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Entry 2023/07/21
Update

『復讐の記憶』あらすじ感想と評価解説。イ・ソンミンの韓国映画リメンバーは《裏切り者・復讐心・追走劇》ノワール感テンコ盛り!

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『復讐の記憶』は2023年9月1日(金)よりシネマート新宿他で全国順次公開!

一人の老人による復讐と、その事件に巻き込まれる若者の姿を描いた映画『復讐の記憶』

韓国の歴史の闇をモチーフに、一人の老人が抱く復讐心と、若者との友情が交錯するノワール作品です。

ベテラン俳優のイ・ソンミン、モデル出身で近年ドラマを中心に目覚ましい活躍を遂げているナム・ジュヒョクという新旧の実力派俳優が激突。

作品を手がけたイ・イルヒョン監督は企画、製作、脚本を務める『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』のユン・ジョンビンとともに脚本も担当しました。

映画『復讐の記憶』の作品情報


(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & MOONLIGHT FILM ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2023年(韓国映画)

【英題】
Remember

【原題】
리멤버

【監督】
イ・イルヒョン

【脚本】
イ・イルヒョン ユン・ジョンビン

【キャスト】
イ・ソンミン、ナム・ジュヒョク、ソン・ヨンチャン、ヤン・ソンイク、パク・ビョンホ、パク・グニョン、チョン・マンシク、ユン・ジェムン

【作品概要】
日本統治下の朝鮮において家族を殺された一人の老人による復讐と、その事件に巻き込まれる若者の姿を追ったサスペンス。監督は『華麗なるリベンジ』のイ・イルヒョン。

キャストには復讐に燃える主人公・ピルジュ役を『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』などのイ・ソンミン、彼に翻弄される若者インギュ役を韓国版『ジョゼと虎と魚たち』のナム・ジュヒョクが務めました。


映画『復讐の記憶』のあらすじ


(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & MOONLIGHT FILM ALL RIGHTS RESERVED.

とあるレストランチェーンで働く老人、ピルジュ(イ・ソンミン)。気さくな性格で若いアルバイトのインギュ(ナム・ジュヒョク)からも親しまれていた彼でしたが、ある日彼の妻が亡くなります。

この時を境にピルジュは決心を固めます。日本の植民地時代に家族全員を理不尽な理由で亡くして以来、彼は家族全員をみじめな死に至らしめた裏切り者への復讐を実行に移すべく、インギュに1週間だけ車の運転を依頼します。

アルツハイマー病を発症し、認知症で自分の記憶が長くは続かないと悟ったピルジュは60年間計画していた復讐殺人を決行していきますが、何も知らないインギュは、一人目の犯行時に犯行現場近くの監視カメラに写り込んでしまい、第一容疑者とされてしまいます。

こうしてピルジュの復讐劇は、一人の青年インギュを巻き込んでさらに激化していくのでした。

映画『復讐の記憶』の感想と評価

(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & MOONLIGHT FILM ALL RIGHTS RESERVED.

本作は、1910年の韓国併合より1945年の第二次世界大戦における日本敗戦までの35年間、現在の韓国を日本が植民地としていた時代における闇の部分を背景として物語を構成しています。

いわゆる日本統治下にあった人々の立場、慰安婦問題など現在でもさまざまに消えない傷跡、問題として持ち上げられている事項でありますが、物語のテーマとして取り上げられているイメージが作品の魅力を最大限に引き出しています。

いわゆるこの歴史的な問題に関しては、現代のメディアなどでは「どちらの国の問題なのか」「どちらの国が悪者なのか」という集約された視点で語られる傾向がありますが、作品ではどちらかというとポイントを絞って、歴史の問題を取り上げています。

「日本か、韓国か」という巨視的な目線ではなく、その事件における被害者の家族から見た怒りの矛先は、あくまで「問題の現場」に存在した当事者という微視的な目線でその要因を集約しているわけです。

この視点設定は、現実的に論じられている問題の論点に異議を唱え、事件、問題に対する現状の定説的なイメージとはまた違った原因を提唱しているようでもあります。

物語のメッセージとして非常にシリアスなテーマを提示している一方で、しっかりとエンタテインメントとしての要素をアピールしている点も非常に高く評価できる作品であるといえます。


(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & MOONLIGHT FILM ALL RIGHTS RESERVED.

またユニークなのは、現実に存在するそのようなテーマに対して、「韓国の若者」による異なる視点をうまくからませたところにもあります。

韓国の過去における事件で家族を亡くし、復讐に燃えるピルジュ。一方、そういった時代を知らずに、悪戦苦闘しながら現代を生きるインギュ。一見相容れない立場でありながら、インギュの抱えてきた境遇はどこかピルジュが通過してきた時の光景と重なる部分が見えてきます。

そのためわけもわからない事件に巻き込まれるインギュは、ピルジュの胸の内に反発しながらも、時に無意識のまま自身の思いと重ねて共感していきます

クライマックスよりラストで見せるピルジュとインギュの交流は、何か現代で論ぜられているさまざまな問題に対して、新たな視点を提供しているようにも見えてきます。

このように本作は、現実の社会一般で論じられる物事とは少し違った視点を提供することで、ストーリーにメッセージ性とともに新鮮味を加えています。

まとめ


(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & MOONLIGHT FILM ALL RIGHTS RESERVED.

本作の出演陣でやはり一番に目が向くのは、主演を務めたイ・ソンミン。

映画からドラマまで多くの作品に出演し数々の特徴的な役柄を演じてきた彼ですが、特に胸の内を崩さない、いわゆる”食えない”人物像を演じる役者として、秀でた実力を見せる役者であるといえます。

本作でもナム・ジュヒョク演じる若者インギュの行動や言動にさまざまな影響を受けながらも、思いを決して揺るがせない、そして胸の内を見せない執念の老人役を演じました。

彼が演じる老人のその姿からは歴史が持つ悲劇、闇の部分を未来の若者たちがどう担っていくか、その問いをしっかりと示しているようにも見えてくるでしょう。

映画『復讐の記憶』は2023年9月1日(金)よりシネマート新宿他で全国順次公開!



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