映画『POCA PON ポカポン』は第38回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門にて公式上映後、2026年に劇場公開予定!
映画『POCA PON ポカポン』は、ある猟奇殺人事件を背景に、温もりと不穏が同居する家族の日常を描いた未知のドラマ。
『横須賀綺譚』(2019)の大塚信一監督が手がけた本作は、2026年の劇場公開に先駆け、第38回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門にて公式上映されました。
2025年10月28日(火)と11月1日(土)の同映画祭での公式上映後には、映画『POCA PON ポカポン』のキャスト・スタッフ陣が登壇してのQ&Aが催され、キャストの尾関伸次さんと撮影監督・美術の永山正史さん、大塚信一監督が登壇しました。
本記事では、各日程でのQ&Aの模様をご紹介いたします。
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映画『POCA PON ポカポン』とは?

(C)映画『POCA PON ポカポン』製作委員会
ある猟奇殺人事件を背景に、時には人を癒やし、時には人を壊す天の声“POCA PON”と、温かさと不穏が同居する家族の日常を描き出す、未だかつてないドラマ『POCA PON ポカポン』。
監督は商業デビュー作『横須賀綺譚』が重慶青年映画祭で高く評価された大塚信一。大塚監督は、有名ラーメン店で働き、ラーメンを作りながら日夜映画制作に取り組み続け、誰も観たことのない“新感覚・日本映画”を作り上げました。
メインキャストには『サバカン SABAKAN』『海辺へ行く道』と注目作が続く原田琥之佑、実力派の尾関伸次、『金子文子』が話題の菜葉菜、期待の若手・大角英夫の他、川瀬陽太、山崎ハコといった、現在の日本映画界に欠かせない俳優陣が集結しました。
映画『POCA PON ポカポン』のあらすじ
健太(13)と祐二(10)、母親の朝子(34)の3人の母子家庭はある地方都市の団地で暮らしている。健太は母と弟に少しでもマシな未来を約束するため、 必死で勉強している。
健太を時折つつむのは、どこか懐かしい、だけど思い出せないメロディ、そしていつもどこかで鳴り響いている「ポカポン」という音(声)。
朝子は勉強を頑張る健太に「そんなことは無駄だ、今を楽しんで 遊べ」と言う。互いを思いやりながらも、どこかすれ違う親子。
家族の生活は厳しい上に、隣人の騒音にも悩まされる毎日。そんな家族を団地の管理人である駿一は何かと気にかけている。駿一はある〈不思議な力〉を持っており、健太はだんだんと駿一に惹かれていく。
そんなある日、かつて社会を震撼させた猟奇殺人犯がこの団地で暮らしているという噂が流れてくる……。
映画『POCA PON ポカポン』東京国際映画祭2025 Q&Aリポート
駿一役:尾関伸次さん

(C)Cinemarche
《怪物誕生前夜》の物語にはしたくなかった
2025年10月28日(火)と11月1日(土)に、第38回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門作品として公式上映された映画『POCA PON ポカポン』。同映画祭での上映を記念し、各日程ではキャスト・スタッフ陣が登壇してのQ&Aが併せて催されました。
10月28日のQ&Aには映画ライター・新谷理映さんの司会のもと、団地の管理人・駿一役の尾関伸次さんと、本作を手がけた大塚信一監督が登壇。尾関さんは大塚監督の前々作『アメリカの夢』(2010)でも主演を務めている他、大塚監督と同じ1980年生まれでもあります。
前作『横須賀綺譚』(2019)の劇場公開後に「尾関さんと映画の企画を進めたい」と思い立った際、1980年生まれの二人にとって衝撃的な事件だった、ほぼ同世代の少年による猟奇殺人事件を題材に選んだという大塚監督。
一方で大塚監督から本作の企画を聞かされた尾関さんは、当初は監督とともに尾関さん演じる団地の管理人・駿一を主人公に物語を構想していったものの、のちに「駿一と出会う中学生・健太を主人公にしたい」と提案。
そんな尾関さんの提案を受け、大塚監督はかつての猟奇殺人事件の加害者と同じ《少年》である健太に主人公を変更した中で、「《怪物誕生前夜》のような描き方を避けたい」と思いながら現在の映画の物語を形作っていったと明かしました。
《ディテールの説得力》のための菜食生活

