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【ネタバレ】クリスマス・ウォーズ|あらすじ結末感想と評価解説。メルギブソンが武闘派サンタクロースとしてユニークな姿を披露する|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー95

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第95回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第95回は、イアン・ネルムズ監督とエショム・ネルムズ監督が演出を務めた、映画『クリスマス・ウォーズ(2020)』です。

サンタの存在を信じない子供の増加に伴い、政府からの報酬が削減されてしまったおもちゃ工場は、深刻な財政危機から脱却するべく、アメリカ陸軍から兵器の製造を依頼・受託するまでになってしまいました。

そんな中、貰ったクリスマスプレゼントの内容に怒った少年は、凄腕の暗殺者にサンタクロース抹殺を依頼するという物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

アメリカ陸軍vs最凶の暗殺者vs武闘派サンタクロースの死闘を描いたアクション・エンターテインメント映画『クリスマス・ウォーズ(2020)』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『クリスマス・ウォーズ(2020)』の作品情報


(C)2020 FATMAN, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

【公開】
2021年(イギリス・カナダ・アメリカ合作映画)

【監督・脚本】
イアン・ネルムズ、エショム・ネルムズ

【キャスト】
メル・ギブソン、ウォルトン・ゴギンズ、マリアンヌ・ジャン=バプティスト、チャンス・ハーストフィールド

【作品概要】
『スモール・タウン・クライム 回り道の正義』(2017)のイアン・ネルムズとエショム・ネルムズの兄弟が監督と脚本を務めた、イギリス・カナダ・アメリカ合作のアクション・エンターテインメント作品です。

マッドマックス』(1979)のメル・ギブソンが主演を務めています。

映画『クリスマス・ウォーズ』のあらすじとネタバレ


(C)2020 FATMAN, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

アメリカ・アラスカ州ノースピークの近くの農場で暮らすクリス・クリングルは、妻のルースと一緒に「サンタ工房」というクリスマスプレゼントの工場を営んでいました。

しかしここ最近、クリスマスとサンタクロースを軽視する子供たちが多く、いい子にしている子供たちへのプレゼントの製作・配達することが少なくなり、クリスの収入は減ってしまいました。

その資金を提供しているアメリカ政府は、アメリカ陸軍警備隊の隊長であるジェイコブス大尉をクリスと政府との連絡係として派遣し、サンタ工房が廃業にならずにすむための方法として、あることを提案します。

一方、家族に甘やかされて育った金持ちの少年ビリー・ウェナンは、科学コンテストに自慢の作品を出展し、今年も例年通り最優秀賞をとって家に帰るつもりでした。

ところが今年の最優秀賞は、ビリーの同級生の女の子クリスティーン・クロフォードに決まりました。

極度の負けず嫌いであるビリーは、おもちゃ屋を営んでいる専属の殺し屋ジョナサン・ミラーにクリスティーンを誘拐するよう頼みます。

そしてビリーはミラーと一緒に、「クリスティーンに不正を行っていたので最優秀賞を辞退しろ、でなければお前の両親も愛犬も殺す」と脅迫しました。

世界中の子供たちが待ちに待ったクリスマスの日、ビリーのもとにサンタからのプレゼントが届きます。


(C)2020 FATMAN, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

クリスマスツリーの下にあるプレゼントを見て、期待に胸を膨らませるビリー。しかし彼に届いたのは、サンタが悪い子に贈る石炭の塊でした。

これに激怒したビリーは、ミラーにサンタの殺害を依頼します。その後、ビリーのもとにバハマにいる彼の父からクリスマスプレゼントが届きました。

父から無視されていることに不満と寂しさを抱いていたビリーは、内心父からのクリスマスプレゼントを貰ったことに喜びました。

しかし小包の中身は大きなクマのぬいぐるみのみ、メッセージカードもありません。ビリーの怒りは頂点に達しました。

その頃ミラーは、次の標的であるサンタに関して調べ、サンタの名前がクリスであることを突き止めます。

しかしサンタである彼に関する情報は全て、アメリカ政府によって極秘事項扱いされているため、ミラーはそれ以上の情報を掴めずにいました。

そんな時、ふとアニメでサンタが子供たちの手紙を読んでいる姿を見たミラーは、郵便局の監督官に毎年世界中の子供たちからサンタ宛てに届く手紙はどこに届けられるのかと訪ねてみることに。

