Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2020/07/06
Update

映画『モルグ 死霊病棟』ネタバレ感想と考察評価。実話だったらガチ怖!死体安置所の夜に何かがおこる。|未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録6

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」第6回

佳作から怪作・激コワ映画まで、世界のあらゆる映画を紹介する「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」。第6回で紹介するのは、明らかにヤバい場所での、恐怖の一夜を描いたホラー映画『モルグ 死霊病棟』。

夜の病院、それもモルグ(死体安置所)といえば、怪談の舞台としては鉄板の設定です。更にそこで一夜を過ごす人間が、後ろめたい訳ありの人物だったら、タダでは済みません。

世界の誰もが恐怖を感じる設定を持つ映画が、南米パラグアイで誕生しました。馴染みのある王道の恐怖譚が、あなたの背筋を冷やします。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020延長戦見破録』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『モルグ 死霊病棟』の作品情報


(C)HJ PRODUCCIONES 2019 | ALL RIGHTS RESERVED

【日本公開】
2020年(パラグアイ映画)

【原題】
Morgue

【監督・脚本・製作】
ウーゴ・カルドゾ

【キャスト】
パブロ・マルティネス、ウィリ・ヴィジャルバ、マリア・デル・マル・フェルナンデス

【作品概要】
誤って人を轢き殺した男が、夜の病院の警備に就くことになります。やがて男の周囲で異様なことが起き始め…という設定を最大限に生かした、南米発のホラー映画です。

パラグアイのウーゴ・カルドゾ監督のデビュー作である、製作費6万5千ドルの低予算ホラー映画は、本国で異例の大ヒットを遂げるや全世界で話題になりました。その後本作のリメイク権が売買されるなど、新たな動きを巻き起こしています。

映画『モルグ 死霊病棟』のあらすじとネタバレ


(C)HJ PRODUCCIONES 2019 | ALL RIGHTS RESERVED

病院にある死体安置所。そこには死者にまつわる、様々な噂話が渦巻いています…。

とあるスーパーで買い物をしているディエゴ(パブロ・マルティネス)。恋人から電話に喜んで出たものの、家にいる友人を車で送ってくれないかと頼まれて渋ります。

金に余裕のないディエゴは、ガソリン代を気にしてその願いを断ります。そんな金欠ぎみの彼を、彼女とその友人は電話口で馬鹿にしている様子です。すっかり気を悪くしたディエゴ。

彼は人目が無いと見るや、店の商品を万引きするなど、どうやら手くせも良くない人物です。

駐車場に出ると、優等生だったかつての同級生に会い、思わず他人の車を自分の物と言い張り、見栄を張るディエゴ。実際に所有するのは、エンジンすらまともにかからないボロ車でした。

すっかり落ち込んで車を走らせたディエゴですが、友人を帰した恋人から、家に来ないかとのメールで誘われると、すぐ行くと返事して大喜びで車の向きを変えます。

彼女とのメールをやり取りしながら運転する彼は、返信に夢中のなるあまりスマホを落してしまいます。それを拾おうと身をかがめ、前方が不注意になるディエゴ。

車は何かに衝突し、衝撃を受けて停止します。ディエゴが慌てて外に出ると、車の前にはパーカーのフードを深く被った男が、うつ伏せで倒れていました。

辺りには誰も居ません。恐る恐る男に近づくディエゴ。しかし多量の血が流れ出して驚き、男の介抱も警察や救急への通報もせずに、彼は車に飛び乗って逃げ出します。

道路上に残された顔の見えない男は、なぜか裸足で倒れていました。

自分の行為に怯えたディエゴは、恋人に連絡も入れず自分の家に逃げ帰ります。彼が目覚めた時家の照明が何故か点滅し、スマホには非通知の番号から電話がかかってきます。

電話に出ると相手は何も語りません。切ると再び非通知の番号から電話がかかりますが、それは自分が務める警備会社の本部からのもので、ようやく安心したディエゴ。

本部は彼に、病院で警備に就くゴンザレスに替わり、夜勤に入れと指示します。彼は警備員の制服に着替えると、指示のあった病院へと向かいました。

到着した彼を年配の男ゴンザレスが迎えます。3人の子持ちと語る彼は、早速病院を案内します。

病院の冷蔵室である、扉に南京錠の付いた死体安置所(モルグ)を案内するゴンザレス。部屋には解剖台が並び、その1つにはシーツをかけた遺体があり、ディエゴは気味悪がります。

