映画『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』は、7月7日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開!
ロシア国立ボリショイ・バレエ・アカデミーの頂点を目指した少女たちの挫折と栄光。その夢見るサクセスストーリーを描くため、世界的に活躍する本物のバレエ・ダンサーが集結。
世界最高峰のボリショイ劇場で撮影は、圧巻のフィナーレとなる豪華バレエ・エンターテイメントの秀作です。
平凡な少女ユリアは貧しい家庭環境で育つも、チャンスを活かしバレリーナの才能を開花させます。一方で裕福な家庭に育ち、すべての踊る才能もすべてを兼ね備えたライバルのカリーナ。
2人のどちらがプリマ・バレリーナとして、ステージの中央でスワンを舞うのか?
CONTENTS
映画『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』の作品情報
【公開】
2018年(ロシア映画)
【原題】
Большой(英題:THE BOLSHOI)
【監督】
ヴァレーリー・トドロフスキー
【キャスト】
マルガリータ・シモノヴァ、アンナ・イサエヴァ、アリーサ・フレインドリフ、ニコラ・ル・リッシュ
【作品概要】
ロシアの名門であるボリショイ劇場のプリマ・バレリーナを夢見る2人の少女の青春映画。
憧れのプリンシパルであるアントワーヌ役を、元パリ・オペラ座のエトワールで、現在はスウェーデン王立バレエ芸術監督のニコラ・ル・リッシュが好演。
マルガリータ・シモノヴァ(ユリア・オルシャンスカヤ役)のプロフィール
マルガリータ・シモノヴァは、1988年12月23日にリトアニア東部のヴィサギナス生まれます。
2001年にヴィリニュス国立チョルリョーニス芸術学校のバレエ学部に入学。
2008年にスウェーデンのムーラで開催される若手バレエ・ダンサーの国際コンテストで優勝。
同年10月にはフランスのグラースで開催されるバレエ・ダンサーの国際コンテストで最高位資格を得ます。
2009年にバレエ学校を卒業すると、リトアニア国立オペラ・バレエ劇場に入団をします。そのわずか1年後、ワルシャワ大劇場付属のポーランド国立バレエ団からオファーを受け、現在も在籍中の現役バレエ・ダンサー。
アンナ・イサエヴァ(カリーナ・クルニコヴァ役)のプロフィール
アンナ・イサエヴァは、1992年9月23日にロシアのモスクワ生まれです。
幼少時から新体操とダンスを学び、2002年にボリショイ・バレエ・アカデミーに入学。
2011年に優秀な成績で卒業後、2012年まではクレムリン・バレエ劇場に所属して「白鳥の湖」「シェヘラザード」「海賊」「ジゼル」などの古典に出演します。
また、ロシアン・シーズン21世紀のプロジェクトでは、「クレオパトラ/イダ・ルビンシュタイン」のプレミアにも出演を果たしました。
その後2013年まで、ロシア・ナショナル・バレエ劇場で「白鳥の湖」のパ・ド・トロワや、「眠れる森の美女」のリラの精など、古典的演目全作品に出演。
2014年以降は講師として活動しています。
映画『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』のあらすじ
少女ユリアはボリショイ・バレエ・アカデミーに、多くの受験生とともに混じり、入学試験を受けに来ました。
そんな彼女の傍にいる男は、かつては誰もが知るバレエ・ダンサー。しかし、今の肥満の腹を突き出したダラシない中年男は、風貌や面影も片鱗すらありません。
アカデミー内を知ったる場所のように歩く男に導かれるにユリア。
その廊下の壁に並ぶ数々の写真は、これまでのアカデミー卒業生たちの輝かしきプリンシパルの姿でした。
男は一枚の写真を懐かしそう見つめ、立ち止まります。
ユリアは「これ、オジサン?」と思わず聞き返すと、そうだと頷いた彼はウラジオミール・ボトツキでした。
その時、2人の横を通り過ぎた高齢の婦人は、アカデミー随一のバレエ講師の大先生ガリーナでした。
ウラジオミールは思わず、「ガリーナ!ガリーナ!」と彼女を必死に呼び止めますが、ガリーナは足を止めることはしません。
それでも食い下がるウラジオミールは、ユリアの踊りを一度見て欲しいと懇願します。
