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Entry 2018/07/25
Update

アート・オン・スクリーン『私は、クロード・モネ』印象派の巨匠に迫る体験|映画と美流百科1

  • Writer :
  • 篠原愛

連載コラム「映画と美流百科」第1回

はじめまして。この度「映画と美流百科」というコラムを担当することになりました、篠原愛と申します。

このコラムでは、ファッションやアートなどを切り口に、映画を紹介していきます。

題材になっているカルチャーにも興味を持っていただき、より映画を楽しめるようにしていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、第1回目に取り上げる作品は、『睡蓮』などの名画で知られ、“印象派の巨匠”といわれる画家モネ(1840年11月14日~1926年12月5日)の生涯を描いた、『私は、クロード・モネ』です。

ちょうど今、横浜美術館で『モネ それからの100年』という展覧会が開催されていますので、映画を展覧会の予習にするもよし、復習にするもよし。きっと、この映画がモネの描いた絵画や、モネ自身への理解を深める一助となることでしょう。

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映画『私は、クロード・モネ』の鑑賞ポイント

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シンプルな構成

この映画の大きな特徴は、余計なものを削ぎ落としたシンプルな構成です。

フランスをはじめとするモネゆかりの地の実写風景、モネが描いた絵画、モネの手紙を読み上げる男性の声、ピアノの旋律。

ほぼこの4つの要素で構成されています。

風景と絵画

登場する絵画は、モネの画家人生がスタートした15歳頃の風刺画から、「印象派」の名前の由来となった『印象、日の出』、そして晩年の傑作『睡蓮』まで。

ほぼ現地の美術館でしか観られない絵画が、映画館の大きなスクリーンにハイビジョンで映し出されます。

モネが描いた場所の現在の風景が、だんだんと絵とオーバーラップしていく様子には、感嘆せずにはいられません。

100年近い時が経っても、今なお変わらない風景がそこにはあるのです。

そして太陽の輝きやそれを反射する水面など、自然を切り取るモネの描写力の高さが、まざまざと伝わってきます。

モネの登場は声と静止画のみ

モネの人物像を浮かび上がらせるのは、まず彼の残した手紙です。なんとその数2500通以上。心情を吐露する手紙が、読み上げられてゆきます。

進路を模索する迷い、お金がなく困窮する生活、妻を亡くした苦悩、ふたたび制作に没頭する喜びと情熱、白内障で失明の危機にある不安、そして老い。そのすべてを声だけで表現しています。

絵の中の人物の瞳に帯びる憂いにモネの心情を重ね合わせて切なく胸が締めつけられたり、困難な状況下でも光輝く明るい色調で表現をするモネの強さを垣間見て驚いたりすることもあるでしょう。

モネ自身の姿は肖像画、あるいは写真のみで映し出され、彼の動く姿はありません。

しかし、モネの声を演じる男性の感情表現がすばらしく、私たちは彼の人生を追体験するのです。

時代とともに進歩する技術

モネの姿は、おもに画家仲間が描いた肖像画や、写真で紹介されます。

1840年生まれのモネは歴史上の人物で遠い昔の人というイメージがありましたが、彼の姿が時代とともに写真で(しかもモノクロからカラーにいたるまで)紹介されてゆくにつれ、ついこの間まで存在していた身近な人物として感じられるようになりました。

また、写真の登場によって、絵画の役割が変わっていったことにも思いをはせます。

写真が登場する前に、絵画に求められていた大きな役割は記録でした。

しかし、人が描く以上に正確に物をとらえる写真が登場すると、芸術表現としての役割がクローズアップされ、その表現方法がより模索されるようになります。

そんな流れの中で登場した印象派ですが、この技法も科学技術の進歩なくしては語れません。

印象派の特徴は、できるだけ絵の具を混ぜず原色をそのままキャンバスに置いていく点描画法です。この技法が可能になったのは、色の三原色(赤・青・緑)が発見されたからなのです。

本作は大画面でアップになった絵画を、まじまじと観ることのできるまたとない機会なので、その点描にもぜひ注目してご覧ください。

「アート・オン・スクリーン」とは

美術鑑賞の概念をくつがえす企画

『私は、クロード・モネ』は、「アート・オン・スクリーン」というシリーズの中の1作品ですが、この企画は世界60ヶ国で上映され、100万人もが体験したとされる人気シリーズです。

絵画を観るのは、普段は美術館で列に並んで、時には人垣の隙間から、ということが多いはずです。遠くにある作品をなんとか覗き込むようにして、鑑賞したというよりは見えた、という状況になることさえありますよね。

この「アート・オン・スクリーン」の醍醐味は、劇場のシートに座りながら、スクリーンの大画面で普段では観ることのできない絵画の細かい所まで観ることができるという点です。さらに、作品だけでなく、作家の人生や制作過程を紹介し、90分にまとめてあるのも特徴です。

「アート・オン・スクリーン」は、これまでの美術鑑賞の概念をくつがえす企画で、単なる作品鑑賞にとどまらず、より作品を深堀してゆく体験になると言っても過言ではありません。

上映作品と劇場

今年2018年に日本で公開される作品は、3つラインナップされています。

『私は、クロード・モネ』はシリーズ2作目となります。他の2作品は、一旦上映が終了している1作目の『ミケランジェロ:愛と死』と、今後公開予定の3作目『フィンセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点』です。

「アート・オン・スクリーン」は、現在、観られる劇場は4つと限られているので、ご注意ください。

ミッドランドスクエア シネマ(愛知)、なんばパークス シネマ(大阪)、神戸国際松竹(兵庫)は7月27日(金曜日)までの上映。東劇(東京)は8月3日(金曜日)までとなっておりますので、お早めにお運びいただけたらと存じます。

当初は、上記期間で終了の予定だったのですが、大変人気があるとのことで、全国のユナイテッド・シネマ、シネプレックス13館での追加上映が決定されました。

19作品ものシリーズが作られている企画なので、今後上映される作品も増えることを期待しましょう。

まとめ

映画『私は、クロード・モネ』、およびそれを制作した「アート・オン・スクリーン」に、興味を持っていただけたでしょうか。

モネの絵は水辺をモチーフにしたものが多く、ブルーやグリーンなどの寒色がメインで使われています。

水や植物など、自然の透明感や輝きを感じさせてくれる絵画に触れて、連日の猛暑を一時忘れてみるのもよいかも知れませんね。

また、冒頭でも紹介しましたが、モネの絵画をご覧いただける美術館がありますので、参考にどうぞ。横浜美術館にて開催中の『モネ それからの100年』という企画展は9月24日(月曜日)まで。

そして常設展としては、直島の地中美術館の「モネの部屋」が有名ですので、こちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。

次回の『映画と美流百科』は…

次回は、7月7日より全国順次公開中の『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』のプリマたちの舞台に注目していきます。

8月1日(水)の掲載をお楽しみに!

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