炭鉱に生きる一家の厳しくも美しい日々
『駅馬車』(1939)『荒野の決闘』(1947)などで知られる名匠ジョン・フォード監督による不朽の名作『わが谷は緑なりき』。
19世紀末ウェールズの炭鉱町で暮らす家族の絆を、1人の少年の目線から温かく切なく映し出します。
出演はウォルター・ピジョン、モーリン・オハラ、ロディ・マクドウォール。
炭鉱に勤める父と5人の兄を持つ少年ヒュー。彼の家族への愛と郷愁が詰まった名作の魅力をご紹介します。
映画『わが谷は緑なりき』の作品情報

(C)ブレーントラスト
【公開】
1950年(アメリカ映画)
【原作】
リチャード・リュウエリン
【監督】
ジョン・フォード
【脚本】
フィリップ・ダン
【編集】
ジェームズ・B・クラーク
【キャスト】
ウォルター・ピジョン、モーリン・オハラ、ドナルド・クリスプ、ロディ・マクドウォール
【作品概要】
『駅馬車』(1939)『荒野の決闘』(1947)の名匠ジョン・フォード監督が描く名作家族ドラマ。
ある家族を襲うさまざまな不運が10歳の少年の目線から描かれ、揺るがない家族の絆が感動と生きる希望を呼び起こします。
1941年度アカデミー賞で、「作品賞」「監督賞」「助演男優賞」「撮影賞(白黒)」「美術監督賞(白黒)」、「室内装置賞(白黒)」の6部門を受賞しました。
ウォルター・ピジョン、『ノートルダムのせむし男』(1940)のモーリン・オハラが出演。
末子ヒューを、後に「猿の惑星」シリーズなどに出演するロディ・マクドウォールが演じます。
映画『わが谷は緑なりき』のあらすじとネタバレ

(C)ブレーントラスト
イギリス、ウェールズ地方の炭鉱町。モーガン家の男たちは、まだ10歳の末子ヒューを除く全員が炭鉱で働いています。
貧しくも平和な日々を過ごしていましたが、炭鉱の経営者が賃金カットを断行したことから、波乱が生じます。
組合結成を巡って父と息子たちが対立。息子たちは家を出てしまい、家族は末っ子のヒューを残してバラバラになってしまいました。
映画『わが谷は緑なりき』の感想と評価

(C)ブレーントラスト
古き良き時代の家族の姿
イギリスの炭鉱町を舞台に、古き良き時代の家族の姿を温かな目で見つめた珠玉のヒューマンドラマです。
父と母、そして6人の息子たちと美しい1人の娘。上の5人の息子は父と共に炭鉱に勤めており、まだ幼い末っ子のヒューは彼らを憧れの目で見つめています。
炭鉱に生きる誇りを胸に、息子たちは父を敬い、母を心から愛して日々を生きていました。しかし、暗い時代がやってきます。賃金は下げられ、その後、労働者は次々にクビになっていき、家族は散り散りとなります。
炭鉱に暮らす大勢の人々は、自分の仕事に誇りを持っています。しかし、ヒューの学校では、教師も学友もヒューを「炭鉱出」だと言って蔑みます。それでもヒューは卒業後炭鉱で働くことを選ぶのです。
一方で、炭鉱主の息子と結婚したアンハードは驚くほど豪華な屋敷に住み、大勢のお手伝いを雇って裕福な暮らしをしています。そんな彼女が本当に愛したのは、清貧な暮らしをする牧師のグリュフィードでした。
それぞれの立場によって物の見方が様々に変わること、その中で物の本質を見失わないことが自分の人生をまっとうすることにつながることを教えられます。
それを誰より体現しているのは、一家の太陽である母親です。彼女は家族を守るために迷わず身を張る強さを持っています。
難しいことは頭ではわからなくても大切なことを本能で理解し、辛いことがあっても決して自分を見失わない。母の強さに思わず心打たれることでしょう。
悲しくも美しい本物の恋

(C)ブレーントラスト
冷たい池に落ちて凍傷にかかった少年ヒューを支え、導いたのがグリュフィード牧師です。
少年に生きるための心の持ち方を教え、気が弱っているヒューに、「魂を見つける時間を与えられたのだ。魂を磨き続けなさい。」と語りかけます。
ヒューの姉アンハードは、温かな心を持つグリュフィードに心惹かれるようになり、グリュフィードもまた彼女に思いを寄せるようになります。
しかし、グリュフィードは世間を知る牧師でした。あまりにも貧しい生活を強いるわけにはいかないと言い、彼女を炭鉱主の息子と結婚するように後押しします。
アンハードは炭鉱主との結婚を選びました。貧しさを恐れてのことだったのかもしれません。しかし、一番の理由は、グリュフィードが強く自分を求めてくれなかったことへの絶望だったのではないでしょうか。
結婚してもアンハードは幸せにはなれず、尚更グリュフィードへの思いは募るばかりでした。何も知らないはずの村人たちは彼女と牧師の関係を疑う噂を立て、その結果牧師は谷を出て行く決心をします。
モーガン父の炭鉱事故に駆けつけ、偶然顔を合わせたアンハードとグリュフィード。燃えるような視線が絡まる姿に胸をつかれます。
初老を迎えたヒューは最後に呟きます。「わが谷は緑なりき」と。炭鉱の人々、愛する両親、5人の兄、そして美しい姉と自分を導いてくれた牧師の悲しい恋。少年時代に見たそれらすべてが、青々と燃える美しき想い出として胸に残り続けていることが伝わってくるラストシーンです。
まとめ

(C)ブレーントラスト
深い家族の絆を映し出すヒューマンドラマ『わが谷は緑なりき』。名匠ジョン・フォード監督が、誠実さを貫いて生きる人間の美しき魂を描ききった名作です。
モノクロの映像は私たちの想像力をかき立てます。どれほど青々とした美しい谷だったか、そこに生きる人々がどれほど真摯に日々を生きていたか。
その感覚は、初老を迎えたヒューが少年期を思い起こす時の感覚と似ているのではないでしょうか。すべてが美しく在り続けられるのは、記憶の中だからこそなのかもしれません。
まるで物語を読むかのように、ヒューは何度も自分の大切な想い出のページを何度もめくり続けることでしょう。
ロディ・マクドウォールが他に出演した、『猿の惑星』を含む解説記事『SF映画おすすめ5選!洋画邦画ランキング(1960年代)の名作傑作【糸魚川悟セレクション】|SF恐怖映画という名の観覧車85』はコチラ→



