すると、「レディング通りにある郵便局の局長ウェイランド・ミークスに聞いてみるといい」と言われました。

ミラーは郵便局の監督官に扮し、郵便局の局長室に侵入。銃を突きつけ、クリスの住所を教えるよう脅迫します。

しかしウェイランドは、「手紙はノースピークの郵便局の私書箱に届けられる」ということしか知りません。

ミラーはそれを白状させた後、ウェイランドを殺害。ノースピークへと向かいました。

以下、『クリスマス・ウォーズ(2020)』ネタバレ・結末の記載がございます。『クリスマス・ウォーズ(2020)』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


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一方窮地に追い込まれたクリスは、葛藤の末、アメリカ陸軍からの仕事を引き受けるという苦渋の決断を下しました。

クリスはエルフたちに、現状を打開するべく、ジェイコブスから提案された「軍需品の製造」を請け負うことを宣言しました。

ショックを受けるエルフたちが多い中、ジェイコブスから詳しい仕事内容とルールが説明されます。

サンタ工房に課せられたルールは、指紋の採取に同意し常に身分証明書を身につけること、工場への出入りは南側の扉のみとすること、金属探知機に反応するためブーツの先についた鈴を外すこと。

そして陸軍警備隊によって工場の警備を強化すること、これらは全てクリスやエルフたちの安全を守ることを目的としたものでした。

これからサンタ工房で製造する軍需品とは、アメリカが誇る戦闘機FJ-63の計器盤です。勤勉で働き者のエルフたちは、軍の期待以上の働きぶりをみせます。

FJ-63の計器盤の試作品の出来具合に大いに満足した軍は、サンタ工房との年単位での契約を望みました。

クリスは一度きりの契約だと断ると、軍の渉外担当者のレックス・テイラーとカーターから「我々の提案を受け入れなければ、来年もまた同じ苦境に立たされるぞ」と脅迫されます。

世界が手に負えない場所へと変化していることに不満を抱くクリス。そんな彼に、ルースは黙ってクリスマスプレゼントを受け取った子供たちから届いた感謝の手紙を渡し、彼の気力を回復させました。

一方ミラーは、国境を越えるほどの長い旅路を経て、年が明けた頃にようやくノースピークに辿り着きました。

そしてミラーは郵便局を訪ね、郵便局員のハーマンにクリスの住所を尋ねました。郵便局員は秘密を守り、ミラーから脅されても彼のことは何も教えませんでした。


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ミラーは郵便局の前に車を止めて張り込みを行い、数日ぶりに郵便局にやって来たクリスを狙撃して殺そうとします。

しかしミラーの最初の試みは失敗。ミラーはクリスを尾行し、彼の家とサンタ工房がある農場の場所を突き止めました。

ミラーはアメリカ陸軍の警備員を次々と射殺し、サンタ工房に侵入。しかしエルフの1人に爆弾を仕掛けているのがバレて、警報を鳴らされてしまうのです。

ミラーからの襲撃を受け、ジェイコブスはエルフたちを守るために、ミラーと対峙し銃撃戦を繰り広げていきます。

銃撃戦の末、ジェイコブスは自分の命を犠牲にしてエルフたちを全員避難させました。

肝心のクリスがいなかったこと、エルフたちを取り逃がしてしまったことに怒りの声をあげ、ミラーはサンタ工房を爆破します。

するとそこへ、サンタ工房の現場責任者であるエルフ7の通報を受けたクリスが、ミラーの前に姿を現します。

クリスはミラーのことを、パトカーのおもちゃをプレゼントしたことを覚えていました。

でもそれは、虐待されていたミラーが望む「新しい親」をプレゼントできなかったからです。

そんな事情があったと知ってもなお、不幸な子供時代を過ごさせたクリスへの憎しみは消えません。

クリスはミラーとの一騎打ちにて、ミラーの左肩を撃ってから馬乗りになり、武器を取り上げます。

劣勢となったミラーは、足の膝に仕込んでいた刃でクリスを2回突き刺し、クリスの左目を撃って止めを刺しました。

そんなミラーをルースが狙撃します。ミラーは自分を撃ったルースを殺そうと、自宅に逃げた彼女を追いかけました。

しかしミラーが開けた扉の後ろに隠れていたルースは、それに気づいて振り返った彼を「ごめんなさい」と言ったうえで射殺しました。

ミラーの死後、死んだはずのクリスはルースの膝の上で息を吹き返しました。

後日。マリーは誰かが自分になりすまして、口座から大金を抜き取ったことを知り激怒。すぐに自分の小切手に書かれた筆跡を調べるよう手配します。

実はビリーがミラーに仕事を依頼できたのは、祖母の筆跡を真似して小切手を偽造し、口座から大金を抜き取っていたからでした。

それがバレたことを知ったビリーは、保身のために自らの手で祖母を殺そうと、祖母が服用する鎮痛剤「フェンタニル」を、祖母がいつも飲む牛乳に大量に入れました。

そんなビリーのもとに、ルースと傷が回復したクリスが突如現れます。クリスはフェンタニルが盛られた牛乳を一気飲みしたうえで、「君がこうなったのは俺のせいでもある、最近俺は自分を見失っていたからな」とビリーに言いました。