ガリーナは、「誰かと思ったら、私が舞台で心中してもいいと思ったウラジオミールじゃない!安酒くさいわね」とあしらいます。
ユリアは何が何だか状況が飲み込めないまま、2人の後をついていきます。
その後、どうにかユリアは、大先生ガリーナの采配もあって、入試の順番待ちもせずに、踊りの試験を受けることができました。
アカデミーの厳しい入試採点するガリーナを中心としたモスクワに住む講師陣たち、その前に1人立たされる田舎娘のユリア。
そこでユリアが見せた踊りは、バレエとはほど遠い、まるで場末のコールガールが男を誘うような有様の踊りでした。
その姿に怒り心頭の審査を行う女講師。それを見て、ガリーナは思わず吹き出します。
また、ピアノで踊りの伴奏をする者も、ユリアに魅惑的な何かを感じたのか演奏はノリノリですが…。
怒りを見せる女講師に部屋を追い出され、やがて、張り出される入試の審査結果を待つ不安げなユリア。
一方で傍にいたウラジオミールは少女ユリアに、「ビール代をくれ」とせがみます。
ユリアは大切にポケットにしまい込んだ、なけなしの束ねたお金の数枚を、ウラジオミールに手渡しました。
試験結果が張り出されると、それを期待と不安を抱え見に行くユリア…。
しかし、彼女が結果を見て、カバンを預けたウラジオミールの元に戻ると、すでに男はそこにはいませんでした。
ユリアは、ボリショイ劇場の擁するバレエ・アカデミーに無事、入学を果たします。
彼女の隠された跳躍力や表現力を見抜いていたのは、、かつて、伝説のプリマとして活躍した、あのガリーナでした。
大先生のガリーナはユリアに厳しくあたるも、その信じた才能を伸ばそうと手を差し伸べます。
しかし、バレエの基礎の足運びも知らないユリアは不安で押しつぶされそうでした。
その時、育った境遇やスタイルもすべてが正反対の少女カリーナと出会います。
やがて、2人少女は仲のよい親友となり、しかも最大のライバルとして、過酷なレッスンに耐えていきます。
ユリアとカリーナは、恋とバレエを競い合い、自身を高め合っていきますが、いったい、どちらがボリショイ劇場でのプリマの座を掴むのか…。
映画『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』の感想と評価
『ガラスの仮面』を彷彿させるユリアとカリーナ
本作『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』を試写で鑑賞した帰り道で、ご婦人が「“昭和の少女マンガ”みたいで面白かった」と述べていましたが、正しく本作品の設定は、あの、美内すずえの『ガラスの仮面』そのもの。
1976年から今なお、完結しない累計発行部数5,000万部を突破(2014年計算)した、大ベストセラーの少女コミックを日本人なら否が応でも思い起こさせてくれます。
もちろん、バレエと演劇の違いはありますが、プリマとしてステージのセンターに立つ身体表現の華やかさは一緒だと言えるでしょう。
コミックを読んだ男女ともに、平凡な少女が“紅天女”を目指す北島マヤを知るものなら、本作ではバレエ・ダンサーの主人公ユリアと重ね、幼い頃から才能を歌われた姫川亜弓は、ライバルのプリマ候補であるカリーナに見えてきます。
ましてや、往年の大女優でマヤと姫川を競わせる月影千草は、キャラクターのタイプは違えど、アカデミーの大先生ガリーナを彷彿させてくれます。
つまり、本作品『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』は、バレエを知る人も知らない人でも、楽しめるプリマ・バレリーナを夢見る2人の少女が競い合う青春映画。
「ロシア映画?」「バレエって何かお高くない?」といった心配は一切ありません。
しかも、ユリアとカリーナのほかにも、魅力ある少女のキャラクターの登場もあり、女子なら“女の子あるある”な場面もいくつも見つけることができるでしょう。
また、少女コミック『ガラスの仮面』を読み漁ったろう男女ともに、心をくすぐるお楽しみ要素あるので要チェックですよ。
少女の成長を時間軸を交差させ見せる巧みさ
映画の冒頭は、ボリショイ・バレエ・アカデミーで広いスタジオで、自主的に練習に励む男女の姿を映し出します。
その後、彼らはスタジオ奥上手のドアを開けて退出します。
