映画『Flow』は第37回東京国際映画祭・アニメーション部門で上映!
2024年度のアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞、観客賞ほか4冠に輝いたアニメ映画『Flow』が第37回東京国際映画祭・アニメーション部門にて上映されました。
2025年3月14日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショーも決定した、洪水にのまれつつある世界が舞台の全編セリフなしのアドベンチャー。
去る11月2日の上映後に行われた、監督・脚本・音楽を務めたギンツ・ジルバロディス、共同脚本のマティス・カジャ参加のトークショーの模様を、作品レビューと併せてレポートします。
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映画『Flow』の作品情報
【日本公開】
2025年(ラトビア・フランス・ベルギー合作映画)
【原題】
Flow(別題:Straume)
【監督・脚本・音楽】
ギンツ・ジルバロディス
【共同脚本】
マティス・カジャ
【共同音楽】
リハルズ・ザリュペ
【作品概要】
長編デビュー作『Away』(2019)がアヌシー国際アニメーション映画祭のコントルシャン賞で最優秀長編映画賞を受賞した、気鋭のアニメーター・ギンツ・ジルバロディスの長編第2作。
洪水にのまれつつある世界を、前作同様に全編セリフなしで描きます。
カンヌ映画祭「ある視点」部門でワールドプレミア上映され、本年度のアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞、観客賞ほか4冠を受賞。2025年アカデミー賞国際長編映画賞ラトビア代表にも選出されています。
日本では2024年の第37回東京国際映画祭アニメーション部門として初上映され、2025年3月14日(金)に劇場公開を予定しています。
映画『Flow』のあらすじ
世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとするなか、ある一匹の黒猫が居場所を捨て、旅立つことを決意。
流れて来たボートに乗り合わせた動物たちと、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われるも、少しずつ友情が芽生えはじめ、逞しくなっていく彼ら。
彼らの、この冒険の果てにあるものとは……。
映画『Flow』の感想と評価
飛行機事故で未知の島に不時着した少年が、オートバイで港を目指す旅を全編セリフなしで描いた2019年のアニメ映画『Away』が高く評価されたギンツ・ジルバロディス監督。
同監督の長編第2作となる本作『Flow』では、大洪水に包まれた世界が舞台となります。
住処としていた無人の屋敷にも浸水が及んだのを機に、流れて来たボートに乗りその場を離れた一匹の黒猫。やがてそのボートに、犬、カピバラといったほかの動物たちが乗り合わせていきます。
目的地が定まらないまま、打ち解けないながらも、彼らは「生きる」という共通認識を持ってボートを進めていきます。
旧約聖書の「ノアの方舟」を彷彿させるシンプルなストーリー展開もさることながら、動物たちが一切喋らないのが特徴。セリフなしの手法は前作『Away』と同じですが、動物を擬人化することなく、本物の鳴き声を使用しています(カピバラはラクダの鳴き声を使用したとのこと)。
驚かされるのがその映像美。世界を覆う水の表現もさることながら、森林、風、建造物といった背景描写が細かく描き込まれています。
そして何といっても、登場する動物たちの動きがとにかくリアル。ひとつひとつの仕草や動作がナチュラルで「こういう動きするよな」と思わせ、違和感を感じさせません。
『Flow』トークショーレポート
11月2日、第37回東京国際映画祭のアニメーション部門で日本初上映となった本作。それに伴い、監督・脚本・音楽を務めたギンツ・ジルバロディスと共同脚本のマティス・カジャが参加したトークショーが、東京・角川シネマ有楽町にて行われました。
冒頭、「日本の方は猫好きだと聞いているので、この映画を受け入れてくれると思っていました」というジルバロディス監督の挨拶で、トークショーがスタート。
脚本を担当したカジャは、「セリフがないため書くのが難しかった」と苦労点を挙げつつも、「ジルバロディス監督が考えたアイデアにどれだけ加われるか、というコラボレーション感覚で参加した」と振り返りました。
動物たちの描写については、「とにかく動物の視点で、大げさにしないようにした」とジルバロディス監督も細心の注意を払ったようで、セリフがないのは「猫と自然の対話という雰囲気を出したかった」という狙いもあったそう。
そして2025年3月に日本での劇場公開が決定したことを受け、ジルバロディス監督は「この映画に関しては大きいスクリーンで見ることがとても大切です。水や風など、集中しないと見逃してしまうことも多いと思うので。ぜひお友だちにお声がけいただき、多くの方に見ていただければ」とコメントしました。
まとめ
はたして黒猫たちは洪水の世界を生き延びることができるのか?そして、彼らが行き着く先にあるものとは……。
2024年11月日本公開の『ロボット・ドリームズ』同様、本作も言葉に頼らない、観る者の感情を揺さぶる演出が随所に施されています。
寓話的要素も盛り込んだ、まさにアニメーションの原点に立ち返った逸品に、ご期待ください。
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松平光冬プロフィール
テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。
ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)