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Entry 2022/12/27
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『スナイパー コードネーム:レイブン』あらすじ感想と評価考察。ロシア・ウクライナ戦争の真実を実話戦争アクションとして描く|映画という星空を知るひとよ134

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第134回

実在する伝説的狙撃手(スナイパー)の半生を描き、ロシア・ウクライナ戦争の真実をえぐり出す、実話戦争アクション超大作『スナイパー コードネーム:レイブン』。

ウクライナでは「伝説の狙撃手」として英雄視され、敵対するロシアからは恐れられる実在の狙撃手(スナイパー)である、マイコラ・ボローニンが脚本に参加しています。

2014年、ウクライナのドンバス地方で戦争が始まり、物理学者のミコラは過激派に妊娠中の妻を殺されてしまいます。平和主義者だったミコラは怒りにかられ、自らの主義を翻してウクライナ軍に入隊。

厳しい訓練を得て、優秀な狙撃手となったミコラの行く手にあるものは……。

『スナイパー コードネーム:レイブン』は、2023年1月6日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷“未体験ゾーンの映画たち2023”より順次公開

復讐心から狙撃手となった男の光と影を映し出す本作を、映画公開に先駆けてご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『スナイパー コードネーム:レイブン』の作品情報


(C)State Agency of Ukraine for Cinema, 2022

【日本公開】
2023年公開(ウクライナ映画)

【英題】
Sniper. The White Raven

【監督】
マリアン・ブーシャン

【脚本】
マリアン・ブーシャン、マイコラ・ヴォローニン

【出演】
パーヴェル・アルドシン、マリナ・コシキナ、アンドレイ・モンストレンコ、オレグ・ドラック

【概要】
映画『スナイパー コードネーム:レイブン』は、愛する妻を過激派に殺されて復讐を誓い、ウクライナ軍に入隊して優秀な狙撃手となった男の物語。

監督は本作が長編デビューとなるマリアン・ブーシャンが務めました。実在の狙撃手マイコラ・ボローニンも脚本に参加。復讐と戦争の狂気に取り憑かれた男の光と影を映し出します。

ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2023」上映作品。

映画『スナイパー コードネーム:レイブン』のあらすじ


(C)State Agency of Ukraine for Cinema, 2022

2014年、ウクライナのドンパス地方で戦争が勃発。

物理学者のミコラは愛する妻と草原に建てたエコな一軒家で幸せに暮らしていましたが、ある日妊娠中の妻を過激派に殺され、家を焼き払われました。

非暴力・平和主義者だったミコラは、怒りにかられ、自らの主義を翻し、ウクライナ軍に入隊。

一般人から軍人へ。復讐心を燃やすミコラは過酷な訓練に耐え、みるみるうちにエリート狙撃手となっていきます。

やがて戦争が激化する中、自分を育ててくれた先輩狙撃手もロシア軍のスナイパーに殺され、一層復讐の誓いを胸に秘めたミコラ。

そして2022年2月、ロシア軍がキーウへの攻撃を開始。ミコラは、ロシア兵狙撃作戦への参加の機会を得ました。

映画『スナイパー コードネーム:レイブン』の感想と評価


(C)State Agency of Ukraine for Cinema, 2022

入隊理由は復讐

実在する「伝説的狙撃手」の半生を描いた本作は、ロシア・ウクライナ戦争の真実をえぐり出しています。

主人公のミコラはなぜウクライナ軍に入隊したのでしょう。愛する妻をロシアに加担する過激派に殺されたからです。

それまでは平和主義者の物理学者だったミコラは、妻を目の前で射殺され、打ちひしがれていたところを、ウクライナ軍に助けられます。

そして誓った‟妻を殺した者への復讐”。彼はそれだけを心の支えに軍隊に入隊し、狙撃兵をめざします。

基本教練、銃の分解・組み立て、ほふく訓練、射撃などなど。陸軍兵士の訓練を徹底的に受け、最後の狙撃兵の訓練では、軍人として目覚ましい進歩が見られました。

狙撃兵として一番優秀でなければならない射撃検定もうまくクリアし、見事に一等兵の階級をゲット。

学者肌の弱々しい印象のミコラの、銃の照準を合わせる眼付も鋭い狙撃手への変貌ぶりに驚きます。この変貌は、哀しいほど切ない決意の表れでした。

憎しみこそ殺人への引き金! 戦争終焉とならない裏には、‟お互いに愛するものを殺されたことへの復讐”が渦巻いているとしか言えません。

手に汗握る狙撃手の撃ちあい


(C)State Agency of Ukraine for Cinema, 2022

作品中の戦争は見事な陸上戦です。国と国が接していれば、国境で激戦が繰り広げられるのは仕方がないこと。

国境の草原などに狙撃手たちは、偽装網をつけ草むらに潜んでチャンスを待ち、敵を一撃で倒します。ためらうことなく、何の躊躇もせずに銃の引き金を引かねばならないのです。

「狙撃手は気配を見せてはならない」「狙撃手には知恵と忍耐がいる」「狙撃手は頭の中で素早く計算する」

狙撃手の条件を叩きこまれたミコラですが、常に死を意識せざるを得ません。殺されたくないから相手を殺すという戦争の狂気が、リアルにわかりやすく描きだされます。

また、ロシアとウクライナの狙撃手同士の撃ちあいには、手に汗握る圧倒的な緊張感があります。これがフィクションではなく、実話だということが一層リアル感を掻き立てます。

狙撃手の隙のない動作で素早く引かれた引き金から飛び出す稲妻のような弾丸の撃ちあい・・・。

スリルある戦闘シーンは武闘派を魅了しますが、その奥に潜んでいるのは、故郷や愛する人を護りたいという一途な思い彼らは護るために戦っています

誰かを護りたい気持がある限り人は強くなれるのに違いないのです


(C)State Agency of Ukraine for Cinema, 2022

まとめ


(C)State Agency of Ukraine for Cinema, 2022

実在する伝説的狙撃手(スナイパー)の半生を描いた映画『スナイパー コードネーム:レイブン』をご紹介しました。

ポスターのキャッチコピーにもあるように、ロシア軍が恐れた史上最高の狙撃兵のコードネームです。

レイブンとはカラスのこと。主人公の妻が話した「白いカラス」の話からつけられたと推測し、妻を愛してやまない男の決意表明ともとれます。

現在も戦闘が続くウクライナで、レイブンはさまざまな偽装網で身を隠して自然の中に潜み、敵を狙っているのでしょう。

戦うのは、私利私欲でなく愛する妻の無念の想いを晴らすため。

一見冷酷非情に思えるレイブンの胸の内を知ると、やはり戦争がもたらす不幸を呪わずにはいられません

『スナイパー コードネーム:レイブン』は、2023年1月6日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷“未体験ゾーンの映画たち2023”より順次公開

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



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