(C)映画『POCA PON ポカポン』製作委員会
健太役の原田琥之佑さんについて、尾関さんは健太が当初「小学生」の設定だったことを明かした上で、原田さんが成長期により体格が変化し設定に無理が生じたこともあり、題材となった猟奇殺人事件の加害者と同様に「中学生」に設定を変更したと説明。
そんな原田さんの成長期を撮影期間中もそばで見届けていた尾関さんは、原田さんの「人間として、俳優として物凄く成長していく姿」と毎日接することができたのは、新鮮かつ貴重な体験だったと語りました。
また『POCA PON ポカポン』での演技について尋ねられた尾関さんは、本作の題材となった少年猟奇殺人事件は、自らの思春期における象徴的な記憶であり、その記憶は本作における芝居のヴィジョンも作りやすくしてくれたと回答。
その一方で、「肉を食べない菜食主義者」などの駿一の人物造形のディテールは「現在の自分が実際に体験しなくては説得力が生まれない」という理由から、撮影開始の1~2ヶ月ほど前から駿一と同じように肉を一切食べずに菜食生活を送っていたと告白しました。
なお尾関さんの役作りの期間中、大塚監督は厳格な菜食主義者として知られた宗教家ガンディーの衣食住にまつわる書籍を贈ったとのこと。その贈り物を通じての助言もあって実際に菜食生活を送った尾関さんについて、大塚監督は「普段以上に、穏やかな性格になっていた」と語りました。
自然の本質からやって来る《ポカポン》
大塚信一監督

(C)Cinemarche
上映鑑賞に訪れた人々からの質問を受ける中、Q&Aは本作に登場する「自然」の演出の話題に。大塚監督は「あくまで自分が持っているイメージであり、解釈は無数にある」と前置きした上で、自然は「人間の都合など何も考えずに、人を癒やしもするけれど、人を破壊もするもの」であり、そうした自然の本質からやって来るのが「ポカポン」という音あるいは声だと説明しました。
そして、映画作中でたびたび描かれる「蝶」についても質問された大塚監督は、ドラマは「誰かが誰かを殺した」「誰かが誰かを愛した」といった人間の姿が描かれていくが、そこに「お前ら人間の意思なんか関係ないよ」という自然の視点を取り入れたかったと回答しました。
またQ&A終盤では、上映鑑賞に訪れていたキャストの山崎ハコさんも一言コメントを求められ、自らが演じた猟奇殺人事件の被害者遺族・恵子役の役作りについて「セリフは脚本上で決まっていますが、思うことは自由なので『どれだけ深く考えてもいいんだ』と思い、リアルに役のことを考えました」と告白。

(C)Cinemarche
そして「魔が差したように事件を起こすと、どれだけの人が傷つくのか」「そうして傷ついた人たちが、どれだけ大勢いるのか」を思いながら恵子を演じ、その結果少しでも被害者の《いたみ》を感じられる演技ができたと明かしました。
終了の時間が迫り、上映に訪れた人々に向けて最後のメッセージを求められた大塚監督は、以前に本作を観た方から「凄惨な話なのに、なぜか癒やされたというか、心にじんわり来た」という感想をいただいたことに言及し「何とも言えない、アンビバレントな心境を持って家に帰っていただけたら、それだけで僕は嬉しいです」と伝えました。
そして尾関さんは、大塚監督のメッセージが全てだと触れた上で、監督と企画を進めてきた本作について「一緒にやっていて楽しかったですし、またいつか一緒にやりたいな」とコメント。
また以前に出演した大塚監督作品『アメリカの夢』で演じた主人公の名前も『POCA PON ポカポン』での役と同じ「駿一」であることも明かし、大塚監督の「できれば3部作にしたいですね(笑)」という回答で10月28日の舞台挨拶は無事幕を閉じました。
健太と駿一を《同じフレーム》に映さなかった理由

