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『ザ・メニュー』ネタバレ結末考察と感想ラスト評価。サイコサスペンスはどんでん返しな“地獄のコースメニュー”

  • Writer :
  • もりのちこ

「イエス!シェフ!」作る方も食べる方も命懸け。
究極のディナーのお味は!?

カリスマシェフが極上の料理を振る舞う孤島のレストラン。そこに集まった11人のゲスト。コース料理とともに明かされていく、それぞれの「秘密」とは?

海外ドラマシリーズ『メディア王 華麗なる一族』で注目を浴びたマーク・マイロッド監督作『ザ・メニュー』。アニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルトらが共演し、謎多きカリスマシェフ役をレイフ・ファインズが務めます。

孤島のレストランを訪れたゲストは、それぞれの事情はさておき、極上のコース料理とひとときの贅沢な時間を堪能しにやってきます。

そんなゲストを迎えるのは、カリスマシェフのジュリアン・スローヴィク。一つ一つのコースメニューには、シェフからの想定外のサプライズが添えられていました。

極上の料理にこめられた意味。コースが進むにつれ不穏な空気に包まれるレストラン。徐々にゲストの秘密が暴かれていく。そして、シェフの正体とは?

映画『ザ・メニュー』の作品情報


(C)2022 20th Century Studios. All rights reserved.

【日本公開】
2022年(アメリカ映画)

【監督】
マーク・マイロッド

【キャスト】
レイフ・ファインズ、アニヤ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト、ホン・チャウ、ジャネット・マクティア、ジュディス・ライト、ジョン・レグイザモ

【作品概要】
第47回トロント国際映画祭でのワールドプレミアムでも大絶賛となった映画『ザ・メニュー』。孤島のレストランを舞台に、極上のコース料理とともに、様々な秘密と謎が解き明かされていくサスペンス映画となっています。

監督は、2022年度エミー賞で最多25ノミネートの『メディア王 華麗なる一族』の演出で注目を集めたマーク・マイロッド監督。

キャストは、Netflix『クイーンズ・ギャンピット』で一躍脚光を浴びたアニャ・テイラー=ジョイ、『マッド・マックス 怒りのデスロード』のニコラス・ホルトなど。

そしてミステリアスなカリスマシェフを演じるのは、「ハリー・ポッター」シリーズのヴォルデモート卿が印象深い、レイフ・ファインズ。今作での怪演もみどころです。

映画『ザ・メニュー』のあらすじとネタバレ


(C)2022 20th Century Studios. All rights reserved.

なかなか予約が取れない孤島のレストラン「ホーソン」に行けることになったタイラーは、興奮していました。同席するマーゴが煙草を吸うも「料理の味が分からなくなるから止めろ」と注意します。

レストラン行きの船が到着しました。タイラーとマーゴの他にも、本日のゲストが顔をそろえています。著名料理評論家や、人気映画俳優、有名投資家など選び抜かれた客ばかりです。

船が島に到着し、給仕係のエルサが一人一人、予約の名前を確認していきます。

「お連れ様の名前が違うようですが?」タイラーは急遽連れてくるパートナーを変えたようです。「連絡ミスだ」と慌てるタイラーでしたが、マーゴはどこか冷めていました。

エルサは理解したようにマーゴを招きいれます。レストランまでの道のりには、新鮮な魚が採れる海、豊富な野菜が育つ畑、養鶏場に燻製場まで存在し、料理のすべての食材がここで作られていることが察せます。

エルサ曰く、シェフ以外のスタッフは、全員共同生活。休日もなく毎日料理のことだけ考え、高い意識を持って尽くしているそうです。

今夜のディナーをいただくレストランに到着しました。外の景色を一望できるガラス張りの店内には、オープンキッチンが設置され多くのスタッフが料理を作っています。

シェフのジュリアン・スローヴィクの登場です。「パンッ!」と大きくひとつ手を打つと、厨房のスタッフが一斉に作業の手を止めました。「イエス!シェフ!」。

「みなさまようこそ」と不敵な笑みを浮かべるスローヴィク。「今宵は出される料理を食べないでください。ただ食べるのではなく、味わうのです」。

コース料理の1皿目が運ばれてきました。「どうぞ、お召し上がりください」。今宵、究極のディナーのはじまりです。

シェフに心酔しこの時を待ち望んでいたタイラーは、すでに涙を浮かべています。美食家である彼は、1皿に込められたメッセージを紐解き、味を解説し、禁じられている写真を撮ってしまうほど、はしゃいでいました。

