもらう約束をします。

自宅に戻ったサムは、サラの飼っている犬が外にいるのを目にし、犬に餌を与えていた事で、サムはサラに声をかけられます。

サラの自宅に招かれたサムは、2人の時間を過ごしますが、サラのルームメイトが帰宅した事で部屋から追い出されます。

「もう少し一緒にいたい」と望むサムに、サラは「明日の午後、また来てほしい」とお願いします。

サムはサラの家から出る際に、部屋の中に海賊の姿をした、怪しげな男がいるのを目撃します。

帰宅し、「アンダー・ザ・シルバーレイク」を読み始めるサム、本には最近街中で多発している「犬を殺す男」の都市伝説が書かれていました。

次の日、約束通りサラの家を訪ねたサムですが、部屋の中は空になっていました。

管理人から、サラ達が夜中に引っ越した事を伝えられたサム、「よくある話だ」と言われますが、サムは納得ができません。

サムは、サラが住んでいた空になった部屋に忍び込み、棚に置かれていたサラの写真を手に入れます。

すると、誰かが部屋の中に入って来た為、サムは素早く窓から脱出します。

部屋の中に入って来た女性はすぐに退室、中の状況を伺っていたサムは、扉の裏にひし形が2つの、奇妙なマークが描かれている事に気付きます。

サラの部屋から出て行った女性を尾行したサムは、女性が友人と合流し、海賊姿の男に袋を渡している所を目撃します。

そのまま女性が友人たちと入っていったホテルに、サムも潜入します。

ホテルの屋上では、パーティーが開催されており、人気バンドの「イエスとドラキュラの花嫁」がライブを開催し、体中にバルーンを付けた美女が踊っていました。

そこで、友人であるアレンと会ったサムは、行方不明になっている資産家、セブンスの娘であるミリセントが、パーティーに参加している事を伝えられます。

そこへ「イエスとドラキュラの花嫁」のメンバーから、ソロライブの告知を受けたサムは、チケットになるクッキーを渡されます。

ホテルのパーティーから帰る夜道、サムは「アンダー・ザ・シルバーレイク」の作者から連絡を受け、会って話をする約束をします。

電話を切った直後から、サムは背後に何者かの気配を感じるようになります。

帰宅したサムは、恋人に「アンダー・ザ・シルバーレイク」の新刊を読ませます。

フクロウの仮面を付けた全裸の女性が、男性を殺害する都市伝説が紹介されていますが、恋人は理解を示しません。

恋人の態度に怒りを感じたサムは、「この世の中は誰かに操られており、成功者に都合の良い世の中になっている」と持論を展開、恋人は呆れた様子で出て行きます。

次の日の朝、目を覚ましたサムは、あるニュース映像を目にします…。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『アンダー・ザ・シルバーレイク』ネタバレ・結末の記載がございます。『アンダー・ザ・シルバーレイク』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
それは、資産家のセブンスが事故死し、現場では、一緒に車に乗っていた女性3人の死体が発見されたというニュースです。

そして、ニュース映像に映された捜査員が持っていたのは、サラが被っていた物と同じ帽子でした。

サラが死亡した可能性を感じながらも、約束通り「アンダー・ザ・シルバーレイク」の作者を尋ねるサム。

作者はサムを家に招き、「広告に仕掛けられたサブリミナル効果」「1ドル札の秘密」などの都市伝説をサムに伝え、サムがサラの部屋で見たひし形2つの奇妙なマークは「放浪者の暗号」だとサムに教えます。

また作者は自分は狙われていて、24時間自宅内をカメラで監視している事を伝え、その部屋を見せます。

サムはその部屋で、作者が「全ての謎を解明する道具」と信じている宝探しキットを見せられます。

その日の夜、「イエスとドラキュラの花嫁」のライブに出かけたサムは、入り口でチケットのクッキーをかじる事を求められ、一口でクッキーを食べます。

ライブ会場では、「イエスとドラキュラの花嫁」のレコードが配られており、会場にいたアレンから「このレコードにはメッセージが隠されている」と伝えられます。

サムはアレンと別れた後、パーティー会場でサラの部屋に侵入していた女性を発見します。

逃げ出した女性を追いかけますが、チケットのクッキーを一口で食べた事で、気分が悪くなり途中で倒れてしまいます。

次の日の朝、目が冷めたサムは自宅に戻り、「イエスとドラキュラの花嫁」の曲に隠されたメッセージを探します。

あらゆる方法を試し、メッセージを探り出したサム。

そのメッセージは「ディーンをなでた後に、ニュートンの下で待て」という内容でした。

早速、ハリウッドサインのある山に向かい、ジェームズ・ディーンの銅像の頭をなでて、ニュートンの像の前で待機していると、そこに現れたのは、「ホームレスの王」を名乗る汚らしい男でした。

