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Entry 2019/09/16
Update

映画『こはく』あらすじネタバレと感想。キャストの演技に横尾初喜監督の半自伝的ストーリーが温かく滲み出ている

  • Writer :
  • もりのちこ

「人は孤独とよ」。
母の言葉に込められた真実とは。


長崎の町を舞台に、幼い頃別れた父を探して歩く兄弟の物語。

映画『ゆらり』で長編監督デビューを果たした横尾初喜が、自らの半自伝的なストーリーを作り上げました。監督の故郷である長崎でオールロケを敢行。

俳優の井浦新と、芸人のアキラ100%が兄弟役を演じ、監督夫人でもある女優の遠藤久美子が主人公を支える妻役で登場しています。

誰の記憶にもあるであろう、こはく色の恋しき日々をそっと思い出す映画『こはく』を紹介します。

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映画『こはく』の作品情報


(C)2018「こはく」製作委員会
【日本公開】
2019年(日本映画)

【監督】
横尾初喜

【キャスト】
井浦新、大橋彰(アキラ100%)、遠藤久美子、嶋田久作、塩田みう、寿大聡、鶴田真由、石倉三郎、鶴見辰吾、木内みどり、城下弘貴、城下弘哉

【作品概要】
横尾初喜監督が自らの幼少期の実体験をベースに原案を書き上げ、故郷である長崎で撮影を行った映画『こはく』。

俳優の井浦新演じる主人公の兄役を演じるのは、本名の大橋彰で挑んだ、芸人アキラ100%。芸人のキャラとは真逆の新境地を見せています。

映画『こはく』のあらすじとネタバレ


(C)2018「こはく」製作委員会
夕焼けの海に小さな兄弟の姿があります。水面が揺れるなか、兄弟は大人の姿に変わっていました。

兄の章一と弟の亮太は2人兄弟。幼い頃に父親と別れてから母親と暮らしてきました。

亮太は、父が借金とともに残していったガラス細工会社を継ぎ、どうにか経営を立て直していました。私生活では一度離婚をしており、別れた息子たちのことを気にしています。

その後再婚した現在の妻・友里恵の妊娠が分かります。亮太は喜びながらも、父親になることへの不安が募ります。どこかで父親のいない過去を引きずっていました。

亮太の元に兄の章一から電話が入ります。兄と母が暮らす実家に帰る亮太。母・元子は久しぶりの親子水入らずに嬉しそうです。

章一は、実家に母と住みながら定職にもつかず、ぶらぶらと過ごしていました。虚言癖があり周りの皆を困らせています。

そんな章一が、幼い頃に別れた切りの父を見かけたと言い出します。「父さんのこと、どう思ってる?俺は恨んどる。絶対に迎えにくる。そう言ったのに」。

いつになく真剣な兄の様子に、亮太も一緒に父親を探すことにしました。しかし、兄は聞き込みで出会う女性をナンパしまくり、ヤクザにハッタリをかますも追い出され、全然役に立ちません。

亮太の会社の工房で働くガラス職人の宮本は、亮太の父が社長の時から働いています。亮太は宮本に、父親が仕事も家族も捨てていなくなった理由を思い切って聞いてみました。

本当の事は誰も分からないが、父が姿を消したのと同時期に、職員だった晃子という女がいなくなったことで、変な噂が流れたということです。

父と母が別れた理由は、父の女問題が原因だったのではないか?亮太と章一は、父の同級生であり債権者でもあった人物から、晃子の情報を聞き出します。

亮太はイライラしていました。なぜ父と母は別れたのか?父はどこにいるのか?亮太は母親を責めるように問いただします。母は困惑し教えてくれませんでした。

以下、『こはく』ネタバレ・結末の記載がございます。『こはく』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2018「こはく」製作委員会
亮太と章一は、晃子が住んでいたというアパートを訪ねます。しかし、もはや晃子はいませんでした。

