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Entry 2023/03/23
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台湾映画『本日公休』あらすじ感想と評価解説。主演キャストのルー・シャオフェンと監督フー・ディエンユーが描く“ハートウォーミングな作品”|大阪アジアン映画祭2023見聞録8

  • Writer :
  • 西川ちょり

第18回大阪アジアン映画祭「観客賞」、「薬師真珠賞」をW受賞の台湾映画『本日公休』!

2023年3月10日(金)より10日間に渡って開催された「第18回大阪アジアン映画祭」。16の国・地域の合計51作品が上映されました。

各賞の発表も行われ、同映画祭は盛況の中で幕を閉じましたが、本連載はまだまだ続きます。

今回ご紹介するのは同映画祭にて「観客賞」と「薬師真珠賞」に輝いた台湾映画『本日公休』(Day Off))です。

フー・ディエンユー監督が、理髪師である自身の母の物語に着想を得て3年の歳月をかけて完成させたハートウォーミングな作品です。

【連載コラム】『大阪アジアン映画祭2023見聞録』記事一覧はこちら

映画『本日公休』の作品情報

【日本公開】
2023年(台湾映画)

【原題】
本日公休(英題:Day Off))

【監督】
フー・ティエンユー(傅天余)

【キャスト】
ルー・シャオフェン(陸小芬)、フー・モンボー(傅孟柏)、シー・ミンシュアイ(施名帥)、アニー・チェン(陳庭妮)、ファン・ジーヨウ(方志友)

【作品概要】
フー・ディエンユー監督が、自身の母の物語に着想を得て3年の歳月をかけて完成した作品。

名優・ルー・シャオフェンが20年ぶりに映画に復帰したことでも話題となりました。

映画『本日公休』のあらすじ

アールイは理髪店を経営して40年になります。彼女と常連客の間には、長年かけて築いた確かな信頼関係がありました。

アールイはタイミングを見計らって客に営業電話を入れ、訪ねてきた客には懇切丁寧に対応します。客のことを知り尽くしているアールイは、要望をきかなくても客の好みに仕上げることができます。

そんなある日、彼女は商売道具をバッグにしまい、車に乗って外出します。

そうとは知らずにやって来た彼女の娘は、ドアに「本日公休」と札がかけられているのを見て一体どこに行ったのだろうといぶかしがります。

近くに住む息子と、今風のおしゃれな店で美容師をしているもうひとりの娘もやって来ました。

アールイは携帯を家に置いたままでかけており、連絡がつかないので、3人はだんだん心配になってきます。3人は母が毎日どんなふうに暮らしているのか何も知らないことに気が付きます。

その日彼女は、顧客から、体調を崩し散髪に行けないとの電話を受け、彼の髪をカットしに出かけていたのです・・・。

映画『本日公休』の感想と評価

映画の冒頭、映し出されるのはハサミなどの商売道具を入れる革製の道具入れです。

年季が入ったその様子を見ると、道具入れが長年大切に使われてきたことがわかります。そこには理髪店の歴史や、あるいはアールイのこれまでの人生の歩みが刻まれているといえるでしょう。

舞台となる昔ながらの小さな理髪店が、またなんともチャーミングです。懐かしさを感じさせる外観は古びてはいるけれどよく手入れされていて、店内には淡い日差しが優しく注がれています。

ここはアールイにとって大切な仕事場であると同時に世界とつながる空間でもあります。客たちにとってもなくなっては困る大切な場所です。

度々、飼い猫が店内に姿を見せるのがなんとも愛らしく、ほのぼのとした気持ちにさせられます。

小マメに営業電話を入れ、営業時間外の朝イチのお客さんにも快く対応するプロの仕事人であるアールイは理髪師としての確かな哲学を持っています。

また彼女は、一男二女を育て上げた母親でもあり、子どもたちと価値観の違いでぶつかりあうことはあっても常に家族のことを心配し気にかけています。

このような日常が綴られていく中、アールイは、遠くの町から通い続けてくれていた客が体調を崩し、店に行けなくなったので家に来てほしいという連絡を受けます。彼女の顧客は高齢化が進んでいました。

彼女は道具入れをカバンに詰め込み、車に乗って初めての土地へと出かけて行きます。道に迷い思わぬハプニングに見舞われつつ、緑あふれる景色の中を一台の車が移動していく姿はなんともいえない可笑しみがあり、ロードムービー的な豊かな味わいがあります。

また、辿り着いた先でのエピソードからは、人間の老いや死、親しい人との離別といった切実で儚い現実が浮かび上がり、静謐に、かつ強度を込めて綴られています。

アールイを演じたのは、アン・ホイ監督の『客途秋恨』(1990)などの作品で知られる台湾を代表する名優・ルー・シャオフェンです。長い間、映画に出演していなかった彼女が約20年ぶりにスクリーンに帰ってきました。

『マイ・エッグ・ボーイ』(2016)などで知られるフー・ティエンユー監督は、理髪店を営む自身の母親をモデルに脚本を書き上げ、3年の歳月をかけてこの温かな作品を完成させました。1人の理髪師とその家族の日常は、懸命に生きて来た台湾人の姿そのものです。また、台湾という枠組みを超え、誰もが共感する深い人生観がユーモアを交えて記されています。

チェン・ボーリン等、有名俳優が意外なところでゲスト出演しているのも見どころのひとつです。

まとめ

映画上映後に登壇したフー・ティエンユー監督と主演のルー・シャオフェンさん


(C)Cinemarche

3月17日(金)のABCホールでの上映後、ゲストとして、フー・ティエンユー監督と主演のルー・シャオフェンさんが登壇しました。

映画に登場する理髪店は、台中にあるフー・ティエンユー監督のお母さまのお店で、撮影も同所で行われました。現在も営業しているそうです。

フー・ティエンユー監督は幼いころ、店の隅に座って、母と客の会話を聞いていたといいます。

ルー・シャオフェンさんは台湾のスーパースターである上に、20年間映画から遠ざかっていたため、役を受けてもらえるか確信は持てなかったものの諦めずにアプローチしたところ、会いたいという返信が届いたそうです。

ルー・シャオフェンさんは理髪師を演じるにあたって、ヘアカットの練習を4か月行いました。熟練に見える必要があり、その上演技もしなくてはならずその点が一番大変でしたが、やりがいがあったと述べていました。

会場には作品のモデルであるフー・ティエンユー監督のお母さまの姿もあり、温かい拍手が送られていました。

【連載コラム】『大阪アジアン映画祭2023見聞録』記事一覧はこちら



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