この部屋のジャロジー窓(羽目板上のガラスを組み合わせた窓)の1つが、勝手に開いて猫が入り込むので、時々部屋の中を確認してくれと伝えるゴンザレス。

しかし部屋の不気味な雰囲気に呑まれたのか、どうにもディエゴは落ち着きません。置いてある遺体について訊ねると、ひき逃げにあった遺体だと教えられます。

それを聞き動揺する彼に、ニュースを見ないのかと言うゴンザレス。犯人は今だに見つからず、事件は街でちょっとした騒ぎになっていました。

警備室に戻るとゴンザレスは、護身用の拳銃を引き渡すと、あとは時々モニターを見てくれれば良いと彼に告げて、帰って行きました。

1人になると古い病院の廊下を歩き、トイレで用を足したディエゴ。警備室に戻ると、スマホに恋人からの電話が入ります。

彼は昨日の事故以降、彼女に連絡していなかったと思い出しました。互いに顔が映るようビデオ通話に設定して会話し、昨日は車がパンクして行けなかったと嘘をつくディエゴ。

連絡が無かったと怒る彼女を、ディエゴは今は1人きりで勤務中だと説明してなだめます。電話に夢中の彼は、背後を生気の無い様子の、裸の女が横切ったことに気付きませんでした。

その姿を見た恋人は、女を連れ込んでいると怒り、別れを告げ電話を切ります。ディエゴにはどうして彼女が怒ったのか、全く理解できません。

気を取り直して、古い病院の館内を巡回するディエゴ。容器に入った気味の悪い標本や、様々な人骨が並べられた、気味の悪い部屋を見て回ります。

ようやく警備室に戻った時、モニターを見てモルグの扉が開いていると気付くディエゴ。

彼はモルグに向かうと中に入りました。照明を付けると、ゴンザレスに言われた窓が開いていました。ディエゴはハンドルを操作して窓を閉めました。

するとモルグに1体だけ置かれた遺体の腕が、解剖台からずり落ちました。彼は元に戻しますが、またしても腕は落ちます。

気味が悪くなったディエゴはシーツを被った遺体を突きますが、無論反応はありません。

モルグの扉に鍵をかけ、警備室に戻った彼は気を取り直し、湯を沸かすとお茶を入れました。お茶を入れたコップをテーブルに置き、座ってスマホを操作するディエゴ。

彼が目を逸らした隙に、独りでに動くコップ。気のせいかと彼は思いますが、目を離すとまたしても動きだし、今度はテーブルからコップは落ちます。

ありえない出来事に驚くディエゴ。彼はお茶をコップごと流し台に棄てました。

気を取り直して新聞を開いた時、何かの音が聞こえます。彼が周囲を確認すると、何者かが病院の敷地内にいると気付きます。

懐中電灯と拳銃を掴んで警備室を出ると、侵入者のいる場所へと向かうディエゴ。

そこにはフードを被った、パーカーを着た男がいました。ディエゴが何をしている、と叫ぶと男はゆっくりと振り返ります。

怪しげな男に出て行けと叫ぶディエゴ。しかし男の態度は反抗的で、ディエゴは銃を向けました。すると彼にそんな態度ではいずれ痛い目に合うぞ、と告げて立ち去る男。

男を追い払ったディエゴは、警備室に戻りました。落ち着きを取り戻した彼は渡された拳銃を持ち、ポーズをつけてスマホで自撮り写真を撮ります。

ところが撮影した写真のディエゴの背後に、何かの影が映っていました。するとモニターには、モルグの扉の前に立つ男の姿があります。先程の男でしょうか。

懐中電灯を掴み、モルグへと向かうディエゴ。途中で拳銃を持たずに出たと気付きますが、やむなくそのまま向かいます。

走り去る男を追い、病院の建物から出たディエゴは敷地内を探し回ります。鍵のかかったフェンスの扉の向こうに男の姿がありました。

どうやって彼はフェンスの向こうに出たのでしょうか。男はディエゴをにらみつけると、街の中に姿を消しました。

男がモルグで何かしたかもしれません。ディエゴはモルグの扉を開けると中の様子を伺います。

すると1つだけ置いてあった遺体は無く、その解剖台にはシーツだけが残されていました。確認のためモルグに入ったディエゴの背後で、独りでに閉まる扉。

慌てて扉に向かいますが、押しても引いても開きません。もう1つある出入り口も開かず、閉じ込められたディエゴ。スマホをかざしても電波は入らず、彼は助けを呼べません。

ジャロジー窓から外に出るのは不可能です。するといきなり、モルグの照明が消えます。

ディエゴは暗闇に包まれたモルグの中に、ただ1人で閉じ込められてしまったのです…。

以下、『モルグ 死霊病棟』のネタバレ・結末の記載がございます。『モルグ 死霊病棟』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク


(C)HJ PRODUCCIONES 2019 | ALL RIGHTS RESERVED

ディエゴは懐中電灯の光を頼りに、モルグの照明のスイッチを何度も操作しますが、点灯することはありません。すると何か物音がします。

巡回した時に閉めたはずの、病院の警備の仕事を引き継いだ際、ゴンザレスから指摘された窓が開いています。窓の外を覗いても、助けを求められる人の姿はありません。

いきなり水の流れる音がします。見ると解剖台の下にある、血を流すのに使う水道の蛇口から水が流れ出ていました。

慌ててディエゴは蛇口を閉めます。しかし他の解剖台の蛇口が独りでに緩み、水が流れ出します。無数に並ぶ解剖台の下で次々水が流れ出し、パニックになるディエゴ。

つながらなかったはずのスマホが、いきなり鳴り出して彼は驚きます。非通知の番号からの着信で、電話をとっても相手は何も語りません。

モルグの中で物音がします。電話の相手にここから出してくれ、と叫んでも反応はありません。電話を切りかけてみると、残高不足で使えないとのメッセージが流れます。

今度はディエゴの前で、窓が順番に独りでに開いてゆきます。慌てた彼は閉めようと窓に向いますが、思わず解剖台のゴミ箱を倒してしまいます。

中にあったのは遺体から取り出した内臓でしょうか。それを見て吐いてしまうディエゴ。

改めて彼は窓を調べます。すると外には先程追い出した、病院に侵入した男がいます。男に対してモルグの扉を開けてくれ、とディエゴはなりふり構わず必死に懇願します。

「お前を助けるだと、馬鹿を言うな」と、男は嘲るように断りました。そしてディエゴに対し、「お前は連中が怖いのか」と告げる男。

ディエゴの背後から、親子の会話が聞こえます。ディエゴを怪しむ息子に、あの人間は仲間じゃないと告げる父の声。それはモルグに潜む幽霊の声でしょうか。

声のした方を懐中電灯で照らしても、何の姿もありません。しかし闇の中に人影がありました。そして、影はいきなりディエゴに近づきます。

驚いた彼は懐中電灯を落しました。パニックになりながらも拾いあげ、モルグの中を照らしていくディエゴ。

闇の中には白い目をした、黒い男がいました。男に迫られ怯え切った彼は、自分が見たものは妄想に過ぎないと、必死に自分に言い聞かせていました。

しかしモルグの中には、確かに何かがいます。解剖台の下に身を隠したディエゴの側を、何者かの裸足が歩いて行きます。彼はもう恐怖に耐えられなくなっていました。

ようやく身を起したディエゴは、並んでいる解剖台1つ1つに座る、黒い影を目撃します。

すると懐中電灯が消えました。叩いても、電池を抜いて入れ直しても、点灯しない懐中電灯と格闘するディエゴ。

するとどこからか、すすり泣く声が聞こえてきます。壁際に女の子が顔を伏せて泣いていました。思わず大丈夫かと、ディエゴはその娘に声をかけます。

そこに巨漢の男が現れディエゴを掴むと壁に押し付け、その体を放り投げました。

倒れたディエゴの前で、大男は娘を激しく責め始めました。床に倒れたディエゴは、落ちていたナイフを拾い上げます。

白い目の大男の幽霊は、かつて娘を責め殺していたのでしょうか。夢中で男の背をナイフで刺したディエゴ。

