Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

『越境者たち』あらすじ感想と評価考察。極寒アルプスに生命力を掛けて挑む“男女の邂逅”

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『越境者たち』は2024年7月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿武蔵野館他全国ロードショー

雪に覆われた極寒のイタリアン・アルプスを舞台に描く映画『越境者たち』は2024年7月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿武蔵野館他全国ロードショーとなります。

自由を求める亡命者の行く手を阻む大自然の脅威と不寛容な人間たちの狂気を描くサスペンス・スリラーです。

『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2023)で第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したザーラ・アミール・エブラヒミと、『苦い涙』(2023)のドゥニ・メノーシェを主演に迎え、本作が長編デビューとなるギョーム・レヌソンが監督・脚本を務めます。

ドローンなど現代機器による厳しい監視をかいくぐり、亡命者の女性と彼女を導く男性の2人が雪山を必死で逃げ続けます。

冷たい雪、急斜面、そして越境者を決して許さない厳しい追手。果たして2人はどこに行き着くのでしょうか。スリルたっぷりの本作の魅力をご紹介します。

映画『越境者たち』の作品情報


(C)LES FILMS VELVET – BAXTER FILMS – BNP PARIBAS PICTURES – 2022

【日本公開】
2024年(フランス映画)

【監督・脚本】
ギョーム・レヌソン

【キャスト】
ザーラ・アミール・エブラヒミ、ドゥニ・メノーシェ、ヴィクトワール・デュボワ、オスカー・コップ、ロクサーヌ・バラズー

【作品概要】
本作が長編デビューとなるギョーム・レヌソンが監督・脚本を務めたサスペンス・スリラー。極寒のイタリアン・アルプスを舞台に、亡命者の行く手をはばむ厳しい大自然と不寛容な人間たちの狂気、ヨーロッパで実際に起きている恐怖をスリリングに描きます。

フランスを目指す女性・チェレーを、自らもイランから亡命し、『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2023)で第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したザーラ・アミール・エブラヒミ、彼女に手を貸すサミュエル役を『苦い涙』(2023)のドゥニ・メノーシェが演じます。

ヴィクトワール・デュボワ、オスカー・コップ、ロクサーヌ・バラズーら名脇役が共演。

映画『越境者たち』のあらすじ


(C)LES FILMS VELVET – BAXTER FILMS – BNP PARIBAS PICTURES – 2022

イタリアの国境を越えたアルプスにある別荘の山小屋。妻を事故で亡くして失意の中にいたフランス人のサミュエルは、娘を友人に預け、この山小屋で週末を静かに過ごそうと考えていました。

散らかった山小屋を片付け、ソファで休んでいたサミュエルは、ひとりの見知らぬ女性が小屋に潜んでいることに気づきます。彼は、衰弱しきっていた彼女をベッドに寝かせてやりました。

女性は、山を越えてフランス側にある難民施設へ亡命のため向かおうとしているアフガニスタン人のチェレーでした。

翌朝、サミュエルは軽装でフランスに向かうチェレーを放っておけず、厳しい雪山の道案内を引き受けます。

しかし、そんなふたりの前に立ちはだかったのは、雪山の脅威だけではなく…。

映画『越境者たち』の感想と評価


(C)LES FILMS VELVET – BAXTER FILMS – BNP PARIBAS PICTURES – 2022

美しくも厳しいアルプスの雪山の風景、どこまでも追ってくる冷酷で狂気に満ちた敵。緊迫感が続く極上の逃走劇です。

そして、妻を亡くして喪失感と罪の意識に苦しむフランス人・サミュエルと、暗い瞳をしたアフガニスタンからの亡命女性・ティリーの魂の邂逅は、本作の最も大きな見どころとなっています。

事故で妻を亡くしたサミュエルにはひとり娘が残されましたが、まだ喪失感から立ち直れずにいます。娘を友人に預けて、妻との思い出のつまった雪山の山荘を訪れた彼は、隠れていたティリーと出会いました。