2皿目。運ばれてきたのは、何種類かのパンにつけるジャムのようですが、肝心のパンが見当たりません。「パンのないパン皿」。

「パンッ!」「イエス!シェフ!」

はじめは戸惑っていた客も、スローヴィクの説明により「あくまでもコース料理の演出だろう」とジャムを舐めだします。

料理評論家のリリアンは編集者テッドを相手に、まだ有名じゃなかったスローヴィクを自分が見つけ出したと豪語します。「ソースが分離してるわね」と厳しく料理をチェックしています。

3皿目は、タコス料理のようです。「パンッ!」「イエス!シェフ!」

スローヴィクは自らの幼少期の話を聞かせます。それは9歳の時、母をかばい父の足に刺したハサミの記憶。幼い自分では、心臓を刺すという殺し方に気付かなかったと笑います。

「その席にいるのが、母です」スローヴィクが指したテーブルに、一人の老婆が座っていました。なんの感情もない表情でただ座っています。

一人一人に配られたトルティーヤには、なにやら模様が施されていました。旦那の浮気現場の絵、会社の不正取引の書類のコピー、料理の写真をこっそり撮るタイラーの姿まで。

このレストラン「ホーソン」へ投資している3人の男たちは、不正の証拠が漏れていることに怒り出します。給仕係のエルサが男の耳元で何かを囁きました。青ざめた男は口を紡ぎます。

「何かがおかしい」マーゴは、これまでの料理にいっさい手をつけていませんでした。違和感を感じたマーゴは、トイレに籠り煙草を吸い自分を落ち着かせます。

そこにシェフのスローヴィクがやってきます。トイレにまで押し入ってくるスローヴィクに恐怖を感じるマーゴ。

スローヴィクは構わず彼女に「なぜ、私の料理を食べないのか?」と質問をします。マーゴは答えます。「私は、自分が食べたいものを食べるわ」。

以下、『ザ・メニュー』ネタバレ・結末の記載がございます。『ザ・メニュー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022 20th Century Studios. All rights reserved.