「ホームレスの王」に目隠しをされ、ある場所に連れて行かれたサムは、途中から1人で洞窟の中を進む事になります。

そして、進んだ先にあったのは、ベッドなどの家具が置かれている地下施設でした。

地下施設から出たサムは、その夜に近所の映画上映会に参加、そこで映画に出ていた女優と知り合います。

そして、女優たちが乗車した車に、海賊姿の男が乗っているのをサムは目撃します。

次の日、「アンダー・ザ・シルバーレイク」の作者を訪ねたサムは、警察官から「彼は自殺した」と聞かされます。

突然の事に納得がいかないサムは、警察官が立ち去った後に、作者の住んでいた住居に侵入、監視カメラの映像を見ます。

そこには、フクロウの仮面を付けた、全裸の女が歩いている姿が映っていました。

恐怖を感じたサムは、作者が残した宝探しキットを持って逃げ出します。

その夜、宝探しキットの謎を解明しようとしていたサムは、気分転換にデリヘル嬢を呼びます。

サムの部屋に来たのは、上映会で知り合った女優で、サムはシルバーレイクに住む、大物ソングライターが開催したパーティーで、サラを見たと聞かされます。

次の日、サムは「イエスとドラキュラの花嫁」と接触する為に、チェスパーティーに潜入し、「イエスとドラキュラの花嫁」のボーカルに暴行を加え、「何故、レコードにメッセージを入れたのか?」と尋問します。

ボーカルは、人に歌えと言われて渡された曲である事を白状し、サムは大物ソングライターが関わっていると感じます。

映画女優の案内で、大物ソングライターの屋敷を訪れたサムですが、ソングライターはサラを知らず、夢に憧れてロサンゼルスに来た、サムの想いを馬鹿にして笑います。

怒ったサムは、屋敷内にあった、カートコバーンが使用していたギターで、ソングライターを殴り殺してしまいます。

サラへの手がかりが無くなり、呆然とするサムは、偶然見かけたコヨーテの後を追いかけて、あるパーティー会場に辿り着きます。

パーティー会場で、ミリセントに話しかけたサムは、セブンスの謎を追いかけている事を伝えます。

サムはミリセントと貯水池にでかけ、セブンスが残した腕輪を受け取りますが、その直後にミリセントが射殺されます。

自宅へと逃げ帰ったサムは、自分の部屋の中でフクロウの仮面を付けた、全裸の姿の女性を目撃します。

次の日の朝、セブンスが残した腕輪に暗号が書かれている事に気付いたサムは、チェスやゲームのマップを使用して暗号を解読、導き出された山奥へ向かいます。

山奥には、1つだけ民家が建っており、その中には白衣姿の老人と3人の女性がいました。

3人の女性の1人が、サラの部屋で見かけた女性と同じである事に気付いたサムは、真相を聞き出そうとします。

老人たちは、現世から離脱して次の世界を目指している団体で、サムが目撃した地下施設も、次の世界へ進む為の施設でした。

サラは、セブンスと一緒に、次の世界へ進む為の地下室に入っており、1度入ると2度と抜け出す事が出来ません。

サムは老人の計らいで、サラとテレビ電話をします。

サムが自分を探していた事を知ったサラは、涙を流しますが、サムにお礼を伝えて電話を切ります。

サラが生きている事を突き止めたサムは、民家から出ようとしますが力が入らなくなり倒れます。

そこへ「ホームレスの王」が現れ、サムは「ホームレスの王」に、地下へ監禁されますが「この事は絶対に喋らない」と約束をして外の世界に戻ります。

自宅に戻ったサムは、向かいに住んでいる中年女性の部屋を突然訪ねます。

そして、強制退去を執行する為に、自分の部屋に踏み込んだ管理人の姿を見つめます。

映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』感想と評価


(C)2017 Under the LL Sea, LLC
多くのクリエイティブな若者やセレブが暮らす街、「シルバーレイク」を舞台にした本作は、かなり個性的で変わった作品です。

デビッド・ロバート・ミッチェル監督が、ロサンゼルスの丘に建っている屋敷の不可解さから着想を得て、作り上げられた本作は、都市伝説を主体にしながら、我々の生活の中にある隠された「何か」を、浮き彫りにしようとしています。

作中に登場する海賊姿の男や、フクロウの仮面を付けた全裸の女など、何気ない日常に隠された不可解さが表現されていて「とにかく、何かがおかしい」と観客に思わせる事で、作品全体から漂う「怪しさ」が強調されています。