巨漢の男は彼に向かってきますが、ついに倒れます。ディエゴはナイフを掴むと、その男の体に何度も繰り返し突き立てます。

自分の行為に夢中になる内に、狂気の笑い声を上げ始めたディエゴ。すると何をしているの、と子供の声が問いかけてきました。

我に返るディエゴ。目の前には病院に不法侵入していた、あのフード付きのパーカーを着てる男が立っていました。どうやって中に入った、と叫ぶディエゴ。

男はずっとここにいたぞ、と呟きます。ディエゴが何者だ、と問いかけると、逆にお前はどんな悪事を犯したと聞いてきました。

いつの間にか彼は建物の外にある、街の中の公営墓地の門の前にいました。誘われるように中に入って行くディエゴ。

人々の泣く声が聞こえてきます。それは死者を見送るために集まった人々のものでした。彼らは死者の入った棺桶を囲んで泣いていました。

棺の中に入っていたのは、彼が病院の警備の仕事を引き継いだ男でした。ディエゴが車ではねて死なせた相手こそ、あのゴンザレスだったのです。

棺を囲む者たちが、一斉にディエゴをにらみつけます…。

スマホの着信音で目覚めたディエゴ。それは警備会社の同僚でした。同僚がディエゴが本来勤務に入る工事現場に現れなかったので、ボスが怒っていると告げました。

ディエゴは本部からの指示で病院の勤務に就いた、と反論しますが、そんな命令を下した者などいません。彼は誰の指示で、寂れた病院へと招かれたのでしょうか。

恐怖に駆られるディエゴ。しかしモニターは、見えない何者かにモルグに引きずり込まれ、悲鳴を上げるディエゴの姿を映し出しました。

病院に不法侵入したあの男が歩いており、人とすれ違います。しかし誰も彼の存在に気が付きません。彼もまた、人ならぬ者だったのです。

病院のモルグに関わる人々の間には、様々な噂話が飛び交っています。しかしその物語に共通しているのは、死とは決して、人生の終着点では無いことです。

スポンサーリンク

映画『モルグ 死霊病棟』の感想と評価

参考映像:映画の中の”ジャンプスケア”シーンTop10

あまりなじみの無い、パラグアイ発のホラー映画ですが、内容は至ってシンプルかつ王道です。因果応報のストーリーに、お化け屋敷感覚で見せる幽霊によるドッキリが売りの映画です。

モルグに現れる、死霊たちが見せる恐怖はビックリ箱感覚そのもの。音や突然現れる幽霊で観客を驚かせる、いわゆる”ジャンプスケア”と言われる手法を駆使しています。

オーソドックスな怪談として物語は進みますが、セールスポイントは”来るぞ、来るぞ、そら来たっ~!”、と登場する幽霊たち。これが楽しい人には堪らない作品です。

お蔭でストーリーとして紹介する部分は少な目、ドッキリ演出を詳細に紹介しても興ざめですから、あらすじネタバレ紹介はシンプルな物になりましたので、ご了承下さい。

そんな心臓に悪い演出は嫌だという方や、あるいはそんな小手先のテクニックで描く恐怖は嫌だという、筋金入りのホラー映画ファンには、嫌われる作品かもしれません。

ただ私のようにB級映画ばかり見ていると、”ジャンプスケア”シーンすら外してしまう、残念なホラー映画も数多く目撃しております。その意味では本作は及第点のビックリ箱映画、椅子から飛び上がるのが大好きな方にお薦めです。