すると、1人の少女(もう、女性かな?)が、スタジオの下手にある扉を開けて入ってきて、スタジオのセンターに1人座り、身体の柔軟体操を始めます。
バレリーナって、こんな風に足先をほぐしていんだと、まじまじ観客が見ていると、その観客の気持ちとシンクロするように、いくつものショット割って、ユリアの表情や身体の美しさを捉えていきます。
ここで思わず、張り詰めた空気感に「スゴイな〜」と見とれていると、物語は急に、かつてアカデミーに入試を受けてに来た当時の幼い少女ユリアの姿を見せます。
このように、大人のユリアと子どものユリアが、劇中でシークエンスごとに時間軸が交差していきます。
それによって、映画を観る観客の好奇心を一切飽きさせず、ユリアに感情移入をさせていくのです。これはカリーナもそうですが、2人のバレエ少女と思春期を迎え恋する少女たちを見事に描ききっています。
もちろん、そのベースにあるのは、「身体表現」というバレエが中心。そこからは決してブレません。
手の先から足の先まで、しなやかとかは、このようなもの指すのだろうと美しさを見せまくります。
これはチョイ役のエキストラに至るまでそうなので、身体とは雄弁な言語にほかなりません。
さて、そして大きなこの映画ポイントと言えば、この現在と過去が交差する表現によって、なぜ、ユリアは今ここにいるのか。
そして、なぜ、そのようになったのか。
それがこの映画の最大の見どころ。その違いが2人の少女ユリアとカリーナにはあったのです。
しかし、単純にユリアの成長だけではこの映画は終わりません。
少女(人)が成長するには誰かの存在や、互いに一緒に学びあう存在が不可欠だからです。
この作品、映画ファンのあなたなら、2018年に見ておくべきオススメの1本です。
映画にしかない、身体表現という言語を映像で見せる雄弁さと、才能有る無しを超えて探求し学びあう(支え合う)といった生きる思いやりに満ちた作品ですよ。
本作を上映する劇場情報
東京 ヒューマントラストシネマ渋谷 7月7日〜
大阪 テアトル梅田 順次公開
兵庫 シネ・リーブル神戸 順次公開
長野 シネマポイント 順次公開
*上記記載の上映館は6月5日現在のものです。今後セカンド上映や全国順次公開されることが予想されます。お近くの劇場をお探しの際は必ず公式ホームページでご確認してからお出かけくださいますようお願いたします。
まとめ
本作『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』で製作を担当したドミトリー・ダヴィデンコは、劇場に行き、非常に集約された美を鑑賞するのがバレエだとしながら、その背景について次のように述べています。
「(集約された美に対して)実はバレエに人生を捧げた人たちは20年も30年もかけています。こうした人々の人生、演目の背後にあるものを映画にしたいと思って制作に至りました。
バレエ・ダンサーの方々は30歳から年金生活に入ります。小さい時から始めて、ナイトクラブも行かず、友達とも遊ぶこともなく、すべての時間を良いバレエ・ダンサーになるために捧げるのが現実です。そして大変な労働です。自分の夢を実現するという強い想いがある人だけがトップになることができます」
感想で触れた現在と過去のシークエンスの時間軸の交差は、こうした鍛錬の長い時間の表現の表れなのではないでしょうか。
時間軸が一方向に順番にだけで進むことがないのは、バレエ・ダンサーに限りませんが、日々積み重ねと繰り返しに中にこそ、身体に深く染み着く“成長の実感”の学びにほかなりません。
演出を務めたヴァレーリー・トドロフスキー監督のその手腕は見どころのひとつ。
そして、本物のバレエ・ダンサーが演じたユリア役のマルガリータ・シモノヴァ、カリーナ役のアンナ・イサエヴァをはじめとして、アントワーヌ役のニコラ・ル・リッシュは、スウェーデン王立バレエ芸術監督で、元パリ・オペラ座エトワール!
すべてのキャストが一丸となって、バレエ界を誠実にリアルさを持って描いた作品です。
映画『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』は、7月7日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開!
ぜひ、お見逃しなく!