映画『戦場記者』は2022年12月16日(金)より全国ロードショー!
多角的な視点で戦場の惨事とともに人々の声を臆することなく拾い上げ、戦地の真実に迫るドキュメンタリー『戦場記者』。
本作を監督したのは、世界のさまざまな戦地に直接出向き、命がけの取材で戦争の真実を報道し続けるTBSテレビの中東支局長・須賀川拓です。
テレビのみならずYouTubeやSNSも駆使し、戦地の肌感覚とニュースの向こうに広がる光景と真実を人々へ発信する須賀川。
「映画」として発信される本作もまた、戦争の悲惨さを映し出すとともに現代における報道の在り方を問いかけます。
映画『戦場記者』の作品情報
【日本公開】
2022年(日本映画)
【監督・出演】
須賀川拓
【作品概要】
テレビ特派員として世界の紛争地を駆け巡ってきた日本人記者・須賀川拓が、“戦場の今”を映し出したドキュメンタリー。
TBSテレビの中東支局長であり、唯一の局員である須賀川拓。彼はこれまで中東・ヨーロッパ・アフリカ・アジアなどエリアを限定せず世界各地のニュースを決死の覚悟で取材を行い、日本の報道番組に届けています。
その一方で報じる内容に制約が存在する報道の枠を超えて、YouTubeやSNSなどのネット媒体を駆使しその真実を発信し続け、多くの支持を集めています。
映画『戦場記者』のあらすじ
2022年3月開催の「TBSドキュメンタリー映画祭」で上映された映像作品「戦争の狂気 中東特派員が見たガザ紛争の現実」をベースに、パレスチナ、ウクライナ、アフガニスタンといった現在大きな紛争で世界的に注目を集めている様々な地域の戦場の実態について取材を重ね、レポートします。
また合わせて、これらの風景を人々に伝えるべく日々奮闘している須賀川自身の表情、思いを取り込み、惨劇の情景とともに報道の在り方を問います。
監督:須賀川拓プロフィール
参考映像:「TBS NEWS DIG Powered by JNN」より
ウクライナ・ミコライウでの現地リポート(2022年3月30日)
1983年3月21日生まれ、東京都出身、オーストラリア育ち。
2006年TBS入社、スポーツ局配属。2010年10月報道局社会部原発担当、警視庁担当、『Nスタ』を経て、現職(TBS中東支局長)。担当した主な作品は、レバノンの麻薬王を追った『大麻と金と宗教』、封鎖のガザで生きる起業家に 密着した『天井の無い監獄に灯りを』。
その他にも、レバノンの大爆発後メディア初となる爆発中心部取材や、タリバン幹部への直撃インタビュー、アフガニスタンでタリバンのパトロールへの密着等。
最近は、テレビでは伝えきれない紛争地の生の空気や、戦争で生活を破壊され、あえぐ一般市民の声をTBS公式YouTubeで積極的に生配信している。2022年、国際報道で優れた業績を上げたジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。
映画『戦場記者』の感想と評価
「戦場記者」を描いたドキュメンタリーは、どちらかといえば戦場カメラマン、戦場記者という立場の人間の、本質に迫るものがテーマとしては多いように見受けられます。
これに対して本作はレポートの現場、レポートを行う現実などの情景とともに「レポートで何を伝えるか」「何を伝えるべきか」という、「記者」「報道者」という立場についての本質にスポットを当てている印象が強くあります。
本作は大きくパレスチナ、ウクライナ、アフガニスタンという、現在多くの紛争などで世界的に関心を集めている場所のレポートの様子が描かれますが、そのレポートは実際にテレビのニュースなどで報道される内容と比較すると非常に深く、幅広い視点によるものとなっています。
例えばパレスチナの爆撃現場がニュースなどで報じられる際には、「何処で爆撃があった」「何人死亡した」という二次的に集約されたレポートとなるわけですが、そんな報道だけでは見えない、爆撃を受けた場所、その状況に対する抗議、被害者の生の声、さらに敵側の生の声、そして今まさに爆撃が展開しているその現場など多角的な視点て現場の声や様子を拾い上げ、ありありと映し出しています。
レポート映像からは、ニュースで伝えられる内容で見えてくる「その紛争で誰が、何が悪いのか」という判断がかなり断定しにくいものとなっている一方で、普段報道されている内容には真実の一側面しか見えてきていないことが多いという真実を、まざまざと見せつけられます。
そしてこれらのフッテージからは、実際の取材と、茶の間の人々に提供される情報には、差がないようで実は大きなギャップがあるということを改めて思い知らされるでしょう。
その意味で映像には、その意味で現代マスコミに対するあり方への提言があるようにも見えてきます。須賀川のレポート、視点は戦場に向き合う記者としての限界に至るほどの行動で得られる情報を見せており、一つのあるべき姿を示しているようでもあります。
さらに興味深いのは、その緊迫した現場においてインタビューを行う須賀川の表情が多く映し出されている点。戦争の現場においてのレポート作業の恐ろしさはもとより、当事者たちはそんな現場で生死の境目をさまよいながら生きているわけであり、精神的にも追い込まれていることでしょう。
そんな不安定な状況にある人へのインタビューは、自身に伝えるという使命があるとはいえ、報道に携わる人間として緊迫した状況に投げ込まれるという事実は否めません。現場で毅然とした態度で人々に問いを投げかける須賀川の表情は、時に報道人としての苦悩を見せながらも、自身が行うべきことに誠実に向き合っていることを示しているものであります。
まとめ
本作は生々しい戦争の傷跡のレポートだけにとどまらず、緊張感あふれる映像が淡々と続いていきます。
須賀川の細やかなレポート、その緊迫した状況には非常に目を奪われるところですが、その奥に見えてくるものにも注意しなければならない点があります。それは、この映像に映し出される国それぞれの「当たり前」の生活を突いたイメージです。
映像の中にある、爆撃痛々しい傷跡と合わせて争いの犠牲となった人々、戦地の中で生活している人々の生の声は、生活のすぐそばに戦争という大変な事情があるという状況、そしてそれがまさにその国の「当たり前」を示しています。
このような状況は、日本では考えられない意識、景色であり、かつ報道という場所からは実はなかなか見えてこないポイントであり、その意味で本作は、ドキュメンタリーの持つ訴求力という面で非常に強い力を示すものでもあります。
映画『戦場記者』は2022年12月16日(金)より全国ロードショー!