亡き妻のジャケットを羽織っているものの、ジーパンという軽装で雪山を越えようとする彼女を見捨てられず、案内を申し出るサミュエル。

ティリーを助ける行為は、妻への贖罪のように感じていたのかもしれません。救えなかった妻の代わりに、ティリーを全力で守りきることで、サミュエルは自分が救われたかったのではないでしょうか。

思わぬ敵の出現により、2人は厳しい山越えに挑戦しなくてはならなくなります。ティリーを支えながら、自身のケガした足をひきずりながら急斜面をはいあがるサミュエル。あるきっかけからやっと互いの名前を名乗り合った2人は、強い絆のもと苦しい旅を続けていきます。

ティリー役のザーラ・アミール・エブラヒミと、サミュエル役のドゥニ・メノーシェによる緊迫感あふれる二人芝居に魅せられます。

自らもイランからフランスに亡命したザーラ・アミール・エブラヒミの暗い瞳が印象的です。誰も信じられず、必死で国境を越えようとしていたティリーが、サミュエルに心を開いて表情に人間味を取り戻していくさまを見事に演じています。

対するドゥニ・メノーシェは、寡黙で表情もあまり変わらないサミュエルに憑依したかのように、目の動きやちょっとした動作だけで細やかな心情を表現しています。

凍えそうに冷たい自然の中で、何度も訪れる危機。2人が果たしてどのような未来にたどり着くのか、最後までわからないスリリングな展開となっています。どうぞ最後まで見届けてください。

まとめ


(C)LES FILMS VELVET – BAXTER FILMS – BNP PARIBAS PICTURES – 2022

見終えた後には、胸にずしりと大きな感情が残る素晴らしい作品です。傷だらけになりながら必死で生きようとするティリーとサミュエルの姿に、強く心動かされることでしょう。

紛争や差別、命の危険から逃れるために、自国を捨てねばならない人達の悲しみと苦しみ。今尚続く、厳しい現状に目を向けねばならないことを教えられます。

映画『越境者たち』は2024年7月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿武蔵野館他全国ロードショーです。


関連記事

サスペンス映画

映画『暗黒女子』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

イヤミスの傑作がついに映画化!全員悪女で嘘つき同士が騙し騙される?! 驚愕のラスト24分が待ち受ける裏切りエンターテイメント『暗黒女子』をご紹介します。 映画『暗黒女子』の作品情報 【公開】 2017 …

サスペンス映画

シビル・ウォー アメリカ最後の日|あらすじ感想考察。2024年公開の”話題作映画”として《内戦状態のアメリカ》を描く

分断されたアメリカをディストピアに描くA24製作の衝撃作 A24製作、『エクス・マキナ』(2015)のアレックス・ガーランド監督・脚本作の映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が2024年10月4日 …

サスペンス映画

映画『バグダッド・スキャンダル』あらすじと感想。実話が原作の社会派サスペンスに隠されたものとは

国連主導の人道支援プロジェクトが、国連史上最悪の汚職事件になってしまったという、2003年のスキャンダルを描く映画『バグダッド・スキャンダル』は、11月3日(土)よりシネマカリテほか全国順次公開されま …

サスペンス映画

映画『Sappy』あらすじ感想と評価考察。猪征大主演スリラーが名作オマージュと共に描く《何者にもなれない現実》とは

映画『Sappy』は下北沢トリウッドで2025年5月9日(金)より劇場公開! 世間の人々を見下し、小説家になることを夢見る男の現実と妄想が入り乱れていくノンストップスリラー『Sappy』。映画配給レー …

サスペンス映画

『他人は地獄だ』あらすじ感想評価。大どんでん返しの本格ミステリーWEB漫画をキャストの八村倫太郎×栁俊太郎がコンビで演じる

映画『他人は地獄だ』は2024年11月15日(金)より全国順次公開! 韓国で人気のWEB漫画を日本で実写化したサスペンススリラー『他人は地獄だ』。 田舎の閉塞感から抜け出し上京してきた一人の青年が、奇 …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学