憧れのプール付き一軒家に引っ越した一家。しかしそのプールは【訳アリ】!?
「ソウ」シリーズのジェームズ・ワンと『ゲット・アウト』(2017)のジェイソン・ブラムが、『M3GAN ミーガン』(2023)に引き続きタッグを組みました。
病により早期引退をした元プロ野球選手のレイ・ウォーラー。治療も兼ねて購入したプール付きの家。
しかし、そのプールには“何か”いる……。
元プロ野球選手を演じたのは、カート・ラッセルの息子であり、『オーヴァー・ロード』(2019)のワイアット・ラッセルが務めました。
妻のイヴを演じたのは、『スリー・ビルボード』(2017)、『イニシェリン島の精霊』(2022)のケリー・コンドン。
映画『ナイトスイム』の作品情報
【日本公開】
2024年(アメリカ映画)
【原題】
Night Swim
【監督・脚本】
ブライス・マクガイア
【製作】
ジェームズ・ワン、ジェイソン・ブラム
【キャスト】
ワイアット・ラッセル、ケリー・コンドン、アメリ・ホーファーレ、ギャビン・ウォーレン
【作品概要】
「ソウ」シリーズのジェームズ・ワンと『ゲット・アウト』(2017)のジェイソン・ブラムが、『M3GAN ミーガン』(2023)に引き続きタッグを組みました。
監督を務めたブライス・マクガイアは、同タイトルの短編映画を『アローン・イン・ザ・ゼット』(2016)のロッド・ブラックハーストと共に、短編(同タイトル)を制作、本作が制作される運びになりました。
人間が本能的に感じる水への恐怖から発想を得た一夏のホラー映画。
映画『ナイトスイム』のあらすじとネタバレ
1992年。プールのある家に住むとある一家。
少女・レベッカは、プールにトミーのおもちゃが浮かんでいることに気づき取りに行こうとします。しかし、そのままプールに落ちてしまい、何者かによってどこかに吸い込まれてしまいます……。
そのまま歳月が流れてゆき、難病により早期引退を余儀なくされた元メジャーリーガーのレイ・ウォーラーは、現役復帰への療養も兼ねて新居を探していました。
治療に最適な家は、自分が病人というのを認識させられて嫌だとレイは言います。
もう一見内見に行っていたのが、大きなプールのある広い家でした。病院でプールの運動も良いと言われたレイは、あの家ならリハビリもできて良いと妻のイヴを説得します。
イヴは、各地を転々とする生活に疲れた、落ち着きたいと言いレイに、「同じ気持ち?」と聞きます。
レイも分かっていると伝え、プールのある家に引っ越してくることを決めます。
新居に移った一家は、皆でプールの掃除をします。レイが排水溝の掃除をしていると何かに引っかかって手を切ってしまいます。
その後、プールから黒い水が溢れ出します。珍しいことに、水が湧き出てくるプールだったのです。この辺りは湧き水も多いと言われます。
引っ越して新しい生活を始めた一家でしたが、息子のエリオットはなかなか学校に馴染めずにいました。
イヴはそんなエリオットのことを心配しつつも自身も、資格を取るために働き始めたもののうまくいかずにいました。
気持ちを切り替えるように深夜プールで泳いでいると、レイに呼ばれた気がして声のする方に泳いでいきますが、そこにレイの姿はありません。言いようのない不気味さを感じてイヴはプールから出ます。
部屋に戻るとレイはベッドで寝ています。「さっきプールのところに来た?」とイヴが尋ねると「行っていない」と答えます。
異変に気づいたのはイヴだけではありませんでした。エリオットも、レイに「後から行くから浅いところで遊んでいなさい」と言われ1人でプールで遊んでいると誰かに名前を呼ばれます。
名前を呼んだのは人物はレベッカと名前を名乗り、「ママを探しているのお」と言います。さらにレベッカは「おもちゃを返すよ」と言います。
言われるまま手を伸ばしておもちゃを取ろうとするエリオットの手に何かが絡みつき得体の知れないものに襲われます。