お化け屋敷感覚で楽しもう


(C)HJ PRODUCCIONES 2019 | ALL RIGHTS RESERVED

“ジャンプスケア”シーンと言っても、本作はいきなり観客にぶつけてくる、ドッキリ番組のような手法は使っていません。

登場人物をモルグという”お化け屋敷”に誘導するまでは、小出しで恐怖感を演出する怪談調の演出。そうやって明らかに何か起きる場所だぞ、という空間に誘導すると照明を消して、さあこれから始まるよと、観客に恐怖演出を受け入れる心の準備をさせます。

恐怖演出では音も大きな役割を果たしますが、本作は幽霊が出て来る前に、音などで「これから怖いモノを出しますよ」と予告してくれる、実に親切なスタイルの作品です。

何だ、ホラー映画の基本パターンじゃないか、と言われそうですが全くその通りです。それゆえにホラー映画慣れした人には、充分心に余裕を持って楽しめるショックシーンでした。

ところがホラー映画に慣れていない人、ホラー映画の雰囲気に呑まれやすい人の場合、本作のショックシーンで大いに”ジャンプスケア”するでしょう。

本作の理想の鑑賞方法は、ホラー映画慣れした人が、ストレートに怖がる人をなだめつつ、恐怖シーンが終われば共に笑う、そんな姿勢で見ることです。

ちなみに本作は生理的嫌悪に訴えるシーン、暴力シーンは控え目(自主規制PG12相当)。怖い目に合う奴も、悪行の報いを受けている訳ですから、精神的にもラクに楽しめます。

友達とワイワイ見るホラー映画として、またデートムービーとして見る作品として、実に最適の作品です。アメリカを中心に高く評価され、リメイクの話が生まれたのは、本作のお化け屋敷感覚で楽しめる部分が高く評価されたのでしょう。

それゆえに、1人で作品に向き合う、筋金入りのホラー映画ファンには、小手先の恐怖演出を使った生温い描写の映画に過ぎないと思われるかもしれません。

私ですか?無論1人で見ましたよ。私もそんなホラー映画ファンの1人です。寂しいなんて、少しも思ってませんよ。本当に寂しくなんて、無いですから!

南米ホラー映画とJホラーの融合

参考映像:ドラマ『呪怨:呪いの家』(2020~)

近年の低予算ホラー映画といえば、POV視点やモキュメンタリー技法を意識した、荒い映像やカメラワークの、疑似ドキュメント的な作品が思い浮かびます。

しかし本作は劇映画の手法で撮られ、昔ながらの因果応報の怪談話として作られています。

スパニッシュホラーの影響を受け、現在続々とホラー映画を生み出している南米諸国。多くがその形式に乗っ取り、美しい映像や情緒的な物語をもつ恐怖映画として誕生しました。

しかし本作は生活感のある、暗く硬質な映像で描かれた作品です。そして主人公に理不尽な形で迫る幽霊の登場は、かつて世界を席巻したJホラーの演出スタイルを思い起こさせます。

また主人公が幽霊と遭遇し、自分の悪業の報いを受ける物語は、日本人などのアジア人には馴染み深いものです。本作は世界に配信されていますが、台湾では日本に先駆け劇場公開されているのも、実に理解できる作品です。

やや辻褄の合わない展開もありますが、だからこそ不条理な恐怖がにじみ出る本作は、同じスタイルを持つJホラー映画の存在を踏まえて見ると、理解しやすくなります。

世界を席巻したものの、今やあらゆる国のホラー映画のスタンダード手法になった感のあるJホラー。その結果今や埋もれてしまった感があります。

その原点と言うべき作品の1つ「呪怨」シリーズが、ドラマ『呪怨:呪いの家』としてNetflixで配信されます。また「呪怨」シリーズを生んだ清水崇監督の、最新作である『犬鳴村』(2020)はスマッシュヒットを記録し注目を集めています。

