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『アンダーカレント』映画あらすじ感想と評価解説。原作漫画の心理描写をより深く掘り下げた今泉力哉監督×真木よう子初タッグ作

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『アンダーカレント』は2023年10月6日(金)より全国ロードショー!

とある銭湯を舞台に、さまざまな境遇を持つ人々の間で、夫の突然の失踪で人生に思い悩む一人の女性の姿を描いた映画『アンダーカレント』。

原作は、フランスを中心に海外でも人気を誇る漫画家・豊田徹也による同名コミック。

複雑な男女関係のもつれを描いた作品に定評のある今泉力哉監督が、真木よう子と本作で初タッグを組みました。

映画『アンダーカレント』の作品情報


(C)豊田徹也/講談社(C)2023「アンダーカレント」製作委員会

【公開】
2023年(日本映画)

【原作】
豊田徹也

【監督】
今泉力哉

【脚本】
澤井香織、今泉力哉

【音楽】
細野晴臣

【キャスト】
真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ、中村久美、康すおん、内田理央ほか

【作品概要】
第3回ACBDアジア賞を受賞した、豊田徹也の同名コミックを実写映画化したヒューマンドラマ。『愛がなんだ』(2019)『街の上で』(2020)『his』(2020)の今泉力哉監督が作品を手がけました。

主人公・かなえ役を『さよなら渓谷』(2013)『そして父になる』(2013)の真木よう子が務めます。またキャストには、かなえの銭湯に訪れる謎の男・堀役に井浦新、探偵・山崎役にリリー・フランキー、かなえの失踪した夫・悟役に永山瑛太らが名を連ねています

映画『アンダーカレント』のあらすじ


(C)豊田徹也/講談社(C)2023「アンダーカレント」製作委員会

一人途方に暮れながらも、一時休業していた銭湯の営業をどうにか再開させる女性・かなえ。

彼女は家業の銭湯を継ぎ、夫・悟とともに幸せな日々を送っていましたが、ある日夫が突然失踪してしまったことで、気持ちの大きな揺らぎを余儀なくされていたのでした。

銭湯の営業再開から数日後、堀と名乗る男が香苗の前に現れます。彼は銭湯組合の紹介を通じ仕事をさせてほしいために訪れたと告げ、住み込みで働くことになります。

またある日、かなえは街で偶然出会った友人に紹介された探偵・山崎と対面。

彼女は一見頼りなさそうに見えながら、ときに鋭い視点を見せる山崎とともに悟の行方を捜す一方で、堀との共同生活の中で穏やかな日常を取り戻していくのですが……。

映画『アンダーカレント』の感想と評価


ビル・エヴァンス、ジム・ホール『アンダーカレント』(Universal Music)

“ジャズの巨人”と称されるビル・エヴァンス(ピアノ)とジム・ホール(ギター)の同名デュオアルバムのジャケットを彷彿させる、本作のポスタービジュアル。水に沈む真木よう子の姿は、大きなスクリーンで見るとハッと息をのむほどの美しさを感じられることでしょう。

このビジュアルは、原作コミックの表紙では素朴な線と色彩で描かれたものでありますが、本作でのシーンはもっと暗さを強調した、コントラストのはっきりした画を描いています

そしてこのビジュアルが示すように、本作は原作の描写では見えてこなかった各登場人物の微妙な深層心理も、想像力も豊かにかつバランスよく描いています
 
悟との関係、気持ちを疑わなかった自分自身を疑うかなえ、そのかなえにさまざまな問いを無言のうちに投げかけ、彼女の気持ちを揺らしていく堀、山崎の関係。作品を形づくるのは、ほぼこの4人の存在に依存していることは間違いありません。


豊田徹也『アンダーカレント』(講談社)

それだけに真木、永山瑛大、井浦新、リリー・フランキーらの、役者のしての表現力はもとより、登場人物それぞれの接点をうまく表すバランスのよさは作品のテーマを示すための重要なポイントですが、実力派・個性派が名を連ねたことで。原作以上に明朗な空気を感じ取ることができます。

真木が演じる主人公の役柄は、まさに「表層的」な心理と「アンダーカレント」な心理という二面をうまく使い分ける必要性がありますが、かなえがまさに「アンダーカレント」に触れたときの表情や声の出し方など、表現に対して最大限努力した様子がうかがえるところであります。

真木自身のセリフ回しについては賛否両論の意見が出てくることも考えられますが、スタッフサイド、今泉監督とともに悩みぬいて作り上げた様子もうかがえ、ある意味本作ならではの、独自のかなえ像を作り上げたといってもいいでしょう。

このように物語では真木を中心にしっかりと細部にまでこだわった人物像が描かれており、原作よりもエッジの効いたはっきりした印象も見えてきます。

まとめ


(C)豊田徹也/講談社(C)2023「アンダーカレント」製作委員会

本作のラストで見られる展開は、極力物語の展開をはっきりと感じさせるような材料を極力減らし、どこか絵をあいまいにしつつ、ストーリーの行方を作品の観覧者に託している節もあります。

一方で最後に真木と井浦が見せているシーンは、特段の人物表情が見えるわけでもないのに、どこか2021年の中国映画『少年の君』のエンディングを思わせるポジティブな空気感も見えてきます。

無論、この部分は見る側が想像力を大きく掻き立てられる画作りがされているわけですが、抽象的でありつつも序章から綴ってきた物語の道筋に従い、人間心理を共感するものをうまく形づくっているといえるでしょう。

映画『アンダーカレント』は2023年10月6日(金)より全国ロードショー!





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