マーゴが席に戻ると、4皿目の用意が整っていました。床に敷かれた白いシート、周りは美しい花で飾られています。

「パンッ!」「イエス!シェフ!」

スローヴィクは、副シェフのジェレミーを皆に紹介します。彼の功績をたたえながらも、ここでの生活に満足していないジェレミーを哀れんでいるようです。

ジェレミーは挨拶が終わると拳銃を取り出し、自らの口に銃口を向け引き金を引きました。悲鳴に包まれるレストラン。「メニューの一部です」。

裕福そうな老夫婦が立ち上がり、外へ出ようとしました。スローヴィクはこの夫婦を知っているようです。

「あなたがたは、何度ここに来ましたか?何を召し上がったか一品でもいいのでおっしゃってください」しかし、老夫婦は答えることが出来ません。

逃げようとする夫をスタッフが押さ込み、その場で指を切断しました。レストラン内は、さらにパニックに陥ります。「このレストランはイカレテル!」。

そんな中、タイラーだけは興味がないかのように料理に集中していました。そんなタイラーを気味悪がるマーゴ。

5皿目は口直しとして、紅茶が振る舞われました。「こんなことをして、このレストランのオーナーが黙っちゃいないぞ」と投資家の男たちが騒ぎ出します。

窓の外をみると、海の上に天使の羽をつけた男が吊られています。このレストランのオーナーです。たちまち、海へと沈められてしまいました。

「静かに!聞こえますか?この音が。私が自由になった静けさです」スローヴィクは恍惚とした表情を浮かべていました。言葉を失うゲストたち。コース料理はまだ続きます。

スローヴィクはマーゴを呼び出し詰め寄ります。「与える側か与えられる側か、すぐに決めなさい。今夜で皆死ぬのだ」。

スローヴィクはマーゴの正体に気付いていました。予約名簿の名前が違っていたこと、タイラーとの関係。「あの老夫婦のおじいさんとも知り合いだろ?」。

マーゴは他のゲストとは違い、金持ちではありませんでした。娼婦として客を取り金を稼ぐ彼女は、高級レストランとは無縁の存在でした。

「奉仕するのは楽しいか?私も昔は楽しかったよ」とスローヴィクはマーゴを決して見下してはいません。「君は私といるべきだ」。

6皿目は、全員外へ出るように促されます。女性スタッフがハサミを手にし、スローヴィクの足を刺しました。セクハラへの制裁だと言います。

スローヴィクは男性たちに逃げるように指示します。それを追いかけるスタッフたち。壮絶な鬼ごっこのスタートです。

残された女性たちはレストランで食事を続けます。皆、疲れ切っていました。自分たちがなぜここに呼ばれたのか気付いているようです。「あなただけでも逃げなさい」。

次々と戻ってくる男性たち。誰一人逃げることのできた者はいませんでした。彼らもまた体力を奪われ、自分の罪を感じていました。

7皿目。スローヴィクはタイラーを厨房へと招待し、名前入りの制服を渡します。嬉しそうに袖を通したタイラーに「料理を作ってみろ」と促します。まったく料理のできないタイラー。

彼は唯一、事前の招待状で、今夜このレストランで皆が死ぬことを知っていました。それを知りながら、金でマーゴを雇いここに連れてきたのでした。

お粗末な料理を食べさせられるゲストたち。スローヴィクはタイラーの耳元で囁きます。彼は制服を脱ぎ、その場を去りました。そして一人、倉庫で首を吊ります。

デザートの時間が近づいていました。スローヴィクはマーゴに、燻製倉庫から樽を持ってくるように頼みます。

マーゴは、誰も入ることが許されないシェフの家へ向かいました。こっそり忍び込み、鍵付きの部屋に入ることに成功したマーゴは、そこで無線を見つけます。

しかしマーゴの跡をつけていた、給仕係のエルサが「この役目は誰にも渡さない」と襲いかかります。もみ合いの末、マーゴはエルサを殺してしまいます。

命からがらレストランに戻ったマーゴは、スローヴィクの前に樽をぶちまけ、席につきます。そこに、船でパトロール中に無線を聞いたという保安官が駆けつけてきました。

「私たちはただ食事をしているだけです」というスローヴィクの平然とした態度に、誰も真実を言いだせません。怪しむ保安官が拳銃を取り出し、その場は一触即発に。

保安官が拳銃の引き金を引くと、それはライターでした。なんと彼はスタッフで、今宵のディナーの演出のひとつだったのです。

スローヴィクはマーゴに「君は奪う側だ!」と言い放ちます。絶望の淵に追いやられるゲストたち。

「パンッ!」マーゴはスローヴィクの真似をし、手を大きくひとつ鳴らしました。「あなたの料理は嫌いよ。食べる楽しみを奪い、どれにも愛情が感じられなかった。私は空腹よ」。

シェフとしてお客を空腹のまま帰すわけにはいきません。それは、たとえここで死ぬことになったとしても。

「何を注文しますか?」「食べたいのはチーズバーガー。高級なのじゃなく、どこでも食べれるあの味よ。ポテトも付けてね」。

マーゴは忍び込んだスローヴィクの部屋で、彼の料理の原点がハンバーガーだったことを知っていました。

高級レストランの厨房で、懐かしそうにチーズバーガーを作り上げたスローヴィクは、マーゴの席へ自ら運びます。

大きな口でチーズバーガーを頬張ったマーゴ。「これは本物だわ」と、本日初めてスローヴィクの料理を口にしました。

そして、ハンバーガーを皿に戻したマーゴは「食べきれると思ったけどお腹がいっぱいで、持ち帰れるかしら」と相談します。

テイクアウト用にハンバーガーを包むスローヴィク。マーゴはカバンから、くしゃくしゃの札を出しバーガー代を支払いました。外へと案内されるマーゴ。他のゲストも温かく見守ります。

8皿目。マーゴが抜けたレストラン「ホーソン」では、コース料理の締めとなるデザートの準備が整いました。本日のデザートは「スモア」。材料は、マシュマロとチョコレート、シェフ、スタッフ、客。