こういった作品たちは、新たなJホラーブームの起爆剤になれるでしょうか。

まとめ


(C)HJ PRODUCCIONES 2019 | ALL RIGHTS RESERVED

お化け屋敷映画として楽しめる『モルグ 死霊病棟』。軽いノリで恐怖を味わうポップコーンムービーとしてご覧下さい。この映画は充分怖すぎる、という方がいたら謝ります。ホラー映画を見過ぎた、私の感覚がおかしいんでしょう、ごめんなさい。

本作はアメリカなどで高く評価された、楽しめる”ジャンプスケア”シーンの映画である部分を中心に紹介しました。しかしお化け屋敷空間である、モルグに誘導するまでの演出が丁寧で、Jホラー的な作品であることにもご注目下さい。

ところでリメイクの話があり、パラグアイ映画界のビックなサクセスストーリーとして話題になりましたが、こういった作品をリメイクする時、残念なパターンが1つあります。

それはストーリーは忠実に再現しても、ホラー映画のミソである恐怖シーンが、全く別の演出になってしまうこと。

もっと幽霊を派手に暴れさせてやる!などの勘違いしたサービス精神が、一番の魅力だった恐怖演出をブチ壊しにする。これだけは勘弁して欲しいものです。

ちなみに「恐怖の実話」とされる本作。具体的にはウーゴ・カルドゾ監督が、病院関係者から恐怖体験談や心霊体験談を集めて、この映画を作ったというのが事実です。

つまり「友達の友達から聞いた、実際にあった恐怖の心霊体験談を、コピペした記事をネットで読む」程度に、実話であると思って下さい。…信じるか信じないかは、あなた次第です。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」は…


(C)2019. The Fyzz Facility 16 Limited. ALL RIGHTS RESERVED.

次回の第7回は悪魔崇拝者と称する美少女たちの、地獄のパーティーを描くナイトメア・ホラー映画『サモン・ザ・ダークネス』を紹介いたします。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020延長戦見破録』記事一覧はこちら





関連記事

連載コラム

映画『三つの朝』あらすじ感想と評価解説。根岸里紗監督の描くありふれた“愛しい朝”|インディーズ映画発見伝2

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第2回 インディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い映画を動画配信するサービス「CINEMA DISCOVERIES」。 2021年3月にサイトがリニューア …

連載コラム

SF映画おすすめランキング!2000年代の隠れた名作ベスト5選【糸魚川悟セレクション】|SF恐怖映画という名の観覧車105

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile105 記憶に新しいにも関わらず、冷静に考えるとかなりの年月が経過しているという感覚の奇妙さを感じる2000年代。 様々な映画の功績によりVFX …

連載コラム

映画サイコパスPSYCHO-PASSのあらすじと内容解説。劇場版Sinners of the System3章を紹介|SF恐怖映画という名の観覧車33

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile033 「Tカード」の情報が令状なしに警察に提供されていた事実が報道され、話題となっています。 薬局や飲食店など様々なところで貯めることの出来る …

連載コラム

映画『フォーハンズ』ネタバレあらすじと感想。結末まで叙述トリックで騙される楽しみとは|未体験ゾーンの映画たち2019見破録53

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第53回 ヒューマントラストシネマ渋谷で開催された“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回はドイツ発の、驚愕のサイコスリラー映画を紹 …

連載コラム

映画『ザ・キッチン』キャスト【メリッサマッカーシー×エリザベスモス×ハディッシュのインタビュー】FILMINK-vol.22

FILMINK-vol.22「McCarthy, Haddish and Moss: Out of The Kitchen」 オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Ci …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
映画『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)より全国公開
映画『写真の女』
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学