また、登場人物を少し引いた目線で描いており、主人公のサムに関して、一切の背景が語られていません。

サムは何を目指していて、どうやって生活しているのかなど、分からない部分が多いのです。

物語の途中で、サムが「人生の失敗編を、生きている気がする」と語るシーンから、何かに挫折した事は分かりますが、その詳細も不明です。

また物語中盤まで、ほとんどサムの妄想で話が展開する為、物語の終着点にも不安を感じながら観賞しました。

しかし、これは「何者にもなれていない人」の物語なのです。

映画のラストの展開は、唐突に感じる人もいるかもしれませんが、現実に起きている可能性も否定できません。

それは、セレブにしか分からない事ですから。

デビッド・ロバート・ミッチェル監督は、ロサンゼルスに何年も住んだ経験から、成功したセレブが住むエリアと、生活に苦しむエリアの存在する「分断された街」であると感じたそうです。

この作品は、一般の目から見ると不可解に感じる、ロサンゼルスセレブの奇怪な面に、デビッド・ロバート・ミッチェル監督が出した1つの答えと言えます。

作品内で、謎に対する明確な結論は出されておらず、観賞する人によって違う「発見」や「答え」のある映画となっています。

まとめ


(C)2017 Under the LL Sea, LLC
本作に出てくる都市伝説を理解すると、さらに世界観を楽しむことができます。

作中で冒頭から出てくる「犬殺し」の話は、アメリカでは有名な都市伝説で、サムがレコードに隠された暗号解く為に逆再生するのは、「リバース・スピーチ」と呼ばれる都市伝説です。

また、物語中盤に出てくる「全てのヒット曲を作ったソングライター」も元ネタがあり、短期間でギターの腕前が上達した、ロバート・ジョンソンが「クロスロードで悪魔と契約した」という話から、音楽業界を牛耳る男の都市伝説が生まれたと言われています。

本作は他にも、ヒッチコック作品などの古い映画へのオマージュや、テレビゲーム「ゼルダの伝説」が謎を解くヒントになっているなど、ポップカルチャーが多数登場し、詳しい人ほど陥る罠も作中に張られているようです。

とにかく奇妙な映画ではありますが、この独特の世界観を1度ぜひ体験してみてください。

関連記事

サスペンス映画

『ストレイ・ドッグ』ネタバレ感想と解説レビュー。70年代のアメリカ犯罪映画を現代に甦らせたニコールキッドマンの演技力

映画『ストレイ・ドッグ』は2020年10月23日(金)よりTOHOシネマズシャンテほかにて全国順次公開! 復讐か? 贖罪か? 過去に犯した過ちで心を蝕まれた女性刑事が、決着をつけるために動き出します。 …

サスペンス映画

【ネタバレ考察解説】ザ・メニュー|結末/最後/ラストシーンで映画が描くスモアに秘めた“料理人の求める言葉”ד喰らい残る者”の姿

客を憎む料理人が それでも料理人であり続けた「証」とは? 孤島に建つ高級レストランを舞台に、振る舞われる極上のメニューとともに秘密が明らかにされてゆく謎多きシェフと客人たちの顛末を描いたサスペンス映画 …

サスペンス映画

ビバリウム映画ネタバレ考察。謎の家ヨンダーの真相とラストの意味不明な出来事は「人生の縮図」だった!?

映画『ビバリウム』は2021年3月12日(金)より全国公開。 マイホームを夢見る若い夫婦が、住宅見学に訪れた事から始まる恐怖を描いた、映画『ビバリウム』。 住宅街から脱出できなくなった夫婦が、さらに正 …

サスペンス映画

映画『ミスティックリバー』ネタバレ考察と解説。感想の賛否こそがイーストウッド監督の唯一無二の秀作の証し

クリント・イーストウッド監督のサスペンス映画、 25年前のトラウマ事件と現在の事件が交差 ボストンの小さな町で生まれ育った3人が、ある事件を境に、悲劇的な運命を歩む事になる映画『ミスティック・リバー』 …

サスペンス映画

【ネタバレ】落下の解剖学|あらすじ感想と結末の評価考察。夫の転落死に潜む“謎の真実”?夫婦の秘密が剥き出しにされていく“残酷さ”

夫婦のひび割れた関係性が次第に暴かれていくヒューマンサスペンス 『愛欲のセラピー』(2019)のジュスティーヌ・トリエ監督による自身長編第4作目となるヒューマンサスペンス。2023年・第76回カンヌ国 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学