客は皆、マシュマロの羽織りにチョコレートの帽子をかぶり、デコレーションされた床には油が引かれ、中央に巨大なマシュマロがセットされました。

「私たちは今日、清められ、溶けて、新しく生まれ変わるのです」スローヴィクの合図とともに、火が放たれます。

マーゴは一人、船上にいました。持ち帰った残りのチーズバーガーを頬張ります。見つめる先には、燃え上がる孤島のレストラン「ホーソン」の姿がありました。

映画『ザ・メニュー』の感想と評価


(C)2022 20th Century Studios. All rights reserved.

孤島の高級レストランを舞台に繰り広げられる、クローズドサークル・サイコ・サスペンス『ザ・メニュー』

世界で最も予約の取れないレストラン「ホーソン」。そこでは伝説のシェフが腕を振るう極上のフルコース料理が食べられます。客は、選ばれし者たち11人。

味わったことのない、いや絶対味わいたくない、地獄のディナーが待っていました。

一流の料理人たちが作り上げる芸術的な一皿も、料理にこめられたシェフの思いを知っていくうちに、恐怖の一皿に変わっていきます。

観客は映画館というクローズドサークルで、レストランにいる客と同じように閉じ込められ、「食」×「サスペンス」の最悪の相性を味わうことになります。

コース料理が進むにつれ、客はなぜ自分がここに招かれたのかを知ることになります。一人一人の秘密や悪行が露わになっていく様は、はじめは滑稽で胸がすく想いがするでしょう。

しかし、シェフはその罪を罰することだけが目的ではありません。シェフは、怒っていました。料理をただ食べるだけの人々に、料理を心から味わうことを忘れてしまった権力者に

何度もレストランに来ているのに、何を食べたかも覚えていない客。店の評判を上げるのも下げるのも、自分の評価次第と思っている料理評論家。ただ「ステータス」として高級店に出向く投資家。見栄を張ることに一生懸命な俳優。

そして、それを止めることができず、ただただ高級なコース料理をロボットのように作り続ける料理人たちと、初心を忘れそうな自分自身に怒っていたのかもしれません。

シェフが最後にたどり着いた究極のディナー。最後のデザートの時間まで、演出にもこだわります。

コースの最後を飾るデザートは、シェフとスタッフ、お客が一心同体となり完成します。あたかも、綺麗に浄化したかのように。

「招かれざる客」として唯一の生存者となった、主人公マーゴ。彼女は、他の客とは違っていました。それは、裕福さや権力という類のものではなく、心根にあるサバイバル精神。彼女は有名店だからといって、媚びることはしませんでした。

自分の食べたいものを食べる。チェーン店のハンバーガーも高級店のコース料理も彼女にとっては同じものです。自分が美味しいと感じるかどうか。

同伴者タイラーが、シェフに心酔し、料理の云々を語っているのを、マーゴは冷めた目で見ています。「客をバカにしたような料理の何がいいの?」と。レストランに着いた時は、周りの客から浮いた存在だったマーゴが、実は一番の常識人でした。

燃え上がるレストランを見ながらチーズバーガーを頬張るラストシーンは、彼女のタフさの現われであると同時に、底知れぬ恐怖心を覚えました。果たして、自分はどちら側の人間なのだろうと。

マーゴを演じたアニャ・テイラー=ジョイの、可愛らしい顔が一瞬で恐怖に変わる表現力と、キッと睨みつける目力に、サスペンスが良く似合う女優さんだと感じました。

まとめ


(C)2022 20th Century Studios. All rights reserved.

絶海に浮かぶ孤島の高級レストラン「ホーソン」にて、伝説のカリスマシェフがもてなす極上のスリルに満ちた、驚愕のフルコース・サスペンス『ザ・メニュー』を紹介しました。

じわじわと追い詰められるコース料理の演出に、ゲストは驚き、怒り、恐れ、憔悴、諦め、そして、最後は受け入れ、浄化されるのです。

このコース料理の完成には、あなたの力も必要です。

「イエス!シェフ!」

恐怖のフルコースをご堪能下さい。




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