クリスは「だが今は事態が好転してきた。それで行動を起こすことにしたんだ」と言い、ビリーと同じく善悪の区別のつかなかった殺し屋のミラーは死んだことを告げます。

そして最後に、クリスは「今度また何かやらかしたら、石炭の塊よりも悪いものを贈ってやる」、「君のおばあさんやクリスティーン、君を怒らせた人が酷い目に遭うことがあれば、君が寝ている時に来てをベッドから引きずり出し、自分がとった行動の責任をとらせる」と警告しました。

そのまた後日。クリスとルース、エルフ7たち従業員は自分たちがやって来た仕事を続けることに決め、サンタ工房の再建にとりかかりました。

映画『クリスマス・ウォーズ(2020)』の感想と評価


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サンタと愉快な仲間たちの絆の強さに感動

本作で登場するサンタクロースは、絵本やアニメなどで描かれる「白いひげを蓄えた太っちょの愉快なおじいさん」ではなく、白いひげを生やした強面で毎日自分を守るために体を鍛えているおじさんでした。

その視聴者のイメージを覆すサンタクロースの設定がまず面白いです。

それに加え、サンタクロースことクリスはとても愛妻家で、従業員であるエルフたちのことを家族のようにとても大切に思っています。

クリスの妻もエルフたちも、クリスのことをとても大切に思っており、彼らが互いに思いやって共存し働いているところがまた、とても癒されるハートフルな場面です。

そんなクリスがミラーとの戦いで死んだはずなのに、なぜ息を吹き返したのか、それはエルフたちと共存し、エルフ7が作中で言っていたように「日頃から良き行いをしている」から不死身になったのではないかと考察できます。

サンタに恨みを抱く殺し屋


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負けず嫌いでわがままの金持ち少年に、サンタの暗殺を依頼された殺し屋のミラー。彼はかつて、サンタのせいで不幸な子供時代を送ってしまった過去がありました。

作中でちらりと見せたミラーの手首には、彼の親がつけた煙草の痕が痛々しく刻まれていました。

親から虐待されていたミラーがサンタに望んだプレゼントは、おもちゃや絵本などではなく、「新しい親」であるとクリスの口から明かされます。

ミラーにとって、サンタクロースは自分を救い出してくれる救世主となってくれるだろうと期待していたに違いありません。

それなのに、クリスマスプレゼントとして届いたのはパトカーのおもちゃ。子供だったミラーの心が絶望と憎悪によって壊されてしまったと考えると胸が痛いです。

そんなミラーですが、作中では彼が飼っているハムスターを助手席に乗せて連れていくほどかわいがっている姿が描かれており、冷静沈着な殺し屋にはないギャップに萌えます。

ミラーの死後、そのハムスターはクリングル夫妻の家で、ケージの中で元気よくミラーが買った回し車で走っていました。

まとめ


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強面の武闘派サンタクロースが、自身に恨みを抱く冷酷な殺し屋と死闘を繰り広げていく、アメリカのアクション・エンターテインメント作品でした。

本作の見どころは、サンタクロースと彼に恨みを抱く殺し屋のギャップも得な設定と2人の死闘、殺し屋vsアメリカ陸軍憲兵隊による銃撃戦、そしてサンタとゆかいな仲間たちのハートフルな場面です。

本作の主な撮影は2020年2月、カナダのオンタリオ州とケベック州の境界に沿ったオタワ峡谷で行われ、クライマックスのクリスたちの銃撃戦は4日間かけて撮影されました。

ですが画面越しでは分かりませんが、その撮影期間中、気温が氷点下36度にまで達しました

心身ともに凍りつきそうなほど寒いはずなのに、それを一切表情に出さずにアクションを繰り広げていくメル・ギブソンやウォルトン・ゴギンズらキャスト陣の演技力は感服させられます。

クリスマスと子供の笑顔を守り抜く武闘派サンタクロースを描いたアクション・エンターテインメント映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

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