(C)映画『POCA PON ポカポン』製作委員会
11月1日(土)のQ&Aには、第38回東京国際映画祭のプログラミングディレクター・市山尚三さんの司会のもと、本作の撮影監督・美術を担当した永山正史さんと、前回に引き続き大塚信一監督が登壇しました。
永山さんは、大塚監督の前作『横須賀綺譚』にも出演し、本作では弁護士・松尾役を演じた俳優・川瀬陽太さんからの紹介で、『POCA PON ポカポン』制作チームに参加。予算などの面から撮影監督のほか美術などの多くの仕事を担当し「川瀬さんのワナにハマった感じです(笑)」と苦笑しつつも語りました。
また本作のカメラワークの意図について質問された大塚監督は、原田さん演じる健太と、尾関さん演じる駿一を「同じフレーム」になるべく映さないようにし、そうすることで本作終盤での映像を観た際に感じる「異なる時間にいるのに、なぜか同じ空間にいるような錯覚」をより強めたかったと答え、そのために永山さんをはじめスタッフ陣と知恵を絞りながら画作りをしていったと明かしました。
菊地成孔の《音楽で攻める》姿勢
撮影・美術:永山正史さん

(C)Cinemarche
そしてQ&Aは、ジャズ奏者・作曲家の菊地成孔さんと音楽制作ギルド「新音楽制作工房」が手がけた本作の音楽の話題に。
大塚監督は菊地さんへのオファー時、音楽を付ける前の本編を観てもらった際に「画も音も、サイレント映画のようにとても美しいから、音楽はギリギリまで付けない方がいいです」という感想をもらえたことを告白。
また菊地さんからの「映画前半は音楽を付けず、逆に後半はずっと音楽が鳴りっぱなしにしてはどうか?」という提案を受けたことも明かし、音楽家である菊地さんにそれを言わせた永山さんの撮影の画力にも、そんな提案ができる菊池さんの度量にも改めて驚かされたと語りました。
対して、撮影前・撮影中にも「『ポカポン』はどんな音/声なんだろう?」とキャスト・スタッフ間で議論していたという永山さんは、菊地さんによる「ポカポン」という音/声の表現が想像していたのとは大きく異なり、それは非常に面白い体験だったとのこと。
そして、本作のポストプロダクション(仕上げ工程)におけるMA(音楽を含む映像内における音のバランス調整・収録作業)に立ち会った際には、菊地さんの「音楽を綺麗に付ける」のではなく「音楽で攻める」というべき音の演出アイディアの提案に、菊地さんのアーティストとしての姿を感じられたとコメントしたところで、Q&Aは締め括られました。
映画『POCA PON ポカポン』の作品情報

(C)映画『POCA PON ポカポン』製作委員会
【日本公開】
2026年(日本映画)
【監督・脚本】
大塚信一
【撮影・美術】
永山正史
【音楽】
新音楽制作工房/菊地成孔
【プロデューサー】
森田一人、浅野博貴
【アソシエイトプロデューサー】
出町光識、安田初子
【キャスト】
原田琥之佑、尾関伸次、菜葉菜、大角英夫、川瀬陽太、山崎ハコ、足立智充、久田松真耶、木村知貴、牛丸亮、松本太陽
まとめ

(C)Cinemarche
『横須賀綺譚』(2019)が中国の重慶青年映画祭「亜州視野」部門で上映されて好評を博した大塚信一監督が、実在の少年猟奇殺人事件を背景に描き出した未知のドラマ『POCA PON ポカポン』。
ラーメン店で働きながら、日夜映画制作に取り組み続ける大塚監督が作り上げた《新感覚・日本映画》な本作は、2026年の劇場公開に先駆けての映画祭上映でも、「不穏で怖いはずなのに、なぜか癒された」という奇妙な感動で多くの人々を驚かせました。
2026年の劇場公開が待ち遠しい映画『POCA PON ポカポン』。公開日をはじめ、新たな情報解禁が期待が募る作品です。
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