この辺は以前2人が住んでいた場所でもありました。遊んでいた公園、路地の様子に昔の記憶が蘇ってきます。

「お父さんとお母さん、どっちについて行く?」そう聞かれた兄弟は、「お母さん」と答えます。泣きながら抱き着く母。父は悲しそうな笑みを浮かべていました。

記憶の中の父と母の顔は、現在の亮太と妻友里恵の姿をしていました。もう父親捜しは、止めよう。

間もなくして、母・元子が脳腫瘍で倒れてしまいます。病床で母は初めて父の事を語ります。「お父さんは優しすぎたのよ」。笑い泣きする母の姿に兄弟は胸を痛めます。

時を同じくして、亮太の妻・友里恵が男の子を出産しました。喜びはあるものの、亮太はより強く父親のことを思い出していました。

章一が、父親の新情報が入ったと言い出します。疑問に感じた亮太は真相を確かめに向かいます。なんと、章一の発言はすべて嘘だったのです。

怒りで章一を責める亮太。章一は、いつも孤独を感じていました。「俺にはいつも誰もいなかった。全部、父さんのせいだ」。章一もまた長いこと苦しんできたのです。

記憶の中の母が言います。「人は孤独よ」。

母・元子が亡くなりました。葬式は、会社の皆が手伝ってくれました。亮太は友里恵と新しい命の誕生に穏やかに向き合っていました。

その時です。亮太は参列者の芳名帳で小形晃子の名前を見つけます。急いで兄章一を呼ぶ亮太。晃子の姿を探します。

ようやく真実を知ることが出来る。晃子は話します。「社長は私の家族を助けてくれました。母が倒れて父の借金の保証人になってくれました。三田さんは優しかっただけです」。

「私があなたたち家族を壊してしまったのね」。申し訳なさそうに謝る晃子。父の居場所を知っていました。

「父さんに会ったら何話す?」それは以前も兄弟で話した会話でした。いよいよ父と再会の時です。

父は漁村の修理工場で働いていました。オイルにまみれで懸命に働く父。「章一。亮太」。父は一目で気付きます。

たまらず泣き出す章一。ふらふらと父に近づきます。「母さんが死んだとよ。なんで、なんで」。父は章一を真正面から抱きしめます。

そして、亮太のことも呼び寄せ兄弟を包み込みます。父の胸でボロボロ泣く兄弟。その姿は本当の子供のようです。抱えてきた悲しみが浄化していきます。

亮太は、赤ちゃんを抱っこし友里恵と実家に向かっています。家の前で兄・章一が出迎えます。兄弟の顔は、澄み渡る空のように晴れ晴れとしていました。

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映画『こはく』の感想と評価


(C)2018「こはく」製作委員会
映画『こはく』は、横尾初喜監督の半自伝的ストーリーということで、監督の作品を愛する気持ちが、キャストの演技にも滲み出ているような温かい映画でした。

中でも、井浦新と兄弟役を演じた大橋彰(あきら100%)の俳優の顔に驚きです。とても自然な演技で、観るものにリアリティを与えます。

テレビではお馴染みの裸姿は、たびたび挟まれた入浴シーンで披露。見慣れた姿に笑いが起こります。弟役の井浦新との入浴シーンでは、本当に兄弟では!?と思うほど顔つきも似ているように見えました。

父親と再会するシーンは、あふれる涙を拭わず子供のように抱き着く姿に、心を持っていかれました。一緒に泣き出す弟の亮太、兄弟を温かい眼差しで包み込むよう抱きしめる父親。

愛し合う家族が、訳会って離れなければならなかった時間。溢れる涙で浄化されていくような素敵なシーンでした。

そして、私生活でも横尾初喜監督の妻である遠藤久美子が、映画でも主人公の妻役を演じて話題となりました。

父のいない過去を引きずりながらも無理をしがちな亮太を、優しく見守る聖母マリアのような笑みが印象的です。

見返りを求めない無償の愛は、何よりも強く、美しいと感じました。

横尾初喜監督は、これからの時代に大切な「優しさ」とは何かを作品を通して感じてほしいとメッセージを寄せています。

「優しさ」には「許すこと」も含まれているのではないでしょうか。人を傷つけてしまっても、自分の行動に後悔しても、過去は変えられないものです。

許し許されながら絆を深め、互いを理解する努力をする。それが家族の基本なのかもしれません。

まとめ


(C)2018「こはく」製作委員会
横尾初喜監督が自らの幼少期の実体験をベースに原案を書き上げ、映画化した『こはく』。

映画の舞台となるのは、監督の故郷でもある長崎県。長崎の美しい海の風景が印象的です。長崎弁のセリフもじんわり心に染みます。

「琥珀色の恋しき日々は胸の中」と歌う主題歌「こはく」は、Laika Came Back(車谷浩司)が本作のために書き下ろした曲で、映画の世界観が見事に表現されています。

映画『こはく』。優しさについて、今一度立ち止まり考えるきっかけになる映画です。

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