プールで溺れていたエリオットをイヴは助けますが、エリオットがレベッカの話をしても信じようとしません。
ある夜、レイとイヴが出かけて家にはエリオットと姉のイジーだけになります。15歳のイジーは、水泳部で一緒のボーイフレンドを家に呼び、プールでマルコポーロゲームをします。
楽しく遊んでいたはずが、途中から声が聞こえなくなりイジーは焦ります。「ふざけないで」と言うイジーの前に何者かが襲い掛かります。
悲鳴をあげるイジーを揺り起こしたのはボーイフレンドでした。君が潜っていたのはちょっとの間だと言われ動揺します。
『ナイトスイム』の感想と評価
プールというステータスに結びつく虚栄心と恐怖
アメリカ映画で、プール付きの家といえば、豪邸で皆を招待してホームパーティ……そんなイメージを持つ人も多いのでは。
ステータスの象徴とも言うべきプールを恐怖の対象として描くという意外性と、自由に身動きの取れない水中に対する人間の本能的な恐怖の2つが大きな要素となっています。
病により、早期引退を余儀なくされたレイでしたが、全盛期が忘れられず、現役復帰を夢見ています。
病を治せば復帰できるとレイは思い込んでいますが、年齢的な問題もあり様々な意味で復帰は厳しいということは周りも薄々わかっているでしょう。
本人も気づいているが、認めたくないのかもしれません。
一方で、野球選手としてのレイを支えながら子育てをしてきたイヴ。
仲が良いようで、どこか溝があるのは、イヴの大変さを全く理解していないレイの自己中心的な側面が影響しているのでしょう。
引越し先を探している時に、治療に最適な家ではなくプール付きの家を選んだレイにイヴは転勤ばかりの生活は疲れたと気持ちを伝えます。
今回の引っ越しはここに落ち着くと決め、新たなスタートをきるためとイヴは考えていたと思います。
レイも同意しましたが、その気持ちは同じではありませんでした。
そのようなレイの自己中心的な欲望につけ込んだのが、プールの中にいる“何か”だったのです。
その“何か”は、一家の中で1番意志が弱いエリオットに目をつけ、欲望を満たす代わりの生贄として選びます。
しかし、イヴは決してエリオットを見捨てようとはしません。
それは、イヴが皆で支え合って生きてきたからこその強さと言えます。
野球選手としてのトレーニングなどが第一で家庭のことをレイは省みず、イヴは孤独に子供を育ててきたのではないでしょうか。
子供達も転勤ばかりでうまく友達を作ることもできなかったでしょう。家族皆でレイのことを支えてきました。
だからこそ、誰かが犠牲になるのではなく、皆で犠牲を分け合って支え合っていこうとするのです。
レイの最後の選択は、自己犠牲ではありますが、家族のための選択で、自らけりをつけたとも言えます。
そして、父の思いを引き継ぎ家族はプールを埋めて更なる犠牲者や出さないようにするのです。
まとめ
訳ありのプールが一家を恐怖に陥れる映画『ナイトスイム』。
ステータスの象徴でもあるプールを、本作は得体の知れない恐怖を感じるものとして映し出します。
一家がはじめてその家を見学にきた際、プールは淀み濁っていました。
その後、プールを掃除している一家が映し出され、レイが排水溝で怪我をし、その後黒い水が溢れ出してきます。
青々として華やかなプールをおどろおどろしく映し出し、不穏な音楽で人々の恐怖を煽ります。
本作はジャンプスクエアもそう多くなく、プールのくらさ、身動きのとれなさで見ている人の本能的な恐怖を誘います。
底が見えない、足がつかない……そんな状況で恐怖を感じたり、パニックに陥るといった経験をしたことある人は多いはずです。
そのような心理を巧みに使った本作はシンプルで、『ジョーズ』(1975)をはじめとした70年台のホラーを彷彿とさせるニューレトロなホラー映画といえるでしょう。